登山を生業とする登山家という職業。アルピニストの野口健さんや冒険家の植村直己さんなど、有名な登山家もいるものの、一般的な職業としては定着していないのが日本の現状です。自然や登山に親しみがある方にとって憧れの職業のひとつですが、どのようにして登山家になり、収入を得ているのでしょうか。 この記事では、登山家という職業についてご紹介します。登山家とは何から始まり、職業としての登山家になるまでの道のりや収入、必要なスキルなどを網羅しています。登山家を目指している方はぜひ参考にしてみてくださいね。
登山家とは、文字通り登山をすることで生計を立てている人のことを言います。登山に取り組む方は多くいますが、そのなかでも登山をすることで収入を得ている人が、真の意味で登山家といえるでしょう。
海外では登山家になるための国家資格がありますが、日本ではそのような資格はありません。そのため登山家という職業は確立されているわけではなく、プロの登山家は存在しないのです。
アルピニストの野口健さんや日本人初の14サミッターとなった竹内洋岳さんなどは一握りの登山家であり、一般的な登山家は、登山以外にもさまざまな活動をして生計を立てています。
その他に、山岳競技を専門とする登山家もいます。地道な活動を続けながら登山経験を積み、登山家として名を上げていくことが求められるでしょう。
プロの登山家として企業とスポンサー契約を結ぶといった方法は、日本では一般的ではないので、登山家になるまでの道のりに決まったものはありません。プラスに捉えれば、まったく別の仕事をしていても登山家に転職・転身できるということにもなりますね。
どのようなルートでも共通して必要になることは、豊富な登山経験を積むことです。本業のかたわら登山活動を続けたり、「山岳会」に入会し登山の訓練・講義を受けたりしながら、登山の実績を積み重ねていきましょう。
またひとつの山を登るのにも、登山家は経験に加えてさまざまな知識を持っています。山によっては専門的な登山技術が必要になることもあるでしょう。
そうした山も登れる登山家になるには、山岳部のある大学や、山岳学科のある専門学校に通うことを検討するのもよいかもしれません。いきなりひとりで登山をするのはハードルが高いので、同じように登山が好きで、一緒に経験値を積める人がいる環境に身を置き、プロから指導を受けることで実力を身につけることができるはずです。
民間資格を取得することも登山家になるためにプラスに働く可能性が高いです。
公益法人「日本山岳ガイド協会」認定のガイドの取得を目指すことによって、その過程で登山知識が身に付き、取得後に自らの経歴に箔が付くでしょう。
登山経験を着実積むことで、スポンサー契約や執筆依頼などのチャンスが巡ってきて、登山家としての一歩を踏み出せるはずです。
登山家が登山を通して、どのように収入を得ているかも気になるところでしょう。登山そのものが収入に直結することはなく、出費の方がむしろ多いのが実状です。
その他にもさまざまな費用がかかり、登る山や人員によっては数百万円から1000万円ほどかかることもあります。
スポンサー契約を得ている場合は、登山にかかる経費を捻出しやすいですが、それまでの道のりは長く険しいものです。登山ガイドや執筆活動などで登山費用を捻出し、収入を求めずに実績を積む必要があります。
スポンサー契約を勝ち得ることができれば、登山活動に集中しながら生計を立てられるようになるでしょう。
登山家に目指す上でどのようなスキルや心構えが求められるのでしょうか。
登山に関する技術・知識のほか、肉体的・精神的な強さ、マーケティング力などさまざまなものが必要です。持っておきたいスキル・心構えをチェックしていきましょう。
登山家として、まず必要になるのは登山技術や専門知識でしょう。登る山について良く知り、適切な登山計画を立て、当日の天候に合わせて状況に合った判断するといったスキルが必要です。登山計画やその場の状況に合わせて頂上に向かうためには、歩行技術や呼吸法、装備の取り扱いといった技術も欠かせません。
登山技術や専門知識は、ただ学ぶだけでなく、経験がものを言う部分でもあります。日ごろの訓練や研究よりも実践で技術や知識を磨く意識も重要でしょう。
山は非常に険しく、危険な場所です。日本の山はもちろん、プロの登山家を目指すならさらに険しい海外の山に挑戦しなければなりません。厳しい気候や傾斜、高山病、自然災害などの危険があるなかを、タフな体力・精神力を持って乗り越えることが求められます。
有名な登山家でさえ、登山中の不慮の事故で生涯に幕を閉じた方も多くいます。どんな状況でも身体を動かし続ける体力、苦境にめげない精神力が不可欠です。
登山家になるまでの道のりは長く険しく、ルートが確立されているわけではありません。命の危機に向き合いながらも収入や評価が見合わないこともあります。
決して簡単ではない世界を志すならば、登山を続ける確固たる信念が必要です。信念を貫き山に登り続け、すべてを山に捧げて初めて注目され、登山家としての人生が切り拓かれていくでしょう。
本業に取り組みつつ登山経験を積むのが一般的ですが、登山に割く時間や費用などで壁に直面することが多いでしょう。登山活動に集中するためには、企業とスポンサー契約を結ぶのが一番の方法です。
地道な努力ももちろん必要ですが、自らを企業や世間に売り込む積極性や提案力が求められます。企業を訪問したり、SNSで活動を発信したりしながら、登山家を目指す自分を知ってもらいましょう。地道に発信し続けることによって、多くの人の目に留まる存在になれるはずです。
- 著者
- 竹内 洋岳
- 出版日
登山には危険は付き物であり、山に登り続けるには生きて帰ってくることも重要です。こちらの1冊では、世界にある8000m級の14の山を制覇した日本初の「14サミッター」である竹内洋岳さんが登山の哲学を語っています。
彼は幼少の頃から屈強だと思いきや、実は病弱だったと言います。そんな幼少時代からプロ登山家になり、14サミッターにまで上り詰めたドキュメントでもあります。死に直面した経験から生死を分ける想像力を語っているので、登山家として生き抜く力をこの1冊で学んでみましょう。
- 著者
- 小林 紀晴
- 出版日
「標高8000メートルを生き抜く 登山の哲学」の著者・竹内洋岳さんの天狗山登山に、写真家・小林紀晴さんが密着したインタビューを記録した1冊です。先ほど紹介した本は竹内洋岳さん自身が綴っていましたが、小林紀晴さんの目線で見た彼の姿はまた違ったものがあります。
著者と竹内洋岳さんのやりとりや著者の分析から、プロ登山家・竹内洋岳の魅力がさらに見えてきます。竹内洋岳さんのファンの方はもちろん、これからの登山家を目指す方にも、山への姿勢や山歩きの楽しみ方などがわかるおすすめの1冊です。
- 著者
- 大石 明弘
- 出版日
谷口けいさんは、平出和也さんや野口健さんなどと登頂するなど、数多くの功績を上げ、多くの登山者に影響を与えてきた女性登山家です。優秀な登山家に贈られる賞であるピオレドール賞を受賞したことでも知られています。
2015年の登山中の不慮の事故で亡くなるまでの生涯が綴られており、やりたいことに突き進む彼女の姿勢や自然への愛情、ストイックな努力などに触れられます。今は亡き女性登山家の半生に触れ、登山家としての人生や自らの生き方を見つめなおすきっかけにしてみましょう。
登山家という職業は日本では確立されておらず、他の職業に従事しながら、地道に登山経験を積み、道を切り開いていく必要があります。険しい山々を登り切るためには、強靭な体力・精神力や洗練された登山技術・知識、信念、自分を売り込む力が欠かせません。なるまでの道のりや収入など厳しい現状もありますが、山を愛し、登り続けることできっかけが見えてくるはずです。おすすめの本も参考にして、登山家という職業を詳しく知り、目指すきっかけを見つけたり、行動に移してみたりしましょう。