ミケランジェロといえば、ルネサンスを代表する作品を数多く残した大芸術家です。彼の作品や生き様、意外と知られていない逸話などについて、おすすめの本とともにご紹介します。
1475年3月6日、ミケランジェロはイタリアのフィレンツェ共和国(当時)にて生まれました。ヨーロッパのルネサンス期を代表する芸術家の1人として、絵画・彫刻・建築など多くの分野で後世にまで残る作品を手掛けた人物です。
20代の頃にはすでにその天才性を発揮し、彼の作品の中でも特に有名な彫刻『ピエタ』や『ダヴィデ像』を完成させていました。また絵画の分野においては、当時のローマ教皇の依頼によって『システィーナ礼拝堂天井画』や、同じくシスティーナ礼拝堂の祭壇壁画である『最後の審判』 などの作品を残しています。
晩年もその創作意欲は衰えることを知らず、74歳のときには当時改築中だったサン・ピエトロ大聖堂の主任建築家を引き受け、1564年2月18日にこの世を去るまで作品づくりに取り組み続けました。
ここまで見てきたように、天才芸術家として名高いミケランジェロですが、彼についてあまり知られていない事実があります。
1: ミケランジェロのキャリアは鍛冶屋から始まった
幼少の頃のミケランジェロは石工の一家とともに住んでおり、のちの彫刻で必要となるノミや金槌の扱い方を学んだと言われています。
2:9つの異なるカトリック教皇の芸術品を完成させた
ユリウス2世をはじめとする歴代のローマ教皇は、彼の才能を買って彼に芸術作品を注文していました。その内容は彫像、絵画、果ては教皇自身の霊廟にまで及んでいます。
3:スイス衛兵の制服をデザインしたのはミケランジェロである
ヴァチカン市国を警備し、ローマ法王を守護する役目を担うスイス衛兵は派手な制服でも知られていますが、実はそのデザインを担当したのがミケランジェロでした。
4:彼は自分の肖像画をシスティーナ礼拝堂の絵の中に描いた
システィーナ礼拝堂の壁画『最後の審判』には多くのキリスト教の聖人たちが描かれています。そのうちのある聖人は手に人間の皮を持っているのですが、その皮の顔の部分をよく見ると、ミケランジェロ自身の顔によく似ていることが分かります。
5:ミケランジェロは入浴が大嫌いで、いつも同じ服を着ていた
ミケランジェロは着る服に対しても無関心で、同じ服装のまま寝起きしていたといいます。食事に関してもこだわりがなく、その生活は質素でむさ苦しいものでした。
6:ミケランジェロは優れた詩人だった
ミケランジェロは生涯で300以上の詩歌を書き上げたことでも知られています。その中には愛する女性への気持ちを伝えるソネットなども含まれていました。
7:ダヴィデ像を捨てられていた大理石で彫った
ダヴィデ像を彫り出した大理石の塊は、もとは他の芸術家が彫像を作るために用意されたものでした。しかしその作業は中断され、25年間放置された大理石を使って、ミケランジェロは制作にあたりました。
8:フィレンツェの街中にある軍の要塞をデザインした
ミケランジェロの時代、フィレンツェは度重なる政変から戦乱に巻き込まれました。彼は愛する街を守るため、「フィレンツェ防衛築城委員長」 に就任し要塞の建設・補修を指揮しました。
9:最も有名な作品2つは破壊行為の被害にあった
サン・ピエトロ大聖堂に展示されている『ピエタ』は、1972年に聖母マリアの顔と腕の一部を鉄槌で破壊される事件に巻き込まれ、それ以来防弾ガラスで保護されるようになりました。また複数あるピエタ作品のうちのもう1つ、『フィレンツェのピエタ』については、ミケランジェロ本人がハンマーで破壊してしまった作品として知られています。
10:ミケランジェロは死ぬその週まで仕事を続けた
ミケランジェロは自らの死を予感しながらも最後の作品の制作に取り組み、病に倒れ死去する3日前まで、視力を失いながらもノミを振るい続けたと伝えられています。
ルネサンス最高峰の天才芸術家として、以後の時代のあらゆる芸術家や評論家の注目を集めてやまないミケランジェロ。
ノーベル文学賞を受賞したフランスの文豪、ロマン・ロランもまた、彼の魅力に囚われた1人でした。
- 著者
- ロマン・ロラン
- 出版日
- 1963-02-16
そんなロマン・ロランが書き上げた伝記である本作では、数々の芸術作品によって不動の名声を勝ち取ったミケランジェロの内面に焦点を当て、孤独を抱えて苦しむ姿を浮き彫りにしています。彼は人付き合いを嫌い、世の中に希望が持てず、いつでも自らの死を意識してしまうような、力強い作品群からは想像出来ないほどの「弱い男」だったのです。
こうした1人の人間の物語が、ロマン・ロランという一流の文筆家の手によって魅力的に語られています。ミケランジェロについて、「天才芸術家」という華やかな表層から一歩進み、その偉大さや素顔をより深く知るための手がかりとなる一冊です。
本作では、ミケランジェロの芸術全般に渡る作品を、「混沌」をテーマに分析して読み解いていきます。
同じ時代に生きたもう1人の天才であるレオナルド・ダ・ヴィンチを「秩序」を目指す芸術家として対極に置き、ミケランジェロはむしろ大理石から余計なものを削り落とすことで彫像を作るように、無秩序から生まれ出るものを見極めようとしていたといいます。
- 著者
- 木下 長宏
- 出版日
- 2013-09-21
絵画を彫刻よりも価値のあるものとみなしたダ・ヴィンチ、一方で彫刻家である自分自身に誇りをもっていたミケランジェロ、という対比で語られているのも面白い点です。
ひとつひとつの作品に対する解説も非常に丁寧になされており、それぞれどのような意図を込めて彼が作り上げたのかが語られています。本書を読むことで、また違う角度からみたミケランジェロという人物と出会うことができるでしょう。
ミケランジェロの入門書として最適な一冊です。タイトルにもある通り、すでに同時代の人々から「まるで神のようだ」と言われていた彼の人となりや作品を、魅力的に描き出します。
本書では特に彼が残した建築作品に焦点を当てています。
- 著者
- 池上 英洋
- 出版日
- 2013-07-30
サン・ピエトロ大聖堂をはじめとする大建築を手掛けたミケランジェロが、まさに神のごとき存在であったということが示されています。また、「絵画というものは、私に言わせれば浮彫りのようになればなるほど良いものとなる」という言葉の通り、まるで彫刻のように立体的な質感を伴った絵画作品を残したことも指摘しているのです。
ひとつひとつの偉大な作品の解説がコンパクトにまとまっており、カラー印刷の写真も豊富に揃っているので、『システィーナ礼拝堂天井画』のように大きく複雑な構造を持つ作品も、全体像を理解しやすくなっています。ミケランジェロとは何者であったのかを分かりやすく把握出来る、初心者にもうってつけの一冊です。
ミケランジェロの代表作品のひとつであり、イタリア旅行に訪れる人々が必ずといってよいほど鑑賞する『システィーナ礼拝堂天井画』。
ときの最高権力者であったローマ教皇の注文によって描かれたこの絵画には、キリスト教の最も重要な聖典であるはずの「新約聖書」の登場人物が1人もいません。ここに、権力への痛烈な批判となるミケランジェロのメッセージが隠されていたというのです。
- 著者
- ["ベンジャミン ブレック", "ロイ ドリナー", "Benjamin Blech", "Roy Doliner"]
- 出版日
- 2008-12-18
この壮大な歴史ミステリーを展開しながら、当時の時代背景も詳しく書かれています。例えば、ミケランジェロが天井を見上げ続けなければならず、そこから滴り落ちる絵の具で目を痛めながらも描ききったことや、教皇は就任しだい一族の者に配るために芸術作品を作らせていたという権力者の強欲ぶりについても知ることができます。
芸術、宗教、歴史などの広範な知見から導き出される、新たなミケランジェロ解釈。この本を読めば、謎解きとスペクタクルにワクワクさせられること間違い無しです。
いかがでしたか。ミケランジェロはその作品が素晴らしいことはもちろん、人間的にも非常に興味深い人物だったのです。彼の魅力が伝わっていれば幸いです。