志茂田景樹のおすすめ本5選!『黄色い牙』で直木賞受賞

更新:2021.11.8

奇抜な恰好でタレントとしても活躍する直木賞作家・志茂田景樹。その著書は小説、絵本、エッセイなど多岐に渡り、見た目からは想像もつかないような温かさと穏やかさに包まれるものばかりです。今回はその中でも特に人気の高い5冊をご紹介しましょう。

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奇抜なスタイルで有名な志茂田景樹

志茂田景樹は1940年生まれの小説家、絵本作家です。本名を下田忠男といい、「茂る田んぼを志す」という心意気と自宅にあった国文学者・香川景樹の名前からペンネームが付けられました。

中央大学法学部卒業後に弁護士事務所に就職。その後、セールス、探偵、週刊誌記者など20以上の職を転々とします。29歳で長期入院したことをきっかけに小説の執筆を開始。1976年にデビューを果たすと1980年には『黄色い牙』で直木賞を受賞しました。

以降「直木賞作家・志茂田景樹」の看板をひっさげてバラエティー番組でも活躍。1980~90年代にかけてはカラフルな髪色と派手な柄物のタイツという過激なファッションでタレントとしても人気者となりました。

1999年に妻と「よい子に読み聞かせ隊」を結成。タレント活動や小説の執筆活動を減らして子供向け絵本の執筆や不登校の子供たちの支援に尽力を尽くしています。またTwitterでの人生相談は「心に刺さる」とタレント時代を知る世代から若者まで幅広い世代に支持されています。

志茂田景樹の直木賞受賞作品

1980年に直木賞を受賞した志茂田景樹の代表作。大正から昭和初期、秋田で狩猟をして生活しているマタギを描いた骨太な作品です。

主人公は父・継三郎から阿仁マタギの頭領(リーダー)を引き継ぐ継憲。継憲は軍縮除隊により1年早く田舎に戻ります。しきたりと伝統を重んじるマタギ社会に生きながら、ライバルでもある仲間と共に社会の変化に伴うマタギの将来にもがき悩む継憲たち。社会の流れに抗うように生きるマタギたちの未来とは……。

著者
志茂田 景樹
出版日

この物語は阿仁マタギを舞台とした小説です。マタギとは漢字で「叉鬼」と書き、狩猟を専業とする集団のことを言います。現在、この物語に登場するようなマタギは少なく、その中でも阿仁マタギは山深くて開発が進まなかったため、彼らの文化が色濃く残っていることでも有名です。

大正初期には高給取りであったマタギたちが時代の流れによって生計を立てづらく、伝統を残しづらくなるその姿は現代社会に生きる我々にとっても他人事ではないでしょう。伝統を重んじ時代の流れに抗うべきか、時代に抗うことなく素直に受け入れていくべきか、その葛藤には身につまされるものがあります。

現代の日本人にはほぼ馴染みのないマタギ文化を深く知ることが出来る作品であると共に、作者である志茂田景樹の小説家としての一面を存分に堪能できる1冊です。

志茂田景樹が思春期の子供たちへ送るメッセージ

14歳、思春期真っ只中の子供たちに送る一問一答形式の本です。目次には、以下のような事柄があります。

「学校ってなんだ」「仕事ってなんだ」「日本ってなんだ」「愛ってなんだ」(『なんで! ? 納得できない… 14歳のきみたちへ』より引用)
 

学校、受験、友達、恋愛、仕事、お金など身近なことから、国、平和など大人でも答えが出ないような議題に至るまで、大人になる一歩手前の子どもたちにわかりやすく答えた人生の指南書とも言える1冊です。

 

著者
志茂田景樹
出版日
2014-01-15

14歳頃の子どもたちは反抗期真っただ中。高校受験を控えヤキモキしている親を尻目に、親からの自立を好んで背伸びした行動が多く見られる時期です。その半面、心の中は今置かれている状況や将来への不安でいっぱいでしょう。

この本で志茂田景樹が伝えていることは、大人であれば納得のできる常識的なことです。ただし、子どもと同じ目線に立ち、大人だからと偉ぶることなく、気軽におしゃべりをしているような軽妙な語り口で綴られています。親から言われると素直に納得の出来ない出来事が、この本を読むことによって子供たちの心にすんなりと入り込むでしょう。

一方、子供たちの問いに関する答えが見つかっている大人達にとっても、思春期の子供たちが納得できる伝え方や子供たちの懐に入り込める柔らかい物腰を学べる指南書として読めます。

14歳前後の子どもたちはもちろん、その親たちにも読んで頂きたい1冊です。

寂しい少女と優しい森のお友達を描いた心温まる絵本

「よい子に読み聞かせ隊」である志茂田景樹が2002年に刊行した幼児向け絵本。

ことねはお父さんが交通事故で大怪我をしたため、山の中に住む祖父母の家に預けられました。友達と遊ぶ絵ばかりを描くことねを案じた祖父母は、ことねと一緒にメッセージ付きの黄色い風船を飛ばします。

「おともだちがいなくてさみしいの。だれかおともだちになってください。ことね」(『きいろいふうせん』より引用)

その風船を拾ったのはなんと山奥に住むどうぶつ村の仲間たちでした。

著者
志茂田 景樹
出版日

くま、たぬき、うさぎ、さるなど、どうぶつ村の動物たちがことねを歓迎し、自分の得意分野を生かしてことねと全力で楽しむ姿は純粋に愛らしくほのぼのとしています。特にことねの誕生日を祝う動物たちの姿には、幸せな気分がいっぱいです。

一方この物語では、両親と離れて暮らさなければならないことねの寂しさはもちろん、そのことねを預かる祖父母の切なさもしっかりと感じ取ることが出来ます。ことねの思いをしっかりと受け止めたうえで、黄色い風船に託して空へと解き放ってあげるというこの手法には祖父母の深い思いやりを感じることが出来るでしょう。

子供だけでなく大人も大人としての目線から楽しむことが出来る1冊です。

人生を少しでも前向きに過ごすためのエッセイ

「人の世から悩みがなくなることは、 きっとありません。でも、悩みを軽くすることはできます。」(『失敗したって、いいんだよ ~希望をつくる40の言葉~』より引用)

落ち込んだ時、仕事が上手くいかない時、恋人と上手くいかない時、結婚できなくてつらい時、人間関係で悩んだ時など、深く思い悩んでいる人はもちろん、毎日誰もがふと気に留めてしまう小さな悩み事すらもスッと消えてしまう40の名言が書かれたエッセイです。

著者
志茂田景樹
出版日
2012-09-25

「どうすれば幸せになれるかわからない」

「幸せは感じた瞬間に、すぐに自分のもとから離れていく。一瞬感じるだけで、ヒュッと。それが幸せというもの」(『失敗したって、いいんだよ ~希望をつくる40の言葉~』より引用)

誰もが共感できる悩み事に対し印象に残る端的な言葉で回答、またその意味を文章でわかりやすく解説する形式のエッセイです。回答(40の言葉)は大きな文字で書かれていますので、読み返しやすく落ち込んだ時のために常に手元に置いておきたくなる1冊です。

また40番目の言葉では志茂田景樹本人の奇抜なファッションについて触れています。作家としての穏やかな物腰と見た目の奇抜さはとても対照的で、タレント活動を目にしていた世代が著書を読むと違和感を感じることでしょう。しかしこの40番目の言葉で納得、そしてその解説で彼の人物像が大好きになること間違いなしです。

ぜひタレントとしての志茂田景樹を知っている方は読んでみてくださいね。

志茂田景樹のTwitterから抜粋された名言集

志茂田景樹のTwitter(@kagekineko)に寄せられた人生相談の数々から152の名言を抜粋し、書籍化した名言集。2010年のアカウント開設当初から2012年7月までのツイートを掲載。

Twitterの140文字という字数制限の中、「自分を好きになるにはどうしたらいいか」「やる気はどこから出すのか」「自分は世の中に必要ないのか」など一般のフォロワーから寄せられた相談を、温かく思いやりのある言葉で解決へと導くフォロワー絶賛の1冊です。

著者
志茂田景樹
出版日
2012-09-07

志茂田景樹のTwitterには、友達に相談するような気軽なものから人生を左右してしまうようなものまで様々なものが寄せられます。彼が、そのすべての相談に親身になって丁寧に答えているのです。2010年のアカウントの開設からフォロワー数はどんどん増え、30万人以上にも及ぶと言われています。そのフォロワー達たっての希望で書籍化されたものがこの本です。

140文字という極めて少ない字数の中でどのような質問にも過不足なく答えるその能力は「さすが作家」と言わしめるものです。またどのような回答にも他人を卑下する言葉、悪口となるような言葉が使われていないこと、また質問者にとって都合が悪いこと、言いづらいこともはっきりと戒めて助言していることに志茂田景樹の性格の良さ、優しさが滲み出ていると言えるでしょう。

若者だけでなく、年配の方でも心に残るものがきっとありますよ。

カゲキなファッションでタレントとして活躍し、今は子供への読み聞かせ活動やTwitterで活躍する志茂田景樹の著書をご紹介しました。小説家としての才能はもちろん、絵本やエッセイなど読者の心にスッと入り込む著書の数々は読んでいて心が軽くなってきます。あなたも志茂田景樹の心の温かさに触れてみませんか?

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