※注意 今回ご紹介する作品は非常に刺激の強いものが多くあります。スプラッタやグロテスクに耐性のない方はご注意ください。この警告に同意頂ける方は、夏に向けておすすめしたいスプラッタホラー漫画5作品をどうぞご覧ください。
ある時、女性が生きたまま大型犬に食い殺されるという凄惨な事件が起こりました。そこに残された意味深なメッセージ、「ドッグフードの刑」。それを端緒に、次々と発見される変死体と謎のメッセージ。それらは1人の連続殺人犯の仕業だろうと思われていました。
雨の日だけ起こる犯行、そして捜査線上に浮かび上がるカエルのマスクを被った不審人物。事件を担当する警察官、沢村久志は謎の「カエル男」を追ううちに、自身の周囲にまで犯人の魔の手が及んでいることに気付いてしまい……。
- 著者
- 巴 亮介
- 出版日
本作は2013年から「週刊ヤングマガジン」に連載されていた巴亮介の作品。2016年には実写映画化、同映画と連動したスピンオフドラマがネット配信されました。
事件の鍵を握る犯人、カエル男。コミカルなマスクとは裏腹に、残忍な手口で犯行を繰り返すシリアル・キラーです。彼は一体何者なのでしょうか。愉快犯?それとも快楽殺人者?
当初、年齢も性別もバラバラで、無関係だと思われていた被害者達。しかし、徐々に彼らの間に1つの共通点があることが判明します。それは彼ら全員が、かつて起こった惨たらしい猟奇殺人事件裁判の裁判員を務めたということです。その裁判では有罪が下されましたが、被告人は罰を受ける間もなく自ら命を絶っていました。
つまりは冤罪、不当判決に恨みを抱く被告人の関係者による復讐……?沢村刑事はなおも事件を追及し続けます。これはそんな単純な事情であるはずがありません。
犬にした仕打ちを思い知らせる「ドッグフードの刑」。母親のつらさをわからせるために体を切り落とす「母の痛みを知りましょうの刑」。他にも、「ずっと美しくの刑」、「均等の愛の刑」、「針千本のーますの刑」など……。
作中では吐き気を催すおぞましい殺人が繰り返されます。グロテスクの中にある種の偏執的な美意識が感じられる凶行。デヴィッド・フィンチャー監督の映画『セブン』を思わせる重層なストーリー。果たしてこの連続殺人を止めることが出来るのでしょうか?犯人は一体誰なのでしょうか?そしてその真意とは一体。
自らを雨宮一彦と名乗る男、小林洋介。彼は元々は刑事でした。しかし、捜査中の犯人が恋人の本田千鶴子を被害者に選んだことで復讐に走ります。犯人殺害をきっかけにして人格が変わり、雨宮一彦として生まれ変わりました。
実刑を受けて刑務所で服役した雨宮。彼は出所後にプロファイリングの腕を買われて、伊園磨知の犯罪研究所に雇われます。以後、雨宮はその所員として、左目にバーコードを持つ犯罪者の事件に関わっていくことに。
実は雨宮自身の目にもバーコードがあり、事件を暴く過程で、彼は自身の出生の秘密を知ることになり……。
- 著者
- ["田島 昭宇", "大塚 英志"]
- 出版日
本作は1997年から「月刊少年エース」等で連載されていた大塚英志原作、田島昭宇作画の作品。ショッキングな作風で各界に論議を巻き起こした本作は、現在のサイコホラー、サイコスリラー作品の潮流を作った要因と言っても過言ではありません。
漫画から派生して、小説、ドラマCD、実写テレビドラマ、舞台演劇と幅広く展開されました。そのどれもが基本的な設定を共有しながら、話の筋がまったく異なるという特異な作品となっています。
連載第1話から、本作は当時の読者の度肝を抜きました。両手両足を切断された女性が陵辱され、それでもかろうじて生きている(それも加害者の意図的なもの)というショッキングなビジュアル。少年漫画では許されないような、あまりにもセンセーショナルな表現なのです。
全24巻のストーリーは先の展開が一切読めません。それもそのはず。原作者の大塚が創作教室や指南本で語っていますが、最初に仕上げたラストまでのプロットを敢えて外すやり方で作るということをしているそうです。しかも実は作画の田島の方でも、原作に反する進行をしていたと、連載終了後に明かされました。
原作と作画の乖離。作中のキーワードにもなっている多重人格そのままに、まるで別々の思惑が働いていたわけです。そのため物語は無軌道な方向へ向かい、予想外の展開になったのです。
続発する一連のバーコード殺人者の事件。その裏で暗躍する謎の組織「学窓(ガクソ)」。全編に渉って影を落とす、「ルーシー・モノストーン」なる人物の影響……。予想不能のサイコ・サスペンスの決着はどのように着くのでしょうか?
人混みで賑わう12月の商店街。そこへ突如、泥まみれの全裸男が現れました。いきなり血を吐いたことで、そばにいた大学生は驚き、彼を突き飛ばしてしまいます。その結果、突き飛ばされた彼は、後頭部を強打して死亡。その男の遺体を検死したところ、「フィラリア」という寄生虫が発見されました。
男の身元を追ううちに、男は何者かによってフィラリアに人為的に感染させられたことが判明します。誰が、一体何の目的でそのようなことをしたのか。捜査が進む一方で、男を突き飛ばした大学生の雨宮の体に異変が起きていました。彼は全裸男の血を浴びていたのです……。
- 著者
- 筒井 哲也
- 出版日
- 2015-04-17
本作は2004年から「ヤングガンガン」で連載されていた筒井哲也の作品。寄生虫を用いた異常犯罪と、それを追いかける警察関係者の息詰まる攻防を描いたバイオ・ホラー・サスペンスです。
本作の希有な特徴、それは犯人による目的の犯罪はすでに起こされてしまっている、ということです。こういったサスペンスものでは犯行と捜査が同時進行、あるいは捜査が一歩遅れている、というのが通常でしょう。本作では冒頭ですでに成されてしまっており、焦点は事件の進行をいかに食い止めるか、犯人の目的と所在をどうやって暴くかに絞られています。
フィラリアは血液を媒介とする感染力の強い寄生虫で、感染者は即死亡することこそないものの、ホルモンバランスや自律神経、基本的欲求が崩壊するなどの症状が起こる危険があります。
また、その性質上、冬季の日本では宿主となる蚊などの吸血性昆虫が活動していないため、作中では当初感染拡大の心配はないものとされていました。ところがその目論見は大きく外れ、最悪の事態に……。
犯人はある目的を持って行動する思想犯。犯行を警察に察知されても問題ないよう計画を立てる、恐るべき知能の持ち主でもあります。
それを追うのは若い女性刑事の井上菜緖と、ベテラン刑事の溝口健です。柔軟な発想と鋭い洞察力の井上と、ベテランならではの手腕が光る溝口の強力なコンビ。
犯人の恐るべき思想と、それを実行に移した凄まじい執念。グロテスクな寄生虫を利用した異常犯罪で、犯人が成し遂げようとする目的、計画とは一体なんなのでしょうか。
『マンホール』については<漫画『マンホール』リアルな社会派ホラー!結末までの魅力をネタバレ紹介!>の記事で紹介しています。
主人公の斑木(まだらぎ)ふらんは表向き、天才科学者の斑木博士の娘ということになっています。その実態は、博士が生物工学の粋を凝らして生み出した人造生物、その最高傑作だったのです。
博士に負けず劣らずの頭脳を持ったふらんは、外科技術の手腕を余すところなくふるって、身体的問題を抱えた依頼人の願いを叶えていきます。少しばかり、依頼者の希望とは違った形で。
- 著者
- 木々津 克久
- 出版日
- 2007-11-01
本作は2006年から「チャンピオンRED」で連載されていた木々津克久の作品。1話完結の短編スタイルで、毎回のように規制スレスレのエログロシーンが描かれるのがお約束。
ふらんの由来は言わずと知れた「フランケンシュタインの怪物」。ちなみにフランケンシュタインとは造った博士の名前で、頭に電極を刺したつぎはぎだらけの大男とは別人です。
ふらんはその名の通り、頭に電極があり、体中につぎはぎがあります。それ以外は至って普通、もとい、美しい少女の姿。極めて優れた知能の持ち主ですが、価値観が常人離れしているため、毎回の問題に対する解答がさらなる問題を引き起こすことに。
血や内臓が飛び出すのは日常茶飯事で、目を覆いたくなるような惨状が飛び出てくるのが本作の特徴。珍しくまともに終わった話にも、裏表紙にて上げて落とす、といった顛末が語られることがしばしばあります。
履き違えた目的のために手段を選ばない、傍迷惑以外の何物でもないふらんの行動。彼女の周りには、彼女と同じかそれ以上の曲者ばかりです。生体兵器のヴェロニカ、人面猫の沖田、歩く臓器保管庫の包帯女アドレアなどなど。
一見萌え絵で、その実ホラー、読み進めればブラックコメディと、1作で2度も3度も楽しめる作品です。
主人公の岸田純は生まれ持った特異体質のせいで、幽霊が見える少年でした。そしてまた彼は病弱でもあり、怪異が近付くと鼻血が出ることがありました。ある日、彼が保健室で休んでいると、彼は養護教諭・吉本の後ろに行方不明になっていた早川涼子の霊を見たのでした。
早川に導かれ、表札に「吉本」と書かれた怪しげな住宅にたどり着いた岸田。床にはなぜか、人間の耳と思しき物体を発見します。奇妙に思っていた岸田は、突然何者かに襲われてしまいました。その正体は、吉本。彼女は殺人鬼の弟を匿っている――という妄想を抱いており、早川をはじめとする多数の生徒を惨殺していたのです。岸田はそれに巻き込まれますが、なんとか免れ、事件は解決。
早川の死体も発見されるのですが、なぜかその後も彼女は岸田について回り、異変に巻き込まれる岸田を何度も助けることになります。
- 著者
- ひよどり祥子
- 出版日
- 2012-08-20
本作は2011年から「チャンピオンRED」で連載中のひよどり祥子の作品。元々作者はうぐいす祥子名義でホラー漫画を描いており、本作においてもその手並みはいかんなく発揮されています。
物語は基本的に1話完結の短編方式ですが、内容は正統派ホラー漫画といった具合。過剰な演出も過多の謎もなく、どろどろしたおどろおどろしい怪異が主人公達を襲います。どうにもならない理不尽な展開はまさしくホラー。
本作の特徴は何を置いても、とにかく幽霊である早川の存在が際立っていることです。彼女は幽霊だからなのか喋ることが出来ず、ほとんど表情らしい表情を見せません。しかし、はっきりとした自身の意思はあるらしく、身振り手振りで思っていることを伝えようとします。時には無表情な彼女がオーバーアクションをすることで、くすりとした笑い誘うこともあります。
作中の時間経過によって季節が移り変わるのですが、それに合わせて早川のセーラー服も夏服や冬服に変化するという細かい描写も。幽霊に季節感は関係ないと思うのですが、彼女なりのこだわりでしょうか?そういうところも可笑しく、可愛らしく感じられます。
岸田は次々と謎の異変に襲われ、そのたびに早川に助けられます。しかし、会話を交わすことが出来ないので彼女の本心はわかりません。生前はそれなりに感情豊かだった早川。幽霊になってからは常に無感動な表情なので、そういうところでも彼女の死者としての性質を感じさせられ、胸が締め付けられます。
早川が岸田のそばを離れないのには、ある事情が絡んでいるようです。それは彼の特異体質にも関わることなのですが……。岸田はいつか、早川の声なき声を聞くことが出来るのでしょうか?
いかがでしたか?人間が根源的に恐れるもの、それは避けられない死です。その死を真っ向から描くホラー漫画は、逆説的に生命を問いかける試みと言えるのかも知れません。凄惨な作品の中から、あなたはどのようなメッセージを受け取るのでしょうか?