面白いミステリー文庫小説10選!ベテラン作家から若手作家まで

更新:2017.6.17 作成:2017.6.17

あなたは読みたいと思うミステリー小説を探す時、不朽の名作の中から探しますか?それとも若手作家の作品から探すでしょうか?そんな新旧に関わらず、「本格派」や「王道」と称される作品を10作集めました。

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推理小説からSF小説へ『天帝のはしたなき果実』

古野まほろによる「天帝シリーズ」の第1作目。メフィスト賞受賞作で、1990年代の大日本帝国という架空の世界が舞台です。作者と同じ名前の主人公・古野まほろが数々数の事件に巻き込まれます。

名門・勁草館高校の吹奏楽部員である、古野まほろ。コンテストに向けて仲間と共に練習をする日々でしたが、ある日突然殺人事件に遭遇することに。殺されたのは、まほろの級友。それも斬首死体となって発見されました。犯人は一体誰か、吹奏楽部メンバーの壮大な推理合戦が開始されます。

著者
古野 まほろ
出版日
2011-10-12

推理小説でもあり、青春小説でもあり、またSF小説の一面も持つ本作。

その型破りな内容と、個性的で濃いキャラクターたちが良くマッチしています。例えば、主人公のまほろは擬音語を頻繁に使用する、という奇妙な魅力を持っています。キャラ同士の会話も見どころのひとつです。

ラストで一捻りされたストーリーで、読み終わった後にもう一度最初から読み直すと、巧妙に張られた伏線に気付くことができるかも知れません。「読者への挑戦」が仕込まれていたり、複雑なストーリーの果てに見事に伏線が回収されるなど、クセの強さがクセになる作品です。

存在しないはずの「黄色いアサガオ」の謎『夢幻花』

中学2年生の蒲生蒼太は、毎年七夕の日に家族で出かける朝顔市で、ある時孝美という同い年の女性と知り合います。メールのやり取りをして、やがてデートを重ねるようになった2人でしたが、何故か父親によって蒼太は孝美と会うことを禁じられ、疎遠になってしまいます。

それから10年。父の三回忌で実家に戻っていた蒼太は、兄・要介を訪ねてきた秋山梨乃と出会います。梨乃によると、要介は身分を偽って彼女に近付き、ブログから「黄色い花」の写真を削除するよう執拗に迫っていたのです。また、梨乃の従兄である鳥井尚人がマンションから謎の飛び降り自殺を遂げ、梨乃の祖父・秋山周治が「黄色い花」が幻の「黄色いアサガオ」だと知ったことで殺害されていました。

著者
東野 圭吾
出版日

この世には存在しないはずの「黄色いアサガオ」を巡る謎。複雑に絡み合ういくつもの事件が、「黄色い花」によって繋がっていくことに。さすが東野圭吾というべき読みやすさがあり、その筆力にどんどん引き込まれていきます。

「世の中には負の遺産がある」という言葉にあるとおり、本作は東野圭吾の原発に対するメッセージ性も含んでいます。そんな負の遺産を受け継ぐ覚悟をした若者の決意と、現代への希望も感じられる作品。

ミステリーという枠だけには留まらない、生き方をも考えさせられる何かが込められています。

盲目の主人公が視た真実『闇に香る嘘』

下村敦史のデビュー作であり、第60回江戸川乱歩賞受賞作。2006年の第52回から応募し続け、9度目でようやくの受賞となった作品です。また「週刊文春ミステリーベスト10」第2位、「このミステリーがすごい!」第3位も獲得しています。

満州で生まれ育った村上和久は、食糧難による栄養不足が原因で、41歳の時に盲目となってしまいます。それから数年。死んだと思われていた兄が日本に帰国。しかし中国人に育てられた兄と何か相容れないものを感じた和久は、彼と距離を置くように。

著者
下村 敦史
出版日
2016-08-11

時は流れて69歳になった和久は、孫娘のために腎臓移植手術の適合検査を受けますが、移植することはできず娘から冷たい言葉を浴びせられます。和久は兄に移植を頼んでみてはどうかと思い立ち、彼の住む岩手へ。移植の件を話すと、兄は頑ななまでにそれを拒否しました。その態度を見た和久は、本当に彼が自分と血の繋がった兄弟なのかと疑問を持ち始めます。

そんな時、和久の元に本物の兄と名乗る人物から電話がありました。そのことも手伝って、和久はますます疑惑を深めていきます。そして、やがて差出人不明の点字の俳句が、彼に届けられるようになります。盲目の人物を主人公とする、社会派ミステリー。目が見えない恐怖が文面を支配し、読者をどこか不安定な気持ちにさせます。

社会派の陰で、家族の絆を感じ取ることもできる作品。ラストで明かされる真相は、それまでの違和感や謎をきれいに拭い去ってくれるはず。中国残留孤児や全盲の人たちの現実がリアルに描かれているのも印象に残ります。

リミットは7日間、その絵の真贋を解き明かす『楽園のカンヴァス』

ニューヨーク近代美術館の学芸員・ティム・ブラウンは、スイスのある邸宅でアンリ・ルソーの大作「夢」とほぼ同じ構図・同じタッチの絵画を目撃します。絵の持ち主である大富豪は、真贋を正しく判定した者にこの絵を譲ると宣言。さらに謎の古書をヒントとして与えます。

リミットまでの期限は7日間。若き研究者が依頼された奇妙な絵画判定。それはやがてピカソとルソーという2人の天才画家が持つ秘密に迫ることに。ライバルの日本人研究者・早川織絵も巻き込み、不思議なアートミステリーが展開していきます。

著者
原田 マハ
出版日
2014-06-27

原田マハの第25回山本周五郎賞受賞作品である本作は、キュレーター(美術館などの学芸員)の肩書を持つ作者ならではの作品。ミステリーではありますが、サスペンス要素や恋愛要素なども盛り込み、読後に爽快感を呼んでくれます。絵画にまつわる様々なエピソードも知ることができ、美術館の見方が変わるかも知れません。

読み進めるごとに、かつて美術館に務めていた経験があり、アートに関して造詣が深い原田マハの美術作品への深い愛情を伺うことができます。もちろん美術に関する知識がなくてもすぐに馴染め、読むと誰もが美術館を訪れたくなる作品。

謎の絵画に迫る研究員たちの信念を描いたミステリーです。

「百鬼夜行」シリーズの始まり『姑獲鳥の夏』

作者の京極夏彦が本作を講談社に持ち込んだことが、後のメフィスト賞創設のきっかけになった作品。「京極堂」こと中禅寺秋彦が活躍する「百鬼夜行」シリーズの第1作目にして、京極夏彦のデビュー作です。2005年に堤真一主演で映画化もされました。

作家の関口巽は、「久遠寺家」にまつわる奇怪な噂を耳にします。古本屋兼神主である友人の中禅寺秋彦ならば真相を解き明かせるのではないかと考えた関口は、彼の元を訪ねます。関口が知りたかった謎、それは「女性が20ヶ月もの間、子どもを身籠ったままでいることができるか?」ということでした。

著者
京極 夏彦
出版日
1998-09-14

実に20ヶ月の間妊娠状態にある久遠寺家の次女、密室から失踪したその夫、久遠寺家が営む産科医院に務めていた元看護師の変死、連続する嬰児の死亡、憑き物筋の呪い……。久遠寺家にまつわる事件は留まるところを知らず、またどれもが揃って奇妙なものばかり。「この世に不思議なことは何もない」と嘯く秋彦は、その呪いを払うべく、久遠寺家の事件に挑みます。

第2作目の『魍魎の匣』と並ぶ京極夏彦の大人気作。そのページ数もさることながら、妖怪や民俗学をはじめとする知識が数多く詰め込まれた本編は、その分野を好きな人にはたまりません。秋彦や関口の他にも、人の記憶を見ることができる探偵・榎木津や、秋彦の妹で雑誌記者の中禅寺敦子など、個性的すぎる登場人物の面々も魅力のひとつです。秋彦が披露する蘊蓄のボリュームにも圧倒されますが、トリックにも絡んで緻密に作られています。

孤島の館に秘められた謎『十角館の殺人』

「館」シリーズ第1作目であり、綾辻行人の記念すべきデビュー作。そして、その後に起こる新本格ブームの先駆けとなった作品です。また、日本のミステリー小説界に大きな影響をもたらした作品とも称されています。

大分県の大学の推理小説研究会一行が、角島という無人島を訪れます。彼らの目的は、島に1週間滞在し、半年前に凄惨な殺人事件の現場となった「青屋敷跡」と、島に残る「十角館」という建物を目にすることでした。角島にはかつて、奇妙な館を設計し続け、謎の焼死を遂げた中村青司という建築家が住んでいたのです。

著者
綾辻 行人
出版日
2007-10-16

建物を散策するなかで、ひとりまたひとりで殺害されていく研究会のメンバーたち。孤島の館という限られた状況の中で、皆を殺していく犯人とは一体誰なのか?毎回驚きのラストが展開するこの「館」シリーズですが、本作もまさに王道というべきストーリーになっています。

本格ミステリー界の牽引役となり、「綾辻以降」という言葉も生み出した本作。物語の展開からトリックに至るまで、ミステリーと言えば綾辻行人、と再認識させられる作品になっています。

有名ミステリー索引へのオマージュや、各キャラクターの名前も注目のポイントです。

音楽とミステリーの優雅な融合『さよならドビュッシー』

ピアニストの岬洋介が活躍する「岬洋介シリーズ」の第1作目。「このミステリーがすごい!」大賞受賞作で、25万部を売り上げました。作者の中山七里が、当時流行していた漫画『のだめカンタービレ』からインスピレーションを受けて執筆した作品です。

ピアニスト志望の香月遥は、特待生として音楽科への推薦入学が決まっていました。スマトラ沖地震で家族を失い、香月家に身を寄せている従姉妹の片桐ルシアと、姉妹のように仲良く暮らしながら、練習に明け暮れる毎日。そんな2人をある日悲劇が襲います。香月家当主・香月玄太郎の部屋から出火し。遥たちのいる香月邸の離れが全焼してしまったのです。

著者
中山 七里
出版日
2011-01-12

遥は全身に大火傷を負いながらも一命は取り止めますが、助かったのは何と自分だけでした。さらに指も思い通りに動かせなくなってしまったことに大きなショックを受けます。そして、そこにさらなる衝撃が。香月家の顧問弁護士・加納が持ってきた玄太郎の遺言書に「総資産12億7000万円のうち、半分を遥に譲り渡す」旨が書かれていたのです。

突然莫大な遺産の相続人となってしまった遥は、クラスメイトから嫌味を言われたり、階段や松葉杖に細工をされたりと危険な目にも遭い、ピアニストの夢を諦めそうになります。そこへ、岬洋介という男がレッスンを買って出てくるのですが……。

音楽とミステリーの融合、そして少女の成長を描いた物語でもある本作。遥の周囲で起こる不可解な事件と、その犯人を追う展開は、やがて衝撃のラストに繋がっていきます。

驚愕の死体トリック『占星術殺人事件』

1981年に発売された、島田荘司のデビュー作。大人気シリーズ「御手洗潔」シリーズの第1作です。日本での評価だけでなく、イギリスの有力紙「ガーディアン」上でも「世界の密室ミステリーベスト10」の第2位に輝きました。

1936年2月26日、画家の梅沢平吉が密室状態の自宅のアトリエで殺害されました。さらに、現場に残された遺書には奇怪な内容が。それは若い6人の処女から、それぞれの星座に合わせた体の一部分を切り取り、それらを合成して「アゾート」という完璧な女性を造るというものだったのです。

著者
島田 荘司
出版日
1987-07-08

その後、実際に6人の姉妹が殺害され、体の一部分が切り取られた状態で発見されます。「占星術殺人事件」と呼ばれたこの事件はついに解かれることはなく、やがて迷宮入りとなりました。

それから40年後、御手洗潔の占星学教室を、飯田美沙子という人物が訪れます。亡くなった元警官の父親の遺品を整理していたところ、「自分が占星術殺人事件で切り取られた体のパーツを運んだ」ということが書かれた手記が見つかったというのです。

一連の事件に興味を示した御手洗は、親友の石岡和己と共に調査に乗り出します。「変わり者の探偵と、それに振り回される相棒」という図式は最近では一般的になりましたが、高圧的で変人の御手洗の強烈なキャラクターと、石岡の掛け合いは、今読んでも新鮮に感じます。そして、本作を呼んだ人は誰もがそのトリックに驚くはず。壮大なスケールとこれぞという王道パターンは、ミステリー好きであれば必読です。

便利な現代社会に潜む闇『火車』

刑事の本間俊介は、職務中に負った傷により現在は休職中。ある日、亡くなった妻・千鶴子の親戚である栗坂和也が、本間に失踪した婚約者の関根彰子を探して欲しいと頼みに来ます。クレジットカードの審査中、自己破産者だということが判明した彰子は、次の日から職場や住んでいる所から忽然と姿を消したというのです。休職中の本間は、雑誌記者たちを使って捜査を開始します。

しかし、捜査の中で勤め先での彰子と自己破産をした彰子は、名前が同じながら別の人物であることがわかります。和也の婚約者の関根彰子は、本物に成りすました別の誰かなのか?そして、なぜ彰子は姿を消さなくてはならなかったのか?自己破産者に隠された真実が、やがて全てを浮き彫りにしていきます。

著者
宮部 みゆき
出版日
1998-01-30

宮部みゆきによるこの小説は、映画化やテレビドラマ化もされました。血生臭い殺人事件ではなく、クレジットカードと自己破産という身近なテーマを扱ったミステリー作品で、身近であるが故に、よりリアルな恐怖となって読者を戦慄させます。私たちが持っているクレジットカードの知識は本当に正しいものか、そしていかに弱いかを思い知らされます。

しっかりとしたコンセプトがあり、非常に読みやすい作品です。カード社会の闇を描き、便利さの陰に潜む本当の怖さを描いた本作を、あなたはどう読むでしょうか。

決して他人事ではない出来事に考えさせられる社会派小説でもあります。

真実は最後に明かされる『満願』

2014年の「週刊文春ミステリーベスト10」第1位、2015年「このミステリーがすごい!」国内編第1位、山本周五郎賞受賞など、数々の賞を受賞した作品。

青春小説の旗手・米澤穂信が放つ「日常の謎」を描いた6編の短編集です。各物語はそれぞれ独立しており、完成度の高い作品となっています。

著者
米澤 穂信
出版日
2017-07-28

DV被害者の通報に駆けつけ、そこで殉職した警官の葬儀で巻き起こる物語を描いた「夜警」。突然姿を消した彼女を追ってある温泉宿に来た男が、脱衣所で誰かの遺書をみつける「死人宿」。主人公が学生時代に下宿していた家の内儀が出所することになり、何故かこれまで強く望んでいた控訴を突然取り下げる表題作「満願」。どの作品も人間の執着心とそこに向かう願いの強さ、誰かの歯車が狂っていく様が綴られています。

いつも物語の最期に明かされる真実。誰もが持つ本当に大事なもの、そして願いが数々の事件を呼び起こし、謎を連れてきています。暗く心にのしかかる物語が多めですが、非常にバリエーション豊かに描かれており、厭味にならず楽しんで読むことができます。

ミステリーといってもどれもが死体とトリックだけではなく、非常にバリエーション豊かな作品が揃っています。自分なりの面白い小説をぜひ見つけてみてください。