この村にある家で行われている、水面下でのひそかな戦い……。その戦いの壮絶さを家ごとにランキングしているのが「嫁姑番付」というもので……? 嫁と姑の闘いを壮絶なまでに描き、番付にしてしまうという斬新な設定の漫画が『かんかん橋をわたって』。リアルな意地悪さにハラハラ、それに立ち向かう主人公の姿にスッキリさせられる作品です。今回はそんな本作の魅力をご紹介!ネタバレを含みますので気になる方は無料で読めるスマホアプリでご自身でご覧ください。
かんかん橋をわたって (1)
優しいと思っていた姑が町内一の性悪な女で、しかも町内には「嫁姑番付」という嫁いびりのひどさをランクづけしたものがあるという狂った町、そして家に嫁いだ萌。
『かんかん橋をわたって』は、表向きは分からない、けれど確実に萌の心を苦しめる姑の様子にハラハラさせられる作品です。そのいびりの様子はとてもリアル。日常生活で本当にありそうな意地悪には読んでいるこちらまでモヤモヤさせられます。
しかし萌は橋向の自分の生まれ育った町が恋しくなる時もあるものの、決して負けません。そして徐々に姑との関係に解決の道を見つけていきます。
そんな彼女の姿を見ていると勧善懲悪のヒーローものに似たスッキリ感が感じられます。この作品は敵が姑、ヒーローが嫁の超現実的なヒーロー作品とも言えるかもしれません。
初めて萌が姑のいびりに気づいたのはある夜中のことでした。
彼女が夫の家に嫁いできてからずっとうまくいかないのがご飯の炊き加減。姑がやると柔らかく炊けるのに、萌がやるとなぜかパサパサになってしまいます。
ある夜珍しくトイレに起きた萌が見たのは自分がセットした炊飯器の水をタオルで吸い取る姑の姿。そのタオルは姑が加湿するためだと言って室内に干していたものでした。
萌がご飯を炊いた日は日課となっていたのであろうその習慣が終わると、姑はニヤリと笑います。
笑顔がかなりホラーです。今まで優しいお母さんだった分、真夜中のそんな行動がより奇妙に映ります。
家族がみんな柔らかいご飯が好きだと知っていて、それを炊けない萌の家庭内でのポジションを少しだけ悪くする意地悪。この微妙に張り付いてくるような悪意にはぞわぞわさせられます。
当初から萌を心配し、姑を町内一の意地悪さで有名だと打ち明けてくれた商店のおばさん。彼女は萌の姑のことをこんな風に表現します。
「子供がよくやる意地悪があるでしょう
大きな羽虫か何かをいっしょうけんめい巣に運んでいるアリから
ひょいと羽虫をとりあげるの
アリは何がおきたのかわけもわからずぐるぐる回るだけ
そんなふうに他人の慌てふためく姿を見るのが好きなのよ」
(『かんかん橋をわたって』1巻より引用)
本当に性格が悪い!そしてそんな姑の性格が頷けるようなことが次々と萌の身に降りかかります。
無邪気に意地悪を楽しむ様子は、大人なのに「普通」や倫理観が通じない恐ろしさがあるもの。何を言っても無駄なのだろうと思わせられるような徒労感を読者にも感じさせます。
炊飯器タオル事件の後、不二子のことを疑うようになった萌。今までは優しく、半人前の嫁である自分を気にかけてくれているのだ、と考えていましたが、些細な嫌がらせにも気づいてしまうようになります。
萌の父親の容態が悪化したため、入院をしていたときのことでした。見舞いをしていましたが、家事を済ませていないことが気がかりで、一度家に帰ることに。病院からの連絡があれば、すぐに戻ろうと考えていました。
ところが、その日に限ってなぜか萌の携帯電話が見つかりません。家の固定電話は、義姉の初子が長電話で使用していました。「えんじ色のコートが…」などと聞こえたので、大した用事ではなさそうです。
なかなか電話を代わってもらえず、父が心配だった彼女は、近くの商店で電話を借りることに。病院にかけると、父はすでに息を引き取った後でした。
その後、たまたま不二子が「えんじ色のコート」を着ていることに気がつき……。あのとき初子が電話していた相手は、不二子だったのです。しかも、そのとき彼女は萌の携帯電話を勝手に持ち出していました。
萌の父が入院していることを知っていながら、わざと電話を使わせないように仕組んだとしか思えない行動です。萌がコートに気づいたとき、あざ笑うかのような表情を見せていました。
性悪な姑に振り回される萌。彼女の本当の苦悩は、これから始まっていきます。
不二子の悪事に振り回されながらも、萌がなんとか自らを奮い立たせられるのは、周りの人に助けられているからです。
どんな人でも分け隔てなく接し、思いやりの気持ちを持っている彼女。そんな彼女の人の良さに気づき、地元のおばちゃんたちは力を貸してくれるようになります。
不二子が萌に対する嫌がらせとして、彼女が苦手な柔らかすぎるご飯を炊いていたときは、先輩主婦たちがご飯を美味しく食べるさまざまな方法を教えてくれました。話したことがない人まで、次から次へと彼女にアドバイスをくれます。
周囲の人たちが助けてくれたのは、彼女の姑が「おこんじょう」として悪評高い人物だったから。そんな姑に負けず、頑張る萌の姿に多くの人が背中を押してくれました。
誰かの悪口を言えば、そのぶん自分にも返ってきます。逆もしかりで、常に人に優しくすることを心がけていれば、誰かは必ず自分の行いを見ていてくれているもの。姑のひどすぎる嫌がらせに屈することなく、自分を見失わなかった萌を讃えたくなります。
町内に住む嫁権藤木から出会い頭の会話で「あなた今4位よ」と言われた萌。何のことかと聞くと彼女は「嫁姑番付」のことだと言います。
それは姑の意地悪さをランキングにし、町内の人間なら知らないものはいないといわれているもの。これを作った人もかなり性格が悪そうです。というか町全体が鬱屈としています。
萌は狂ったこの町自体が嫌いになりそうになりますが、彼女をフォローしてくれる人もたくさんいます。それは萌の姑にしてやられた人が他にもたくさんいるから。そんな人々は萌を不憫に思い、様々な面で助けてくれます。
その優しさに元気をもらった萌は自分以外の番付に入った人物と会ってみようと考えます。しかし上位の人々はかなりひどい様子で……。
萌とおこんじょう(意地悪)の姑のバトルで展開されていくのかと思いきや、6巻でラスボス「ご新造様」が登場します。
ご新造様は嫁姑番付1位の姑。つまり町内で一番意地の悪い姑ということです。これまで、萌に対する姑の仕打ちや、2位の姑の意地悪さを見てきた読者は、あれを超えられるのか?と思うでしょう。
これが見事に超えてきます。2位の姑はまだ性格の悪い人間として理解できますが、1位のご新造様はモンスターです。
どういったモンスターぶりか少しだけネタバレして書きますと、ご新造様は町内で生まれたほとんどすべての男の子の名付け親なのです。「亀男」「鹿男」など動物の入った適当な名前をつけます。しかも名付けた子が結婚したら自分は姑であるという論理を展開します。町のすべての男の子の名づけ親であり、すべての嫁の姑になるということを構想していて、完全に狂っています。
なぜそんなことができるのかと言うと、ご新造様の先代が地元の名士で、一代で資産と信頼を築いたから。ご新造様は町内で圧倒的な権力を持ったモンスターです。
ご新造様に逆らった人は、家を壊されたり、町で物が買えなくなったりします。町で生きていくのが非常に難しくなります。
そんなご新造様に主人公萌は逆らいます。予想通り苦境に立たされますが、なんとおこんじょうの姑が味方について……。
1巻だけ読んだ方は、萌と姑が共闘するところを想像するところは難しいでしょう。全10巻の前半5巻は基本的に胃が痛くなるのような萌と姑のバトルです。しかし、そのバトルを読んだ先の6巻から物語は一気に加速します。ラストは半沢直樹ばりにスカッとしますので、ぜひ頑張って6巻まで読んでみてください!
萌と姑のバトルから始まった本作は、なんと嫁姑番付上位の嫁たちによる殴り込み展開になります。
友情・努力・勝利、というと少年ジャンプのようですが、まさかの胸アツバトルが展開。
トンカチふたつを武器に男たちを倒しまくる無双嫁が登場したり、嫁だけしか知らない道が登場したり、読んでいて楽しくなってくるツッコミどころ満載の最終巻です。9巻まで読んで10巻を読まないという方はあまりいないと思いますが、もし迷っている方がいましたら、ぜひとも10巻を読むことをおすすめします。
かんかん橋をわたって (1)
嫁姑バトル漫画『かんかん橋をわたって』の個性豊かな登場人物を徹底紹介していきます。少々ネタバレを含みますのでその点だけご注意ください。
主人公の萌はかんかん橋をわたって、川南から川東に嫁いできました。
姑不二子の嫌がらせに気づいたのは結婚してから1年半が経ってから、それまでは不二子の善意を信じて疑っていませんでした。
前述した炊飯器タオル事件のほかにも、義理の姉の店を無償で手伝わせたり、親に死に目にあわさせなかったりと、かなりひどい仕打ちを受けているのに4位の理由は、川東いちのおこんじょう不二子が姑だと知る近所のおばさんたちが色々と気にかけてくれるから。自身が嫁姑番付4位であることを知ってからは、ほかの上位ランカーに積極的に会いに行くようになり、嫁友達を増やしていきます。
友達を増やし、相談を受けるようになってからは、トラブルシュータ―としての才能を覚醒させ、負けん気と切れのいい頭を武器に、町内のトラブルを解決していきます。しかし、その姿は姑の不二子そっくりで……。
川東いちのおこんじょう(意地悪)と呼ばれる不二子。『かんかん橋をわたって』強さランキングを作ったら間違いなくトップ3にはランクインする猛者です。
初期は萌の携帯を盗む、萌の服をカビさせるなど地味な嫌がらせを繰り返していましたが、萌に一目置くようになると、徐々に萌の擁護者になっていきます。
のちに判明する、萌に嫌がらせをしていたことに関して「嫁とは虐めぬいて鍛えるものです」と独白。狙い通り萌が鍛えられたからいいものの、もう少しやり方があるんじゃないかと思わずにいられません。
萌の夫早菜男は、萌が不二子にいびられていることを知りません。不二子が気づかれないようにやっていたこと、萌が言わなかったことが原因でもありますが、川東のある仕組みが知られなかった最大の原因です。
嫁と姑が嫁姑問題について話さない場合、嫁姑の不仲を知るのは、大抵、友人、同僚、近所の人からなどになりますが、川東では、嫁姑番付があるのは川東ではなく川南ということにするという仕組みがあり、早菜男も嫁姑番付の存在は知っていても、それは川南のことだと思い込んでいたのです。
初期は早菜男がいつ気づくのかとドキドキしながら物語を追うことになりますが、中盤以降の超展開により、早菜男の存在感は薄れてしまいます。萌の最愛の夫で、すごくいい男なんですが。
嫁姑番付1位の姑、ご新造様ことトキ子。『かんかん橋をわたって』のラスボスです。川東の名家市毛家に嫁ぎ、姑の放任主義をいいことに権力を握っていきます。
正直なところ、萌、不二子のバトルはリアリティがあり、現実にあってもおかしくないですが、ご新造様は現実にはいないだろうキャラクターです。いるかもしれませんが、いたら警察に捕まります。狂気も一定値を超えるとギャグになるという見本です。この人を超えるモンスター姑はほかの漫画ではまず見られないだろうと思います。
不二子曰く
「無策も極まれば上策となる
愚かさも極まれば知にまさる
それこそがトキ子の持つ恐ろしさの本質」
(『かんかん橋をわたって』10巻より引用)
確かに、トキ子は頭がいいというより、何をするかわからないから怖いという言葉が適切な気がします。
ご新造様の息子竜王丸は、川東から離れた川西にある児童養護施設、川西吉祥園の園長をしています。
川西吉祥園の子供たちは、川西地区に捨てられた捨て子です。毎年のように捨てられている子供。竜王丸は世の中が病んでいる、と考えていましたが、後に、母トシ子が川東で生まれた赤ん坊を取り上げ捨てていたことが判明します。
人を疑うことを知らない善人ですが、トシ子が何をしていたのか知ることになって……。
本作を象徴するキーワード「嫁姑番付」。上位に入った嫁たちは強者ぞろいで、それぞれ個性的。考えられる嫁いびりを一覧にしたと言っても過言でないほどバラエティーに富んでいます。
ここでは、ランキング1位から順に、それぞれの嫁を紹介していきたいと思います。ネタバレを含みますのでご注意ください。
1位の千春は、ご新造様の息子竜王丸の嫁です。竜王丸と一緒に暮らしてはおらず、茅ノ街道の小屋で、ひとりで暮らしています。
千春はご新造様に逆らったがために川東を実質追放されますが、おこんじょうの不二子の助言によって何とか生き延びていました。
対ご新造様最終戦では、ご新造様にとどめを刺すべく、竜王丸を説得し、ご新造様の元に連れてくることに成功します。
嫁姑番付2位の蕗江は、子供が産めないことを理由に、姑にいびられていました。人前で殴られ、服は取り上げられるのは当たり前。蕗江のおはぎにだけ砂糖が入っていないなど、食事に関してもひどい扱いを受けています。
実は、子供ができない原因は姑の息子である夫鹿月にありましたが、姑はそれを認めようとしませんでした。それでも蕗江が耐えていたのは、ただ鹿月と一緒にいたかったから。
そんな蕗江は、ご新造様によって、鹿月と引き離されて……。
「嫁姑番付」3位の美津井は寝たきりの舅の介護を5年以上続けています。介護すること自体も大変なのですが、精いっぱい舅を介護する美津井に姑が嫉妬をして、美津井の服を火の見櫓に日常的に引っかけるというのが上位ランクインの最大の理由です。
萌は美津井のお気に入りのワンピースを回収することに成功し、一緒にカラオケに行くなど仲を深めていきます。
権藤木さやかは萌に「嫁姑番付」の存在を教えた人物です。萌に教えた理由は、自分より不幸な人が見たかったから。
萌に自分が5位であることを告げた際の名言がこちら。
「嫁姑の悩みは出口のない底なし沼のようなもの
生半可な慰めや処世法なんて効かないわ」
(『かんかん橋をわたって』1巻より引用)
家では廊下の隅のカーテンで仕切られたわずかなスペースで生活させられるほど虐げられていましたが、長い間我慢してきました。
さやかが吹っ切れるきっかけとなったのは、おこんじょう不二子の言葉。
「あなたの姑のもとで育てられたら
今すやすやと寝息をたてているあの夫が
あなたの息子達の未来の姿よ」
(『かんかん橋をわたって』8巻より引用)
自分を守ってくれもせず、趣味のおもちゃ集めにしか興味のない夫のような男にしたくはないと、さやかは家を出る決心をするのです。
6位の向井は、姑に理不尽なお使いを言いつけられていましたが、「愛する人のお母さんだから」と前向きに考えることで、幸せに暮らしていました。
向井をいびるために不用品をもらってきていた姑でしたが、向井は無垢な心で、姑は不用品が好きなんだと解釈し、姑のために不用品を大量もらってくるようになり、逆に姑が音をあげる結果に。
それを見ての萌の名言。
「あの疑うことを知らない心が
自分でも気づかないうちにお姑さんをやり込めていたんだと思うの」
(『かんかん橋をわたって』3巻より引用)
嫁姑番付7位の鮎の姑はトラブルメーカーとして知られる山背のマムシ。雑草生え放題の土地を畑と言い張り、文句をつけてくるクレーマーです。
鮎は、マスクをつけ、人と関わることを避けることで、極力マムシに文句を言われないようにしていました。家の中で白い歯を見せると、「あたしの事を笑っただろう!」と怒られると言うのですからたまりません。
初めは屈託のない萌に反感を抱いていた鮎ですが、姑のマムシが絡んだトラブル解決に萌が奔走するのを見て態度を軟化。親友と呼べる存在になっていきます。
山丈ちづは、2年前から嫁の避難場所「ほとぼり小屋」で暮らしていました。ご新造様一派に小屋を壊されそうになっても追い返すタフな女性。特技は薪をカナヅチで割ることです。
子供たちがいるから、萌たちの戦いには参加できないと言いつつ、最終戦では両手カナヅチで無双することに。登場回数は少ないですが、この人がいなかったらやばかったかもしれません。
9位はまさかの旧道沿いのすべての嫁。ご新造様が支配する旧道沿いの嫁には自由がありませんでしたが、旧道沿いの嫁の中心人物黒江ミホは3年かけて「嫁だけしか知らない通路」を作ることに成功します。
嫁姑番付10位の戸波は、自分が触ったものに消毒液を吹かれるなどバイ菌のような扱いを姑にされていることを夫に気づいてもらえなかった腹いせに、萌をある事件の犯人に仕立てあげますが、萌にしっぺ返しを食らうことになります。
後の対ご新造様戦では、情に流されやすい萌のサポート役に。
川南から「かんかん橋」をわたって、川東の家に嫁いできた萌。優しい夫には満足していましたが、お米がうまく炊けない悩みを抱えていました。
理由がわからず戸惑う萌でしたが、ある日、姑がタオルで炊飯器から水分を抜いているところを目撃してしまい……。
かんかん橋をわたって (1)
嫁萌VS姑不二子の戦いの火ぶたが切って落とされる1巻。
萌は第1話から、ご飯をよそう際にしゃもじでご飯をこそがれる、湿気で柚餅子をダメにされるなど、姑から嫌がらせを受けます。
中でも、1巻で最悪なのが父親の死に目に会えなかったというエピソード。入院中の父親の容体が思わしくなく、いつ電話がかかってきてもおかしくない状況でしたが、携帯電話を紛失し、家の電話を義理の姉に占領されていたため、容態急変の電話に出ることができなかったのです。
後に、携帯電話を姑の不二子が持っていたであろうことが明らかになり、萌は夜も眠れないほど、精神的に追い詰められていきます。
嫁姑番付3位の美津井と一緒に出かけることになった萌は、カラオケ店で、マスクをした店員と出会います。
不愛想なその店員は、嫁姑番付7位の那村鮎で……。
かんかん橋をわたって (2)
2巻でメインとなるエピソードは婦人会バザー。婦人会のメンバーは毎年「山背のまむし」と呼ばれる性格の悪い姑に妨害を受けていました。
「山背のまむし」は、雑草だらけの2坪の土地を畑だと言い張り、通行止めにしてしまうのです。そこで立ち上がったのはおこんじょうの姑不二子、と思いきや、不二子は直前で萌に「山背のまむし」対策を丸投げします。
元々頭のいい萌はうまく立ち回りますが、「山背のまむし」が那村鮎の姑だとわかり……。
「電気釜の水」「ぬれタオル」「ごはんのしゃもじ…こそいだちゃわん」と言う夫早菜男に、ついに姑の仕打ちに気づいたのかと期待に胸を膨らませる萌。
そんな萌に、嫁姑番付5位のさやかは、川東の男は嫁姑のことに気づかない仕組みになっていると話し……。
かんかん橋をわたって (3)
さやかの言う通り、早菜男は萌が姑にひどい仕打ちを受けていると気づいておらず、川南の嫁の話だと思っていました。「嫁姑の間に問題があるのは川南」という情報が川東の男の間に広まっていたのです。これは後に、ある人物の策略であったことが明らかになります。
そんな絶望の底に落とされるような3巻ですが希望も描かれています。それは嫁姑番付6位向井のエピソード。
これまで基本的に姑にやられっぱなしだった嫁一同ですが、向井は違います。意図したものではありませんが、結果的に姑をやり込めてしまう向井の考え方には、萌だけでなく、もしかしたら読者も一筋の光を見るかもしれません。
姑不二子の仕打ちは相変わらず続いていましたが、他の嫁姑番付上位ランカー達とも交流するようになり、特に鮎とは互いに認め合える存在になってきました。
そんな中、町を巻き込んだ不二子の奇策が発動し……。
かんかん橋をわたって (4)
4巻最大の見どころは何と言っても、おこんじょう不二子がただのおこんじょうではなかったと思わせられるエピソードでしょう。
1年に1度の町をあげた橋の大掃除。男がサボるため、毎年人手が足りず、嫁たちは腕を棒のようにしながら掃除をしていました。
そんな中、不二子の奇策が発動。なんと町の男たちを掃除に参加させてしまうのです。自分では指一本動かさずに男たちを動かした不二子の奇策は……。
川東の嫁たちから悩み相談をされるようになった萌は、トラブル解決に走り回る、ある意味充実した日々を過ごしていました。
ある日、介護の無理がたたってか、嫁姑番付3位の美津井が入院してしまいます。原因の一端は姑にあると考えた萌は、美津井と姑の関係を改善するべく……。
かんかん橋をわたって (5)
本作の転換点とも言える第5巻。この巻では、不二子のように頭を使ってトラブルを解決する萌の姿を見ることができます。
解決の様子をそばで見ていたさやかは、萌の姑不二子と萌の姿がそっくりだと感じるのです。
それを示すように、萌は、姑に冬服をカビだらけにされた仕返しに、姑の着物ダンスから防虫剤を抜き取ります。ここにきて、姑にやられっぱなしだった萌の反撃が始まるのですが、物語は次巻6巻から思いもよらない大規模バトル展開になっていくのです。
自分が北ノ口の人たちを弄んでいたことを自覚し、これでは不二子と同じだとふさぎ込む萌。10日ほど引きこもっていた萌でしたが、生理がこないことに気づき産婦人科に行くと、妊娠していることが判明。
妊娠したくてもできなかった嫁姑番付2位の蕗江に罪悪感を覚えつつ北ノ口に向かいますが……。
かんかん橋をわたって (6)
ついにラスボスご新造様が登場する第6巻。
発言だけを聞くと元気そうな蕗江を見て、萌は蕗江の心のSOSを見逃してしまいます。
萌が初めての妊娠に動揺している間に、ご新造様の暴走が始まり……。
これまでの5巻とはテイストの違う、異次元モンスターキャラクターご新造様の活躍(?)が見所の6巻です。
ご新造様に宣戦布告をした萌は、川東の店で物が買えなくなってしまいます。行く店、行く店で、萌の欲しいものは品切れだからと断られてしまうのです。すべてはご新造様のお達しのせいでした。
川東中を敵に回してしまったかと思う萌でしたが、思わぬ味方が現れて……。
かんかん橋をわたって (7)
思わずガッツポーズをしてしまいたくなる7巻の魅力は、なんと言っても、不二子ホントはいいやつだったエピソードでしょう。
必要なものを買えない萌の代わりに店に行く不二子。店側も、萌の姑が来たということで、萌同様、何も売らない対応をしようとします。
ぞんざいな対応をする店員たちに不二子は、自分が来たことを会社の会長に伝えるように言うのです。これまで最悪な姑と言ってよかった不二子ですが、味方になればこれほど心強い人物はいません。不二子の一言で、川東中の人々の萌への対応が変わります。
悪いやつが物語後半でいいやつになるパターンはよくあるパターンのひとつと言えますが、ここまでキャラクターが変わるのは珍しいでしょう。この振れ幅が『かんかん橋をわたって』の魅力なのです。
かんかん橋をわたって、川南の実家に帰って来た萌でしたが、母のあたたかさに触れ、もう一度川東に戻る決意をします。
その頃川東では、嫁姑番付5位のさやか、山背のまむしなど、そうそうたるキャラクターたちが窮地に立たされていました。
川東に戻った萌は、ご新造様に対抗すべく仲間を集め始め……。
かんかん橋をわたって (8)
対ご新造様戦に備えた萌の仲間集めがメインとなる第8巻。
仲間集めの過程で萌は、嫁姑番付1位の千春との邂逅を果たします。
ご新造様と嫁姑の関係にある千春は茅葺の家に住んでいました。千春が嫁姑番付1位である理由、そして川東の歴史が明かされ、物語はクライマックスへ近づいていきます。
千春の茅葺の家で高熱を出してしまった萌。千春は、萌を助けるため、幼馴染の医者一狼太を頼ります。
一狼太は萌を病院に送りますが、なんと病院にはご新造様がいて……。
かんかん橋をわたって (9)
姑にいびられ、町中を敵に回しと散々な目にあってきた萌ですが、この9巻で、これまでにないどん底に突き落とされます。
ストーリー的には読んでいてつらい9巻ですが、この巻の見どころは、町の過去、不二子の過去が明かされることでしょう。
川東発展の礎を作った、ご新造様の先代市毛家当主の偉業。そして先代の一番弟子と言われた不二子。なぜ川東の姑は厳しいのか。これまでの謎の大半が解消され、あとはクライマックス、最終10巻を残すのみです。
ご新造様によってかんかん橋が封鎖され、川向うにわたることも、川東で買い物をすることもできなくなってしまった萌たちは、峠の抜け道を使って商品を仕入れ、困っている川東の人たちのために自由市場を開きます。
しかし、ご新造様が黙っているはずもなく、川東中の子供たちがさらわれて……。
かんかん橋をわたって (10)
橋を封鎖して町民を軟禁状態にする、町中の子供をさらうなど、ここは日本なのかとツッコミを入れたくなる10巻。ツッコミを入れながら読むも良し、萌たちの倍返しに熱くなるも良し。様々な楽しみ方ができるでしょう。
もはや嫁姑漫画と言っていいのかもわからない状態になりますが、9巻まで楽しめた方であれば10巻も高確率で楽しめるだろうと思います。嫁姑漫画の金字塔『かんかん橋をわたって』をぜひとも読んでみてください!
かんかん橋をわたって (4)
不快感が漂う嫁姑バトル漫画『かんかん橋をわたって』。次々と続く姑からのいびりと、それに立ち向かっていく萌の姿にハラハラさせられる作品です。
どこかで誰しもが感じたことのある人間の微妙な性格の悪さに共感すること間違いなし!それを解決する萌の姿に勧善懲悪のスッキリさも感じられるおすすめ漫画です。
2017年現在、漫画アプリで無料で読むことができますので、この機会にぜひ読んでみてください!
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