恋愛相談、というものをよく寄せられる。TwitterのリプライやInstagramのメッセージで、或いはライブやイベントで頂くお手紙で。ファンの方々の悩みは、物凄く身近な他人事といった感じだ。まるで自分のことのように真剣に感じてしまうのと同時に、歌詞のネタとしても有効活用させていただいている。感謝。
好きな人≠恋人だったり、二番目ポジションだったり、どうしようもない恋愛事情を抱えている人も決して少なくない。そんなどうしようもない恋の話がわたしは大好きだ。綺麗事だけで成立する恋なんて、何の物語にもならない。
わたし恋をしている。
五・七・五の川柳とイラスト、ショートストーリーで描くさまざまた女の子たちの恋愛模様。主人公は、どこにでもいるような女の子だ。身近な誰かの恋愛事情を覗き見しているような、または自分の恋愛事情を覗き見されているかのような、等身大の恋の物語が収められている。
“彼がいてときめく男がいてちょうど”
“あたしになど落ちない男の方が好き”
“傷ついたふりをしたのはあたしの情”
後ろめたいことのない恋なんて存在しないのではないだろうか。ちょっとずるい駆け引きも、身勝手な思い込みも、強がりも、全部ひっくるめた恋。そんな普段着の恋を、普段着のまま全うできる女の子は強い。デニムとパーカーとスニーカーでデートに赴ける女の子の最強感が描き出された一冊だ。
誰にも言えない恋ばっか
女の子の赤裸々すぎる本音を、放送禁止寸前の赤裸々すぎる言葉で歌うアーティスト、さめざめ。オフィシャルサイトには“報われない恋愛をする女性メンヘラ界のカリスマ”とある。わたしはメンヘラという言葉も、ナーバスな人のことを軽率にメンヘラと呼ぶ風潮も嫌いだが、自らこの称号を名乗っているのは逆に潔くて格好いいと思う。「We are メンヘラクソビッチ」という曲が素晴らしいので、恋に悩み過ぎてダイエットサプリを多めに飲んだ後暴飲暴食に走ったことのあるような女の子は是非聴いてみてほしい。
さて、本の紹介に移ろう。この本にはタイトル通りの恋の詩が55篇収録されている。誰にも言えない恋のこと、誰にも言えない夜のこと、そんな夜の残留物のような朝のこと。抜け出したいのに抜け出せない、終わらせたいのに終わらせられない、逃げ出したいのに逃げ出せない……泥濘のような恋愛を丸裸の言葉で曝け出す。
恋とか、愛とか、夢とか、その他の色んなこととか、大人になっていくにつれ失われてしまった純粋とか、簡単に繋がれることに疲れてしまった心とか、それでもまだ誰かをを真っ直ぐに愛したい自分とか。ここにはきっと、わたしたちがいる。ズタズタに傷ついても尚、誰かに恋をすることをやめられないわたしたちが。