『外道の歌』が胸スカ!ダークなハードボイルド漫画の魅力をネタバレ紹介!

更新:2020.12.17 作成:2017.5.31

『善悪の屑』の続編である『外道の歌』。善悪とは何か、人と人との繋がりとは何かを考えさせられる力のこもった作品です。今回はそんな本作の魅力をご紹介します!ネタバレを含みますのでご注意ください。

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『外道の歌』は前作が有害図書指定!?

著者
渡邊 ダイスケ
出版日
2016-08-08

犯罪を犯しながらも適当な処罰を受けず、反省もなくのさばっている者たちを被害者に代わって裁きを下す「復讐屋」のカモとトラ。ふたりのハードボイルドな様子と、犯罪に関係した周囲の要因が丁寧に描かれた作品です。

『外道の歌』は、『善悪の屑』の続編で、内容の趣旨的にさほど変わることはありませんが、謎に包まれた主人公のひとり・カモの過去が本作でやっと明かされます。また、それ以外の話でも事件にたどり着くまでの犯人の様子、事件後の被害者の様子がしっかりと描かれている、読み応えのある作品です。

ちなみに『善悪の屑』は東京都の不健全図書に指定されたことでも知られています。残虐性の強いシーンが多く、私刑を正当化しているように見えるということで、青少年の成長過程で読むにはふさわしくないとされたのです。

しかし有害図書指定されたにも関わらず、人気がどんどんと出てきた本作。それはいたずらに暴力シーンを見せ場にしたり、私刑を正当化したりしている訳ではなく、それなりの理由や葛藤がある様がしっかりと描かれているからでしょう。

過激なタイトルと内容で話題になったシリーズですが、きちんと心理描写がなされた良作なのです。

 

被害者側の視点がリアルで引き込まれる!

著者
渡邊 ダイスケ
出版日
2016-12-26


前作でも依頼者となる事件の被害者側の視点が丁寧に描かれてきましたが、『外道の歌』の幕開けはカモもまた被害者であったという過去回想から始まります。カモは日曜日という名前の猫を連れていますが、その名前の由来は彼の過去にあったのです……。

4年前、カモは団地に住み、建築関係の仕事をしている普通の男でした。まだまだパパに甘えたい盛りの可愛い娘・里奈と、仲のいい妻と幸せに暮らしていたカモ。

ある日、娘のおねだりで新しい家族の一員としてカモは猫を家に連れてきます。里奈は大喜びでその子を出迎え、日曜日という名前をつけました。

猫をもらってきたのは水曜日だったので不思議に思うカモに、妻が里奈は日曜日が好きだからと言います。仕事でいつも夜遅く帰ってくる父親が、日曜日はずっと一緒にいられるから、と。

それを聞いたカモは失くなった父親が営んでいた本屋を継ぐのもいいかもしれない、と妻に話します。

「そうすりゃ毎日が日曜日になるぞ〜〜〜里奈!」

しかしそんな平和な日々は突如崩れ去ります。通りすがりの男に家に押入られ、妻は性的暴行を加えられた上に殺され、特に里奈はひどい暴行を加えられてから殺されていたのです。

ふたりを亡くしてしばらく抜け殻のようになっていたカモ。実は彼は中学生の時に母親を亡くしていました。それによって人一倍家族を失うということを恐れていた彼。その悲しみと恨みは計り知れないものがあります。

そしてカモは妻と娘を殺した犯人に復讐することを決め、人間ではなく「屑」となることを決めるのです……。

加害者の犯罪の過程に泣ける!

被害者側の気持ちを丁寧に描く本シリーズですが、『外道の歌』では、カモの過去回想のあとに加害者側の視点での話がしばらく続きます。それは加害者側にも理由があると感じずにはいられないものです。

とある地方の片田舎で母子家庭のひとりっ子として育った真理江。母親とはあまり仲が良くなく、話しかけてくる彼女に真理江はそっけない態度をとります。

しかも母親は仕事でほとんど家におらず、狭くてさびれた部屋でいつも真理江はひとりでご飯を食べていました。そんな彼女が高校時代から抱いている夢は都会で成功すること。そのために朝早くから夜遅くまで勉強し、第一志望の大学に合格、そのあとも一流企業の就職を決めます。

その会社でも、独立しようとしている優秀な男性にプロポーズされて結婚。しばらくして第一子をみごもり、立派な病院でその子を産みます。

しかし数年経って夫の事業が徐々に傾いてきました。真理江はプライドを捨ててスーパーでバイトをしますが、その努力がかみ合わず、ふたりは喧嘩ばかり。しかもそのバイトのせいで娘は家でいつもひとりきりで過ごすしています。

真理江が自分の娘に接している様子はかなりひどいもの。しかし彼女自身もそんな環境で育ってきたのでそれが普通なのです。

ストレスで眠れず、大量の薬を飲んで精神状態がかなり異常になっている時、真理江は娘が園で仲間外れにされていることを知ります。彼女はそれに気づいた時、自分の分身のような存在である娘を否定されるのは、自分の人生を否定されているのと同じだと憤りを感じるのです。

そして「絶対にゆるせねぇ」とつぶやき、もともと折り合いの悪かった母親がその主犯だと気付きながらも、復讐の矛先をその母親の子供に向け……。

『外道の歌』の雰囲気を作品で味わおう!

著者
渡邊 ダイスケ
出版日
2017-04-24

人と人の関係性や善悪について考えさせられる『善悪の屑』と『外道の歌』。新たな続編『外道の歌』ではカモの過去が明かさ、ファンにはたまらないものとなっています。

もちろん続編からでも十分に楽しめる内容なので初見の方にもおすすめ。ダーティーヒーローの活躍に胸がスカッとするのと同時に、心に沁みてくる心理描写に引き込まれること間違いなしです。

また、本作の3巻を楽天マンガで購入すると、特典として作者・渡邊ダイスケのコメント付き描き下ろしイラストがついてきます。ぜひこの機会に作品を読んでみてください。


『外道の歌』については<『外道の歌』の見所全巻ネタバレ紹介!映画化の原作漫画、骨太な魅力に迫る!>の記事でも詳しく紹介しています。気になる方はあわせてご覧ください。