「車椅子の博士」として有名なホーキング博士。2012年のロンドン パラリンピックの開会式に登場した姿が記憶に新しいのではないでしょうか。そんな彼の歴史や、築いてきたもの、本質に迫る5冊をご紹介したいと思います。
有名な「ブラックホールの蒸発理論」や、宇宙創生の理論「無境界説」を提唱したのがスティーヴン・ウィリアム・ホーキング、イギリスの理論物理学者です。
1942年1月8日にオックスフォードで、熱帯医学を学ぶ父と、哲学や政治を学ぶ母との間に生まれます。偶然にもこの日はガリレオ没後300年の日でした。
幼少期、父のお土産の模型蒸気機関車を改良をして遊ぶごく普通の子供だった彼は、教育を重視していた父の希望でウェストミンスター学校を受験しようとします。しかし奨学金の資格審査の当日に体調を崩し、結果的に当初通っていたセント・オルバンズのハイスクールで過ごしました。
1957年10月、17才でオックスフォード大学に入学した彼は、授業のあまりの簡単さに失望してしまします。しかし、後に入ったボート部で自分の役割を見出し、友人達と充実した大学生活を送ったのです。父や教師の勧めもあり大学卒業後は、ケンブリッジ大学大学院の応用数学・理論物理学科に入学しブラックホールの研究をします。そしてトリニティー校で学位を取得したのでした。
彼は21才の時「筋萎縮性側索硬化症」と診断されます。この病気は脳からの伝達が手足に伝わらず手足・のど・舌の筋肉が徐々にやせていく病気です。このあとの病状の悪化を想像したときの彼の絶望はいかばかりだったでしょう。そして絶望を感じ自暴自棄になっていたころ、妻のジェイン・ワイルドと婚約したのです。彼女との出会いが生きる気持ちと仕事への情熱を取り戻したのでした。
結婚後の彼は3人の子供に恵まれ「車椅子の博士」として研究を続けます。1974年「ブラックホールの蒸発理論」を発表し、その翌年1975年ローマ教皇庁「ピウス11世メダル」を授与されました。
2016年には、ロシアの富豪とアルファケンタウリまでレーザー推進の小型探査機を送るスタージェット計画を発表し、衰えない宇宙への情熱を発信したのです。
そんな彼は、2018年3月14日に76歳で死去しました。様々な時代の節目となる発見をした偉大なる人物でした。
1:ホーキング博士は貧しい家庭で育った
オックスフォード大学で医学を学ぶ父と、PPE(哲学・政治・経済の学際領域)を学ぶ両親は経済的には決して恵まれてはいませんでしたが、子供たちの教育には非常に熱心に心を傾けていました。
2:ホーキング博士は女子校に通っていた
彼はセントオルバンズで10才までの男子生徒を受け入れる女子高に通っていました。
3:若い頃、ホーキング博士は頭の良い生徒ではなかった
時計部品や電話交換機、中古品を使った計算機を作るなどをして、友人からは「アインシュタイン」とあだ名されていたこともありましたが、学問的には特に優秀ではなかったようです。しかしやがて科学に優れた能力があることを見せ始めます。
4:ホーキング博士は物理学は完璧な成績だった
その成績は、物理と科学を学んでいたオックスフォード大学から、奨学金を得るほどのものでした。
5:ホーキング博士は24歳の誕生日を迎えることはないと言われていた
彼は21才で「「筋萎縮性側索硬化症」と診断されます。この時点では、とうていその先何十年も生き続けられるというものではなかったのです。進行の遅れと仕事への熱意が奇跡的な生存につながったのでした。
6:ホーキング博士は安楽死に賛成している
「大きな苦痛を持つ人には死を選ぶ権利がある」自らに置き換えこの権利を主張するに至った経緯は余人には計り知れない重みがあります。
7:ホーキング博士はエイリアンの存在を信じている
彼はエイリアンの存在を本当に信じ、そして全人類の未来を案じて、決して関わりを持たないよう発言しています。
ホーキング博士が、「空間と時空」に関して、一般の読者に向けて書いたのがこの本です。「私達の宇宙像」から始まり「結論 人間の理性の勝利」まで宇宙の疑問から解決までが書かれています。専門家ではない読者に「いかにわかりやすく理解してもらえるか」が1つのテーマとして上げられているのです。
- 著者
- スティーヴン・W. ホーキング
- 出版日
この本に書かれている数字、数式は、専門知識を持たない一般的な読者でも理解できるものが多く、またどうしても難しい内容や表現がでてきても、添えられている絵や写真が、きちんんと理解を補ってくれます。今までの定説をまったく覆す、新しい視点から生まれた宇宙像と、その結論にたどりつくまでの過程が11の章に分けられ語られているのです。
全世界発行部数1000万部、日本でも110万部を超えるベストセラーのこの本は、物理学を志すきっかけとなる1冊かもしれません。
科学者である著者が、ある程度知識のある読者にむけた専門書ではなく、基本知識も持たない一般の読者に向けて書くこと自体、かなりの労力を要する仕事ではないのかと感じます。改めて彼の情熱に頭が下がりる内容です。
3000年以上にも渡り人々が追求した宇宙、人類の起源、歴史を、ホーキング博士が紐解いていきます。神話の古代にまでさかのぼり「なぜ?」を探っていく文章が、第1章から第8章までの項目に分かれている、という構成です。
この本には、宇宙、生命の謎に対し、自らの理論を述べそこに到達するまでの過程が述べられています。時にユーモアを交え、読者の興味を切らさないように工夫されている点もお薦めポイントです。
- 著者
- ["スティーヴン ホーキング", "レナード ムロディナウ"]
- 出版日
- 2010-12-16
数々の疑問を、動物や線虫に置き換えるなどして、わかりやすく無駄がない文章でまとめられていて「物理」と聞くとどうしても読む前に敬遠してしまう、という方にも自信を持っておすすめのできる1冊です。
宇宙、その大きな存在に挑んできた彼が最新の理論で導きだした結論が、第1章「この宇宙はなぜあるのか?ー存在の秘密」から第8章「グランドデザインー宇宙の偉大な設計図」に分けられ記されています。
この大きな宇宙の中で私達人類が存在していることの、途方もなく小さな可能性をこの本から感じ、自分の存在の小ささを感じることのできる一冊でしょう。
彼の生い立ちから、2012年のロンドンパラリンピックでアンカーを務めるまでの生涯を、ホーキングが自らの言葉で語っているのがこの本です。
貧しくても教育熱心だった父母のもとでの生活、セントオルバンズでの幼少期に、ケンブリッジでの研究、発病、結婚、そしてその後の人生が記されています。
- 著者
- スティーヴン・ホーキング
- 出版日
- 2014-04-03
幼少期から数々の研究が成功に至るまでが彼自身の言葉で丁寧に語られています。
発病を知り、人生に絶望していた彼の心を救ったのは、婚約者のジェイン・ワイルドでした。また、病が進行して不自由が増えていった中、「イコライザー」というコンピュタープログラムが、彼の頭の中の理論を世の中に伝える役目を果たし、研究者としての彼の支えとなったのです。
運命に逆らわず、ただ自分のやりたいことをやったというスタンスで書かれてるこの本は、時に自分の運命を嘆きたくなることがあっても、それを跳ねのけてくれる何かがあることの素晴らしさを感じさせてくれる1冊です。
掲載されている家族との写真の数々は飛び切りの笑顔で、病気=不幸では決してないのだと改めて考えさせられました。
この本は先に出版されて大ベストセラーになった「ホーキング、宇宙を語る」に続くもので前作よりさらに読みやすさを追求した1冊となっています。
ほとんどの見開きのペ-ジで絵や写真がカラーで掲載され、とても美しい仕上がりです。また根幹となる第1章、2章のあとはどの章から読んでもいいように、かなり独立した構成で読者を飽きさせません。
- 著者
- スティーヴン・ホーキング
- 出版日
- 2006-06-29
根幹となるアインシュタインの偉業を紹介した「第1章」と、相対論と量子論の調和を目指した「第2章」をベースにタイムマシン、「宇宙ひも」など、耳に新しく興味をひくテーマが散りばめられ、読者の興味をそらさない工夫があちこちに感じられます。
そうはいっても、物理や宇宙といったものに興味のない読者には難解な内容に違いないのですが、図鑑のように手元において眺めながら少しづつ読み砕いていく。そんな読み方があってもいいような気がするとてもきれいな本です。
「読者へ伝えたい」この想いが詰まった本書の完成にあたり、ハンディーキャップを負いながらも、普通の生活ができていることに対し周囲への感謝を忘れず、言葉にしていることに彼の人柄の一旦が見えるような気がします。
稀にみる偉大な科学者ホーキングの公私があますところなく記されている1冊です。誕生から、大学生活、病気発症など、様々な私生活と平行して「宇宙論」、「ブラックホール」、「ビッグバン」などが解説されています。
- 著者
- ["マイケル ホワイト", "ジョン グリビン"]
- 出版日
病を抱えながらも常にユーモアを忘れず、現状を受け入れ、探求心を決して捨てない彼は、時に譲らない頑固さで周囲と確執を起こしてしまいます。天才ホーキング博士の知られざる一面が垣間見られる1冊です。
華々しい業績の数々の裏にある苦悩、天才科学者といわれている彼も私達と同じように悩み、葛藤する様が描かれていてやはり同じ人間なのかと妙に納得する部分があります。
しかし、やはり彼が普通の人と違うのは、枯れることのない研究への情熱、高いバイタリティーではないでしょうか。身体の不自由さは、心のバイタリティーまで奪うものではないことがわかる1冊です。
いかがでしたか?宇宙、物理というと何だかあまり身近ではないように感じます。今回はそんな方にぜひ手に取っていただきたい5冊をご紹介しました。大きな宇宙のなかでは日々のちっぽけな出来事など「なんてことはない」そんな気持ちにさせてくれるそんな本たちでした。