大竹文雄の著書おすすめ5選!オイコノミアでもおなじみ。

更新:2021.12.21

経済とは何だろう。経済学で何がわかるのだろう。気にはなってもいざ経済にまつわる本を手にとろうとすると「難しいかもしれない」と二の足を踏んでしまうことがありますよね。そんなときにぜひおすすめしたい著者「大竹文雄」の本をご紹介します。

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「オイコノミア」人気で大注目の経済学者「大竹文雄」とは?

人は生きている限り、お金にまつわる物事から完全に離れることはできません。しかし、お金や数字の話になると、苦手意識が先に立ってしまう人も少なくないものです。

経済とは要するに、苦手に思う人も多いけれど、関心を持たずにはいられない分野です。その証拠に、巷で話題になっている、経済学をテーマにしたNHKEテレ番組「オイコノミア」をご存知ですか?お笑い芸人であり芥川賞作家でもあるピースの又吉直樹が出演していますが、一緒に交互で出演する講師の一人に、経済学者の大竹文雄がいます。

白髪交じりの髪に、丸メガネでやさしい笑顔のナイスミドル。大竹文雄は大阪大学教授でもあります。緻密なデータ収集とそれに基づく鋭い分析によって、日本の行動経済学をリードしてきた学者の一人であり、数多くの著書を世に出しているのです。

大竹文雄の本では、本格的な経済学の思考ロジックが展開されますが、取りあげられるテーマは身近なものがほとんどです。「経済学」というと敬遠してしまいがちな人にも、読みこなすことは難しくありません。

そんな大竹文雄の著作の中から、おすすめの5冊をご紹介します。

語れたらちょっとカッコイイ経済ネタが満載『経済学のセンスを磨く』

「軽減税率」という言葉をご存知かと思います。では説明してください、と言われると、口ごもってしまう気がしませんか?

他にも、オリンピック誘致のために世界各国が懸命に働きかけていますね。そんなオリンピックが、私たちの生活にどう影響するのかご存知ですか?

雑誌を読んでいて、もしくはテレビを見ながら、ふと「なんだろう?」と疑問にとまる話題はたくさんあると思います。しかし日々の慌ただしさについついまぎれて、よく知らないまま流れてしまいがちだったりしますよね。それらについて、経済学的な見地から「どう考えればいいのか」を解説してくれるのが本書です。

著者
大竹 文雄
出版日
2015-05-09

経済学の本というと、難解な数式が次々に登場したり、聞いたことのない専門用語が羅列されたりというイメージを持つ人もいるでしょう。「経済学」という言葉がタイトルに入っているだけで敬遠する人もいます。

しかし、本書ならその心配はいりません。難しく受け取られがちな経済の問題を、どう整理し、どういう見方をすればシンプルに考えることができるのかについて、経済学に慣れ親しんでいない人にもわかりやすように書かれているからです。

ネット連載されていたコラムを再編成した一冊なだけに、テーマ毎の文量も短く、サクサク読み進めることができます。教養が深まり、スピーチネタにもうってつけの話題が豊富で、ちょっとしたスキマ時間に開いて読むのにおすすめです。

人のぬくもりを感じられる経済学を知りたい人へ『脳の中の経済学』

本書が面白いのは、経済学者である大竹文雄と、脳神経科学者の田中沙織、科学技術社会論研究者の佐倉統という、まったく分野の異なる3者による対談形式で書かれている点です。

なぜ、3者が議論することに意味があるのでしょうか。それは、大竹文雄の肩書でもある「行動経済学」「神経経済学」の意味にもつながってきます。

著者
["大竹 文雄", "田中 沙織", "佐倉 統"]
出版日
2012-12-29

経済学は基本的に「人は合理的に考える」ことを前提とします。人は判断ミスをせず、必ず得する選択肢を選ぶと仮定されているのです。しかし、私たちは何かと失敗をしますよね。質の悪い高額な商品を買ってしまったり、無謀な投資をしてしまったり、不必要なものを買ってしまったり。そんな経験は誰にでもあるはずです。

私たちはロボットではないから、間違えます。現実にあるそんな当たり前の人間の行動を、そのまま経済学に取り入れようとするのが「行動経済学」です。そして不合理な人間の行動には「脳」が関係しているのでは?という「神経経済学」の研究につながっていきます。

脳のしくみの中に、人の意思決定を決める何かが秘められているのではないか。この点から、経済学者と脳神経学者、そして科学者が結びつき、議論を交わしていくのが本書です。

机上の学問であるはずの経済学が、人がもつ機能でありながら未だ解明仕切っていない「脳」という人体の一部分とつながっていく驚きの展開が、座談会形式で紐解かれていく面白さを、ぜひ味わってみてください。

ダイエットしたいなら経済学を学べ!?『こんなに使える経済学――肥満から出世まで』

「経済学」という言葉から連想しようとすると、金融、投資、所得、儲け話、損得の話……そんなワードが出てきませんか?しかし、経済学が解明できるのは、お金にまつわる話だけにとどまりません。その事実を実感できるのが、本書です。

大竹文雄が編者となっている本書には、およそ経済学とは関係のなさそうなテーマについて、経済学のロジックをあてはめることで、よりわかりやすく紐解くことに成功しています。

著者
出版日
2008-01-01

なぜ太る人もいれば、やせる人もいるのか。タバコはなぜ中毒になるのか。教師の質はなぜ低下したのか。サザエさんの年齢を知る方法とは。耐震偽装を防ぐには。日常にあふれるこうした疑問を考えるとき必要なものとして、本書がポイントとしているのが「インセンティブ」です。ちなみにこの「インセンティブ」とは、「目的を達成させるために必要となる、外部からの刺激」のことです。

「人々のインセンティブを考えてみて、社会で発生している問題をとらえ直し、その処方箋を考える」という経済学的な思考ロジックが、私たちの目には見えていなかった物事の新しい側面を明らかにしてくれます。

よくありがちな数式や理論、専門用語が次々出てくる経済学の本に飽き飽きしている方など、この本を手にとってみると、あらためて経済学の面白さに気付かされるはずです。1テーマごとに短くまとめられているので、読書の箸休めにも最適な一冊だと思います。

経済から見えてくる「日本らしさ」とは『競争と公平感―市場経済の本当のメリット』

ここ数年、テレビのニュース番組や新聞などで「格差」という言葉を目にする機会が増えました。所得格差、男女格差、能力格差……。格差にもいろいろとありますが、本書は市場経済と格差にまつわる話を、さまざまなデータ分析をもとに繰り広げていきます。
 

著者
大竹 文雄
出版日
2010-03-01

「格差」というものから目を背けられない気がしてきた私たちは、その「格差」に関する何に疑問を抱いたらいいのでしょうか。本当に自由市場は信頼していいの?貧しい人がいるからといって国が金銭的に援助することが必ずしも正しいの?学歴や能力によって収入に差があっていいの?気になることは尽きません。

日本人としての私たちがまず思い浮かべる疑問を、グローバルな視点から見ると、それが実に日本的、特徴的であり、世界ではもっと違う視点から経済や格差について考えられていることが、本書で示される数々のデータ分析によって明らかになっていくのです。

経済という合理性を前提にした分野において、人の感情や文化による偏りが、ものの見方を歪ませてしまったり、理解が深まらなかったりする原因になっていることが、グラフや表の形で目の前に提示されていきます。

著者の方から考えるべき疑問が提示され、そのために必要なデータが明らかにされ、データをどう分析すれば何が見えるのかが解説されていく。実にテンポのよいその繰り返しは、分かりやすい授業を聞いているかのようです。おかげで難なく、市場競争とは何か、公平感とは何かに対する理解を深めていくことができます。

格差とは一体何なのか、また、私たちは格差というものをどう捉え、どう受け止めたら良いのでしょうか。今の日本を知るのにおすすめの一冊です。

「格差」の正体に迫った名著『日本の不平等』

本書が刊行された2005年、世間に広く「格差」の認識が広まった頃で、「ジニ係数」という経済格差の指標の1つが増大していることを理由に、富裕層と貧困層の間にある所得格差、貧富の格差が深刻化していることが指摘されていました。このとき、この格差論争にまったく新しい考え方を投じたのが『日本の不平等』だったのです。

本書は、サントリー学芸賞、日経・経済図書文化賞などの複数の賞を獲得するなど、経済界で多くの注目を集めた一冊となりました。
 

著者
大竹 文雄
出版日
2005-05-24

大竹文雄の説が独特であったのは、それまで私たちが「格差が拡大している」という認識を持っていたのが、実は日本社会の高齢化や、大家族世帯が解体して単身者世帯が増えるという世帯構造の変化によって「そのように見えていただけ」だ、と結論づけたからでした。

だからといって著者は「格差がない」と言いたいのではありません。若い層の消費格差の拡大など懸念される点についても取りあげられています。ただデータを正しく集め、分析し、格差というものを正しく知らなければ、必要な対策を取ることができないと、莫大なデータを丁寧に解析して「格差の本当の正体」に迫ったのです。

数年前に出版された本書ですが、今読んでも、内容はまったく色あせていないと感じられます。日本社会の移り変わりを知ることができますし、その時代の在り方が現状の社会事情にどう繋がっているかが見えてきます。先の4冊に比べると専門的な話も多いので、経済学にどっぷり浸りながら、世の中のあれこれについて思いを巡らせたいときにおすすめです。

大竹文雄は、経済学の初心者にも読みやすい著作もあれば、研究テーマについてまとめられた経済学をリードする力を持つ著作まで、レパートリーがとても豊富な著者の一人です。今の日本を経済の面から知りたいときには、ぜひ手にとってみてください。

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