わたしは昔っから、憧れている人の書いた本を読むのが好きでした。例えば、ミュージシャンだったら、5分ばかりの曲から見え隠れする思想、人となり。こんな素敵な曲を書いたり歌ったりしているこの人は、いったい普段何を食べて、どんなことを考えているんだろうって気になってしょうがなかったから。それがエッセイでも詩集でも、はたまた小説でも、自分が憧れている人の文章を読むと、インタビューやTVなどで話しているのを見たり聞いたりするよりもちょっとだけ深く、その人を知れたような気になるのが嬉しかったのです。というわで今回は、そんな歌手、作詞家、作曲家など、ミュージシャンの書いた本を5冊ご紹介します。
蒼い時
歌手、山口百恵さんが21歳の引退直前に出された自伝的な本。生い立ち、歌手としてのお仕事、恋愛などについて聡明な文章で綴られています。伝説のように語り継がれる百恵ちゃんの、格好良いだけではない、生身の人間らしさを感じる事ができます。その一つひとつに、時代は違えど、特に女の人は、共感する部分がきっとあるんじゃないかと思いました。
リアルタイムで百恵ちゃんの活動を観れていた訳ではない年代にとっては特に、このような本の存在って貴重だなぁと思うのです。雑誌やTVのインタビューは時間とともに紛れて簡単に目がつくところには無くなっていってしまうけれど、本はもう少し、確実に手を伸ばせる存在としてあり続けてくれる。そんな本ならではのありがたも、感じた1冊です。
風のくわるてつと
作詞家、松本隆さんが19歳から22歳までに書かれた詞、エッセイ、小説などが収められている1冊です。例えば4つの季節だけじゃなくて、そのあいだに無限に存在する細かな気温や湿度を、ちゃんとすくい取って見せてくれる。そんなたくさんの季節と時間の匂いが詰まった本だと思います。日常生活の隙間で、ふと、なんだか自分の心が感覚が鈍くなってしまっているなと思った時にこの本を読むと、松本隆さんの言葉たちが、ふわっと正しいところに連れ戻してくれるような気がするのです。