「ゼロ」からプロジェクトを立ち上げることに!そんな時、力と知恵をくれる本

更新:2021.12.1

新年度も始まり、気分新たに仕事をスタートさせた方も多いのでは。 そんなとき、上司がぽんと肩を叩いてきて「新規事業の立ち上げのプロジェクトに、君を推薦しておいたから」と一言。一度も行ったことがない土地で、課題も山積みの中でのプロジェクトを形成するらしい。 「ええ!」 さて問題です。皆さんはここでモティベーションがアップしますか? それともと恐怖に慄いてしまいますか? 人生、さもありなん。そんな時にぜひ読んでもらいたい「ゼロからプロジェクトを立ち上げる」ヒントになる本です。

ブックカルテ リンク

しびれるほどカッコいいか - 勝負はそこだ!

世界的ベストセラー『エクセレント・カンパニー』(英治出版)の著者トム・ピーターズ氏が、つまらない仕事を「ものすごいプロジェクト」に変えるプロセスを教える一冊。それもプロジェクトの創造から退場(これ大切)まで4段階で説明をしています。

各項目の後ろに「やってみよう」というワークもあるので、ひとつずつこなせば、すごいプロジェクトが完成すること請け合いです。

この本の装丁やタイトルを見ての通り、各項目もぶっとびのタイトルがつけらえています。「美貌のプロジェクト」、「海賊旗をなびかせ大海原をゆく」、「共謀者を探せ」、「うわさのタネになり、いつも目立っていよう」、「フライング百回」、「リスト作成は権力への道」、「ざわめき管理プログラム」など目次を見ただけでも、なんじゃこりゃ! と思わずそのページから読みたい衝動に駆られます。

気になる……そう思った方、ぜひお手に取ってください。
 

著者
トム ピーターズ
出版日
2000-05-01

もちろん世界を飛び回る経営コンサルタントのトム・ピーターズですから、疑いもなくプロジェクトの本質はちゃんと抑えています。
この本の中で従来プロジェクトの重点配分は創造10%、実行90%と書かれています。でもトム・ピーターズ氏の重点配分は「創造30%、売り込み30%、実行30%、退場10%」としています。つまりプロジェクト実行の前の配分が60%なんです。

私が海外に赴任していた時に、新規プロジェクトを立ち上げたことがあります。プロジェクト形成に1年半かかりましたが、関係者と何度も話し合いの場をもち、プロジェクトの目標を確認し合いスタートさせました。

そうしたら3年のプロジェクトなのに、1カ月でプロジェクト目標が達成できたのです。実行は30%。その前の準備が大切だと身にしみて学びました。
その後にこの本に出会ったのですが、納得すること多しです。
 

なぜ沢内村は全国自治体初の乳児死亡率を達成したのか

岩手県沢内村の冬は豪雪地帯で有名な土地です。無医村なので、病人が出ると開業医のいる隣の村まで吹雪の中、そりに乗せたり、背負いながら連れて行かなければいけない状況でした。貧困からか、子どもたちの発育障害も多く見られていました。

全国はもちろん、岩手県の平均よりも高い乳児死亡率に直面していた村で、深沢晟雄氏が村長となります。1957年のことでした。深沢は、18歳から村の外にある学校に通い、その後海外で仕事をしており、村に戻ってきたのは49歳の時でした。

出身者とはいえ、長く留守にしていた村で、村長として村人に信頼を得るのはハードルもあったことでしょう。

深沢氏は「豪雪・多病多死・貧困」の三悪追放をめざし、村人と共に保健委員会を発足させたり、東北大学との交渉の末に村に医師を迎えるなどして、1962年には乳幼児死亡ゼロを達成させました。

「昔と今は、状況が違うよ」と思われるかもしれません。ただ、人間が生きる上で普遍的な哲学をリーダーが持ち続けることは、時代を超えても大切なことです。

深沢氏は「人間尊重、生命尊重こそが政治の基本」としていました。選挙の際、外部から橋とか道路を作るなどのスローガンを掲げるようにアドバイスをもらった時も「生命は商品ではない」と「生命政治」のみで戦いました。

「プロジェクトはなんのために必要なのか」、「誰のためのプロジェクトなのか」その問いに、ヒントがあります。
 

著者
及川 和男
出版日

この本は深沢晟雄氏の59年の生涯が描かれています。村民の健康は考えながらも、自分の体のことは二の次になっていたようです。

風邪が長引いているだけ、と本人は言っていましたが、食道がんに犯されていたのです。任期中に亡くなった深沢氏は志半ばであったことでしょう。

皆さん、プロジェクトを立ち上げ、軌道に乗せ、次の人の引き継ぐためには体が資本です。ご自愛くださいませ。
 

難民キャンプに図書館を作る、人を育てる

持っている資格は日本だけではなく、世界で活かせるかもしれません。ある日突然、家に「タイにある難民キャンプで図書館事業のプロジェクトの立ち上げのメンバーになってくれませんか」というFAXが届いたら・・・!?

小学校の司書教諭だった渡辺有里子さん。日本の国際協力NGOがタイ国内にあるミャンマーの軍事政権から迫害を受けて祖国を逃れた人びとを受け入れている難民キャンプに図書館を作るプロジェクトが開始されることに伴い司書募集のお知らせを受け取りました。

「まだそんなに経験を積んでいるわけではないし」と悩みながらも、内戦を経験し、絵本を手にしたことがない子どもたちに本の喜びを感じてもらいたいと、難民キャンプに飛び込むことを決意します。

現場に入って最初に頼まれたのが「図書館の建築図案」を書くこと。日本では一司書が建築図案を描くことはないでしょう。でも渡辺さんは難民と対話をしながら、カレン族の伝統的な建築様式を残しながらも、障がい者でも利用できる図書館をデザインします。

そしてカレン語の絵本を作り、難民の中から図書館員になってくれる人を探し、育成しました。

1095日間に及んだ駐在で作り上げたのは図書館だけではなかったようです。
 

著者
渡辺 有理子
出版日


この本の最後に、メラマルアン難民キャンプに住むポサクレくん(10歳)の詩が紹介されています。

**

図書館に行くと幸せな気持ちになれるから
自然と笑顔になれるから
図書館で知ったことは、
ぼくの人生にとって金のように光り輝く

どうか図書館がぼくのそばからなくなりませんように
ぼくに未来の希望を与えてくれる場所だから
ぼくは世界で一番、図書館が好き

**

このプロジェクトが難民キャンプでどのように受け入れられたかが感じられます。ゼロから図書館プロジェクトを立ち上げる教科書にもなるのではないでしょうか。
 

たった一人でもなすべきことは、なす

フランスのプロヴァンス地方の荒れ果てた土地には、野生のラベンダーのほかに、なにも生えていない不毛の地。生活条件も悪い村では、閉ざされた環境の中で、お互い搾取することに力を使い、神経を苛立たせていました。
山小屋に一人で静かに暮らしている羊飼いのエルゼアール・ブフィエ氏は、誰に指示されることもなく、この荒野に来る日も、来る日も団栗(どんぐり)を植えています。その後、樫(かし)や橅(ぶな)を植えはじめ、風が種を運ぶようになると、草原が広がっていきました。

美しい森は国の保護地区となり、わずか3人だった不機嫌な住民も、今では村は1万人を超す人々が幸福の中で生活するようになったのです。
 

著者
ジャン ジオノ
出版日

**

たった一人の人が、自分の肉体と精神力だけで荒野からカナン(*)を起すことができたことを思うと、さまざまなことがあるにせよ、人間に与えられている力は大したものだ。しかしその力は、つねに魂を高貴に保ち、ひたすら無私に与えつづける寛い心を持ちつづけて、初めて完全に発揮されるものであることを考えると、神にも似つかわしいこのみごとな仕事を成しとげた質朴な老農夫に、心から尊敬を覚えずにはいられない。

*豊穣の地の象徴

**

この本の最後の言葉です。

プロジェクトの立ち上げとその後の遂行は、迷いの連続かもしれません。見えないゴールに、焦りから不安に襲われたり、外野からの野次も聞こえることもあるでしょう。

効率・効果が求められる時代ですが、大切なのは「意志を継続すること、歩みを止めないこと」ではないでしょうか。即効性を求めて、プロジェクト目標すらも失ってしまわないように気をつけましょう。自戒の念もこめて。
 

「あきめたらそこで試合終了だよ」安西先生のこのセリフを何度叫んだか

プロジェクトは一人で行うものではありません。ありがたく、でも恐ろしいことに、色々なメンバーが集まり、部活のように自発的に手を挙げてプロジェクトメンバーになっても、各自の思惑があるかもしれないのです(例:出世したい、このプロジェクトが好き、メンバーの中に一目ぼれしちゃった好きな子がいる等)。

プロジェクトメンバーの多様性と目標に向かって走る姿勢を、このコミックから学びましょう!

 

著者
出版日

プロジェクトの立ち上げは山あり谷ありです。
ヒマラヤ級の山、マリアナ海溝級の谷もあります。

でも「あきめたらそこで試合終了だよ」

「ゼロ」からプロジェクトを立ち上げることになったら、安西先生の言葉が何度もリフレインすることになるかもしれません。


最後にもうひとつ安西先生の言葉をお贈りします「とりあえず、君は日本一の高校生になりなさい」。

これをご覧の皆さま「とりあえず、君は日本一のプロジェクトマネジャーになりなさい」。

そんなエールを込めて、スラムダンクを贈ります。
 

「新規プロジェクトのメンバーになって」というのはすごいチャンス。向き不向きより、前向きに進みましょう。 
新年度、ゼロからプロジェクトを立ち上げ、軌道に乗せるヒントになるのではないでしょうか。 
ぜひお手に取ってください!

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