公証人という職業を耳にしたことがある人はいるでしょうか。離婚・遺言書・会社設立の認証手続きなど、公証人は国の公証事務をになっています。高い法的知識と豊富な実務経験を持ち、全国に約500人程度しかいない、法務大臣に任命された公務員です。2015年に税制改正がおこなわれたことにより、相続税の課税対象者が増加し、今後は遺産相続で揉めるケースが増えると予想されています。公証人という職業が注目される可能性が高くなっているのです。 本記事では、そうした公証人という職業、仕事内容から年収までを解説。記事の最後には、主に相続に関するおすすめの書籍をご紹介しています。
まず、公証人とはどのような身分なのでしょうか。公証人とは、国の公証事務を担う公務員です。
公務員ですが、公証人になるための採用試験はありません。法務大臣が裁判官・検察官・弁護士などの法曹資格者や実務経験者のなかから公証人を任命します。実際、公証人のほとんどが法曹資格者から任命されています。
公証人の数は全国に約500人ほど。公証人になるのは法曹関係での実績があることや法務大臣からの任命であることから、1年に1人任命されるかどうかの狭き門の職業です。
参照:日本公証人連合会
次に、公証人の職場について紹介します。
公証人は公証役場で働いています。全国に約300箇所あるので読者の皆さんにとってアクセスしやすいといえるのかもしれません。地方で公証役場へのアクセスが難しい場合は近くの弁護士に相談することを薦めます。
公証人の仕事は主に3つです。
1つ目は、公正証書の作成です。
たとえば、遺言書の作成がこれにあたります。遺産相続でのトラブルを避けるなら公正証書を作成したほうがよいかもしれません。公正証書には判決と同じ効力が認められます。遺言書の他に、離婚給付契約と任意後見契約などがあげられます。
2つ目は、私文書や定款の認証です。
起業や独立で新しく会社を立ち上げるとき、定款の認証が必要となります。定款の認証をするのは公証人で、公証人による認証がないと会社の新規設立は認められていません。
3つ目は、確定日付の付与です。文書に確定日付印を押すことで、文書の作成日付に関する争いとなったときに重要な証拠となります。
このように公証人は専門的な文書を作成する重要な仕事をおこなっているのです。
公証人は実質上は公務員ですが、国から給料が出ることはありません。公証人の収入源は主に、公正証書や遺言書の作成で発生する手数料収入です。仕事内容によって手数料は異なりますが、定款認証は最も手数料収入が高く、1回で5万円の収入を得ることができます。
都市部など人口の多い地域では1日におこなう案件数が多いため、高収入が見込めます。公証人ひとりあたりの年収は2000万円〜3000万円ほどと言われており、法曹関係のなかでも給料が高い職業として注目されています。
公証人は公務員として、中立・公正でなければなりません。国民の権利の保護を使命としているためです。
この点が、依頼主にとって公正な利益のために代理人として活動する弁護士・司法書士とは異なる点となります。
- 著者
- 内田 麻由子
- 出版日
多くの人にとって、相続はまだまだ自分には関係のない話に聞こえるでしょう。なかには土地・株式など資産をあまり保有していないので、そもそも関係ないと思っている人もいるかもしれません。
本書では、相続税の納付額・手続きと節税対策を説明しています。イラスト入りでマンガ形式で解説しているため初学者でも分かりやすい内容でしょう。
実際に相続が発生してからの流れ、相続税の計算方法、申告書の書き方などが丁寧に解説されているため、相続は関係ない、税金について知っていることがあまりないという方はまずこの1冊から読みすすめてみてはいかがでしょうか。
家族間の関係が良好で特に問題もないから相続税でトラブルは起こらないだろうという人がいますが、相続のトラブルは相次いでいます。今後、相続税の対象者が増えると予想されます。これから相続をするにあたってトラブルを起こさないための遺言書の書き方や手続きは、知っておいて損はない知識です。
トラブルを避けるために、公証役場で遺言書を作成することも紹介されています。もしものときに備えて予め読んでおきたい本です。
- 著者
- ["後東 博", "上川 順一", "村松 由紀子"]
- 出版日
親族が高齢になってくると、自然と頭の中に持ち上がってくるのが相続に関する事柄です。多くの方は家族なのだからトラブルなく終えられるだろうと考えますが、想像している以上に相続関係でのトラブルは多発していきます。
できればトラブルが少なく相続を終えたいと考えている方に、おすすめなのが本書です。遺言書は自筆がいいのか、公証役場で公証人立ち会いの下で作成するのがいいのか、基本の部分から徹底して解説してくれています。
また、家庭裁判所で遺産相続に関する裁判が多くなっていることについても言及があります。今後、相続税の対象者が増えることからさらに遺産相続をめぐる争いが増える可能性があるというのです。
トラブルや不備があるために、自筆証書遺言が無効になるケースが多くなっています。このような事態を回避するために公証人が立ち会って作成する公正証書遺言を薦めています。
身内に高齢の方がいるならば、相続問題が実際に発生する前に読んでおきたい本でしょう。
- 著者
- 北野 俊光
- 出版日
本書は、元公証役場で公証人として公正証書遺言の作成に立ち会った著者による本です。
実際に、自分が死んだら家はどうなるのか、親が急死して口座が凍結された場合にどのようにすればいいのかなど、備えができていない人に万が一のことが起こったときに困らないよう相続の対策がまとめられています。
また、公正証書遺言の利点と必要な書類についても紹介しています。誰に聞いたらよいのか分からないような小さな疑問から大きな疑問、不安点までまるっと網羅してくれているのがありがたいです。
この本の一番の特徴は、65の事例が掲載されている点です。たとえば、相続人から外したい人がいる場合どうするか、非嫡出子(愛人の子)に相続させることはできるのかなど、想像もしていないようなことが起きた場合の参考になるでしょう。
また、公証役場の所在地一覧も載っています。読者のお住まいの場所から最寄りの公証役場を探すときに参考になるかと思います。
公証人は、法務大臣が任命した国家公務員で、ほとんどの方が法曹関係者で20年以上の経験を持っています。2021年4月時点では全国に約500人ほどしかおらず、採用も1年に1度あるかないかなので、誰にでも簡単になれる職業ではありません。
高度な法的知識と法律に関する豊富な実務経験を備えているため、平均年収の額は高く、法曹関係者のセカンドキャリアとして人気があるのは間違いありません。ちなみに公証人の定年は70歳と言われています。
誰でも就職できるわけではないので、多くの方にとって関係のない職業だと感じられるかもしれません。ですが公証人は遺言書の作成から近しいことであれば離婚の公正証書まで作成することができます。そういった意味ではお世話になる方は意外と多いのかもしれません。
本記事をきっかけに、公証人の仕事やその仕事内容に興味を持って勉強する方がいれば嬉しく思います。