ここ10年ほどブームのマインドフルネス。生活に取り入れている人も増えています。ここでは、マインドフルネスの方法、社会的な流れ、専門家の考察など、多角的に学べる本を5冊ご紹介いたします。
日本マインドフルネス学会副理事長であり、テレビや雑誌で取り上げられることの多い熊野宏昭の書いた入門書です。
マインドフルネスの実践面と知識面がバランス良く盛り込まれた『実践!マインドフルネス』。直接指導を受けている感覚で、語り口もやさしく、スラスラ読むことが出来ます。
冒頭から、不安やうつ、緊張を「なくそうとしない、そのままにしておく、というのがマインドフルネスのポイントです。」と分かりやすく説明してくれます。
- 著者
- 熊野宏昭
- 出版日
- 2016-08-26
この本は、はじめに「マインドフルな状態」とはどういう状態か、逆の「マインドレス」というのはどんな時の事を言うのか、日常の身近なことを例えにあげて詳しく説明しています。
次に、ベーシックなマインドフルネス瞑想の方法が説明されます。雑念から意識を切り上げる方法について「瞑想している時に、スマホに電話がかかってきたようなものです。…出る時は、そのときまで何か考えていたとしても、考えを切り上げているはずですよね。それと同じ感じです。」と、繊細な感覚のニュアンスが、非常に分かりやすく解説されます。
さらに、初めてマインドフルネスを体験した人たちからの生の声も収録。初心者である読者と同じ目線である参加者さん達からの感想、そしてそれに優しくコメントしていく熊野のやり取りは、共感と安心を与えてくれます。
これから始めてみたい人、もっと自分に自信を持ちたい人におすすめです。
元祖マインドフルネス、ティク・ナット・ハンの著作です。ティク・ナット・ハンは、ベトナム生まれフランス在住の禅僧、人権運動家です。世界中を股にかけ、仏教を応用した瞑想リトリートの第一線で活躍しています。
この『恐れ~心の嵐を乗り越える深い智慧~』は、心の中の恐れをテーマとして深く掘り下げ、恐れを受け入れ、乗り越える方法について書かれています。
- 著者
- ティク・ナット・ハン
- 出版日
- 2015-11-28
前編、ティク・ナット・ハンの語り口調で書かれたこの本。まるで元祖マインドフルネスを直接指導してもらっている気分になります。
お坊さんからありがたいお話を聞いているような、読んだだけで穏やかな気持ちになる本です。ティク・ナット・ハンは、マインドフルネスについて、マインドレス状態について、恐れが心に起こるメカニズムについて、心に訴えかける詩的な文章を綴っています。
その詩的な文章を一つ引用してみましょう。
「マインドフルネスと集中をもって一杯のお茶を飲む時、その中に雲が存在することがはっきりとわかります。大切な人はけっして失われてはいません。姿が変わっただけなのです。」
暖かで詩的なニュアンスをもって巧みに説法をする文章は素晴らしいものがあります。
他の本と大きく違うのは、「サンガ」の存在を強調していることではないでしょうか。仲間とともに、子供と手を繋いでマインドフルネスを行うことによって、安らぎのエネルギーが集合的に起こり、これが癒やしに繋がると強調します。
元祖を味わってみたい人、癒やしの言葉を受け取りたい人におすすめです。
スリランカ出身の僧侶であるアルボムッレ・スマナサーラの著作。この『自分を変える気づきの瞑想法』では、瞑想をブッダの発見した心の科学であるとします。
そして、この科学は必ず結果が出て、悩みが消え、生きるのが楽になると断言します。
- 著者
- アルボムッレ・スマナサーラ
- 出版日
- 2015-03-27
前編に渡って、瞑想を心の科学ととらえ、明確な語り口が印象的な本です。
「わずか数日で、影が人から離れないように、成功と幸せが自分のものになる確かで簡単な方法があることを知っていますか?」という魅力的な言葉から始まる本書。筋トレのように心をトレーニングする方法が瞑想だと説き、そのやり方を非常にロジカルに、明確に説明します。
通常イメージされる座る瞑想以外にも、立つ瞑想、歩く瞑想、食事の瞑想、嫌なことがあった時の瞑想を詳しく解説しています。
よくある質問やつまずきやすい点についての明確なQ&Aもあり、独学でも続けやすい形式になっています。
効果を出したい方、瞑想を掘り下げてみたい方、宗教性に懐疑的な方におすすめです。
話題に事欠かない精神科医、香山リカがインタビュアーとなって、各方面の専門家とマインドフルネスについて語る『マインドフルネス最前線』。
哲学者永井均、初期仏教長老アルボムッレ・スマナサーラ、宗教人類学者長澤哲、心療内科医熊野宏昭の各者各様な語り口はどなたも個性的で、ハッとさせられる批判も容赦なく盛り込まれています。
マインドフルネスの裾野の広さを感じるとともに、その問題点にも鋭く切り込み読む人を引き込みます。
- 著者
- ["香山リカ", "永井均", "アルボムッレ・スマナサーラ", "永沢哲", "熊野宏昭"]
- 出版日
- 2015-10-24
この本は対談形式で統一されているため、まるで座談会やセミナーに参加したような感覚が味わえます。会話の空気感や各人の個性が魅力的なので、少し難しいと思っても会話の面白さで読ませるパワーがあります。
第一章では、哲学者永井均が、自身の座禅、瞑想体験から、専門である哲学との関係性を語ります。物事を徹底的にひっくり返して見る論調はユニークで魅力的です。
第二章は、初期仏教長老アルボムッレ・スマナサーラ。私たちがお坊さんに対して抱く、優しく静かなイメージとはかけ離れた、ユーモアたっぷりで批判的精神を持った氏のトークは非常に軽妙です。
第三章では、宗教人類学者でチベット密教の修行者であり脳科学の研究者でもある長澤哲。彼にしかできない、脳科学と密教を横断するトークはハッとするものがあります。
最後は心療内科医の熊野宏昭。日本マインドフルネス学会の副理事長です。心療内科とマインドフルネスの取り組みについて、優しい語り口で分かりやすく解説してくれます。
マインドフルネスを取り巻く状況と、その批判的な面についても知りたい方に。
「オシャレ」「イケてる」「かっこいい」瞑想、マインドフルネス。このイメージを作ったのは、Google社ではないでしょうか。
『グーグルのマインドフルネス革命』は、Googleはなぜマインドフルネスに取り組んでいるのか。マインドフルネスの化学的な根拠とは。マインドフルネスがビジネスに与えた影響とは。などなど、「ビジネス」と「効用」を中心に、実践にも活かせる内容が盛り込まれた本です。
- 著者
- サンガ編集部
- 出版日
- 2015-05-25
この本は、グーグルの人材開発部門でマインドフルネス導入の中心的人物、ビル・ドゥエインのインタビューを軸としながら、マインドフルネスの補足説明が間に挟まる形で構成されています。
理系のエンジニアが瞑想と出会うきっかけ、そしてその意味とは。なぜグーグルはマインドフルネスを導入するにいたったのかなどを詳しく、そしてフランクに語ってくれます。
第5章「マインドフルネスが宗教性を排除した理由」では、マインドフルネスが仏教のヴィパッサナー瞑想を由来としている事を説明し、マインドフルネスでは宗教性を排除している理由について語ります。グーグルでのマインドフルネス普及の第一人者が語る、宗教性への繊細な気遣いは興味深いです。
第7章では「マインドフルネススタートガイド」として、ビル・ドゥエインの語りかけ口調によるマインドフルネスのガイダンスが掲載されています。
グーグル社と同じマインドフルネスプログラムを受けたい方、アメリカにおける瞑想の研究と広がりを知りたい方は必読です。
優しい言葉に触れてみたい方から、明確な効果を期待する方まで楽しんで読める5冊をご紹介いたしました。忙しい日々、帰宅後無為に過ごしてしまう時間のうち10分だけでもマインドフルネスに切り替えて、落ち着いた心を手に入れてみませんか。