文章読本
日本人が日本語の文章を書く心得が記されている一冊なのですが、その国の言語と国民性については切り離せないものがあるからに、日本語について語られる中で見えてくる東洋の人々の性質が面白い。
‘’我等は昔から能弁の人を軽蔑する風があった’’(本文より)とある様に、元々はおしゃべりに適しないように発達した日本語とのことなのですが、今では漢語や、西洋の言葉を翻訳した翻訳語等語彙が豊富になったことで、どちらが先か、国民性にも影響が及んでいるような気もする。私はおしゃべりだし。
古くからある日本人の美徳にも、偶には立ち返りたいものだなぁと本書を読むと、改めて思わされます。
のんのんばあとオレ
“妖怪は、むかしの人の苦しい生活を物語っているものもあれば、古いむかしからの人間の恐怖が妖怪と化したものもあります。”(本文より)
日本民話など、古代からの伝承が豊かな出雲の国島根県で育った水木しげるさんの、少年記。‘‘のんのん’’というのは、神仏に仕える人のことをそう呼んでいたそうで、幼少期の筆者に、年中行事やお化けとか不思議な話をしてくれたのが本書タイトルの、‘‘のんのんばあ’’。のんのんばあの妖怪話は、昔ながらの日本の風景を見せてくれる。この本を読みながら、まるで自分自身が、のんのんばあの話を聴いているような感覚になれて心愉しい。
癇癖談
伊勢物語のパロディの体をとって書かれた江戸時代の戯文小説の現代語訳。ひとごとにひとつのくせという、昔の諺にある様に、あらゆることには癖がある。そんな癖ある人びとの、短いエピソード達が並ぶことで当時の日本の世相が浮かび上がってくる。
“むかし、あまり思慮ふかくもない人が、世の中のことをこころえがおにいうには、たいがい世間でもてはやされないことはその業のよくないせいだと、高飛車にきめつけた。”(本文より)の一節から始まる流行りものの風刺等からは、今も昔も変わらない人間の性が見える。そして個人的には時々挟まれる作者の容赦ない毒舌が痛快で好きなのです。