インド独立の父。偉人の中の偉人と呼ばれたガンディーですが、実際には何を考え、どんな信念のもとに一生を送ったのでしょうか。今回は、ガンディーについて触れ、普段意識することの少ない愛国心を思い出させてくれる5冊をご紹介したいと思います。
1869年10月2日、ポルバンダル国首相の父と、その4番目の妻だった母との間に末子として生まれました。一族の敬愛を集める勇敢な父と、信仰に厚い母のもとで育ったガンディーは、幼少の頃は恥ずかしがり屋で内気な少年で、13才という若さで、生涯の伴侶となるカストゥルバと結婚しますが、意外と嫉妬深い夫だったと聞くと、驚く方は多いかもしれません。
彼がまだ成人する前には、禁じられている肉食を体験したり、喫煙や盗みをしたりしたこともあったそうです。しかし、それも一時の迷いと気づき本来の自分を取り戻していきます。
1988年18才で法廷弁護士を目指してロンドンに渡りました。そして1891年に弁護士の免許を取得しますが、様々な事情が重なりインドへ帰国したあと、1893年、縁あって南アフリカへ渡ります。この南アフリカで彼が受けた差別体験がその後の人生に大きな影響を与え、当初1年の予定だった南アフリカでの生活は、結局21年にも及んだのでした。
1915年故郷に戻ったガンディーは、当時まだイギリス領だったインドの大衆のリーダーとして迎えられ、独立運動へと進んで行きます。幾度かの投獄を課せられても非暴力と不服従を信念に、イギリス製品の不買運動、塩の行進を先導し、後に独立を勝ち取りました。
しかし、ようやく果たした独立だったはずでしが、結果はインドとパキスタンという二つの国が成立し、不毛な争いを繰り広げるというものだったのです。その状況に心を痛めたガンディーは、78才にして断食という命がけの抗議行動を取り、両国を和解へと導いたのでした。
そんなガンディーでしたが1948年、同じヒンズー教徒の銃弾の前に倒れ、その生涯を終えるのです。
1:アイルランド訛りの英語を話した
これはあまり語られていない事実ですが、ガンディーが話す英語にはアイルランドの訛りがあったそうです。
2:ボーア戦争時陸軍に勤めていた経験から、戦争の恐ろしさを悟り、暴力に対する反対運動を始めた
1899年南アフリカのトランスパトレ・オレンジ両国へのイギリスの侵攻で19世紀のベトナム戦争と呼ばれたこの戦争。この時彼はイギリス大帝国への幻滅を感じ、後の独立運動へと踏み出したのでした。
3:ガンディーは4大陸12カ国の市民権運動に責任があった
彼の影響力はインドだけにとどまらず、世界的な支持をうけていたと言えます。あまりの存在の大きさに改めて敬服です。
4:ガンディーは生涯を通して1日18キロ歩き、これは地球2周分に相当した
有名な「塩の行進」では1930年3月12日から4月6日までグラジャート州アフマダードからダーンディー海岸までの約380kmを歩いています。確固たる意志と、湧き上がる力が彼に行動をおこさせたのでしょう。
5:ガンディーはノーベル平和賞に5回もノミネートされていた
ノミネートこそされたものの、受賞はしていません。その理由はわかりませんが、2007年6月にガンディーの誕生日10月12日は「国際非暴力デー」と定められました。
6:アインシュタインやヒトラーなど多くの著名人を応対していた
ヒトラーへは「親愛ある友よ」と語りかける手紙を送り、アインシュタインは彼の葬式で「将来の人はとても信じられないだろう。このような人間が地球上に実在したことを」と語りました。
7:ガンディーは最後の最後まで正式な政治的地位につかなかった
大衆のリーダーとして活動した彼でしたが、政治家をいう肩書きは最後まで持ちませんでした。そこにいるだけで大きな存在を示した彼には正式な役職など必要ではなかったのでしょうか。
8:ガンディーの葬儀の列は8キロにも及んだ
遺体には赤と白の布が置かれ棺の上にインドの国旗がかけられました。棺を乗せた車は長い麻綱で兵士たちが引いて火葬場へ向かったのです。空からはインド空軍がバラをまき、道々は多くの民衆が引きつめた花々で埋め尽くされました。そして涙で彼の死を悼んだのです。
9:ガンディーが独立のために戦ったイギリスで、死後21年後に彼を尊重した切手が発売された
21年という長い歳月が経ってなお、彼の偉大さは、当時支配していた歴史のある国が尊重するほどに大きいものだったということでしょう。
ガンディー自らの言葉で綴られた一冊。
気短ですが誠実で勇敢な父と、清らかな母との間に生まれたところから本書は始まります。幼い結婚後、法廷弁護士を目指してイギリスへの渡航や、インドに帰国してからの失敗。その後渡った南アフリカでの出来事など、彼の前半生に起こった出来事が淡々と綴られています。
- 著者
- ガンジー
- 出版日
人は彼をマハトマ(偉大なる魂:聖人)と呼ぶけれど、本人はとても嫌がっていたのでした。というよりも、苦しみを覚えていたらしいことは、とても意外な事実ではないでしょうか。
所々に写真や地図があって当時のインドの様子を垣間見ることができ、ガンディーという人物を知る上での基本の一冊です。ただひたすらに真実と非暴力を信奉しつづけた彼の生の言葉がちりばめられています。
一読した後は皆がイメージする聖人君子とはまた違う、悩み苦しみながら葛藤した人間、ガンディーを少し理解することができるかもしれません。一人静かに読みたい一冊です。
非暴力・非服従を信念に生きたガンディーの講演や著述からの抜粋をまとめた1冊です。どこからでも読めるのがこの本のおすすめポイントでもあります。
ガンディーの人生哲学が彼自身の言葉で語られているこの本は、講演や著述の抜粋ですが「第一章」自伝からはじまり「第9章」の雑録まで、読み応えのある1冊です。
- 著者
- マハートマー・ガンディー
- 出版日
- 2011-09-20
非暴力・不服従を掲げた彼は決して抵抗せず、しかし絶対に屈服することはなかったのです。この情熱が数々の言葉に置き換えられ世界へのメッセージとして残されました。
「私は悪事の多いことをもって人を裁かない。」「溺れているものに他人を救うことはできない。他人を救助できるようになるには、自らを救わなければならない」(『今こそ読みたいガンディーの言葉 ALL MEN ARE BROTHERS』本文より引用)
生涯をかけて人間の本質を問うた彼の数々言葉の価値は、一読に値します。
改めて自分を振り返るきっかけになる人生の哲学書としておすすめの1冊です。
この本は、ガンディーが1930年ヤラヴァダー中央刑務所に収監されていた時に書いた手紙をまとめたものです。
彼はサッティヤーグラハ・アーシュラム(修道上)の弟子たちに、1週間ごとに手紙をしたため、それを後に彼自身がまとめました。手紙という形で自らの思想を弟子たちに伝える教科書のような形で書かれています。
- 著者
- ガンディー
- 出版日
- 2010-07-17
ガンディーの一生は、大英帝国=イギリスからの独立と、インド国内の宗教、差別の問題など大きすぎる壁への挑戦でした。しかし投獄中に綴られた内容である本書を見ればわかるように、その壁に真正面から向い、決して屈服することなく立ち向かっていきました。
「真理」から始まり「愛」「不可触民制の撤廃」など16の項目からなっていて、そこには「険しくとも真っすぐに突き進んでいく」という熱い思いが込められています。
「真理のあるところにはまことの知識(意識)があり、真理のないところには真知はありえません。」など弟子達へ自らの想いを事細かに綴っています。
これは弟子たちだけではなく、後世の私たちへのメーセージでもあるのかもしれません。泉のように湧き上がっては心に止まる言葉の数々と、まっすぐに向き合って見ることをおすすめします。
この本は、ガンディーへのインタビューと演説を一冊にまとめたものです。第1章の「文明論」から始まり第7章「新しい計画」まで聞き手からの鋭く、時には批判的な質問にも真正面から自身の考えを述べています。
そこには徹底して大量生産の否定とチャルカ(インドの糸車)への想いがあふれているのでした。
また、インドの文明を最高として愛しつつも当時の現状を心から嘆いていことや、イギリスを憎まず、同情すらしていたその心など、知りえなかったガンディーの姿を見ることができます。
- 著者
- M.K. ガンジー
- 出版日
表紙の写真も印象的で、チャルカを操るガンディーの姿からは濃いインドの文化を感じます。
機械で便利になること=文明の発達ではないとの考えを決してを曲げないガンディーは、文明に対しとても強い意志を持っていました。
彼が考えるイギリスからの本当の意味での独立とは、イギリス資本の工場の製品を買わずに生活することでした。チャルカから紡ぎ出される糸で手織りした木綿の布「カディー」こそが、インド国民が貧困から脱出する道であると信じ、これがインドの未来に光が差し込む希望だと考えていたのです。
考えることと、自治の大切さ、そしてその理由を丁寧に教えてくれます。ガンディーにとってはまさにチャルカは自治・自立の象徴だったのです。
南アジア研究、近代政治思想家の中島岳志氏によるガンディーの生き方を問い直す渾身の一冊です。僧侶の南尚哉氏との対談も、思わずうなづいてしまうところがあるでしょう。
- 著者
- 中島 岳志
- 出版日
- 2009-11-21
人間とは、欲望をどこまでも求める生き物であると一説では言われます。しかし、塩の行進、非暴力、断食を通して「欲望」を捨てる実験を繰り返したガンディー。そして彼の追求する姿を、著者の中島岳志が記しています。
自由という名のもとに、人間の限りない欲望を煽られ、広がっていく貧富の差。
「人間よ、自己の欲望と向き合え。そして反省し、真理に従って行動せよ」(『ガンディーからの 君は「欲望」を捨てられるか』本文より引用)
この言葉を掲げるガンディーが持つ「本当の自由」の意味を教えてくれます。
読者の哲学に、新しい刺激を与えてくれる1冊です。
いかがでしたか?実際に読んでみると決して聖人というだけでなく、同じ人間として悩み苦しむ姿が垣間見ることができ、親近感に似た感情を抱くかもしれません。今だからこそ改めて「ガンディー」を読んでみませんか。