ビートルズ・ソング・イラスト集
1970年03月20日
英語の歌詞だけを見るなら、昔はレコードに勝るものはなかった。とはいえ、67年の『サージェント・ペパーズ~』以前は歌詞はすべて聴き取りによるものだったので、ミスが多い。しかもそれを日本語に訳していたわけだから、よほど英語に堪能な人以外は、特に中期の難解な歌詞はちんぷんかんぷんだったはずだ。その後「正確な原詩」+「意味を踏まえた自由な訳詞」をまとめた詩集があれこれ刊行されるようになった。しかし、ソロ以降の詩集はほとんどないのが現状だ。リンゴはひとつもない。今回はソロ編+洋書を中心に5冊紹介します。
本書に出てくる特にイラストの数々は、ブートのジャケに使うと映えるものが多い。実際にそうなったものもあるが、ブートじゃなくて、80年に発売されたビートルズの『バラード・ベスト20』には本書の最初の見開きページに登場するジョン・パトリック・バーンのイラストが転用された。ちなみにジョン・パトリック・バーンはドノヴァンの『HMSドノヴァン』(71年)のジャケットで知られているし、アラン・オルドリッジも、彼の絵本を題材にしたロジャー・グローヴァー(ディープ・パープル)主導で制作された『バタフライ・ボール』(74年)やザ・フーの『ア・クイック・ワン』(66年)のジャケットも手掛けている。原書は69年発売だが、日本版も70年に出るほどの人気だった(といっても日本語訳は序文のみだが)。表紙の異なるものも多数発売されたが、掲載したやつがやっぱりベスト。ビートルズ・ソング・イラスト集
1970年03月20日
目を見張るのは、195曲の内訳だ。ジョンとポールがビートルズ時代に他人に提供した全19曲と、レノン=マッカートニー名義の「平和を我等に」が含まれていること。もうひとつはジョージとリンゴのオリジナル曲が一切含まれていないことだ。他人用の曲でも、レノン=マッカートニー名義の「グッドバイ」はあり、ポール単独名義の「ペニーナ」はない。ということは、本書は60年代のレノン=マッカートニー名義の曲がすべて網羅された歌詞集なのである(「レヴォリューション 9」はないけれど)。洋書らしいコンパクトなサイズも紙質も申し分ないし、どんなに余白があっても「1曲1ページ」にこだわった見映えもすばらしい。The Beatles Lyrics Illustrated
1976年05月01日
リンゴ・スターに贈った「アイム・ザ・グレイテスト」と「グッドナイト・ウィーン」や、ジョニー・ウィンターへの提供曲「ロックンロール・ピープル」も含まれているし、遺作『ミルク・アンド・ハニー』収録の「グロウ・オールド・ウィズ・ミー」まで入っているので、ジョンが何を言いたいのかを(わりと)瞬時につかむのに最も適した訳だと思う。各曲に勝手に(?)付けた邦題も最高。中でも「タイト・アス」の「締まって行こうぜ」なんて、とてもいい線(良いセンス)だ。この訳出でもニュアンスが汲み取れるが、「666(悪魔)」や「ルーシー(ルシファー)」に言及した「ブリング・オン・ザ・ルーシー」(『マインド・ゲームス』収録)に、「世界は狂人に支配されている」と喝破したジョンの本気を見る。ジョン・レノン詩集
1986年11月05日
87年の『オール・ザ・ベスト!』までしかまだ曲がない時期に発売されたものだが、ライヴ音源しかない「ソイリー」やリンゴに贈った「シックス・オクロック」をはじめ、かゆいところに手が届く絶妙なバランスで全69曲が収録されている。「ビー・ホワット・ユー・シー」もあったらなお良かったが。羽良多平吉氏によるシャープなデザインといい、久しぶりにビートルズ関連の表舞台に登場した落流鳥氏による訳詞といい、ビートルズ関連の詩集でも、質のいい一冊に仕上がっている。それもそのはず、奥付に記載された発行所は「日本MPLコミュニケーションズ株式会社」。ポールの事務所に、そんな日本法人があったとは知らなかった。ポール・マッカートニー詩集
1988年10月17日
1冊目に紹介した『ビートルズ・ソング・イラスト集』は多彩なアーティストが手掛けたビートルズのソング・イラスト集だが、こっちはキース・ウェスト一人が手掛けたジョージのソング・イラスト集で、92年に出た続編『Songs by George Harrison 2』ともども、ビートルズ時代からソロ以降の作品の中から万遍なく選ばれている。ジョージのトーク・イベントに出演するときなど、これまでに3回ほど持ち出したことがあるが、高価で豪華な本は、高いだけでなく、でかくて重くて厄介。後生大事に取っておくという性格でもないし、コレクション自慢をしようという気もさらさらないけれど、何度も見返す気が起きないのもたしかだ。ジョージがどんな歌を歌っているかを知るなら、やっぱり2回目の記事で紹介した『ジョージ・ハリスン自伝 I・ME・MINE』(2002年)が無難かもしれない。Songs by George Harrison
1987年12月01日
本と音楽
バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。