「本屋から始まる恋」をたのしむ5つのストーリー

更新:2021.12.2

こんにちは。もうすぐ春ですね。新生活の準備に追われている方も多いこの季節。見慣れない街並みでも本屋さんの看板を見つけてホッとしてしまうのは本好きあるあるでしょうか。 今回は一足先に春の訪れを味わいたい方に、書店員さんが恋する本をまとめました。

ブックカルテ リンク

ご希望の書物の数々、決して忘れているわけではございません。

インターネットのない時代、絶版本をどうしても手に入れたかったら?

1949年10月5日、ニューヨークに住む女流脚本家のヘレーンは新聞広告を頼りにロンドン古書専門店へ一通の手紙を書きました。チャリング・クロス街84番地マークス社宛て。古書店員のフランクからの返事は期待してください。ヘレーンとフランクは互いの声さえ知らなくとも、ユーモアと本を手にする喜びを分かち合いました。本書は20年の歳月に渡って続いた注文書、ある種、ラブレターともいえるやりとりで構成された幸せな一冊です。

 

著者
出版日
1984-10-10

本屋は戦場!?

Wヒロインの本作。ペガサス書房吉祥寺店に務める理子(40歳)と亜紀(27歳)、恋に仕事に全力投球の姿は青春の真っ只中というところ。売り上げを伸ばすため物語の後半はPOPや戦略が随所に登場する中で、見逃せないシーンもありました。

バックヤードで居残り作業中の亜紀と年上の書店員、三田孝彦。愚痴っぽい亜紀をなだめるように三田は言います。「ただの印刷物がちゃんと本や雑誌になるのは、人に関心を持たれたり、読まれたりするからじゃないかと思うんだよ。俺たちがこうして一冊一冊触って、書棚に置けるようにしてはじめて雑誌は雑誌になる、そんな気がするんだ」と。この言葉で亜紀は三田へ惹かれはじめるのですが、こんなロマンチックな話をされたら惹かれる気持ちもよく分かります。

 

著者
碧野 圭
出版日
2012-03-29

彼らの思い出の一冊

ベテラン書店員・田口久美子さんによるリブロ池袋本店のノンフィクション回想録です。一世を風靡した80年代当時のセゾンや、リブロの歩みと業界、ベストセラーの変遷を辿っていきます。

リブロ登場以前、本というものは「大体の場所に(本を)突っ込んでおけば客が探してくれる」ものだったり、イベント・ブックフェアの先陣を切っていたりと興味深い話が満載です。さらに、小さな書店の手書きPOPからべストセラーになった『白い犬のワルツ』のエピソードは私も知るほどに有名ですが、本書の中で「そういえば『白い犬……』の昭和堂店長と、新潮社の担当営業部員が結婚したという噂を聞いた。うーん、色恋絡みだったんだ」なんてひそやかな恋の噂も。真偽はさておき、彼らの思い出の一冊であることも間違いないでしょう。

 

著者
田口 久美子
出版日

本が生き物だったなら

本が生き物だったなら本屋さんの中にそれぞれお気に入りの場所があるのだろうと思いました。「本が本を呼び、本が棚を呼び、棚が書店を作る」哲学は、にぎやかな場所が似合う本も、物静かな場所が似合う本もあると気付かせてくれます。神保町にある東京堂書店の元店長が書いたエッセイ集を読むと、2012年改装前の店舗の落ち着いた小ざっぱりとした雰囲気が思い出されてきました。

読んでいて楽しかったのは著者の佐野さんが忙しい時間帯、新刊営業をやりすごすのに「佐野さん、どこいったんだ」「佐野さんいないよ」といいながら当の本人が逃げてしまうエピソードでした。書店員さんが本に恋してしまうと、本といる時間を優先されてしまうのですね。

 

著者
佐野 衛
出版日
2012-09-25

本のある人生を

物語の主人公に運命的な出来事はふいに訪れるもので、書店主のフィクリーにとってもそれは同じでした。連れ添いの妻が亡くなったことも、新刊営業に来たアメリアに最低な第一印象を与えたことも、最も価値のある稀覯本は盗まれたことも、本屋に2歳になる少女マヤが置き去りにされていたことも、フィクリーには予想できなかったはずです。その思い出を深く語るのではなく、フィクリーは愛する数々の短編集に託しました。目次代わりに書かれた解説文もまた、本とともにある人生が愛にあふれることを願ってしまいます。

 

著者
ガブリエル・ゼヴィン
出版日
2015-10-22

ラジオから流れた定番のヒットソングは、ラブ・ストーリーが突然に始まってしまうことを教えてくれました。友情、愛情、絆、すべてを包み込んでしまうラブ。『あの日、あの時、あの場所で……』運命を信じずにはいられない瞬間が人生にはたびたび訪れます。たとえばなじみの本屋さんの平台で、はっと目に飛び込んでくる一冊がありませんでしたか。それは人生を変えてしまうラブ・ストーリーのきっかけかもしれません。

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