『よつばと!』14巻が待ちきれない!ほのぼの日常系漫画の魅力を徹底考察!

更新:2020.12.24 作成:2017.6.26

連載開始から既に単行本が13巻まで発売されている『よつばと!』。ゆっくりとした連載ペースでゆっくりとした時間が紡がれていく作品の魅力はどこにあるのでしょう。淡々と過ぎゆく日常がリアルに描かれる世界を改めて確認してみましょう。

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ほのぼの日常系漫画の最高峰『よつばと!』をあれこれ考察!

著者
あずま きよひこ
出版日

夏休みに入る前日から『よつばと!』の物語ははじまります。どこかから軽トラックに乗って「とーちゃん」と一緒に紫陽花市の或る町に引っ越してきた5歳児よつばは、その日から町で大冒険。おとなりの綾瀬家の三姉妹とも早速交流(?)し、新しい毎日を迎えます。

毎日が新しい冒険のよつばの日々が、ゆったりと流れる時間とともに描かれる『よつばと!』という作品の、分かっていること、まだ分からないことなどを確認しながら、その魅力に迫ってみましょう。

『よつばと!』ネタバレ考察1:謎の5歳児よつば

『よつばと!』ネタバレ考察1:謎の5歳児よつば
出典:『よつばと!』13巻

よつばはとーちゃんと一緒に引っ越してきました。でも、とーちゃんと血は繋がっていません。単行本第1巻第6話でよつばの母について訊ねられて、ジャンボがこのように答えています。

「あぁこいつ、ひろわれっ子なんで、かーちゃんいないんだ」(『よつばと!』1巻から引用)

引き続き同巻第7話でとーちゃんが説明するには、このような次第でよつばととーちゃんは親子関係となったそうです。

「俺が外国でひろってしまって、なんだかわからないうちに、育てる事になった」(『よつばと!』1巻から引用)

どうやらよつばは以前、外国にいたようです。よつば自身は恵那によるとこのように証言しています。

「よつばちゃん、ここに来る前はおばーちゃんちにいてねー、その前は島にいたって言ってたよ-」(『よつばと!』2巻から引用)

もしかしたらよつばは何処か海外の島国で生まれた子なのかもしれません。あるいは、保護者と一緒に渡航したものの何らかの理由で保護者と別れることになってしまったところにとーちゃんが遭遇したのか。いずれにせよ、「島」でとーちゃんと出会ったことが窺い知れます。

それが何処の島なのかという問いには、恵那によるとよつば自身が「左って言ってた」とのことです。第4巻でもどこから来たのかという問いによつばがこのように答えています。

「ひだり…」
「ずーっとずーっとひだり…」
「さいごちょっとみぎ…?」
(以上『よつばと!』4巻から引用)

第1巻で恵那がはじめてよつばを見かけたときに「なんかかわった…外国の子…?」と思っていますし、よつばは虎子に「おまえ外人?」と訊かれて「……かもな」と言っています。外国の島出身者であることは確かなようです。ただ、よつばが言う「左」とはどこなのか現在のところ分かりませんし、手掛かりとなりそうな文言もまだ作中にありません。

確かなことは、よつばは現在「小岩井よつば」としてとーちゃんと一緒に生活しているということです。迷子になったら泣いてしまっても「こいわいよつばです」と大きな声で身許を明かします(第3巻第21話)。よつばにとってもよつばは「小岩井よつば」であり、それが5歳ながら既にアイデンティティとして備わっているのです。

よつば自身は自分が6歳だと思っていたけれど実は5歳で(第6巻第36話)、フクロウの大きな目玉や鳥避けの目玉模様を怖がります(第1巻第5話、第2巻第13話など)。ときに電信柱に登ったり木登りしたり、水泳したり、セミやかえるを獲ったり、大雨に濡れたり。よつばにとって毎日がはじめてのことや楽しいことでいっぱいです。

何でも楽しむことができるよつばを指して、とーちゃんが言っています。

「よつばは、無敵だ」(『よつばと!』1巻から引用)

ともに生活しているとーちゃんから見ても「変な奴」だ(第1巻第1話)というよつばは、無敵の5歳児です。ちょっと突拍子もない奇行もあるけれど、周囲の人たちを振りまわしもするけれど、みんなよつばが大好きです。不思議な言動で不思議な魅力を振りまく元気な子供、よつばは毎日元気に目覚めて、言うのです。

「きょうはなにしてあそぶ?」(『よつばと!』第12巻から引用)


あずまきよひこのおすすめ作品を紹介した<あずまきよひこ作品おすすめランキングベスト3!『よつばと!』で有名>もおすすめです。あずまきよひこの世界観に浸ってみてはいかがでしょうか。

『よつばと!』ネタバレ考察2:よつばを取り巻く大人たち

『よつばと!』ネタバレ考察2:よつばを取り巻く大人たち
出典:『よつばと!』5巻


元気で奔放なよつばの周囲にはいずれも個性的な大人たちがいて、よつばを見守ったり一緒に遊んだりいたずらしたりしています。よつばの毎日に登場する大人たちを一人ずつ確認してみましょう。

とーちゃん(小岩井葉介)

とーちゃん(小岩井葉介)
出典:『よつばと!』1巻


海外でよつばと出会って日本に連れ帰り、父親として育てている翻訳家です。よつばからは「とーちゃん」と呼ばれていて、姓氏が「小岩井」であることは連載開始当初から分かっていましたが、名の方はずっと不明でした。第13巻第87話でばーちゃん即ちとーちゃんの母が名を呼んだことでようやく「葉介」という名が明らかになりました。

暑い季節は自宅ではずっとシャツとパンツという下着姿で、時折パンツを頭にかぶって「パンツマン」に変身してよつばと戦ったり、よつばに水鉄砲で撃たれて死んでみたり、「ふとんのようせいねさせマン」としてよつばの前に立ちはだかったり、いつも全力のよつばに正面から相対します。その一方で、よつばが危険なことをしたり言いつけを守らなかったときにはきちんと叱り、ときには拳骨を食らわせたり、厳しい罰を与えたりもします。いずれのときもよつばを子供だからと侮ることがありません。

だらしない印象を持たれがちですが、よつばのしつけや食事や掃除、洗濯等はとりあえずやっていることが、家がごった返すほどに汚れてはいないことやよつばの着替えがきちんと用意されていること、調理の場面がたびたび見られることなどから分かります。

初登場は第1巻第1話「よつばとひっこし」。

ジャンボ(竹田隆)

ジャンボ(竹田隆)
出典:『よつばと!』7巻


身長がずば抜けて高く、そのためなのか実家の花屋が「フラワージャンボ」という店名のためなのか、通称が「ジャンボ」という大柄な男性です。第1巻第4話で、先に会った風香には「ジャンボです」と名乗っておきながら、そのすぐあとにあさぎには「竹田隆です」と本名を名乗っています。この態度で分かるようにあさぎが好きなのですが、純朴でシャイな面があり、なかなか進展しません。

とーちゃんとは幼馴染みでよく知った間柄。よつばのことも引っ越してくる以前から知っていたようで、第1巻でよつばと会った途端にその頭を掴んでブンブン振りまわしています。多少乱暴に扱っても大丈夫だということが分かっているのです。よつばもジャンボを慕ってよく遊びます。

子供の面倒見がよく、よつばや恵那、みうらを釣りやキャンプに連れて行き、そういったアクティヴィティに関する知識や技術も豊富に持ち合わせています。とーちゃん同様、よつばと真っ正面から向き合って全力で遊んでくれる大人です。

初登場は第1巻第1話「よつばとひっこし」。

やんだ(安田)

やんだ(安田)
出典:『よつばと!』7巻


 

「やんだ」という呼び名だけは第1話から登場していたものの、なかなか姿を現さなかった人物です。本名は安田。第30話でよつばにそう名乗っています。下の名はまだ不明です。

「ヤンダは? まだ?」
「あーあいつ用が入ったからこねえって。あいつだめだわ」
「うーす、ヤンダ暑いから来ねえって。やっぱダメだー」
(以上『よつばと!』1巻から引用)

このようにたびたびジャンボから言われながら現れなかったものですから、随分だらしない人物像を思い描いていた人も多かったでしょう。実際に登場したのは第30話でした。金髪痩躯の若者で、外廻りの営業職らしく、これ以降たびたびよつばの家に昼食を摂りに現れます。

よつばはジャンボのことは以前から知っていたようですが、やんだに会うのは第30話がはじめてのようで、自宅に訪れた彼をとても怪しんでいます。とーちゃんの後輩で既に社会人ですが、よつばとは対等な位置で戦うライバルです。一度あげた飴を取り上げたり、カップラーメンを「ほしいか?」と訊いておきながら「でもあげなーい」と遠ざけてみたり、子供じみた意地悪をします。

その上、本気でよつばと喧嘩をして、よつばには完全に敵と認識されてしまいます。稚気溢れると言うよりも、かなり幼稚な喧嘩です。つまり、やんだはよつばと同じ目線で対等にやり合っているということです。かたちは違いますが、とーちゃんやジャンボと同様、やんだもまたよつばを侮ってはいないということでしょう。

よつばに幼稚な喧嘩を売る一方で、子供好きな一面もあります。第11巻第72話では自分のものと言いながらよつばにしゃぼん玉を買ってきて遊ばせたり、第12巻第82話ではキャンプ場でよつば、恵那、みうらの子供組につき合って探検に出掛けたりしています。

大人たちの中で、最も子供組に近い立場と意識でよつばたちと接しているのがやんだです。

初登場は第5巻第30話「よつばとやんだ」。

あさぎ(綾瀬あさぎ)

あさぎ(綾瀬あさぎ)
出典:『よつばと!』3巻


さらさらストレートの腰までもあるロングヘアですらりとした長身の女性。よつばととーちゃんが引っ越してきた家の隣に住む綾瀬家の長女です。第1巻でジャンボが「すっげぇ美女」と評しています。

綾瀬家の父によると「お母さんの若い頃と似てる」らしく、そのせいなのか、ときどきちょっと意地悪な冗談を言うことがあります。第3巻第20話では父を目の前にしながら「お父さんて影薄いから時々忘れちゃうね」などと発言しています。

また、よつばを言いくるめるのがとても上手です。たとえば第1巻第3話「よつばと地球温暖化」では地球温暖化のためクーラーはよくないと言うよつばに「だからー、クーラーで地球を冷やしてるのよ」と言って納得させています。

風香や恵那はよつばに接する際にはよつばの目線に立とうとする様子が窺えますが、あさぎにはその様子がありません。飽くまで自分の目線でよつばに接します。しかしそれは子供の目線をないがしろにしているということではありません。あさぎもまた、よつばを好きな大人の一人です。

初登場は第1巻第1話「よつばとひっこし」。

風香(綾瀬風香)

風香(綾瀬風香)
出典:『よつばと!』1巻

活発な性格の高校生。第1巻で隣家に引っ越してきたとーちゃんによろしくお願いしますの挨拶をしたりごみ収集場所を教えたり、しっかりした綾瀬家の次女。しかし、変な柄のTシャツを好んで着たり妙な造形のキーホルダーをたくさん鞄につけているなど、やや世間とずれた部分があり、家族から無下に扱われることもしばしば。最初期こそ「美少女」と呼んだとーちゃんやジャンボにも物語が進むにつれて雑に扱われるようになってきています。

よつばに対しては面倒見がよく、一緒に留守番したり洗濯物を取り入れてあげたり買いものに行ったりしています。また、第8巻第54話で分かる通り、町内会の子供たちにも好かれています。

多少乱暴な言動をされてもあまり怒らないので、よつばを含む周囲の人たちは安心して風香と親しくできているようです。やや肉付きのよい体型で、ジャンボやとーちゃんには「立派だ」と言われ、虎子やよつばには「足が太い」などと言われ、憤慨したり落ち込んだりしたこともありました。極めつけに第2巻第12話では水着姿を見たジャンボにこのように言われています。

「ウエストに肉がちょっと余ってるのがマニアックでいいよな」(『よつばと!』第2巻から引用)

さすがにこのときはカナヅチのジャンボの背中を蹴っ飛ばしてプールに落としています。よつばに次ぐギャグメーカーと言っていいかもしれません。

初登場は第1巻第1話「よつばとひっこし」。

恵那(綾瀬恵那)

恵那(綾瀬恵那)
出典:『よつばと!』5巻

綾瀬三姉妹のうち、最もよつばと年令が近く、一緒に遊ぶ機会も多い綾瀬家の三女。小学生です。おとなしくて真面目な一面がある他方で、もの怖じせず、活発な性格です。新しいことに挑戦したり勝負ごとに本気に取り組んだり、また、女の子が嫌いがちな両生類や虫の類いをさわることもいやがりません。

よつばに対してはちょっとお姉さんのつもりで接している部分があり、よつばの夢を壊さないように気を配る場面がしばしば見られます。その顕著なものがダンボーに関する一連の物語でしょう。

第5巻第28話で初登場する、恵那とみうらが夏休みの自由研究でダンボールを材料につくったロボット「ダンボー」。よつばがはじめて出会ったときはちょうどみうらが試着していたのですが、ほんもののロボットだと信じるよつばのためにいろいろ慌てたり芝居を打ったりしています。

熊のぬいぐるみを3体所有していて、それぞれ「アン」、「ジュリエッタ」、「ゼペット」と名付けて、一人で自室にいるときに話しかけるなど、大切にしています。このうちの「ジュリエッタ」をよつばは「ジュラルミン」と間違えて憶えて呼んでいましたが、のちによつばはとーちゃんに別の熊のぬいぐるみを買ってもらい、それに改めて「ジュラルミン」と名付けて遊ぶようになりました。

よつばのお姉さん的存在のつもりでいる恵那ですが、よつばは恵那を子供と扱っている部分があるようです。

初登場は第1巻第1話「よつばとひっこし」。

かーちゃん(綾瀬家の母)

かーちゃん(綾瀬家の母)
出典:『よつばと!』2巻

あさぎ・風香・恵那の母。毎日遊びに来るよつばを少しも面倒がることなく、実の子同様にかわいがっています。よつばは自身のそばに母となる人物がいないために、彼女を「かーちゃん」と呼んで慕います。

ときどきテニスに出掛けるなど活動的で、自動車で外出することもあるようです。綾瀬家では父のものと母のものと、2台の自動車を保有していることが第9巻第61話の冒頭で分かります。

長女あさぎについて「産んで失敗だった」、「昔はあんなにかわいかったのに、なんでこんなにやさぐれてしまったのかしら」などと落胆した様子を見せたり、夫の「あさぎはお母さんの若い頃と似てるよ」という言葉に「失礼ね」と不機嫌そうに言ったり、たびたびあさぎについて悪評しますが、「なんでこんなに……」と発言した傍らで虎子が「親にも問題ある気がする」と内心で言っていますから、お互い似たり寄ったりなのかもしれません。

初登場は1巻第4話「よつばとテレビ」。

おっちゃん(綾瀬家の父)

おっちゃん(綾瀬家の父)
出典:『よつばと!』3巻

かーちゃんの夫、綾瀬三姉妹の父。よつばには「おっちゃん」と呼ばれます。穏やかな性格らしく、あさぎが暴言に近いことを目の前で言っても怒ることがありません。いつもやさしい笑顔で、よつばが奇天烈なことを言ってもやはり笑顔で返し、風香の「外した」ギャグにも笑ってみせる、落ち着いた男性です。

娘たちをとても大切にしていて、よつばの手書き新聞によって風香が失恋したことを知ったときは「お、お父さん失恋なんて許さないぞ」と取り乱したほどです。これほど大切にしていても、あさぎには死んだことにされたり知らない人扱いされたり、少しかわいそうなお父さんです。

初登場は第3巻第20話「よつばと花火大会?」。

ばーちゃん

ばーちゃん
出典:『よつばと!』13巻

とーちゃん(小岩井葉介)の母。よつばは紫陽花市に引っ越すまではとーちゃんとともにばーちゃんの家に住んでいました。ショートヘアで黒縁の眼鏡をかけた痩躯の女性で、関西訛りがあります。気難しそうな顔をしていますが、よつばは風香に紹介するときに「ばーちゃんはおこったかおしてるけどおこってないよ! もともと!」と言っています。

よつばの「捌き方」を最もよく判っている人物と言っていいでしょう。駅に迎えに来たよつばが跳躍からの頭突きをしようとしたのを見切って片手で防いだり、おはようの挨拶に突進してきたのをちりとりで受け止めて頭に手刀を入れたり、決して攻撃を成功させない強い人です。よつばがときどき多少乱暴なのは、ばーちゃんの影響かもしれません。

言いたいことを臆面もなく言い、よつばがよくないことをしたらその場で叱りつけます。一見少し怖い感じですが、恵那やよつばと一緒に折り紙で遊んだり、よつばと一緒に買いものに出掛ける道中で「とまれ」の道路標示の足跡マークを「半分ずつ」分け合って足を置いたり、やさしく、ユーモアを解する一面も見られます。

本作登場人物のうち最年長のばーちゃんには「楽しく掃除する方法は、本気で掃除すること」、「賞味期限は気持ちの問題」など、人生訓にも似た発言もあります。老人ながらよつばに負けないパワーの持ち主。第13巻では3日間、小岩井家に泊まりに来てまた帰ってしまいましたが、再登場が待たれます。

初登場は第13巻第86話「よつばとおみやげ」。

みうら(早坂みうら)

みうら(早坂みうら)
出典:『よつばと!』5巻

恵那の同級生。ショートヘアでいつもズボンスタイルのボーイッシュな女の子ですが、男の子呼ばわりされることをとてもいやがります。恵那とともによつばと遊ぶ機会が多く、写生や花火大会、キャンプなどに一緒に出掛けています。恵那と対照的に、活発な見た目ですが虫や両生類は一切さわれません。持った人が近寄るだけでパニック状態です。

いたずら好きで、よつばが鳥避けの目玉模様を怖がると知って目玉模様の仮面を被って驚かせようとしたり、恵那と一緒につくった自由研究の工作「ダンボー」の中に入ってほんもののロボットだと思わせようとしたりしましたが、いずれの場合もおしまいには自分が大変な思いをする結果を招いてしまっています。目玉模様の仮面を被って「目の玉花子」を名乗ったときは、よつばを怖がらせて本気で泣かせてしまいました。

初登場は第2巻第8話「よつばとおえかき」。

虎子

虎子
出典:『よつばと!』3巻

あさぎの友達で、長身痩躯のマニッシュな女性。大抵、上下ともにスキニースタイルでその細身がより際立っています。無口であまり感情が表に出ないタイプで、本人が言うには子供が苦手です。しかし、よつばは「見ていて面白い」と言っていて、面倒を見ることもあります。よつばも彼女を「とら」と呼んで宝物をあげたりしています。

ニヒルで周囲で起こるものごとにはあまり口出ししませんが、台風のようなよつばの行動に巻き込まれると大慌てする場面もあります。第3巻第16話で綾瀬家で花火をしていた夜に、よつばが自分の自動車のボンネットに吹き出し花火を置いて火を点けたときには随分取り乱していました。

写真を勉強中で、ときどきよつばの写真を撮ってとーちゃんに渡しています。

初登場は第3巻第15話「よつばとおみやげ」。

しまうー(日渡)

しまうー(日渡)
出典:『よつばと!』7巻

風香の同級生。比較的おとなしそうな容貌ですが、風香を凌ぐ世間とのずれを持つ女子です。呼び名の由来は学校での自己紹介のときに「よろしくお願いしまう」と言い損じてしまったことから。それをよつばに説明する際には「学校の~自己紹介のときィ~」となぜか歌って踊りました。しかし、それを風香の父に目撃されて羞恥を覚えるという人並みの面もあります。

ケーキをつくるときにはプロ用の20cmの高さのコック帽を持参し、栗拾いのときには井関農機のロゴが入った帽子にジャージ、長靴という出で立ちで現れました。かたちから入るタイプのようです。栗拾いに普段着で出掛けようとした風香を「栗拾いにふさわしい格好してきなさい!」と叱りつけましたが、帽子とジャージに着替えてきた風香を見て「あはははは、ダッせぇー!!」と笑っています。読めない人です。

初登場は第7巻第45話「よつばとぱちしえ」。

『よつばと!』ネタバレ考察3:描写の疎密

『よつばと!』ネタバレ考察3:描写の疎密
出典:『よつばと!』5巻

『よつばと!』という作品の魅力は、先に挙げました登場人物たちの豊かなキャラクター性は言うまでもなく、人物たちがのびのびと活躍できる舞台の緻密な描写にもあります。

よつばたちが住む紫陽花市の風景を、よくご覧になったことはおありでしょうか。かなり細かく描き込まれています。人物たちは漫画的デフォルメが効いた容貌ですが、背景に描かれるものたちはとても写実的です。第1巻第5話でよつばととーちゃんが神社の階段の上から街を一望した場面に驚いた方も多かったのではないでしょうか。

この場面は作者あずまきよひこが単行本化の際に特にこだわって描き直した部分と言われています。広がる空、さまざまなかたちの建物、街路樹、自動車、田んぼ、遠方にかすむ山……この街から出ることがないよつばの、言わば世界のすべてです。よつばが生きる世界がここでは描き出されています。

『よつばと!』の背景は、物語の進行とともにどんどん稠密(ちゅうみつ)になっていきます。描き込みの密度が高くなっているのです。しかし画面が真っ黒になってしまわないように工夫が凝らされています。物語が進むにつれて細かく詳しくなっていく背景は、まるでよつばの視界が次第に拓けて細部まで見取ることができるようになる成長の過程を見るようです。

また、登場する小道具たちにもリアリズムが込められていて、架空の物語では、たとえば「SONY」によく似た「MONY」だとか「毎日新聞」によく似た「毎朝新聞」だとか、現実世界のものに「よく似た」ものが登場しますが、『よつばと!』では実物そのものが登場します。

例を挙げますと、第7巻第47話でよつば一行が乗るジャンボの自動車はルノー社のカングーという車種です。第6巻37話で登場するあさぎが乗る自転車はルイガノ社のLGS-MV1、虎子の折りたたみ自転車はダホン社のボードウォークでカメラはニコン社のF100でした。第9巻第57話でとーちゃんが買ったコーヒーミルはカリタ社のナイスカット、よつばのジュラルミンはシュタイフ社のテディベアです。ほかにもメーカーや品種が明らかになっているものが、それと見て取れる描かれ方で多数登場します。

これは、私たち読者が住む世界とよつばたちが住む世界が同一であり、同じ空の下に住んでいるのだと感じさせるリアリティに繋がっています。

さらに、『よつばと!』という作品には、心理描写がほとんどありません。「心の声」や「このとき○○はこう思っていた」というような表現がなく、すべては人物の表情と画面の構成、コマ割りによる間の取り方に委ねられています。それは他者の心の機微に敏感な人は自然に感じ取れるであろうし、鈍い人には何ら感じられないという、現実に沿った感覚を読者に与えます。

たとえば第5巻第33話でとーちゃんが海には行かないと言いきったあと、「今日は暑いなぁー……」と呟いて、その次の台詞まで無音のコマが7コマ挟まれています。この7コマの中で聞こえる音として書き込まれているのはつくつくぼうしの声だけです。真夏の空、夏の日差しを浴びて光と影をまとう街角、エアコンの室外機と水道、朝顔の花とサンダル、緑濃い木と建物の屋根と空とつくつくぼうしの声、空を眺めるとーちゃんとつくつくぼうしの声、そして「海行くかー」というとーちゃんの台詞。

7コマの間にとーちゃんがいったい何を考えたのか、海には行かないと言いきったあとに「海行くかー」と言うまでの間に何を思い心境にどのような変化があったのか、説明は一切ありません。この間が何分間、或るいは何秒間だったのかも定かではありません。これらはすべて読者次第なのです。

つまり、読者はこの場にいた風香や恵那、そしてよつばと同じ境遇に置かれているのです。何も言わなかったとーちゃんが何も言わない間にどんなことを思い考えたのか、そばにいたよつばたちでさえ感じ取るしかなかったのですから、読者がそれを別の情報によって分かってしまうのは、物語としては親切なのではなく、無粋というものです。

その場にいる者として物語を体感できる、それが『よつばと!』のリアリティです。

『よつばと!』という作品には、悪人が登場しません。犯罪を企てたり他者に危害を加えたりいやな思いをさせようという人は、よつばの周りにはいないのです。よくよく考えるとそれは非現実的で、現実にはいやな人間はいます。そのように見るとある意味、架空の理想郷のような紫陽花市ですが、そこでの物語が決して絵空事になってしまわないのは、先に述べたようなリアリティを得られる表現法がとことん工夫されているからです。

こういった工夫・技術が施されているおかげで、読者はよつばたちに実在を感じ、よつばが巡り会う人や事件に笑ったりほのぼのしたりが安心してでき、よつばと同じ街に住んでいる気持ちになれるのです。

『よつばと!』ネタバレ考察4:よつばの名言

『よつばと!』ネタバレ考察4:よつばの名言
出典:『よつばと!』5巻

『よつばと!』には名言がたくさん収められています。「迷言」と表記した方がいい言葉もありますが、そこかしこに秀れた言葉たちが散りばめられていて、それらを味わうだけでも楽しい作品です。

今回はよつばの名言を10個選んでご紹介します。

「わかった、しんでも…いきてかえる」(『よつばと!』第2巻から引用)

水鉄砲を持って復讐の旅に出るよつばにジャンボが「必ず生きて帰れ」と言ったところ、返ってきた返事です。死んでも生きて帰る。生還への強靱な意志が感じられます。

「り、りろんはしってる」(『よつばと!』第3巻から引用)

とーちゃんに「動物園を知っているか」と問われたときのよつばの答えです。動物園の理論……よつばはものしりです。末は博士か大臣か。

「おとなは! まったくおとなは!」(『よつばと!』第4巻から引用)

じゃんけんで後出しをして勝ったとーちゃんが「大人はずるいものさ」とうそぶき、それを聞いたよつばがこう言って憤慨しました。大人はいつだってずるい。多くの子供が感じる大人への不信によつばも憤りを見せます。

「どんなときもぎゅうにゅうだぞ?」(『よつばと!』第4巻から引用)

何やら落ち込んで涙する風香にこう言いながらよつばは牛乳をコップに注いであげました。頼りになる相談相手です。いつだって牛乳を飲めばみんな元気になるのです。多分。

「しつれんってあれな?! しんだりころしたりするやつ……」(『よつばと!』第4巻から引用)

風香の涙の理由が失恋であると理解した瞬間によつばはこう言いました。失恋とは物騒ものです。このあとよつばは風香が死んだり殺したりしないように奔走します。

「ぼーくらはみんなーいーきていーるーいきーているからつらいんだー」(『よつばと!』第5巻から引用)

動物のビデオを見るのが好きなよつば。レンタルビデオ店の「いろんないきもの」コーナーで借りるビデオを物色しながら歌った鼻唄です。ごもっとも、としか言いようがない歌詞にほかの客たちは打ち震えていました。果たして震えながらこらえていたのは笑いでしょうか涙でしょうか。

「ちょっとなにかがわからなくなった…」(『よつばと!』第5巻から引用)

海にやって来たよつば。昂奮して洋服姿のままざぶざぶと海の中へと走り、波に揉まれてしまいます。浜辺に上がってずぶ濡れの姿で言った言葉がこれでした。あまりにテンションが上がりすぎていろいろ分からなくなってしまうのは、よつばだけではないはずです。

「とーちゃんはからいのがすきです。あかいのです。よつばはからいのがすきじゃないです。からいのがあかいのです。とーちゃんがです。これはからいですか?」(『よつばと!』第7巻から引用)

近所のコンビニエンスストアにとーちゃんと自分がお昼に食べるカップラーメンを買いに出掛けたよつば。はじめてのおつかいです。とーちゃんはからいラーメンがほしくて、それは赤いパッケージだと言います。早速赤いカップラーメンを見つけて、通りすがりの客によつばはこう言ったのでした。自分が手に取ったものがとーちゃんがほしがっているからいラーメンかどうかを確認したかった……のでしょう。おそらく。

「たんぼがきりぬかれてる」(『よつばと!』第8巻から引用)

とーちゃんと一緒に自転車で買いものに行く道すがら、稲刈りをしている田んぼを通りかかります。どんどん稲が刈り取られていくさまを見て、よつばはこう言いました。子供らしい素直な視点からの言葉です。

「もうそれほうせきになった」(『よつばと!』第12巻から引用)

キャンプに行った先で探検している途中、一緒にいた恵那がどんぐりを見つけて拾います。よつばは幾日か前に別の場所でどんぐりを拾ってたくさん持っています。でも恵那はその場でどんぐりに金具と紐をつけてネックレスに加工してみせました。そのネックレスになったどんぐりを見てとても驚いて、よつばはこう言ったのです。よつばはどんぐりのネックレスをとてもうらやましがります。

どんぐりはたくさん持っているけれど、ネックレスになったどんぐりはよつばの手元にはひとつもありません。その貴重さと、加工されたどんぐりを素敵だと思ったこと、それが「宝石になった」という表現を生み出したのでしょう。実に清々しい感性です。そしてさらにこのあと、よつばは清々しい発言をするのですが、それは単行本を読んでのお楽しみです。

よつばの名言はほかにもたくさんあります。また、よつば以外の人たちも、それぞれにいくつもの名言を残しています。『よつばと!』をお読みの際にはそれも楽しんで頂ければと思います。

また、各巻の帯につけられたコピーも秀逸です。何れも『よつばと!』の世界観を十全に表した豊かな言葉たちです。こちらもぜひお楽しみください。

『よつばと!』ネタバレ考察5:よつばと大人の距離

『よつばと!』ネタバレ考察5:よつばと大人の距離
出典:『よつばと!』9巻

先の項で幾度か述べています通り、よつばの周りにいる大人たちはよつばの目線に下りてきてよつばと接します。決して高い位置からよつばを見下すようなことはしません。それは「よつばは子供だから」という配慮なのでしょうか。

第1巻第7話にはパンツマンが登場します。第2巻第11話では「とーちゃんのおどり」が披露されます。

第1巻第4話や第4巻第22話ではとーちゃんとジャンボが「ホアーッ!!」「チョアー!!」など奇声を発しながら珍妙なポーズで威嚇し合っています。

これらはよつばのためにやっていることでしょうか。よつばが子供だからやっているのでしょうか。おそらくそうではないはずです。

パンツマンはよつばがいるところにしか現れないと推測できますが、もしもよつばが子供でなくても現れたかもしれません。徹夜を重ねてひと仕事終わったときの「とーちゃんのおどり」はきっとよつばが子供でなくても披露されたでしょう。とーちゃんとジャンボはよつばがとーちゃんの子供になる前から奇声を上げて戦っていたとも考えられます。

つまり、よつばという子供がいるから大人としてサービスでやっているのではない、ということです。とーちゃんやジャンボはよつばを子供として認識していながら子供として扱うのではなく、一人の人として扱っています。

だからこそ第6巻第41話では、本棚をつくるときにとーちゃんとジャンボは「危ないから」とよつばを遠ざけるのではなく能力に合った仕事を「大事な仕事だ」と言って与えましたし、電動ドリルでの穴開けをよつばが「やりたい」と言い出したときも駄目だとは言わずに「一緒にやろう」と実際にドリルを握らせたのです。

また、とーちゃんは店屋ものを取るときも、よつばの身体が小さいからと言ってとーちゃんの器から少し取り分けて少量を与えるということはせずに、大人の一人前をよつばのために注文しています。うどんのときも、ピザのときもそうです。これは一個人として立つよつばの人としての矜恃のためにもよい選択であるはずです。

とーちゃんとジャンボだけではありません。よつばの天敵やんだでさえもよつばを馬鹿にしているような素振りを見せながら、その人格を認めています。第8巻第53話では留守番中のよつばが昼食を摂ったのかを気にかけて訊ねていますし、第10巻第64話ではホットケーキを焼くことに挑戦中のよつばに「へたくそ」と野次を飛ばしますが、よつばが泣いてしまったことに慌てて直ぐに「気にすんなよ」とフォローしています。

やんだもよつばを嫌って意地悪しているのではありませんし、個人として尊重して対等に接しているのです。対等でなければ第5巻第30話や第7巻第48話に見られるように本気でやり合ったりできないはずです。

とーちゃんやとーちゃんに近い人たちに限らず、綾瀬家の人たちやその周辺の人たちも、よつばの人格をないがしろにすることがありません。『よつばと!』の読後感がほのぼのとして豊かな気持ちになれるのはそのためです。たとえ幼少の者でも一人の人であるということを決して忘れない大人たちの中で、よつばは奔放に人格を形成していきます。

こういった大人たちの間で毎日を過ごすよつばのこれからの姿が、とても楽しみですね。


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台風のような強烈なパワーと空に漂う雲のような自由奔放さ、そしてびっくり箱のような予想のつかなさを併せ持った小さな冒険者よつば。個性豊かな大人の面々に囲まれ影響したりされたりしながら、何でもない特別な毎日を過ごしていきます。本記事が、よつばが迎える新しい1日を読者のみなさんが一緒に体験していくお手伝いとなれば、さいわいです。


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