アートディレクターの寄藤文平は、「ザ・カクテルバー」(サントリー)、「大人たばこ養成講座」(JT)など話題作を多数手がけています。著書も出版しており、シャープな眼差しが異彩を放ちます。中でもオススメの5冊を選びました。
寄藤文平は1973年生まれのイラストーレーターです。他にもエディトリアルデザイン、アートディレクター、グラフィックデザイナーなど、様々な肩書きをもっており、誰でも1度や2度は街中などで目にしたことのある作品を手がけています。
「ザ・カクテルバー」(サントリー)、「キリンラガー」(キリン)、「大人たばこ養成講座」(JT)は中でも、寄藤文平の代表作だと言えるでしょう。
長野県に生まれ、武蔵野美術大学を中退した後、広告制作の世界に足を踏み入れます。98年にヨリフジデザイン事務所を立ち上げ、2000年に有限会社文平銀座を設立しました。
幅広い分野で活躍する気鋭のクリエイターですが、寄藤文平のシャープな眼差しは、文筆業でも異彩を放っています。
仕事の幅広さと同様に、著書のテーマも元素や数字、防災まで多岐に渡ります。分かりやすさ、そして、人とは違う視点を持つことで、一気に世界の眺めは変わること。寄藤文平の著書を読むと、そんなことを感じられるでしょう。
今回は、著書の中からオススメの5冊をご紹介します。
『元素生活』は、私たちの暮らしを「元素目線」で見ていくユニークな発想で書かれた作品です。2017年現在118種類発見されている元素がキャラクター化され、見るだけで性質を理解できます。
理科が苦手な人でも、イラストでわかりやすく解説されていますので楽しく読めることでしょう。
- 著者
- 寄藤文平
- 出版日
- 2015-03-18
本書では、元素は元素キャラクターとして擬人化されています。このユニークな発想は、寄藤文平ならではですね。
元素記号1番の水素から118番のウンウンオクチウムまで、すべてがユニークなキャラになっています。ハロゲンはハゲ頭、水素はひげをはやして仙人然としたヒョロ長のキャラクターになっており、キャラの特徴と元素の特性が一致し、記憶にも残りやすいです。
化学好きな子どもはもちろん、中高生で理系の授業をしっかり勉強してこなかったことを後悔する大人にもぜひ読んでもらいたい作品になっています。
学生時代にはあんなに嫌いだった元素ってこんなに面白かったのか!とそんな驚きに満ちた1冊ですよ。
『死にカタログ』で、寄藤文平が考えたのは「死」でした。誰にも平等に与えられるのが「死」。寄藤文平は、死すらタブー視しません。死とは何か。それを絵にして、徹底的に向き合います。
死を知ることは、今を生きること。人生観を変えてくれるような一冊です。
- 著者
- 寄藤 文平
- 出版日
- 2005-12-15
「はじめに」で、この本を書いた理由について、こんな風に書かれています。
「誰かのお葬式だとか、動かなくなったハムスターの感触だとか、映画やニュース、本で読んだ話などをつなぎ合わせて、たぶんこれが死なんだろうと、わかったふりをしていますが、正直なところ、僕は死が、さっぱりわからない。
この本では、死とはどんなカタチで、いつ、どこで、どのように、あるのか。子ども時代を入り口に、とにかく、絵にして、並べて、それから考える。そんなふうに、死を見ていこうと思います」(『死にカタログ』より引用)
死なない人なんていません。ところが、なぜか「死」については、自分や自分の周りには関係ないフリをして生きているのではないでしょうか
子どもは5歳くらいから「死ぬってなに?」と親に聞くようになります。誰もが経験する「死」について考えること、それは今を生きる上でも大きなヒントになるでしょう。
『地震イツモノート』のテーマは、防災。日本人の暮らしの中で、地震は備えなければならない災害の一つ。でも、本当に正しい知識は持っていますか。
本書では、1995年の阪神・淡路大震災の被災者167名の方たちの体験を聞いています。経験者の話にまさるものはないでしょう。
- 著者
- 地震イツモプロジェクト
- 出版日
- 2010-12-07
寄藤文平はこの本にたくさんのイラストを用いながら、防災知識をわかりやすく伝えています。
イラストがあるため、大人だけでなく、子どもも読むことができます。備えあれば憂いなしとはよく聞く言葉ですが、経験者の話によく耳を傾けてみてください。
2011年の東日本大震災後は、防災意識も高まったはずです。でも、改めて知識を整理してみませんか。地震が起こった後、日々の暮らしはどう変わるのか。何が必要になるのか。日頃、備えておくべきことは何か。そんな実践的な情報が盛りだくさんの一冊です。
世の中には、こんなに数字があふれているのに、改めて数字とは何か、考える機会はありません。私たちの暮らしは、ありとあらゆる数字に囲まれています。
『数字のモノサシ』で、豊富なイラストをもとにして数字とは何かを知り、親しんでみましょう。
- 著者
- 寄藤 文平
- 出版日
- 2008-11-26
数字と聞くと、苦手意識を持つ人もいそうですが、寄藤文平のイラストが480点も使われていますので、大丈夫です。親しみを感じながら、数字のことが好きになっていくでしょう。
本書を書いた目的について、本の中でこんな風に書かれています。
「この本は、数をテーマにしていますが、数学や計算とは関係がないです。
『数を計るのではなくて、数を知るための本』
もしかすると、わかっていないのは僕だけで、そんなことは当然だと感じる方もいらっしゃると思います。
それでも、僕の考えたモノサシで、数が少しでも実感として感じられたらと思っています。」(『数字のモノサシ』より引用)
これもまた、学生時代に読んでおけば意識が変わっていたかも、と思う本でしょう。しかし、大人になった今から学ぶのでも遅くないのです。数字に苦手意識を持っている方、ぜひ読んでみてくださいね。
『絵と言葉の一研究 「わかりやすい」デザインを考える』で、寄藤文平が徹底的に考えたのが、「わかりやすい」とは何か。
ネットやテレビを通して、大量の情報を得ても、それを消化するのは難しい。本書では、人にわかってもらうためには、情報をまとめ、どうデザインをしたら良いのか?ということをテーマに、様々なヒントが書かれています。
- 著者
- 寄藤文平
- 出版日
- 2012-12-07
本の表紙(装幀)やグラフィックで、シンプルな構成でわかりやすく核心を伝えるためには、どんなパッケージが良いのか。それを探るのがこの一冊です。
たくさんの単語、長い文章でもって、伝えられることは多くなります。しかし、長文をわざわざ読んでくれる人ばかりではありません。また家族や友人とのコミュニケーションでも、自分の考えをわかってもらうためには「わかりやすさ」が必要です。
出版、広告業界で働く人はもちろんのこと、誰かに伝えたいことがある人は、この本から「伝え方」を学んでみてください。何より、寄藤文平がいかに真摯に仕事に取り組んでいるかが伝わってきます。そのことも、この本を読む意義の1つです。
わかりやすく伝える。当たり前の素材について、改めて違う視点から眺めてみる。そんな寄藤文平のユニークな視点から教えられることは多いです。一冊の本を読んだことで、目の前の景色が違って見えてくる。そんな読書体験をしてみたい方に、おすすめの5作です。