備えあれば憂いなし!リスクに向き合う入門書3冊

更新:2016.3.17

いちいちリスクを気にしていたら事が成せるか! と言われることがあります。たしかにリスクを過剰に気にしていては何もできません。ただ、リスクには「取るべきリスク」と「取らなくてもよい(避けるべき)リスク」があります。それを見極めて仕事を進めることが成果につながるのではないでしょうか。私はリスクマネジメントの専門家ではないですが、そのための体制づくりを中心になって推進してきたことがあります。そして、その大切さを実感してきました。何事にも備えが大切。今回はその際、役立った書籍の一部をご紹介します。

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何をする必要があるのか? 実務で求められるリスクマネジメントの全体像をおさえる。

著者
東京海上日動リスクコンサルティング株式会社
出版日
2012-03-28

そもそも、リスクマネジメントとは何でしょうか? 書籍の中で紹介されている定義を紹介すると、「日常の中で取り組む予防対策と、事件・事故後の緊急時の対応の両方を合わせた経営活動」のことです。つまり、取るべきリスクと避けるべきリスク、そして取り組むべき優先順位などを見極め、組織立ってリスクに対する対応を進めていくことと言い換えてもいいかもしれません。

まずはやってみる。そして、試行錯誤を繰り返しながらでもリスクに対する組織の「体質改善」を進めていくことを著者は勧めていますが、できることならば専門家や経験者を巻き込んで取り組みたいところ。特に、事件・事故などが起きてしまった場合は尚更ではないでしょうか。確実な対応をするためにスキルや経験などがモノを言うからということもありますが、組織内だけだと「組織の論理」「組織の常識(世間の非常識)」などに囚われて誤った判断をし、傷口を広げることもあり得るからです。また、組織内の理解を得る、協力を得ることは意外と難しいもの。自分も苦労した経験があります。対策を推し進めるためにも、専門家や経験者の協力は心強いものとなります。

ただ、専門家や経験者に丸投げをするのではなく、自分でオーナーシップをもって事に当たらなくてはなりません。効果的に専門家や経験者の方々と連携をしていくためには、自身も最低限知っておかなくてはならない知識や考え方を身につけておく必要があります。私もそのような状況に立った際、自分の少ないリスクマネジメント経験や知見を整理しながら体制を短期間で、一気に作り上げなくてはならないときに参考にしたのが本著でした。

リスクマネジメントの基本的な考え方から、取り組む上で大切なスタンスや視点、体制、リスクの洗い出し・評価の方法、事件・事故が起きてしまった場合の緊急対応に必要なことなど、いずれも概要ではありますが基礎を整理する上で役立つ本著。全体感をおさえることができます。すべての内容がすべての組織で実現できるわけではありません。内容を読んで、自分の組織に当てはめながら何をどこまでやるべきか、そして現実的にやれるのか考えを深めていく必要があります。

備えあれば憂いなし。私も仕事を進める上でよく感じますが、普段からのリスクに対する感度は本当に大切です。

危機発生、その時どうするか? 直面する可能性は限られてはいるものの、最悪の事態を想定してみることに意味がある。

著者
田中正博
出版日
2011-03-18

前述の書籍と重複する内容もありますが、もしものことが起きてしまった場合の対応(危機対応)や事例によりフォーカスしているのが本著です。

危機対応をしなくてはならない機会、可能性は少ないかもしれません(幸いなことに、自分もまだありません)。むしろ、経験しない人の方が圧倒的多数でしょう。ただ、実際に起きてしまったときに適切な対応を、迅速にすることができるか否かでその後の結果が大きく変わるのもたしかです。不祥事や事故に対する対応で非難を受け、大きな損失を被る企業、表舞台から退場せざるを得なくなってしまった企業をニュースなどで見たこともあるのではないでしょうか。予防をしていても起きてしまうことはあるもの。そして、もしもの事が起きたときに、人は意外と脆いものです。もしもの場合に備えて、最悪の場合を一度でも想定しておくか否かで初動にも大きな違いがあるものです。

本著では、リスク項目の絞り込みや評価方法などをはじめ、主にマスコミへの対応にフォーカスして大切な考え方などがまとめられています。記者会見の告知をどうするか? 記者会見のためにどのような準備をしておかなくてはならないか? 記者会見をどのように進め、司会として何を心得ておく必要があるのか、など。

また、冒頭では企業の5種類の責任を認識することの大切さが説かれています。具体的には、法的責任(コンプライアンス)、経営責任(経営判断によって企業活動を適切にすること)、管理責任(ラインの管理者が本来果たすべき役割を果たすこと)、社会的責任(社会に貢献すること)、道義的・倫理的責任(人の道に外れた行為をしないこと)です。これらは普段仕事をする上で常に気をつけておかなくてはならないことではないでしょうか。改めて企業としての責任を考えることが、普段の仕事の質向上、そして危機に対する予防(感度の向上)につながっていくのではないかと思います。

組織の常識を振りかざしていないか?他人事になっていないか? 当事者意識をもち、相手の心情を理解することの大切さ。

著者
舟橋 孝之
出版日
2011-09-17

クレームという言葉は個人的にはあまり好きではないのですが、そのような状況に置かれた場合、意外と難しいのがその対応です。皆様もご経験はないでしょうか? 製品やサービスについて不備があった際に窓口に言いにいったときに、お詫びがなかったり、言い訳をずっとされたり、事実確認がされずに曖昧な対応に終始されたり、たらい回しにされたり…などなど。それでムッとしたこともあるかもしれません。

逆に、ご自身がそのような連絡を受けたときはいかがでしょうか? 自分ではされるのが嫌なのに、意外と同じような対応をしてしまっていることはありませんか? それもそのはず。著者も指摘していますが、お客様からのクレームは突然発生するので、心の準備が間に合わず適切に対応することができないのは当然のことでもあります。

そのような状況でもしっかりと対応をするために不可欠なのが、相手の心情理解。相手の心情をよく理解し、それを踏まえて共感しながら対応を進めることが大切です。つい、言い訳や相手の間違いの指摘、反論をしてしまうこともあるかもしれませんが、火に油を注ぐだけで解決に至りません。まずはじっくり話を聴き、相手に落ち着いてもらいながら、解決の糸口を見つけていくことが求められます。

どんなにリスクマネジメントの仕組みができていても、どんなに知見があっても、この点が疎かになってしまっていてはいけません。自分も失敗を繰り返しながら、この大切さを痛感してきました。

これはクレームに限った話ではなく、コミュニケーション全体についても言えることではないでしょうか。自分の言いたいこと、言い分ばっかり述べるのではなく、相手のことにもしっかり耳を傾け、理解しようとする。それがすべての基本ではないかとも思えるのです。

今回はリスクマネジメントの話題ですが、普段記事として掲載をしているマーケティング全般においても同様です。相手に対する理解を深めるためにも、この姿勢はとても大切なのではないでしょうか。基本ほど難しいこともないのですが。自分も反省の日々です。

このようなテーマの本は参考になるものがたくさんありますが、本著は比較的薄く、読みやすいもののひとつです。内容も実践的。ご興味があればぜひ一度読まれてみてください。

今回は、実際に現場でリスクマネジメントをしながらビジネスに取り組んでいる実務家の目線で本をご紹介してみました。いかがでしたでしょうか? リスクマネジメントに限らず、何事も専門家に任せるべきという風潮があります。もちろん、専門家の力を借りることは大切です。素人が手を出したら火傷をすることは間違いなくあります。ただ、専門家の力を借りることと、丸投げすることとは大きく異なります。丸投げしていては事に適切にあたることもできないですし、組織内、そして個人に経験値も知見も蓄積されません。それで、本当に良いのでしょうか? 日頃、皆さんのまわりにあるリスク。それにどう取り組み、道を切り拓いていくか。私もまだまだ道半ばではありますが、それを考えるきっかけに少しでもなれば幸いです。本当はご紹介したい本がもっとあるのですが、それはまたの機会に…。