社会を良くするNPOについて学ぶための4冊

更新:2016.5.9 作成:2016.5.9

近年、「社会起業家」や「ソーシャルビジネス」という言葉をメディア上で耳にすることが多くなってきました。これらは、社会問題の解決を一義的な目的とする組織や活動のことを指す言葉です。所与の前提としての経済成長が失われ、少子高齢化が進み、財政が逼迫している日本において、今後、NPOの活動はより重要な位置を占めることになるでしょう。今回は「社会を良くするNPOについて学ぶための本」を紹介したいと思います。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

まずは何よりこの本

と、堅苦しいことを書きましたが、そんなことはさておき、まずこの本『「社会を変える」を仕事にする』を読みましょう。何よりも、読み物としてめっぽう面白い。きっと、読み始めると、その語りに魅了され、読み切ってしまうことうけあいです。それだけの熱量とスピード感がこの本にはある。

著者の駒崎さんは病児保育の「フローレンス」代表であり、NPO業界のフロントランナーの一人です。この本を読めば、駒崎さんの「ストーリーテリング」が、日本のNPO業界を牽引してきたことが分かると思います。
 

著者
駒崎 弘樹
出版日
2011-11-09

「何とも言えない手触り」

もう一人のフロントランナー、工藤啓さんの著作『大卒だって無職になる』は、何とも言えない手触りを持った本。工藤さんが代表を務める「育て上げネット」は、「すべての若者が社会的所属を獲得し「働く」と「働き続ける」を実現できる社会」をビジョンに掲げる若者支援のNPOです。この本は2012年の10月に出版されていますが、私が読んだのは2013年。毎年、その年に読んだ本にランキングをつけるのですが、この本は2013年に読んだ本の中で5つ星を獲得。それくらいのインパクトがありました。

「何とも言えない手触り」と書きました。「優しい手触り」と表現したいような気もするのですが、それだけでは何か大切なものを表現しきれていないような気がするので、「何とも言えない手触り」と、とりあえず呼んでおこうと思います。「社会問題を解決する!」と肩に力の入ったものではなく、手を差し伸べるその手つきが、何とも言えない質感を持ち、それが行間から伝わってきます。きっとこの人たちが目指す社会は、誰にとっても住みやすい社会なのではないか、そんなことを感じる読後感です。
 

著者
工藤啓
出版日
2012-10-31

「ゼロ距離」から生まれたNPO

現在の日本のNPOについて知ろうと思えば、創業者の本を読むのが一番。なぜなら、NPOの活動には、その創業者の「原体験」が色濃く反映されているからです。

『みんなに必要な新しい仕事』の著者・吉岡マコさんの運営する「マドレボニータ」は産後ケアを扱うNPOです。創業者の吉岡マコさん自身がシングルマザーとして出産を経験し、その後の苦労の中から「マドレボニータ」の活動は開始されました。ある意味で、創業者自身が「当事者」であったということです。よく「半径5メートル」から、ということが言われますが、マドレボニータの活動はむしろ「ゼロ距離」から生み出されたもの。しかし、身近であるから簡単であるということではありません。むしろ、この本を読めば、その「ゼロ距離」から問題を対象化することの苦労が綴られています。

著者
吉岡 マコ
出版日
2015-10-30

「想い」を形にする「戦略」

ここまで紹介してきた本は、NPO創業者たちの「想い」がこもったものです。NPOの活動が、「共感」を前提に成り立っているということを考えれば、それは当たり前のことだと言えるでしょう。しかし、「社会問題の解決」はそのような「想い」だけでは成し得ないものです。そこで、NPOの「戦略」を書き記したものを最後に紹介したいと思います。

『社会を変えたい人のためのソーシャルビジネス入門』は1冊目に紹介した『「社会を変える」を仕事にする』の駒崎さんの著作。惜しげも無く、NPO運営のノウハウが、これでもか、これでもか、と紹介されています。それも相当に細かいところまで。例えば、創業者が事業を従業員に引き継いでいく場合、創業者がマニュアルを作るよりも、引き継がれる側の人間が経営者に聞き取りを行い、文書化するほうが効果的だ、というようなところまで紹介されています。この本はNPOに限らず、事業を起こしたいと考えている人、全てに参考になるものではないでしょうか。
 

著者
駒崎 弘樹
出版日
2015-12-16

社会問題の解決には、ここまで紹介したような最前線で問題と格闘する人が当然必要です。しかし、それだけではなく、直接・間接、様々な形でその活動を共感を持って、応援してくれる人たちも必要です。これらの本を読むことで、少しでもこのような活動へと関心を持ってくれる人が増えることを祈りつつ。