1950年代に現れ、ビートルズやラモーンズなど後世のスターの憧れであったキング・オブ・ロックンロールことエルヴィス・プレスリー。彼に関して書かれた書籍は多く存在しています。今回は様々な視点から彼について書かれた本5冊をご紹介します。
エルヴィス・プレスリーは1935年にアメリカのミシシッピ州に生まれ、ロックの王様として音楽界に君臨した人物です。
エルヴィスを一躍有名にしたのが、1956年にリリースされた「Heartbreak Hotel」です。この曲でビルボードチャートの1位をはじめて獲得しました。その後もヒットを続々と出しますが、2年後の1958年、徴兵制度により、陸軍に入隊。特別扱いをうけることなく、約2年を過ごしました。
除隊後は音楽活動を再開。シングル、アルバムともに何度も全米チャートで1位を獲得しました。
1977年に42歳の若さでに亡くなりますが、死後も人気は衰えず、いまだに伝説として語り継がれています。
1:貧しい幼少期を過ごした
エルヴィス・プレスリーの父は農家、母はミシン工場で働いておりました。父は不渡手形を出してしまい、服役するなど、非常に貧しい幼少期を過ごしたとされています。
2:音楽に興味を持ち始めたのは、拳銃の代わりにギターを渡してくれた母のおかげ
彼が11歳の誕生日の時に拳銃を欲しがることがありましたが、もちろん母は拒否します。代わりに彼はギターをプレゼントされました。それを機に彼は毎日ギターの練習をするようになり、音楽の世界に傾倒していったといわれています。
3:白人、黒人の文化がミックスされた環境で自己形成されていった故の魅力を持つ
当時はまだ黒人差別がある時代でした。しかし、エルヴィス・プレスリーは白人だけではなく黒人にも認められた歌手といわれています。彼は13歳の時に黒人街の貧しい地域といわれていたメンフィスというところへ家族と共に引っ越しています。ここで触れた黒人文化のおかげで彼は差別意識を持たない人格へと育ち、多くの人から共感される歌手になったと思われます。
4:母への誕生日プレゼントがきっかけでプロデビューした
彼は18歳の時に母へ自分の歌を録音したものをプレゼントしました。これがたまたまレコード会社の目にとまり、1955年にデビューを果たします。その後曲はメンフィスでヒットしRCAビクターと契約を結ぶこととなりました。
5:エルヴィス・プレスリーは警察官の資格を持っている可能性がある
彼はニクソン大統領より麻薬撲滅取締官の資格を与えられました。またその際に警察バッジをもらっています。通常関係者以外にバッジが渡されることはないため、エルヴィスは警察官の資格を取得しているのではないかといわれています。
6:エルヴィス・プレスリーは亡くなる直前にデヴィッド・ボウイに曲を依頼していた
エルヴィスは亡くなる半年前にデヴィットに電話をし、「コラボレーションをしたい。曲をつくってくれないか。」と、依頼していたそうです。デヴィットはエルヴィスの大ファンだったため、夢叶う前にエルヴィスがこの世を去ってしまったことを悔やんでいるといわれています。
7:ジョン・レノンが苦手だった説
ビートルズはエルヴィス・プレスリーのファンで、ある日彼の家へ招待されました。エルヴィスも彼らとのセッションを楽しみにしておりました。エルヴィスが君たちのCDは全部もっているよといった際に、ジョン・レノンが冗談で僕は一枚も持ってないと言ってしまったのです。以降ジョンのことを避けるようになったといわれています。
8:満期の2年間徴兵に服したことがある
当時アメリカは徴兵制度があり、命令が下りたものは通常2年の服役が必要であった。有名人などは特別処置で免れたり、短期で兵役を終えたりすることがありますが、彼の場合一般人同様に義務をこなし、芸能界へ戻ってきました。
9:エルヴィスは本格的な演技がしたかった
彼は「監獄ロック」というタイトルの映画をはじめ、いくつもの映画に出演しヒットさせています。しかしどれも、深みのないストーリーで、本人的にはもっと本格的な演技ができる映画に出演したかったといわれています。
10:彼はドーナツが大好き
彼はドーナツが大好きで晩年はよく食べていたとされます。なかでも日本でもブームが起きた「クリスピー・クリームドーナッツ」が一番のお気に入りだったといわれています。
日本にもエルヴィス・プレスリーのファンは数多くいます。そのうちの一人で、エルヴィス・ファンクラブの運営にも携わっていた鈴木一彰が書いた『ELVISを夢見て―日本の中のプレスリー伝説』。エルヴィスの登場が、当時の日本人にどれだけの影響を与えたのかが記してあります。
映像作家でもあり脚本家でもあった作者が、雑誌やラジオなど膨大なメディアの情報をひも解きながら解説します。
- 著者
- 鈴木 一彰
- 出版日
エルヴィス・プレスリーは来日経験がありません。そんな当時の日本人が唯一彼の演奏を生で聴けたのが、1973年にハワイから世界に同時中継されたコンサート「アロハ・フロム・ハワイ」でした。この中継は40カ国以上で放送され、日本では37.8%もの視聴率をあげたそうです。
「Hound Dog」や「 I Can't Stop Loving You」を聞いた当時の若者たちの熱を、本書からありありと感じることができます。
また、日本におけるアメリカンポップスの歴史や、同時代に日本でも人気を博していたビートルズとエルヴィスの違いなどを、おそらく日本一のエルヴィスファンである鈴木の目線から読むことができます。
エルヴィスについて、華やかなスーパースターのイメージを持っている方も多いかもしれませんが、それだけではありません。
本書には、ともすれば負の印象を与えてしまうような内容も乗っています。
- 著者
- ["アラナ ナッシュ", "マーティ ラッカー", "ビリー スミス", "ラマー ファイク"]
- 出版日
メンフィス・マフィアとは、エルヴィスのいわゆる取り巻きの総称です。本書はそのメンフィス・マフィアのメンバー、マーティ・ラッカー、ラマ―・ファイク、そしてエルヴィスの従弟のビリー・スミスの3人へのインタビューが記されています。
このメンフィス・マニアはただの取り巻きではなく、ツアーにクルーとして同行したり、エルヴィスの結婚式に参加したりと、かなり近い存在。私的な交流のあった彼らの証言から、エルヴィスの素顔を知ることができます。
世間に対する華やかなイメージと違い、母親の死、妻との離婚、ストレスや過食など、ともすれば暴露とも言えるような内容も載っていて、エルヴィスの生活が単に華やかなだけのものではなかったことが伺えるでしょう。
特に兵役中の2年間の様子は、ほかの資料からは中々見ることができないので必見です。また、当時のアメリカという国の雰囲気も感じ取ることがでます。本書でしか公開されていない写真や楽曲秘話なども記載されているため、エルヴィスのファンの方にはたまらない一冊となっています。
本書はエルヴィスの元妻であるプリシラ・プレスリーによって書かれた、2人の出会い、結婚、そして離婚に至るまでの話です。数多くあるエルヴィス関連の著書とは違い、恋愛小説のように読むこともできます。
世界中の女性を虜にしたスターとの生活は、彼の歌のように甘い物ではなかったことが、本書を通して知ることができます。
- 著者
- プリシラ プレスリー
- 出版日
エルヴィスとプリシラが出会ったのは、なんとプリシラが14歳の時。エルヴィスは20代半ばで兵役中でした。エルヴィスは自分の家族の家にプリシラを住まわせ、その後高校まで通わせます。そして出会いから8年後、2人は結婚するのです。
2人の出会いや新婚生活などはアメリカンドリームを体現しており、スケールが大きく、セレブの世界の破天荒さに驚くことでしょう。
しかしエルヴィスとの生活はやはり壮絶で、プリシラは多くの嫉妬に苛まれることになります。離婚に至るまでの14年間の生活で、彼女は何を見て何を感じたのでしょう。
また、離婚に至りながらも子供を愛する2人の様子には胸がつまります。エルヴィスが愛した女性の物語をぜひ読んでみてください。
1950年代のアメリカでは、まだまだ人種差別が色濃く残っていました。
エルヴィスが歌手として発掘されたきっかけも、この人種差別が大きく関係しているのです。アメリカ南部のラジオ局から、スターへの道が始まります。
- 著者
- ジョー・モスケイオ
- 出版日
- 2016-08-07
当時のアメリカの差別はひどく、黒人の歌手がヒットソングを出すと、その曲を白人の歌手がカバーして白人用に売っている状況でした。ラジオなどで流れるのはもちろん白人がカバーした曲です。エルヴィスはそんな時代に、黒人の歌声を再現できる白人歌手として発掘され、重宝されました。
ゴスペルは別名“黒人霊歌”とも言われ、アフリカの黒人特有のブルースや讃美歌、ジャズなどが融合された音楽です。エルヴィスは黒人の曲をカバーしていき、しだいにゴスペルという音楽が彼の心を励ましていくようになりました。
ゴスペルがエルヴィスを支える一方、エルヴィスはゴスペルという限定されたジャンルの音楽を広めたという、エルヴィスとゴスペルの関係性を本書から学べます。また、黒人音学の歴史や、アメリカの人種差別に関して書かれた資料としても有益に読むことができます。
本書は、エルヴィスの出生から繁栄、衰退までを丁寧に追っています。彼の壮絶な幼少時代や、スターへの道を駆け上がって行く姿に、どこか危うさを感じ、ハラハラさせられます。
エルヴィスがはじめてビルボードで1位を獲得したのが1956年ですが、その同じ年にビルボードで「100位以内にランクインした曲数」が史上最高になるのです。このことからも、エルヴィスがとても速いペースで脚光を浴びたことがわかります。そのスピードに彼自身が追いつけていないことに対する、苦悩がわかるでしょう。
- 著者
- ボビー・アン・メイソン
- 出版日
- 2005-07-28
「歴史のないところから突如世界に、躍り出たようにみえた。」(『エルヴィス・プレスリー 』から引用)
この言葉からもわかるように、エルヴィスの登場はあまりに突然でした。そして彼が持つ強い個性に、当初人々は戸惑った反応を見せたことが本書からわかります。
そんな彼が、徐々に受け入れられ、スターへの道を駆け上がり、それにつれて彼を取り巻く環境が生々しく変化していく様子も書かれています。エルヴィスを知るならまずはこの本から、とおすすめしたい一冊です。
エルヴィス・プレスリーに関する著作には、彼の音楽的魅力に関して書かれたもの多い反面、転落やゴシップについてのものも多くあります。
アメリカ南部の小さな家で生まれた彼が、世界のアーティストとなるまでの人生は、物語性に富んでいます。死してなおエルヴィス・プレスリーがキング・オブ・ロックとして語り継がれる理由を、この5冊からぜひ感じてください。