原作『パーフェクトワールド』が泣ける!見所を最新9巻までネタバレ解説!

原作『パーフェクトワールド』が泣ける!見所を最新9巻までネタバレ解説!

更新:2021.11.28

障害者と健常者の恋愛の様子をリアルに、そして丁寧に描いた作品。障害者が普通の恋愛をすることは難しいのか……読者は、つい考えさせられてしまうでしょう。2018年に映画化、2019年4月にはドラマ化の注目作です。 今回は、そんな本作『パーフェクトワールド』の魅力を、最新9巻までご紹介。ネタバレを含みますのでご注意ください。

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原作漫画『パーフェクトワールド』の魅力を最新9巻までネタバレ紹介!【2019年4月ドラマ化】

あなたは障害のある恋ができますか?
(『パーフェクトワールド』1巻より引用)

この言葉から始まる恋愛漫画『パーフェクトワールド』。主人公のつぐみが高校時代の初恋の人・鮎川と再会して、彼が脊髄損傷者になってしまったことを知るという場面から始まるストーリーです。

2018年に実写映画化、2019年4月にドラマ化の人気作となっています。

著者
有賀 リエ
出版日
2015-02-13

 

誰しも「障害者」と聞くと、どうしても身構えてしまうものではないでしょうか。差別にならないように言動を意識し、「普通」にしようと思えば思うほど、変に気を使ってしまうということも多くなってしまいます。

現代の日本ではあからさまな差別は少なくなりましたが、それでもやはり障害者の人々にフィットした対応というのは、「通常」とは異なるもの。どう接するのが正解なのか、私たちはまだわかっていないのかもしれません。

本作ではそんな迷いをリアルに描き、心の交流を通してふたりの男女が惹かれあっていく様子が丁寧に紡がれています。綺麗事だけじゃない、心の奥に潜む無意識の差別まで映し出した物語は、ただの恋愛漫画とは言えない深い作品なのです。

漫画『パーフェクトワールド』に見る、完璧な世界【あらすじ】

漫画『パーフェクトワールド』に見る、完璧な世界【あらすじ】
出典:『パーフェクトワールド』1巻

取引先の飲み会で再会した、同級生同士の鮎川と再会したつぐみ。つぐみは思いがけない出来事に一瞬胸がときめきますが、彼が車椅子だと知ると少し引いてしまうのです。そこから彼女は障害者について少しずつ関心を持つようになり、鮎川のことも理解したいと思うようになっていきます。

しかし、自分のハンディから、恋愛に一歩引いている鮎川。当初は、そんな彼から距離を取られることが多かったつぐみですが、徐々に彼の気持ちをほぐし、近づいていくのです。

不完全なこの世界で、さらに難しいことが増えてしまった鮎川。しかし、そんな世界も支え合う人がいれば、むしろ優しさに溢れた完璧なものになります。

ふたりがともに歩む、リアルで心の琴線に触れる恋愛漫画です。

漫画『パーフェクトワールド』の魅力1:とっさの言葉に出た、本当の気持ち

漫画『パーフェクトワールド』の魅力1:とっさの言葉に出た、本当の気持ち
出典:『パーフェクトワールド』1巻

再会の時にとっさに引いてしまった自分に嫌気がさしながらも、鮎川と普通に話そうとするつぐみ。しかしふたりでいる時に、彼の同僚から恋仲だと勘違いされ、とっさに本気で否定してしまいます。何を本気で答えてるんだよ、と言って気まずい雰囲気をフォローしながらも、鮎川はこう続けるのです。

大丈夫だよ 俺 誰とも恋愛する気ないから
おまえをそういう目で見ることもない
だから 安心して
(『パーフェクトワールド』1巻より引用)

「車イスの人とは恋愛できない、付き合うなんて無理だ」という本音が、態度に出てしまったつぐみ。本気で否定しなければ友達のままでいられたのに……でも、こんなふうに心に壁を作ってる時点で友達ですらいられないかも、と考え込んでしまうのです。

普通にしようとすればするほど、逆に自分が心の奥底で感じている違和感が浮き彫りになる様子がリアルです。「普通とは違う」という事実を、本人や周囲が受け止めることの難しさ。「障害」をただの違いとして受け入れたいけれど、できないという葛藤の様子に、読んでいて心が苦しくなるでしょう。

漫画『パーフェクトワールド』の魅力2:リアルな苦しみを間近で見て……

漫画『パーフェクトワールド』の魅力2:リアルな苦しみを間近で見て……
出典:『パーフェクトワールド』1巻

大事なコンペの締め切り間近になって、高熱を出して倒れてしまった鮎川。ひどい褥瘡(とこずれ)が出来てしまい、感覚がないゆえにそれを気づかず、放置してしまったことが原因でした。

目を覚まして、入院だと聞いた彼。40度近くの熱がありましたが、コンペのためにベッドで仕事をし続けます。うつぶせか横向きにしかなれない状況で、吐きながらも手を休めない彼に、つぐみは無理しないで次頑張ろうと、泣きそうになりながら訴えるのです。

しかし、鮎川は朦朧としながらこう言うのでした。

次じゃダメなんだ
次がある保証もないのに
いつ死ぬかもわからないのに
今やらなきゃダメなんだ!!
(『パーフェクトワールド』1巻より引用)

それを聞いたつぐみは、彼が今までどれほど悔しい思いをしてきたのかを想像して、涙が溢れてくるのです。高校時代から、夢に向かってまっすぐに進んできた彼をまぶしく思っていた彼女は、よりその思いに共感するのでした。

急激に体調を崩すこともある脊髄損傷者は、普段からずっと、死を近くに感じながら生活しています。鮎川が病床で放ったこの言葉は、そんな彼だからこそ出てきた、強い生命力を感じさせるものです。

そして、この言葉に動かされたつぐみは、彼の仕事を手伝い、どうにかコンペに間に合うことができたのでした。ひとりではたどり着けなかったゴールに、鮎川はつぐみの協力を得てたどり着いたのです。

漫画『パーフェクトワールド』の魅力3:少女漫画として超王道!感情移入必須のラブストーリー!!

漫画『パーフェクトワールド』の魅力3:少女漫画として超王道!感情移入必須のラブストーリー!!
出典:『パーフェクトワールド』1巻

本作は健常者と障害者という対比があるものの、ストーリーとしては超王道。かっこよくなった幼馴染と再開して、さまざまな壁を乗り越えて2人が付き合い、そこからさらなる障壁が襲いかかり、再び乗り越えていくのです。恋のライバルが出現する点も、まさに少女漫画の王道といえるでしょう。

しかし本作は、他作品の内容を大きく逸している点があります。それは、リアリティーです。

よいタイミングでライバルが出現するのは他の少女漫画同様ですが、つぐみがその人物に惹かれたのは「悩みを聞いてくれたから」「好みのタイプだったから」というような理由ではありません。それは、鮎川と付き合っていくことの厳しさを目の当たりにしたからでした。

つぐみは、父親から鮎川との交際を反対されてしまいます。それは、父親が彼女のためを想ってのことでした。障害者と結婚するとなると、娘には普通だったら味わうことのなかったはずの苦労がのし掛かることになる……。彼は、そう感じたのです。

そういった想いを受けた鮎川は、彼女に別れを告げます。そしてつぐみは、別の男性の元へと行くのでした。

他の男性の元へ行くところは、まさに少女漫画の王道的展開。ですが本作は、ありきたりな話というふうには感じられず、新鮮な胸の痛みを感じて読むことができます。それは健常者と障害者の恋愛というものをリアルに描き切った本作ならではのものなのです。

つぐみと是枝、加速する関係……【6巻ネタバレ注意】

 

とある事情から別れを選ぶことになってしまった、つぐみと鮎川。つぐみは、父親が体を壊したのを機に地元に戻り、同級生だった是枝という男性と交際を始めます。

しかし、ひょんなことから再び鮎川と再会。つぐみは、説明できない涙を流してしまうのです。自分でも涙の理由はわからないけれど、是枝との関係は否応なしに進んでいきます。そして、ついに自分の両親の元に挨拶にきてもらうまでになったのです。

そこでスムーズに、その場に馴染む是枝。つぐみの母は「どうしても普通の幸せを選んでほしかった」と涙ぐみます。

つぐみはそんな母を見ながらも、「普通の幸せ」というものが何か、理解できずにいたのでした。

 

著者
有賀 リエ
出版日
2017-09-13

 

その頃つぐみは、介護の勉強会で圭吾という男性と出会います。彼は、車椅子生活を送る楓という女性と交際していました。そんな彼から、つぐみは、ある仕事を依頼されます。それは鮎川が設計した、圭吾の家のインテリアデザインでした。
 

1度はその仕事を断った彼女でしたが、もし、かつてのような友人関係に戻れたら……と思い直し、依頼を受けることにするのです。

しかし鮎川は、圭吾からそのことを聞き、断ってしまいます。それでも諦めたくないつぐみは東京にいる鮎川に会いに行き、スケッチと調べ上げた資料集を見せるのです。彼女の情熱に圧倒された鮎川は、こう言います。

川奈、変わったね俺たちやっぱり別れて良かったと思う
(『パーフェクトワールド』6巻より引用)

泣きそうになるのを堪え、つぐみはこう返すのでした。

私が強くなったのだとしたら、それは鮎川に出会ったからだよ
鮎川が私を変えたんだよ
(『パーフェクトワールド』6巻より引用)

そう言う彼女を見て、自分たちの関係をまた新たにつくり直していこうという気持ちを感じた鮎川。彼もまた、自分たちの出会いを意味あるものにしようと前向きになるのです。

しかし、そんななか、彼らを大震災が襲い……。

さまざまな流れを経て、是枝とつぐみの関係が結婚というひとつの形になって、成就しようとしていきます。当初から読んでいるファンとしては、鮎川ともとに戻ることはないのだろうか……と心配になる展開でしょう。

果たして2人の関係は、どうなってしまうのでしょうか。
 

大震災から見えた、本当に大切なもの【7巻ネタバレ注意】

 

大震災が起き、真っ先に鮎川のもとへ向かったつぐみ。彼は床に倒れており、カテーテルが外れた危険な状態でした。その重要性がわかっているつぐみは、すぐにそれを探し出し、彼に装着します。

そしてホッとしたのもつかの間、彼女は鮎川の疲労しきった様子に、どれだけ危ない状況だったかを感じ取り、どうしようもない気持ちになるのでした。

しかし鮎川は、そんな状態でも仕事への責任感から、建築現場である圭吾たちの家を見に行きたいと言い出し……。

 

著者
有賀 リエ
出版日
2018-04-13

 

大震災ということで、ふたりの関係性の進展度合いもゆっくりと進むことになります。恋愛としては遅い展開に見えるかもしれませんが、人間同士としての結びつきは確実に強くなっているように感じる内容といえるでしょう。

そして、この大きな出来事によって、ふたりは本当に大切なものは何なのかについて考え直すようになるのです。

1度東京に戻ったつぐみは、是枝にあることを告げ、鮎川に会いに行きます。つぐみの本心が気になる展開ですが、彼女は「後悔」という言葉で、鮎川に何を伝えようとしているのでしょうか。そして、それを受けて彼が話す過去のエピソードは、一体何を意味するのでしょうか。

詳細は、ぜひ作品で読んでみてください!

 

それぞれの思いがゆきつく先【8巻ネタバレ注意】

 

鮎川のもとに訪れ、「後悔があるの」と告げるつぐみ。もちろん彼は、それだけではわからずその先を促すのですが、なかなか言葉が出てきません。そんな彼女に、鮎川は散歩に出ようと誘います。

そして、その途中で2人は震災復興の願いを火にともす、キャンドルナイトをやっているのを見つけます。参加することにした彼らは、そこである思いを打ち明けあい……。

 

著者
有賀 リエ
出版日
2018-09-13

 

大震災を経て、本当に必要なことについて考え始めた2人。それぞれに支えてくれた人があり、それを裏切ることになってでも、互いへの思いが断ち切れないことを実感し、そして一緒に歩む決意をするのです。

それぞれが今まで支えてきてくれたパートナーに、その思いを打ち明けるのですが……。

8巻では、鮎川、つぐみだけでなく、是枝、そして鮎川に思いを寄せるヘルパーの長沢が、それぞれに苦しみぬき、くだした決断が描かれます。誰も悪人などおらず、それぞれがただ、恋をしただけでした。その結末とは……。

そんななか、鮎川は再び褥瘡(とこずれ)が悪化し、2ヶ月の入院を余儀なくされます。これから設計した家が、やっと着工だという時のアクシデント。体が不自由だということが、当然ながら、やはり彼の人生の一部となっているのです。

ある意味で、支えてくれた人を裏切る行為をし、さらに体調も崩してしまうという困難が続く鮎川とつぐみ。果たして、彼らはこの事態をどう対処するのでしょうか?

 

つぐみの父親との衝突。それぞれの想い【最新9巻ネタバレ注意】

 

是枝との交際を、心から喜んでいてくれていた両親。そんな彼らに、つぐみは是枝と別れたという報告をします。そんななかで、鮎川から騙されているのではないか、お前はナイチンゲールにでもなったつもりか、と言ってくる父親に対し、つぐみは大きなショックを受けてしまうのです。

父親と険悪な関係が続くなか、彼女にとって喜ばしい出来事もありました。それは、圭吾と楓の結婚式です。鮎川も参加した式は和やかな雰囲気で進み、つぐみは、彼らの幸せと自分たちの幸せを重ね合わせるのでした。

しかし、圭吾の父親と弟が、先が長くないのだから好きにさせてやれ、と言っているのを聞いてしまい……。

 

パーフェクトワールド(9) (KC KISS)

2019年03月13日
有賀 リエ
講談社

 

障害者は、普通の幸せを望むことはできないのか……あらためて考えさせられる一冊です。本巻では、つぐみの父親と鮎川が直接話す姿が描かれます。

自分の両親、そして圭吾と楓の結婚式での出来事から、周りからの理解を得ることを諦めてしまったつぐみ。しかし、鮎川は諦めたくないと、父親に納得してもらうために毎週病院へと通うのでした。

本巻では、つぐみ、鮎川、そして父親の気持ちが、それぞれ丁寧に描かれていきます。相手のことを想っているいるからこそ通じ合わない気持ち。衝突するなかで、彼らはしだいに自分の気持ちを見つめ直すようになるのです。

そして、彼らが選んだ道とは……。

 

漫画『パーフェクトワールド』10巻が待ちきれない!

漫画『パーフェクトワールド』10巻が待ちきれない!
出典:『パーフェクトワールド』1巻

 

そもそも男女が惹かれ合うのは、お互いの足りない部分を補い合うという側面もあるでしょう。この作品では、よりその部分が強く描かれています。相手がいるから世界が完璧になる、というのは身体的に見て不自由の多い鮎川にとっては、より難しいゴールかもしれません。

しかし、つぐみと一緒にひとつずつハードルを乗り越えていく様子は、遠くはあるものの目標までの道のりは地続きで、決して到達できないものではないと思えるような、強い絆が感じられるものなのです。

そんな本作の魅力を、ぜひご自身でご覧になってみてはいかがでしょうか?

 

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