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中原昌也のおすすめ本5選!小説と作業日誌

更新:2017.5.29 作成:2017.5.29

音楽家、映画評論家、小説家、イラストレーターなど複数の肩書きを持ち、ジャンルの垣根を超えて世界を舞台に活躍を続ける中原昌也。彼の才能を感じられるおすすめ5作品をご紹介します。

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ジャンルの垣根を超えて活躍する小説家、中原昌也

1970年に東京で生まれた中原昌也は音楽家、映画評論家、小説家、イラストレーターなど複数の肩書きを持ち、世界を舞台に活躍している才能にあふれた人物です。

彼は高校中退後に音楽活動をはじめ、その後並行して雑誌『映画秘宝』などで映画評論を手掛けるようになります。以降ジャンルの垣根を超えて鋭い感性を生かした作品を発表し続ける彼ですが、小説家としてデビューしたのは1998年。『文藝』誌面で連載した『絶望の散歩道』がきっかけでした。2001年には著者初の長編小説『あらゆる場所に花束が……』で三島由紀夫賞を受賞、2006年には『名もなき孤児たちの墓』で野間文芸新人賞を受賞するなど、その実力は本物です。また彼の多岐にわたる活動経験から書かれた『作業日誌』は2008年のBunkamuraドゥマゴ文学賞を高橋源一郎の選により受賞し、各界を沸かせました。

独特の感性を持ち、様々なシーンで自由な活動を続ける中原昌也。今回は彼の小説家の面に着目して選んだおすすめ5作品をご紹介します。

三島由紀夫賞受賞作『あらゆる場所に花束が……』

最初にご紹介するのは2001年に三島由紀夫賞を受賞した中原昌也の代表作『あらゆる場所に花束が……』です。三島賞の選考時、選考委員の一部には猛反発を受けたものの島田雅彦と福田和也からの強い支持を受けて受賞が決まった問題作であり、好き嫌いのわかれる作品であることは間違いありませんが、独特の世界観がクセになる読者も多いはず。著者の才能やセンスを突きつけるように描かれた挑戦的な作品ですので、最初に読む中原昌也作品として絶対におすすめしたい1冊です。
著者
中原 昌也
出版日
2005-04-24
「「何とかしろ。何ともしようがないのなら、死ねばいい」青臭い匂いよりは血の匂いの方がマシだ、とばかりに小林は地味な灰色の縞模様の入ったTシャツに包まれた巨体を揺さぶりながら、パンタロンのズボンからはみ出た足でいきなり蹴った。気合の入った一撃。」(『あらゆる場所に花束が……』より引用)

物語は「徹也」という男が「醜いアヒルの家」という奇妙な研究所で巨体の男「小林」から一方的な暴力を受けるシーンから始まります。

中原昌也が楽しげに描写する、アングラ映画のような世界観。おかしな登場人物たちの支離滅裂な言動でストーリーは次々に展開していきますが、そのあまりの脈絡のなさに読者は困惑させられることでしょう。しかしブラックユーモアに富み、一手先も読ませない彼の筆は読書に親しんだ者にとって大変面白く感じられるため、どんどん頁を捲らされてしまいます。ある種の中毒性を持った作品なのです。

妄想と殺意、そして性欲に取り憑かれ、意味不明な言動で複雑に絡み合う明らかに異常な登場人物たち。あなたはそれを、楽しめるか?ノイズミュージックやカルト映画に傾倒した"異才"中原昌也に、読者は試されます。是非読んでみてください。彼の凄さがわかるはずです。

中原昌也節全開の傑作作品集『名もなき孤児たちの墓』

次にご紹介するのは2006年に野間文芸新人賞を受賞した『名もなき孤児たちの墓』です。各文芸誌に掲載された短編小説をまとめた作品集ですが、著者の持ち味を遺憾無く発揮した作品が揃ったかなり濃厚なラインナップとなっているため、前にご紹介した『あらゆる場所に花束が……』同様、読者を選ぶ内容の1冊といえます。

また本作は第1部と第2部に分かれており、第2部には芥川龍之介賞候補に挙がった中編小説「点滅……」が収録されています。こちらは混沌の中に著者の文学観が垣間見られるような内容となっているため、彼の筆に魅力を感じる読者には一読の価値がある作品です。
著者
中原 昌也
出版日
2010-04-09
1部に収録されている15の短編小説のタイトルをあげてみましょう。「私の『パソコンタイムズ』顛末記」「彼女たちの事情など知ったことか」「女たちのやさしさについて考えた」「美容室「ペッサ」」「典子は、昔」「憎悪さん、こんにちは!」「鼻歌で歌う君の名は」「記憶道場」「傷口が語る物語」「血を吸う巨乳ロボット」「女とつき合う柄じゃない」「ドキュメント 授乳」「ドキュメント 続・授乳」「名もなき孤児たちの墓」「大集合!ダンサー&アクターズ」。タイトルを見ただけではまったく内容が予想できないと思うに違いありませんが、同時に一目見ただけでアングラの匂いが強く漂ってくるような、力のあるタイトルだとも思います。

中原昌也節全開の、常軌を逸した、可笑しな話ばかりが揃った作品集。なんと言っておすすめしたらいいものかは正直よくわからない1冊ですが、倒錯的な内容の物語でこんなにも読者を惹きつける著者の才能には感動すら覚えます。気になる方は是非、手に取ってみてください。

支離滅裂なストーリーに乗せた中原昌也の思考『知的生き方教室』

意味不明、しかし文句なしに面白い中原昌也の長編小説『知的生き方教室』。「知的」「生き方」「教室」とお行儀の良い単語を並べたタイトルの通り、作家としての彼の苦しみから抽出された「知的な生き方」を論じるように描かれた物語のようなのですが、そのアプローチの仕方が中原昌也的としか言いようがなく、一方的で痛快で、大変面白く感じられる傑作です。連載小説のためかなりのボリュームがありますが、テンポが良く勢いで読み進められる1冊だと思います。
著者
中原 昌也
出版日
2014-11-25
「これ以上、刺激的なことなんてないはずでしょう! とにかく人がびっくりするような派手なコスプレして、ありえないって状況でセックスするって、最高じゃないですか?」(『知的生き方教室』より引用)

冒頭の話題は「コスプレでセックス」。いきなり、中原昌也節全開です。物語はある小説家がAV女優のインタビュー記事を繰り返し読みながら文学ついて考えるところからはじまり、様々な人物が勢い任せに登場。彼らの可笑しな言動によって軽快なテンポでストーリーが展開していきます。

本作には「公序良俗や良心、常識といったものはとりあえず横に置いておいて」ものを言ったり行動したりする人物が多数登場し、彼らの言動が化学反応の連鎖を生むようにしてストーリーが進んでいきます。この一見支離滅裂なように見える「ストーリー」を通して、読者は彼らを描写する中原昌也の思考を辿ることができるようなしくみになっているようなのですが、実際にそれをするのは非常に困難。著者のキレる頭には誰も敵うはずがありません。しかしここが、本作に、そして中原昌也にハマるポイントなのだと思います。

まずは何も考えずに、読んでみてください。鬼才と呼ばれる著者による思考の濁流に飲まれた後、きっとなにかを掴みかけたような気持ちになるはずです。それがわからないから、彼の作品を読みたくなる。中原昌也にハマるきっかけになる1作です。

中原昌也のルーツを知る『中原昌也 作業日誌 2004→2007』

次にご紹介するのは2008年にBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞した作品『中原昌也 作業日誌 2004→2007』。「クリエイティブに生きるためのライフスタイル・メンズファッション・カルチャー情報誌」と銘打った人気雑誌「EYE SCREAM」誌上で連載されていた「親指王子ケイタイ日記」より、中原昌也による2004年から2007年までの日記をもとに構成された1冊です。雑誌未掲載分も含めると約3年半分にものぼる作業記録は彼の感性や作品のルーツを感じられる非常に興味深い内容となっています。
著者
中原 昌也
出版日
2008-03-27
文学界で鬼才と呼ばれる彼の素顔を垣間見られる良作だと思います。本書に記された著者の暮らしぶりですが、彼はとにかく「よく買う人」のようで、ギャラの多くをCDやレコード、DVD、本などに費やす様子が全編を通して描かれています。日記には購入したそれらのタイトルが感想とともに膨大な数記録されているため、彼の感性や作品のルーツを知るガイドとしてこれ以上適した本はないでしょう。

また一般人が名前を聞いたこともないようなマニアックな作品がおびただしい数掲載されていることからも、留まるところを知らない彼の知的好奇心が幅広い芸術分野で活動する彼の創作意欲の糧となっていることが伝わってきます。彼の得意分野であるカルト映画やノイズミュージックに関する記述も多く、中原昌也ファンなら絶対に興味をそそられること間違いなしの必読書。読めば彼の小説だけでなく、音楽や映画評論にも手を伸ばしてみたくなるかもしれません。是非読んでみてくださいね。

自然体で語られる『死んでも何も残さない―中原昌也自伝』

インパクトのあるタイトルで読者の興味を惹く中原昌也の自伝『死んでも何も残さない』。本作は出生から彼が文藝誌に小説を発表するのをやめるに至るまでの自伝、とのことですが、その内容は堅いものでは決してなく、著者による談話をもとに編集部が構成した、いわば「中原昌也の自分語り」的な作品となっています。自然体で語られた生い立ちや思想、価値観は大変興味深く、ファンなら必読の1冊です。
著者
中原 昌也
出版日
「誤解されているようだが、僕は別に、批判されて腹を立てているわけではない。作品についていわれるなら、「タイクツ」「繰り返し」「垂れ流し」なんて文句をいわれたって、別に気にしない。」(『死んでも何も残さない―中原昌也自伝』より引用)

彼は本作の第1夜「気づいたら満州引揚者の息子」の序盤「ただいま断筆中」という項でこう述べ、文藝誌に対する批判と小説を書いて暮らしてゆくことの苦悩を語っています。すべての連載を終えた彼は、文藝誌に小説なんてもう書くもんか、というようなことまで言っていますが、彼の自伝を読み進めていくとなぜだか逆説的に、彼に取り憑いた「表現しなくてはならない」というような強迫観念、もしくは深い業のようなものを感じ取らされます。

どうして彼が文学界で「鬼才」と称され、作品が問題作扱いされるのか。彼は彼自身とどう向き合い、表現活動を行なってきたのか。彼はこの自伝の中で、自然に自分を語ってくれます。

彼について知ることで、彼の過去作品への愛が一層深まること間違いなしの1冊。独特のセンスを持つ中原昌也の自伝なだけあって、読み物としても大変面白いです。是非手に取ってみてくださいね。

いかがでしたでしょうか。今回は多彩な才能を活かして世界を舞台に活躍を続ける中原昌也のおすすめ5作品をご紹介しました。独特の世界観を持った彼の小説や日記は大変面白いため、読めば読むほどクセになってしまうかもしれません。是非チェックしてみてくださいね。