石橋湛山のおすすめ本5選!政界の人物から多くを学ぶ

更新:2021.12.19

第55代内閣総理大臣、石橋湛山。戦後政界で活躍したこの人物の名前をあなたは知っているでしょうか?日本史の教科書に出てきた記憶がある方もいるかもしれませんが、彼は実は戦前から活躍するジャーナリストでもありました。

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稀代のリベラリスト・石橋湛山

石橋湛山の人生は起伏に富んでいます。彼は1884年に東京に生まれ、山梨で育ったのち、早稲田大学を卒業。その後、ジャーナリストとなりました。そのころ時代は大正デモクラシーと呼ばれる、民主主義的な雰囲気の中にあり、石橋は「東洋経済新報」という今なお続く雑誌を舞台に、そのような時代を擁護しつつ、独自の主張を展開します。

戦後彼は政界入りし、大蔵大臣などとして活躍したのち、第55代内閣総理大臣としてこの国の政治の牽引役となります。残念ながら、病気のため、たったの65日で内閣総理大臣の職を辞することになりましたが、その後もアジア重視の外交を推進しようとするなど、唯一無二の活動を展開したといえるでしょう。

ジャーナリストから政治家へ。石橋は、そんな生涯を送りながら政治的問題を多くの著作で世に問いました。彼の著作には具体的にどのようなものがあるのでしょうか?

近現代の日本におけるジャーナリズムの精髄

先にみたように、石橋湛山は戦前においては「東洋経済新報」を主戦場に、ジャーナリストとして活躍してきました。本書は、石橋の執筆した膨大な記事や論文から、主要なものを精選して集めたものです。

本書の第一の魅力は、強いリアリティをもって近現代の日本史を描き出しているという点です。本書では、近現代の日本で生じた様々な事件が取り上げられ、それらに関して石橋なりの視点から論説が展開されます。

著者
石橋 湛山
出版日
1984-08-16

本書の中でも取り分け注目すべきなのは、満蒙問題について論じた論文です。満蒙とは、満州と内モンゴルのことで、1920年代に日本の支配下におこうと企てられていました。石橋はそこで、当時の主流派に抗して満州からの撤退と権益の放棄を訴えています。このことは、時流に抗してでも、誠実なジャーナリストたろうとする石橋の姿勢を象徴しているといえるでしょう。

ジャーナリズムはいかにあるべきか。本書はそのような本質的な問いに対する、一つの模範解答を示すものでもあるといえます。現代のジャーナリズムを考えていくうえでも、本書に収められた論説は参照される必要があると言えるでしょう。

単なる石橋湛山の「回想録」ではない、優れた「歴史書」

今やタレントから大学教授まで、様々な人物がその半生を振り返った回想録を出しています。本書も、そのような回想録の1冊といえますが、同時に単なる回想録に留まらない深みのある本でもあるといえるでしょう。

なぜなら本書は、大正から昭和へと、二つの世界大戦の経験をはじめとして、日本が激動の時代を歩む中で展開された石橋の人生を語るものであり、それは同時に激動の時代を生き抜いた者の貴重な証言録でもあるからです。

著者
石橋 湛山
出版日
1985-11-18

本書を石橋は、自らの生い立ちを語ることから始めます。石橋という稀代のジャーナリストがどのようにして成長していったのかを追体験することができ、それは現代日本を生きる人々にとっても多くのことを教えてくれるでしょう。

さらに本書では「東洋経済新報」における執筆活動の裏側や、戦争前後の言論弾圧の実態など、興味深い内容に満ちています。日本の近現代をリアルな文章から知るための、格好の手引きとなるでしょう。

「座談」とはかくあるべきもの

「座談本」という形式の魅力は話し言葉のやり取りの中で、読み手が参加者として対話に加わるように文章を追っていけることです。本書を手に取り、石橋湛山との対話を楽しんでみませんか?

本書は、石橋が立正大学の学長をしていた際に、経済学部の勉強会で展開されたやり取りがもとになっています。論文というとどうしても堅苦しくなってしまう側面がありますが、本書はそのような側面が希薄で、気軽に読んでみることができるでしょう。

著者
石橋 湛山
出版日
1994-02-15

本書で語られるのもまた、石橋湛山の人生を振り返った回顧的な話題です。老成した彼の口から出る言葉は、様々な経験を踏まえているだけに、重みを感じさせるものとなっています。

また、本書において石橋湛山は、ジャーナリストとしてのみではなく、政治に携わる者としても語っています。本書の中で示される意見は、現代政治を考える上でも意味のあるものと考えられるでしょう。

「小日本主義」とは何か

いつの時代も、外交とは政治家にとっての難題です。それは現代日本も同じであり、現代日本は21世紀に入ってからの大きく揺れ動くこの世界の中で、どのような外交方針を取っていけば良いのでしょうか。

本書に収められた石橋湛山の諸論文がそのヒントを与えてくれます。本書が執筆された大正から昭和にかけての日本は、様々な外交的問題を抱えていました。石橋は、そのそれぞれについて、日本の取るべき立場を具体的に示しています。

著者
石橋 湛山
出版日

石橋湛山は、本書に収められた論文の中で「小日本主義」という考え方を提示します。それは、論文執筆時の日本が外へ外へと勢力の拡張を図っていた中で、日本という国の領域をはっきりとさせ、その権益を大事にしようとするものでした。

21世紀に入り、あからさまな拡張主義こそ目につかなくなったとはいえ、依然として領土問題など、日本外交は「領域」に関する様々な問題にさらされています。本書にはそのような問題を解決する鍵が隠されているかもしれません。

時代と常に向き合うリベラスト・石橋湛山の姿

リベラリストとはどんな人のことを指すのでしょうか。本書はその手掛かりとなる一冊です。本書を読めば、リベラリスト・石橋湛山が単なる競争至上主義的自由主義者ではなかったことがわかるでしょう。

本書は、石橋の様々な経済に関する論説から、主要なものを厳選して収録した論文集です。近現代の日本は、飢饉、失業という生活に直結する問題から、戦後の高度経済成長の望ましい在り方に至るまで、様々な経済に関する問題を抱えてきました。

著者
石橋 湛山
出版日
1995-11-01

そんな中で、石橋湛山は常に日常的な経験を大事にすることを忘れませんでした。失業など身近な問題のみならず、それは様々な論説の中にみることができる石橋の姿勢だと言うことができるでしょう。

石橋湛山が活躍した「東洋経済新報」は現在も、有力な経済誌として日本のビジネス関係者に読まれていますが、現代経済の分析のみではなく、石橋による過去の経済に関する論説に当たることにより、日本経済のこれからを考えてみる必要もあるのではないでしょうか。

ジャーナリストにして政治家石橋湛山の生涯はそのような変化を経験しつつも、常にぶれるところのない筋の通った考え方に基づいたものでした。

石橋の論じた問題は多岐にわたります。経済、外交、そして政治。そのどれもがある種の停滞感を漂わせている現代の日本で、石橋湛山の著作をもう一度手に取ってみる意義は大きいのではないでしょうか?そこで読者は現状を変えていくヒントを見つけることができるかもしれません。

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