休暇が「無限」のホワイト企業?働きたくなる組織と見つけ方

更新:2021.12.1

ブラック企業に対応するようにして生まれた「ホワイト企業」という言葉。今回は、その定義や見つけ方、実例について、参考本とともに見ていきます。

ブックカルテ リンク

ホワイト企業の定義

劣悪な労働を強いる「ブラック企業」に対応する言葉として生まれた「ホワイト企業」。

従業員の待遇や、福利厚生が良好で、働きやすい職場環境が整備されている会社を指します。とりわけ、若手社員や、女性社員の満足度・定着率が高くなっています。

以下では、本を参考にして、より詳しくホワイト企業の定義を見ていきます。

イノベーションと創造的学習力がカギ

『ホワイト企業: 創造的学習をする「個人」を育てる「組織」』では、ホワイト企業を、これからの社会で企業経営や事業運営をしていくうえで重要となってくる「イノベーション力」を上げるために、「人材開発に力を入れ、イノベーションの成果に結びつく実力を重んじる」組織と定義します。

そしてこのような組織で働けば、副題にもあるような「創造的学習力」が養われ、長寿化や少子高齢化によって直面するであろう、50年以上にわたる職業人生を生き抜く力が身につけられるというワケです。

さらに本書では、創造的学習のあるべき姿や、イノベーションを阻止する日本型組織の壁などについても説明もあり、これからのホワイト企業について考えたい人にはぴったりな1冊といえるでしょう。

とはいえ、どのようにしてホワイト企業を見つけていけばいいのでしょうか。以下で詳しく見ていきましょう。

著者
["永禮 弘之", "瀬川 明秀"]
出版日
2015-11-04

ホワイト企業の見つけ方

東洋経済オンラインの報告(2014)を参考にすると、ホワイト企業を見つける際には、以下の5点が重要になってきます。

①選考に時間をかけているか

②離職率は低いか(※新卒の3年以内の平均離職率は約3割)

③平均勤続年数は長いか

④残業時間は30時間を超えていないか

⑤有休の消化は、年平均で10日程度か

これらを踏まえて、自分が長く働ける企業を見極めていく必要がありそうです。

それでは本を参考に、ホワイト企業の見極め方について、さらに詳しく見ていきましょう。

情報の活用が決め手

『「ホワイト企業」の選び方(池内恵介、同文館出版、2015年)』では、ホワイト企業を見極めるときの情報収集方法と、その情報から、それぞれの企業の労働条件設定がホワイトかブラックかを見分ける方法などについて述べられています。

前者の情報収集方法には、①就活ナビや企業HP、株主向けのIR情報、企業情報がまとめられている書籍といった、文字や画像から得る「間接情報」、②OB・OG訪問などを通して人から手に入れる「直接情報」があるといいます。

しかしそれらの情報も、どのようにして読み込めるのかというポイントがわかっていなければ、活用はできないでしょう。

そこで、たとえば本書では、時間外労働手当が月々決まった額で支払われる「定額残業手当」や「見なし残業手当」に注目していくのです。

本書によれば、「定額残業手当」を設定している企業は、ホワイト企業である可能性が低いといいます。というのは、違法ではありますが、「定額残業」相当の時間を超えても、追加の残業代が支給されない場合もあるからです。

なお「定額残業手当」は、新卒市場の初任給額に含まれていたり、「業務手当」や「職務手当」と曖昧に表現されていたりする場合もあるそうなので、これらの点にも注意する必要があるでしょう。

本書ではこのほかにも、ホワイト企業を選んでいくときに役に立つであろうポイントや、OB・OG訪問の際に活用したい技などが掲載されています。また法律で定められている労働基準の基礎も学べ、ホワイトかブラックか判断する際に必要となる「知識」も吸収できるので、就職活動中の若者にはぜひ手に取ってもらいたい1冊です。

最後に、ホワイト企業の実例をご紹介していきます。

著者
池内 恵介
出版日
2015-12-04

斬新すぎる、アメリカ発のホワイト企業

実際には、どんなホワイト企業があるのでしょうか。

そんなときにぜひ手に取ってもらいたい雑誌が「COURRiER Japon(クーリエ・ジャポン) 2015年8月号」です。同誌では「『成長できる』『幸せになれる』21世紀の『ホワイト企業』」という特集が組まれ、日本やアメリカのホワイト企業を知ることができます。

たとえば、大手総合総社である三井物産では、2011年から社内でリーダー研修「GMA(Mitsui HBS Global Management Academy)をスタートさせました。

約2週間の研修は、提携先のアメリカのハーバード・ビジネス・スクール(HBS)キャンパスで開講され、本社スタッフから海外の重要取引先企業まで、出身も業種もさまざまな中堅社員(主に35〜45歳)が参加するといいます。「自分の信念や経験」をベースにして議論するなどして、リーダーに必要な理論や理念を学ぶことができるそうです。

一方、「休暇に関する規定はない」といった自由な社風で有名な、動画配信サービスを行うネットフリックスでは、先述した三井物産のような特別な研修制度はなく、社員それぞれが自分の成長に責任を持つようになっています。

そんなネットフリックスが組織として行うことは、社員の成長に繋がる「より大きな課題」と、より良い仕事に繋がる「素晴らしい同僚」を与えること。とりわけ後者については、「最高の福利厚生」という考えが同社ではあるそうです。

なるほど、アメリカ発のホワイト企業からは、学ぶことも多そうです。

このように、海外のホワイト企業の取り組みについても紹介されている雑誌なので、驚きの出会いがあること間違いなしです。またカラー写真や、実際に働く人たちの声も含まれるため、それぞれの企業について、イメージが湧きやすい点も魅力といえるでしょう。

※紙媒体の「COURRiER Japon(クーリエ・ジャポン)」は2016年2月25日発売号で刊行終了となり、会員制ウェブメディアになっています(2017年時点)。今回ご紹介した雑誌については、図書館や公式ウェブサイトなどでチェックしてみてください。 

COURRiERJapon 2015年 08 月号

2015年06月25日
講談社
講談社; 月刊版

待遇や福利厚生、職場環境がきちんと整備されている「ホワイト企業」を見つけるためには、企業についての情報収集はもちろん、それを適切に読み取ることが必要といえそうです。

また国内外問わず、研修を充実させたり、あるいは、社員に「素晴らしい同僚」を与えたりして、働きやすい環境を保障している組織がありました。

その人らしく生き生きと働ける環境が、今後より広まっていくためには、何ができるのか、必要なのか、改めて考えさせられました。

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