5分でわかる日本国憲法の成り立ちと条文!初心者から上級者まで読める本

更新:2017.5.3 作成:2017.5.3

改正などについての議論も持ち上がる「日本国憲法」。今回はその成り立ちや、第9条・第12条・第25条といった有名な条文の概要をまとめたあとに、憲法を学ぶ際に参考となる本(初心者編から上級者編まで!)をご紹介します。

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日本国憲法の成り立ち

国の「最高法規」である日本国憲法は、1946年11月3日(現在の文化の日)に公布され、翌1947年5月3日(現在の憲法記念日)に施行されました。

なお「最高法規」について、日本国憲法の公布後に発行された中学生用の教科書『あたらしい憲法のはなし』では、「国でいちばん大事な規則」「いちばん高い位にある規則」と定義しています。

それでは前文と11章103条からなるこの憲法は、どのように成立したのでしょうか。簡単に歴史を振り返ってみます。

1945年8月14日、日本はポツダム宣言(アメリカ・イギリス・中国が日本に降伏を求めた文書)を受諾し、国家を民主的なものへと変える義務を負いました。さらに、連合国最高司令部(GHQ)から憲法改正に関する示唆を受けたため、日本政府は同年10月、松本烝治国務相を長に据えた憲法問題調査委員会(松本委員会)をスタートさせます。

しかし翌1946年2月には毎日新聞が、松本委員会の憲法試案をスクープ。同案はGHQから、日本の民主化にはふさわしくないと判断され、新聞各紙からも批判されました。

このような流れのなかで、GHQが独自に憲法草案を作ることになります。そのため「押しつけ」と言われることもありますが、その過程では、世界の憲法とともに、日本の民間団体である憲法研究会による憲法草案要綱(①天皇の権限の限定、②国民主権、③生存権、④男女平等といった「日本国憲法」の基礎が含まれる)も参考にされています。さらにその後、普通選挙で選ばれた代表者たちが、GHQ案をベースにした憲法草案を国会で審議し、議決しているのです。

かくして、①国民主権(主権が国民にあること)、②基本的人権の尊重(人間が生まれながらにして持つ権利)、③平和主義という3点が基本原則となった日本国憲法が誕生します。

また2017年現在の日本国憲法では、憲法で国家権力を制限し、国民一人ひとりの権利や自由を守る「立憲主義」が採用されています。そのため第99 条に記されているように、憲法を尊重して守る義務があるのは、国民ではなく国家なのです。

そして憲法記念日である2017年5月3日、安倍晋三首相は2020年を新憲法施行の年にしたい、と表明しました。このようなときだからこそ、現憲法をじっくり学ぶ必要があるように思えます。

日本国憲法第9条とは?

よく議論の的になる第9条では、①戦争の放棄(第1項)、②戦力の不保持(第2項)、③交戦権の否認(第2項)、が定められています。

この条文と憲法の前文が、先述した日本国憲法の3つの基本原則のなかの「平和主義」を定めているのです。

日本国憲法第12条とは?

第12条では、①自由・権利を保持する義務、②自由・権利を濫用することへの制限、が定められています。11条、97条とともに、日本国憲法の基本原則である基本的人権について記された条文です。

まず①自由・権利を保持する義務について補足すると、自由や権利は、日々主張していく(守っていく)努力=「不断の努力」によって維持されるものです。だからこそ私たち一人ひとりが、自由・権利を保持する必要があります。

一方で、「公共の福祉のために一定の制限は受け」ると記されています(「法学館憲法研究所」より引用)。つまり他人への迷惑や自分勝手は、許されていないということです(同上)。

そしてこれらのことが、②の「自由・権利を濫用することへの制限」が意図するところといえるでしょう。ただし「公共」といっても、「天皇や国を意味する『公』や抽象的な国益のために人権制限が許されるわけではありません」(同上)。

日本国憲法第25条とは?

第25条では、①生存権(「人間らしく生きる権利」)、②生存権を実現するための国の責務、が定められています。

なお25条文内にある「健康で文化的な最低限度の生活」という言葉は、GHQ案にはありませんでした。実はこのような文言を一番初めに憲法草案に記したのは、先述した民間団体「憲法研究会」です。

そしてその後、憲法の改正が具体的に国会で議論されていくなかで、社会党議員たちの主張もあり、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」という文言が加えられたのです。

それでは概説はここまでにして、以下では日本国憲法を学べる本について、初心者編から上級者編までをご紹介していきます。

日本国憲法を「まんが」で!【初心者編】

著者
石森プロ
出版日
2014-08-07

石ノ森章太郎といえば、『サイボーグ009』や「仮面ライダー」シリーズを思い浮かべる方も多いかもしれません。『改訂版 石ノ森章太郎まんが日本国憲法』では、そんな石ノ森がまんがを担当し、早稲田大学名誉教授の浦田賢治が日本国憲法を隅から隅まで徹底解説します。

この本では、まんがだけでは補えきれないような詳細な解説も、各まんがの下にきちんと載せられているため、憲法の基礎をしっかりと学べます。もちろん実際の条約文も確認できますので、読みやすさと読み応えを押さえた1冊だと思います。

また、まんがで憲法を読んでいくといっても、日常的な場面設定から解説されることも多く、肩の力を抜いて読み進められることでしょう。

たとえば、「人間らしく生きる権利・生存権、国の社会保障義務」が記されている25条では、男性が「国民は健康で文化的な最低限度の生活を送る権利があるが、国は具体的にはどのような義務を果たしているのか」と尋ねるシーンから始まります。素朴な疑問から始まるこの場面は、話に入りやすい点が魅力的です。

ここで解説に目をやってみると、300字程度の文字数であるのに、「生存権」や「国の社会保障義務」について、過去から現在にかけての情報がぎっしり詰まっています。さらにすべての条約解説後に続く「日本国憲法Q&A」では、ヘイトスピーチ問題など現代の社会問題も含まれており、「まんが」というタイトルからは想像できない情報量が得られることでしょう。

まずは憲法を知る第一歩として、読んでみてはいかがでしょうか。

あなたの疑問を一気に解決!【中級者編】

著者
谷口 真由美
出版日
2016-06-24

日本国憲法の全体を把握したあとに、おすすめしたい1冊が『憲法って、どこにあるの?: みんなの疑問から学ぶ日本国憲法』です。著者は、大阪大学で大人気講義「日本国憲法」を担当する谷口真由美です。

本書では、憲法に関する身近な質問に著者が答えていく、という形式が採用されています。たとえば、表現の自由関連では「ヘイトスピーチも、表現の自由で守られるべきか」という質問が寄せられています。そこで著者は「国際的な流れでは、表現の自由で、ヘイトスピーチを守る必要がない」と回答するのです。

また生存権関連では、「生活保護受給がズルいと言われるが、高校進学は贅沢になるのか」という切実な質問が紹介されています。詳しい回答は本書にゆずりますが、「生活保護は、最低限の生活が保障されるための権利」(本書より引用)という観点から答えが導かれていました。

このように、日々過ごしていくなかで「気になっていたけれど、知らなかった」、あるいは「実は聞きたかったけど、いまさら聞けない……」ような質問が、どんどん解説されていきます。

またここでは表現しきれませんが、著者の独特な歯切れの良さも読者の心を掴むことでしょう。

なおそんな著者の切れ味が気に入った方には、『日本国憲法 大阪おばちゃん語訳』もおすすめしたいと思います。今回紹介した本の内容とややかぶる部分もあるかと思いますが、関西弁を全面に押し出しながら憲法を紐解いていくため、堅苦しさゼロの1冊です。

日本国憲法の議論を深読み!【上級者編】

著者
木村 草太
出版日
2014-04-16

最後におすすめしたい1冊が『テレビが伝えない憲法の話』です。著者である憲法学者の木村草太が、普段は小難しい印象を与えがちな日本国憲法の面白さを伝えてくれます。一言で言うならば、憲法に「萌え」てしまうこと間違いなしの1冊です。

本書の圧倒的な魅力は、マスメディアで聞こえてくる憲法議論の「一歩先」を見せてくれる点でしょう。たとえば、第4章では、憲法9条改正議論への臨み方について記されています。

ここで木村は、「国際法の枠組みや外交宣言としての側面を無視して、憲法9条の文言だけを見て議論するのは、檻の中のシマウマを黒馬だ白馬だと騒ぐようなもので、意味のあるものとは言い難い」と述べています(本書より引用)。

なお「外交宣言としての側面」とは、9条は「国際法をきちんと守っています」と外国人に発信するメッセージとなっており、信頼関係を構築していくうえで貢献している一面がある、という意味です。

話を戻すと、たしかに憲法9条の改正議論は、賛成にしろ反対にしろ、「憲法9条の文言だけを見て議論」されているように思えます。たとえば本書では、国際法を理解していないからこそ、「9条を改正すれば、国際法上は禁止されている自衛戦争もできるようになる!」といった意味を持ってしまう、ハチャメチャな論理が展開されると指摘しているのです。

今後ますます活発化していくであろう「憲法」についての議論を、主体的に、あるいは批判的に考えていくうえで必読の1冊といえるでしょう。憲法の新たな見方を学べるようで、ワクワクしてくること間違いなしです。

日本国憲法について、意外と知らないことも多かったかもしれません。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という3大原則ができるまでには、世界や日本の歩みがありました。

また、戦争の放棄、戦力や交戦権の否認を規定した9条だけではなく、自由・権利を保持する義務やその濫用を制限する12条、人間らしく生きる権利と、それを実現するための国の責務が定められた25条などについても、2020年に新憲法が施行される可能性がある今こそ、理解を深めておきたいものです。

今回の記事で、皆さんにぴったりな参考本が見つかると嬉しいと思います。