分かりやすい人工知能(AI) 入門本おすすめ5選

更新:2021.12.21

現代社会は人類の歴史上最も早い速度で変化していますが、人工知能によりさらに変化が加速していきます。私たちにどのような影響があるのか、私たちは何をすべきなのか。人工知能について知ることは、今後の人生において非常に重要となるはずです。

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人工知能とは?

人工知能(AI:Artificial Intelligence)とは、その名の通り人工的に作られた知能の実体を表します。人工知能に関する研究は20世紀半ばから行われていますが、現在もまだ実現しておらず、これまでブームと冬の時代を繰り替えしてきました。

第1次AIブームは1950年代後半〜1960年代に起こり、コンピュータで「推論・探索」をすることにより特定の問題を解く研究が盛んに行われました。しかし、複雑な問題が解けないことから、一度目の冬の時代に突入します。

第2次AIブームは1980年代に起こり、コンピュータに「知識」を導入する研究が進みました。しかし、知識を簡易的に管理する術がなく、再び冬の時代に突入してしまいます。

そして21世紀になった現在、第3次AIブームが訪れています。この波は、「機械学習」の進歩と「ディープラーニング」という新たな技術により生まれました。ディープラーニングは、プロ囲碁棋士イ・セドルに勝利した人工知能「AlphaGo」に導入されている技術としても話題となっています。

今後、ディープラーニングの可能性はさらに広がっていきます。画像データだけでなく、動画や音声、圧力など様々な種類のデータが処理可能になり、情報通信産業をはじめ製造業や農林水産業などあらゆる産業領域で活用されていくでしょう。

現代社会は人類の歴史上最も早い速度で変化していますが、今後は人工知能の普及により変化がさらに加速していくでしょう。この時代では変化に適応する能力が重要であり、「人工知能により自分たちの現状がどのように変化する可能性があるのか」を把握する必要があります。

今回ご紹介する5冊は、人工知能の技術や歴史、哲学、産業への影響など様々な観点から説明しているため、網羅的に知識を獲得できるでしょう。

人工知能についての入門書

本書は、人工知能分野の最前線で活躍をしている東京大学松尾豊の著書です。基礎知識や歴史、今後の展開、各産業への影響など様々な観点から説明されているため、1冊目としておすすめします。

上記にあるように、人工知能研究にはブームと冬の時代が繰り返し訪れています。松尾もこの煽りを受けていますが、可能性を信じ、これまで実績を積み重ねてきました。本書では、約半世紀に及ぶ人工知能の歴史について、技術的観点と松尾自身の経験を踏まえながら述べています。

著者
松尾 豊
出版日
2015-03-11

後半では、本書のタイトルにもある「ディープラーニングの先」について触れています。初期のディープラーニングでは画像データの特徴量の抽出が可能でしたが、さらに音声や圧力などマルチモーダルや自身の行動データの特徴表現、言語データの処理といった能力を獲得していくでしょう。

その結果、人工知能の影響はあらゆる産業へ波及していきます。現在の自身の立場と照らし合わせて、今後どのように生きていくかを考える1つのヒントになるでしょう。

知能とは何かを考えさせられる1冊

人工知能の重要な点は技術的な面だけではありません。人間の脳を人工的に作り上げるようとしているため、脳科学や生物学、倫理学などとの関係性も深いです。本書は、人工知能やロボットの歴史だけでなく、こうした哲学的側面からも掘り下げています。

「知能」とは何でしょうか。本書では「錯覚」を通して、この知能の正体を感じようとします。つまり、私たちは「騙される」ことで世界を見ているのです。これは主観的に仮説を作り出し、世界から得られる不確実な情報をもとに生きていくことができることを意味しています。

著者
松田 雄馬
出版日
2017-04-25

では、なぜそうした不確実な世界を生きていくために「知能」が必要なのでしょうか。本書の後半では、「脳」や「生命」の仕組みを通してさらに追求していきます。人工知能や人間に関して、より広く深い視点から見ることができるでしょう。

人間とロボットの共存社会に移行している現代において、「人間とは何か」「生命とは何か」を改めて考えさせられる1冊です。

おもしろくて分かりやすい一冊!

本書は、コンピュータ将棋ソフトウェア「Ponanza」の開発者である山本一成による著書です。Ponanzaが現役の将棋名人に勝利するまでの経緯を人工知能の基礎的な知識や歴史を交えながら書かれています。

開発当初は貧弱なレベルであったPonanzaは、技術的な発展を経て、名人に勝利するレベルに到達しています。開発者自身が譜面に対応した打ち手を入力する段階から、既存の譜面データと照らし合わせ打ち手を決める「教師あり学習」、状況に応じて最善の打ち手を決定する「強化学習」の段階へ。Ponanzaは、徐々に開発者へ依存しなくなり、自ら最善の打ち手を考えるようになるのです。

著者
山本 一成
出版日
2017-05-11

本書の後半では、倫理的な側面にも触れています。人工知能は、既に知識の部分では人間を凌駕していますが、ゆくゆくは知性、つまり目的を設計する力も身につけていくでしょう。その結果、知性を持った人工知能が人間を滅ぼす選択をするかもしれません。まるでSFのような話ですが、真剣に検討しなければならない問題です。

「将棋」という日本人に馴染み深い遊びを題材にしているため、人工知能の世界に簡単に入り込めます。人工知能の基礎的な部分について簡単に知りたい方には最適な1冊です。

私たちの仕事にどう影響があるのか読み解く1冊

「人工知能に職を奪われる」という言葉を時々目にしますが、はたして本当にそうでしょうか。本書では、こうした脅威論が蔓延している現状に警笛を鳴らすべく、人工知能の現状や既存の産業への影響、新規のビジネスチャンスについて余すところなく説明しています。

人工知能に関する書籍の多くは、歴史をベースに説明しているものが多いです。しかし、本書は、「強いAIー弱いAI」「専用AIー汎用AI」「知識・データ量の多寡」の3つを軸に解説しており、新しい視点から理解することができます。

著者
野村 直之
出版日
2016-11-16

また、具体的な例が豊富に載っている点が魅力です。IoTやFinTechなど身近な事例をもとに人工知能活用の方向性を示していたり、既存の産業領域での応用例や新規ビジネスについても解説したりしています。一般的な話ではなく、「自身の仕事」など特定の状況における人工知能について知りたい場合、参考にできるヒントが多いかもしれません。

人工知能の到来をチャンスと捉えるか、ピンチと捉えるかは考え方次第です。もし職を奪われるとしても、下記のように「なぜ」を問い続けることで新しい道が切り開けるかもしれません。

「「なぜ」を問い続けることがどんな職業、立場でも機械と差別化できる突破口となる」
(『人工知能が変える仕事の未来』より引用)

人間の可能性を感じる1冊

現代は、人間とロボットが共存する社会に移行しつつあるでしょう。そうした中、本書では、人間とロボットの強み・弱みを論理的に分析し、それぞれに役割があるという筆者の持論が展開されています。

人間の持つ直感的思考とロボットの持つアルゴリズム思考、それぞれに強みと弱みがあります。本書では、直感を以下のように表現しています。

「「直感」とは、推理や論理を用いず、すでに習得している知識や技能、経験を通して瞬時に物事を判断する、または、物事の本質をとらえる人間特有の能力のことをいう。」
(『人工知能を超える人間の強みとは』より引用)

著者
奈良 潤
出版日
2017-03-15

この直感的思考について理解し、能力を向上させることで、今後の人生において自分のやるべきことが見えてくるのではないでしょうか。

人工知能が普及した社会では、教育のあり方も変わってきます。これまで重視されてきた知識や法則ではなく、目的や価値が重要となるでしょう。人工知能の普及は、人間や人生、自分自身の価値を再確認するきっかけを与えてくれるのです。

人工知能が普及した社会でも、人間にできること、やるべきことがあります。誤った情報に惑わされず、状況をしっかりと見極め、自分の人生を生きていきましょう。

今後は、あらゆるものが人工知能に取って代わられます。その結果、どのような世界となっているかは誰にもわかりません。ただ、自分のやりたいこと、やるべきことは見つけ、追求していくという大切なことは変わらないのではないでしょうか。

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