シンプルなのに奥深い焼き菓子の本

更新:2021.12.13

こんにちは!  さて、皆さんはレシピブックを買ったことはありますか? 人生で初めて買った料理本は何だったか覚えていますか? 私は子供の頃、両親の本棚から気になる料理本をあれこれと引っ張り出しては眺め、その後最初に買ったのはお菓子作りの本だったような。 そんなことを思い出して料理本をおすすめする本棚の4回目はお菓子の本です。中でも今ちょっとしたブームの「焼き菓子」にスポットを当てました。個人的に一番好きなお菓子なのでセレクトに迷いつつ、お店やイベントで話題の焼き菓子を作る5人の本を紹介します。

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組み合わせにしびれるマフィン。

焼き菓子って、例えば粉、バター、砂糖、そして卵や牛乳などのシンプルな組み合わせ。そこに果物やスパイス、様々な素材が加わってくるのだけど、レシピの作り手がどんな食感にしたいか、どんな色合い、味わいにしたいのかによってググっと大きく出来上がりが変わります。だからレシピブックは、作り手の感覚や頭の中をちょっぴりのぞかせてもらっているような感じもするのです。

1冊目に紹介する『ニューヨークスタイルのマフィンとケーキ』には西荻窪に「Amy’s Bakeshop」というお店を持つ吉野陽美さんの食べた時にはっとするような組み合わせのマフィンが登場します。それはブルーチーズフィグソルト! チーズ味に、甘さと塩味のバランスがやみつきになる味です。ほかにも表紙からも伝わってくる通り、素朴で元気いっぱいなアメリカンベイキングのマフィンやケーキのレシピが登場します。表紙の美しい紫はブルーベリー。他にチョコレートラズベリーやサワークリームアップルシナモン、グリーンティーケーキなどみっしりと芳醇な世界が広がるレシピばかりです。
 

著者
吉野 陽美
出版日
2016-01-26

衝撃のキャロットケーキ。

次に紹介する『やさいの焼き菓子』はその名の通り、いろいろな野菜を使ったお菓子の本です。お菓子教室tiroirを主催し、二児の母でもあり、時々イベントなどで出合える高吉洋江さんのこの本は、表紙のキャロットケーキから生まれたという1冊。私が最初に食べたtiroirのお菓子もキャロットケーキでした。

生地の上に白いフロスティングがのったこのケーキ、最近ちょこちょこあちこちのお店で見かけますが、高吉さんの作ったケーキを食べて衝撃! 最初の一口目で「うわっ、おいしい!!」ちょっとざくざくした食感、上のフロスティングとの絶妙な味のバランス。ひとえにキャロットケーキといっても、どれくらいの人参をいれるのか、合わせる食材は? 甘さのバランスは? などレシピは数えきれないほどあります。

ほんとうに作り手それぞれの味わいがあり、自分の大好きな味に出合えたら、とても幸せな気分になれると思います。他にもしょうがにごぼう、とうもろこし、枝豆、アボカド、れんこんなど、野菜ごとにお菓子のレシピが紹介されていて、発見の多い1冊です。

著者
高吉 洋江
出版日
2015-09-18

チーズの味わいにおぼれるチーズケーキ。

こちらも時々アトリエで、時々イベントで、そしてオンラインショップなどで出合えるお菓子、『アトリエ・タタンのチーズケーキ』です。

チーズケーキっていろいろな種類がありますよね。ベイクドタイプ、レアチーズケーキ、スフレなど。家の近くにタタンのお店が会った頃、初めて食べた渡部まなみさんのチーズケーキは、みっしり!! 羊羹の餡のように、ケーキそのものがチーズのような、でもしっかりケーキ、という感じに驚きました。普段はカフェオレにするコーヒーをエスプレッソにして楽しんだり、ワインにも合いそうなチーズケーキです。

あまり見たことがないような、表面が真っ黒に焦げたバスクのチーズケーキ、黄色いチーズの中にちらりと見える紫色がきれいなアルザスのサワーチェリーチーズケーキなど、作り方も非常に丁寧な、1冊まるまるチーズケーキのレシピブックです。

著者
渡部 まなみ
出版日
2014-09-20

焼いたりそのままのせたり、フルーツタルトいろいろ。

『ひなた焼菓子店のタルト フレッシュ&ベイクド』は、その昔は町田で、後に東林間でお店を開いていた(現在は移転準備のため閉店中)行列のできるお店。中でも人気だったのが彩り豊かなフルーツのタルトでした。

著者
森 和子
出版日
2014-12-25

私は焼き菓子のザクザクとした食感と味が好きなので、ケーキの中でもタルトやパイが大好き。でもこの本を開くと、同じフルーツでもフレッシュなままトッピングするタイプのタルトと、生地にのせて焼き込むタイプのタルトが見開きで紹介されていて、見ているだけでも味への妄想が膨らみます。
おいしそうなきつね色の多い焼き菓子ですが、飾り気がなく、シンプルだからこそ、作り手の個性が際立つのかもしれない……そんなことをこの本のページをめくると感じます。

生地の中にちょっとしたスパイスや違う食感のものがしのばせてあったり、トッピングの組み合わせに工夫があったり。お店で食べたことがある人もない人も、著者・森和子さんの考えるおいしい味、おいしいタルトに出合える1冊です。

1冊で、焼き菓子を網羅?!

最後の1冊は『くろねこ軒の焼き菓子Recette』です。マフィン、野菜のお菓子、チーズケーキ、フルーツタルトといろいろな種類のベイク本を並べてみて、他にもまだまだ紹介しきれないほどの作り手、レシピブックがあって迷った中から選んだ1冊です。

くろねこ軒はお店を持たず、月2回のオンラインショップ、1回のアトリエ販売、その他イベントなどでお菓子の販売をされていて、焼き菓子のベースはフランス菓子です。本には、サブレやマカロン、フィナンシエにはじまり、キャトルキャール、ガトーショコラなど、基本の、でもこれこそ王道の焼き菓子といったレシピがなんともバランスよく載っています。

ときどきクッキーの形がくろねこやしろねこだったり、ハリネズミだったりするのも焼き菓子らしくかわいいところ。子供も大人も、ハートや星、動物型のクッキーってちょっとワクワクしてしまうのでは。

著者
お菓子工房くろねこ軒 池谷信乃
出版日
2012-11-26

街に出ると、本当においしいベイクショップがたくさんあります。もしおいしいと思った味に出合い、もしそのお店のレシピブックがあったなら、ぜひ本をめくって見てください。きっと作り手が試行錯誤し、たどり着いた黄金のバランスと工夫がそこにはキラキラと書き留められているハズです。

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