逃げ出せない恐怖!クローズド・サークルを題材とする小説5冊

逃げ出せない恐怖!クローズド・サークルを題材とする小説5冊

更新:2021.12.13

どうも、わちゅ〜さんです。 ミステリー・推理小説といえば、熱烈ファンの多いジャンルの一つ。皆さんは「ミステリー用語」なるものを知っていますか? 例えば「アリバイ」という言葉。「聞いたことあるぅぅぅーーーっ!!!」って方も多いと思います。これは、現場不在証明(事件発生時、その場所にいなかったことの証明)を意味するミステリー用語。他にも「ダイイングメッセージ」や「密室」などなど、数多くの言葉が存在します。私がこよなく愛する「叙述トリック」なんかもそうです。

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そこで今回は、ミステリー用語の一つ「クローズド・サークル」に焦点を当ててご紹介!! うっふふー!

クローズド・サークルとは、閉鎖された空間で起きる事件のこと。脱出不能である“吹雪の山荘”や“絶海の孤島”など、外界との接触が断たれた状況、あるいはそうした状況下で起こる事件のことを意味しています。

そんなクローズド・サークルの魅力は、なんといっても逃げ出せない恐怖!! 閉ざされた舞台の中、誰が犯人かもわからないまま共に過ごす緊張感。一体どうやって殺人を犯したのか、この中の誰が犯人なのかと疑心暗鬼にかられ、徐々に崩壊していく人間の心理がたまらないんす!! ハァハァ! スリル満点のドキドキを味わいたい人には打ってつけ !!

ってことで、早速ご紹介スタート!

仮面山荘殺人事件

著者
東野 圭吾
出版日
1995-03-07
まずは読みやすいコチラから!! 東野圭吾さんの長編ミステリー。8名の男女が集まった山荘で、思わぬ事件が勃発!という物語。一見クローズド・サークルにありがちな設定だなぁという印象を受けますが、他の作品とは一線を画する展開が待ち受けています。

今作の面白いところは、山荘から逃げられなくなってしまった理由。他の作品でよく見かける例としては「やべっ!! 橋が落ちた!!」とか「あかん!! 吹雪がヤバい!!」などが挙げられます。それに対し、今作は「なんてこった!! 銀行強盗犯が入りこみやがった!!」ってのが理由です。

そう。平和なはずの山荘に、銀行強盗を働いた二人組が逃げ込んできたのです。なんと運の悪いことでしょう。犯人たちと鉢合わせてしまった一同は、もちろん逃げ出すことは許されず。口封じのため、数日間の外出禁止を強要されます。犯人たちに監視されながら時間が経つのを待っていると、ついに恐れていた事件が発生。一人の遺体が発見されます。
その場にいた誰もが「強盗犯が殺人まで犯しやがった!!」と疑ったのですが、冷静に考えてみると彼らにはアリバイが。「じゃ一体誰が殺したのよ!?」ってところから物語がどんどん面白くなっていきます。

一同は、もはや強盗犯そっちのけで犯人探しをスタート。しまいには強盗犯たちも犯人探しに協力する始末。そして待ち受ける驚きの真実とは……。あとはぜひ皆さんの目でお楽しみくださいまし!!

ちなみに文庫版には、叙述トリックの名手・折原一さんの解説が掲載されています。これがまた非常に面白い!! 作家視点の興味深い内容が書かれており、まさに目からうろこ状態。やはり小説家って大変なお仕事ですわね。うむ。

クリムゾンの迷宮

著者
貴志 祐介
出版日
1999-04-09
ヤバい! これはマジで面白い!! クローズド・サークルの新たな道を切り開いたともいえる傑作!! 土地でのサバイバルゲームを描いた今作は、まるでゲームの中にいるかのような世界観。サスペンス色がかなり強く、迫りくる恐怖を味わいたい人には打ってつけ。今回、私が最もおすすめしたい作品でもあります。

今作の舞台は、見渡す限りの荒野。「それってクローズド・サークルに含まれるの!?」って疑いたくなりますが、実はちゃんとした理由があるのです。一つは、その土地の広さ。あまりに広大すぎるんです。逃げようとしても、疲れ果てて死ぬのがオチ。自殺行為のようなものです。そして二つ目に……っと全部説明したくなっちゃいますが、ぜひ予備知識なしで楽しんで頂きたいので我慢我慢。もぞもぞ。

一言じゃ説明しきれないくらい見どころ盛り沢山の今作。特に、追い込まれた人間の心理描写なんかたまりませんよ!! サスペンス好きの人にゃヨダレもん。自信をもっておすすめできる、べらぼうに面白い一冊でございます!!

インシテミル

著者
米澤 穂信
出版日
2010-06-10
クローズド・サークルの真骨頂!! 米澤穂信さんの長編ミステリー。これマジで面白いんす!! 面白すぎて手汗が止まりません!! 止まらなすぎて本がベトベトになりました!! ははっ!!

今作の舞台は「暗鬼館」という名の実験用施設。出口のない特殊な形状をしたこの建物内で、次々と殺人事件が発生します。巻き込まれたのは、12名の男女。彼らは“7日24時間監視付きの隔離生活をするだけで時給11万2000円”という破格の求人につられて集結。自らの意思で参加を決めたものの、詳細を知らないまま集まった彼らは、実験内容を知り驚愕。その内容とは「多くの報酬を得るために参加者同士が殺し合う犯人当てゲーム」というもの。ここから物語は波乱の展開へ……。

予備知識なしでも十分楽しめる内容なのですが、私的には是非、何冊かクローズド・サークルものに触れた上で読んで頂きたいのです。といいますのも、実は今作、過去の名だたる作品のパロディ的な要素をふんだんに取り入れているのです。例えば、アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』や、私の連載第1回目でもご紹介しました綾辻行人『十角館の殺人』などなど。もちろん、これらを読んだことがなくても十分楽しめる内容ですのでご安心を!!

逃げ場のない空間で起きる殺人事件。誰が誰を殺し、誰が誰を犯人と疑うか。そして最後に明かされる驚きの真実とは……。必見ですぞ!!

館島

著者
東川 篤哉
出版日
ひたすら笑えるネタのオンパレード!! ユーモアミステリーの名手、東川篤哉さんの長編ミステリー。今回ご紹介する5冊の中で、個人的に最も好きな作品でございます。以前の記事にも書きましたが、わたくし、東川篤哉さんの作風がホントに好きなんです。コミカルで取っつきやすいため「あまり本を読まなーい!」って方にもおすすめです。

今作の舞台は、孤島に建てられた正六角形の館。いかにもクローズド・サークルらしい建物ですが、この館にはビックリ仰天な秘密が隠されているのです。とっても大胆な仕掛け。現実的ではないものの、遊び心のある仕掛けに思わずニヤけてしまいます。作中の至るところに伏せんが敷かれているので、もしかしたら途中で気付く人もいるかもしれません。ちなみに私はまったく気付きませんでした。てへへ。

今作は、この館内にて発生した密室殺人が中心に描かれています。不可解な事件だけあって、謎が解けた瞬間の気持ちよさといったらありゃしない!! 非常に東川篤哉さんらしいトリックです。ちなみに、犯人の動機もなかなか斜め上をいっています。ユーモア溢れる作品なので、暗い話が苦手って方にはピッタリな一冊。

月の扉

著者
石持 浅海
出版日
2006-04-12
独創的な世界観を誇る、石持浅海さんの長編ミステリー。「ハイジャック」「密室殺人」「超常現象」の3要素が絡み合った、かなり異色の作品です。

今作の舞台は、離陸前の飛行機の中。3人組の男女にハイジャックされた機内で、それとは関係のない別の殺人事件が発生します。これがまた凄く面白くてね!! 普通ならばすぐにでも機内から逃げ出せたはずなのに、ハイジャックされているが故に乗客は身動きとれず。犯人たちも“ハイジャック中なので警察に入ってもらっては困る”と頑なに折れません。とはいえ、殺人事件をそのまま放置しておくこともできず。その結果、ハイジャック犯たちが犯人探しを始める始末。いやー、もう先が気になって気になって仕方がない!!

数あるクローズド・サークル作品の中でも、ここまで幅広い要素が絡み合ったものはそうそうないはず。なかなか癖のある一冊です。ぜひチェックしてみてくださいまし!!

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    バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。

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