忘れかけてたエモさ ―― 青春を感じる本5冊

忘れかけてたエモさ ―― 青春を感じる本5冊

更新:2021.12.13

梅雨が明けたら夏が来ますね。太陽にじりじり焼かれて、生焼けでもウェルダンでもいいですけど、やっぱ焦がれてなんぼなんじゃないの、人生って。そう思ってしまうぐらいには僕は頭が中学生ぐらいのままです。自分の学生時代とか、別にロクなことないしぜんぜん面白くなかったですけど(だからこそ?)やっぱり今に生きる気持ち、忘れたくないじゃん……。 そんな忘れかけてたエモさを思い出させてくれる5冊を紹介します。

ブックカルテ リンク

きょうのできごと

著者
柴崎友香
出版日
2004-03-05
友人の引っ越し祝いに集まった大学生たちの一日が、それぞれの登場人物の視点から幾重にも織りなされる。ひとつひとつのエピソードは本当に何気ないけど、将来へのぼんやりした不安や期待で宙ぶらりんの若者たちの「その時しかない感じ」がとても繊細に切り取ってあってよいです。何気ないからこそ、それは誰もが経験しえた普遍的なナイスな瞬間の描写として、心に訴えかけるのだと思います。何より登場人物たちの会話がよい。生き生きしてて。

三四郎

著者
夏目 漱石
出版日
1948-10-27
大学に入るため田舎から上京してきた三四郎が、東京で巡り会う様々な人間模様と恋心。三四郎個人の物語というだけじゃなくて、あの日あの時あの場所で(時代とか、社会とか)居合わせた人々のこころの触れ合いすれ違いが絶妙なおもむき感じさせるな、と思いながら読みました。

七帝柔道記

著者
増田 俊也
出版日
2013-03-01
ひたすら柔道、ひたすら稽古、そして試合。作者の自伝的青春小説で、寝技中心の七帝柔道に大学生活のすべてを捧げる若者たちを描いた作品。マジで徹底して柔道のことばかりに生きていて、ストーリーとしてはむちゃくちゃミニマル。ほぼ畳の上。柔道に賭けてる。特に中盤の、理不尽に厳しい練習で尊厳もプライドもずたずたにされる日々の描写は、読んでて「苦しい」「辛い」「疲れ果てた」「地獄」「絶望」とかの言葉が連発されててなんだかすごいが、柔道柔道柔道……の合間にちょっとだけ出てくる日常のエピソードが微笑ましくて救われる。

文章や描写はだいぶドライというか、かなり淡々とドキュメンタリータッチ。ただそのまなざしにはなみなみならぬ深い愛と敬意があって、それがこの小説を動かしてる一番強いものな気がした。

境界なき土地

著者
ホセ ドノソ
出版日
じわじわと未来が閉ざされていくどん詰まりの土地で、社会から取り残された登場人物たちが様々な倒錯を抱えながらも強烈に生きている妖しく儚い物語。何が普通で異常かとか関係なく、マヌエラもハポネシータもとても愛おしい。一般的な青春とは全然違うかもしれないけど、その一瞬一瞬の強烈な生の炸裂の仕方は自分にとってはyouthとしか言いようがない味わいです。

報われるかどうかはもう神のみぞ知るですけど、青春って結局浪費と表裏一体で、計算とかじゃない、「どうしたってそうなっちゃう」の美学みたいなことだなと。よくよく考えたらバカでしかないかもしれないんですけど、それでも成果が出ないことをどうでもいいこととして抹殺するような世界には生きていたくないです。この連載でドノソとりあげるのもう3冊目で、またかよって思うかもですけど、ようするに好きなだけ。

SLAM DUNK

著者
井上 雄彦
出版日
何もいうことないっす……。バイブル。山王戦ラストの時間の流れとその感傷をばっさりぶった切って先へと進ませる残酷さ。これぞきらめき。消えていくからこそ、ふつくしい(普遍+美しい)ってことですもんねー。あー切ね。泣きそ。
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