ギリシャ・トルコ辺境紀行
“海は汚されてはいない。どれだけ目を凝らしても、汚れというものが見当たらないのだ。
それはもう海とも言えない気がする。ふと、それは何かの儀式のようにさえ思える。
気の遠くなるような時間と犠牲を経て徹底的に様式化され、日の核心へと突き進むあまり本来の意味あいさえ失ってしまった儀式、そんな儀式を想起させる。”(本文より)
ギリシャ・トルコ辺境紀行。
アトスを旅する前に知っておかなくてはいけないこと。
アトス半島がこちら側とは全く違った世界であるということ。
土地の原則となる宗教、取り巻く政治。
あるいはそこにある、ただただ美しい風景。
なかなか自分では行けないなぁという旅を
深いところまでみせてくれる紀行文です。
いいとこ取りの香港・マカオ旅行
群ようこさんの紀行エッセイは変な旅人気取りなんかがなくて、
とても生っぽい旅行で素敵。
ブランド物を買いあさる人がいれば、カジノに夢中になる人もいる。香港・マカオ旅行。
団体だけれど、自立している人たち同士で行く旅は集まったり、離れたり、
いいとこ取りって感じで良いなぁと思う。
こんな旅行もしてみたい。
そして、群ようこさんの語り口がスカッとしていて心地よく、
どんどん先に読み進みます。
他者の聖地をまわる
“聖地巡礼などと言って、他人さまの土地にのこのこ出かけて行く自分を、
ときどきとても恥ずかしく思うのだ。アイヌの聖地にも行った。沖縄のウタキにもアボリジニの森にも、
インディオの山にも、ナバホの谷にも……。
でも私はアイヌじゃない。ユタじゃない。アボリジニでも、インディオでも、ネイティブアメリカンでもない。
なのに、なぜ、他人の聖地で祈るのか。”(本文より)
旅行中は気持ちが大きくなりがちである。
しかし、そこに住んでいる人でないと分からないこと、
踏み入れてはいけない場所やことも
もちろん沢山あるだろう。
旅行先で、旅行者はよそ者であるということ。
他者の聖地をまわる、田口ランディさんの紀行エッセイと心得。