ヘレン・ケラーのおすすめの本5選!サリバン先生や名言も。

更新:2021.12.20

幼いころに目と耳と口に三重の障害を背負ったヘレン・ケラー。彼女がサリバン先生の力を借りて障害を克服し、教育家や社会福祉家として生きた足跡を知るための本5冊を紹介します。

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ヘレン・ケラーとは

ヘレン・ケラー(1880~1968)は、アメリカのアラバマ州の退役軍人の家で生まれました。彼女の名前を聞くと多くの人は「目と耳と口の三重苦を背負った人物」とイメージするでしょう。その三重苦の障害は2歳のころに患った病気によるものです。

眼も見えなくなり、耳も聞こえなくなったうえ、言葉も話せなくなった彼女のことを心配した両親は、電話の発明者でろう者の教育者としても知られているアレクサンダー・ベルに相談。そのベルがヘレンの家庭教師として紹介したのが、盲学校の卒業生のアン・サリバン。ヘレンが6歳の時でした。これ以降、ヘレンとサリバンは生涯を通じた友として付き合うことになります。

当初サリバンはヘレンの指導に苦労しますが、ある日ヘレンとの散歩中に井戸水を見つけます。その水をヘレンの手に注ぎつつ指文字で「water」と何度もつづるとヘレンはそれを理解できるようになったのです。このような指導法によって、その日の夕方までに30語を理解できるようになっていました。ヘレンはこの方法で、この世界に言葉があることを理解していきます。

その翌月には点字の本を読めるようになり、さらにその1月後には簡単な手紙を書けるようになるなど、彼女の能力はどんどん上達していきました。その後、サリバンの出身校であるパーキンス盲学校に移り、口語法などをマスターしたのです。

その一方でサリバンは付き添いで世界中のすべてを指文字で通訳して教えました。やがて、ヘレンはこれらのことを通じて社会問題にも興味を持つようになります。

その後は、16歳でボストンのケンブリッジ女学校に、20歳でラドクリフ女子大学に進んで様々な知識を吸収していきました。卒業した後、ヘレンは「盲人のために尽くすこと」を使命として、盲人の社会進出を訴える活動を開始。講演や著述を通じて公民権運動や人権運動、反戦運動などの社会運動も積極的に行っていきました。

また、生涯で3度にわたり来日。そのたびに多くの日本人から熱烈に歓迎され、彼女は講演を通じて多くの日本人に感銘を与え、日本における盲人援護の歴史に大きな足跡を残したのです。ちなみに1937年の日本への初来日は、彼女の師であるサリバンの遺言(初来日の前年に死去)を実現するものでした。

このようにヘレン・ケラーの生涯は幼少期の三重苦を克服し、その後世界中を回って自らの障害の経験と盲人に対する援助の必要性、さらには当時はびこっていた社会問題の解決を訴えた、まさしく弱者のための生涯だったといえます。

ヘレン・ケラーについてあなたの知らない3つの事実

1:ヘレン・ケラーはマーク・トウェインの友人だった

ヘレンは1895年にトウェインと出会いました。トウェインは実業家ヘンリー・ハトルストン・ロジャーズを説得しヘレンの教育への投資を決断させます。ヘレンはタバコの煙で、トウェインに気づいたそうです。

2:秋田犬をアメリカに紹介していた

1930年代にヘレン・ケラーが来日した際、ある警察官がヘレンに神風号という名の秋田犬を贈り、彼女はすっかり神風号のとりことなってしまいます。神風号は渡米後すぐに亡くなってしまいましたが、日本政府は神風号と同じ血筋の秋田犬をヘレンに贈りました。そしてヘレンは秋田犬という犬種をアメリカに持ち込んだ最初の人となったのです。

3:ヘレン・ケラーは文学の学位を取得した初めての視聴覚障がい者となった

ヘレンは視聴覚障がいを持った者としては初めて、文学士としての学位を取得した人物です。彼女は、点字を用いてフランス語やドイツ語、ギリシャ語、ラテン語などを読むことが出来たそうです。

三重苦を乗り越え、知的好奇心と前向きさとで生き抜いたヘレン・ケラーの自伝

ヘレン自身が残した自伝『奇跡の人 ヘレン・ケラー自伝』です。本書では、若いころにスポットを当てて、三重苦を乗り越えてラドクリフ女子大学に合格するまでの軌跡や、それにまつわる心情をつづっています。

光も音もそして言葉もない世界の中で、人がどのような思考をめぐらすかについて、当事者として書き残しています。その一方で、その三重苦の状態を何とかしようと奮闘した前向きな部分や負けず嫌いなところも随所に出ていて、小気味のよさすら感じられるほどです。

著者
ヘレン ケラー
出版日
2004-07-28

三重苦を乗り越え、知的好奇心とたゆまぬ努力によって名門大学への進学を勝ち取った彼女のストーリーは、読む人の心にも多くの感銘を与えます。一見すると自分自身の力ではどうしようもない状況であっても、考え方と努力次第でどうにでもなるということを、ヘレン自身が教えてくれるのです。

障害を乗り越え、知性と正義感に満ちた波乱の生涯を突き進んだ彼女に会いたいというのであれば、この本は必読です。

大人にも子供にも響いてくる、障害を克服した愛

本書は、児童書という形でヘレン・ケラーの生涯を描いたもので、いわゆる小学校や中学校の図書室に置いてあるような伝記です。非常にわかりやすく、子供たちの目線でヘレンの生涯を理解できるでしょう。

子供たち向けでわかりやすさに配慮しているためか、ヘレンが三重苦を背負ったのが生まれた際に熱を出したという設定になっています。彼女が三重苦を背負った経緯よりも、いかにしてそれを克服していったかに力点が置かれているためでしょう。

著者
山口 正重
出版日

三重苦を克服する過程については、彼女が出会ったサリバン先生の愛の力が重要な要素として描かれています。実際のヘレンの生涯でもサリバンの存在抜きには、障害を克服することも、世界的な社会運動家としての活動もありえませんでした。本書を読んだ子供たちの心に、サリバン先生のヘレンに対する愛が響き、「愛とは何か」や「不可能はない」ということについてやさしく教えてくれます。

大人にも子供にも、ぜひとも読んでいただきたい一冊です。

日本の親友によって訳されたヘレン・ケラーの自伝

こちらもヘレン自身の自伝である『わたしの生涯』。1章の「暁を見る」では彼女の生誕から大学の卒業までについて、2章の「濁流を乗り切って」と3章の「闇に光を」では大学卒業後のヘレンの社会運動家としての活動について書かれています。

ちなみに本書の訳者である岩橋武夫は、20世紀前半に活躍した日本の社会事業家で、ヘレンの日本での講演活動を陰で支えた人物です。そして、日本における彼女の親友ともいえる人物でした。

著者
ヘレン・ケラー
出版日

この本ではまず、ヘレン自身が障害の中で触覚や嗅覚などによって自ら感じたことや触れたものについて書いています。そのためか本書を読むと、盲人でなければ到底理解できないようなものの感じ方を彼女自身がわかりやすく教えてくれているような心地になるのです。

社会運動家としての活動について書いている部分では、当時の社会における問題(特に障害者関係の問題)について語っています。そのうえで、障害者を特別扱いや理想化するのではなく、普通の人間と同様に社会で活躍できるように支援すべきという主張が随所に盛り込まれており、現代の障害者問題について考えさせられるものです。

分量は500ページと多めで、なかには遠回しな言い方もありますが、彼女自身の体験した感覚を存分に味わったり、彼女の取り組んだ社会問題についての理解を深めたりすることができる一冊になっています。

生涯の友であり、師であるサリバンから見たヘレン・ケラーの成長の記録

ヘレンの三重苦を教育によって克服していく過程を通して、障害を持った子供にも教育を施すことが十分に可能であることを立証しているのが『ヘレン・ケラーはどう教育されたか―サリバン先生の記録』です。ヘレンの師であり、生涯の友であったサリバンの視点で書かれています。

本書のベースとなっている資料は、サリバンが残した手紙。そこには、彼女とヘレンとのやり取りや、ヘレンが急速に進歩していくさまなどが記されています。

著者
アン サリバン
出版日

本書にはヘレンとサリバンとの生活の様子が描かれています。その中でサリバンが、いかにしてヘレンの好奇心をすくいあげ、一人の深い知識を備えた女性としての誕生に大きく貢献したかを知ることができるでしょう。

一見すると、障害者教育に携わる者に対して多くの教訓や示唆を与えるための本にも見えますが、それだけにとどまらず、どんな子供の教育においても様々な気づきや発見をもたらしてくれるものです。

ヘレン・ケラーの宗教観を知るのに最適な一冊

ヘレン自身が自らの宗教観について記した本です。ヘレンの宗教観という、彼女の生涯の中でもなかなか知られることのない要素をこの本では取り扱っています。

サブタイトルに出てくるスウェーデンボルグという人物は、霊界を探索し、そこにいる天使との会話などに関する膨大な記録を残した人物です。そして、ヘレンはこのスウェーデンボルグの思想の信奉者でもありました。

著者
ヘレン ケラー
出版日
2013-12-26

本書では、ヘレンが自らの内的世界を、スウェーデンボルグの思想を通じてどのように形成していったかが彼女自身の筆で克明に語られています。彼の思想がヘレンの宗教観にどのような影響を与えたのかについても記されており、その点でスウェーデンボルグは、サリバンと同様にヘレンの考え方に大きな影響を与えた人物であることが理解できるはずです。

霊と聞くと人によってはおどろおどろしい存在であったり、オカルトのようなイメージを持ったりするかもしれませんが、本書はヘレンの宗教観を通じて霊というものについて深く考えさせられる一冊といえます。

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