将軍が目醒めた時

いうまでもなく、小説とは虚構を描くものである。日常に材を取る私小説なんかはリアリティが肝となるだろうが、それにしたって容赦なく過ぎ去っていく時間を作品として結晶化しなくてはいけないわけだから、何らかの取捨選択、意味付け、虚構が発生するに違いない(ところでほとんどの私小説は人間の愚かさを描けとばかりに、駄目な男の出てくるものが多い。近松秋江の小説はその極致。別れた妻を未練たらたらに追いかけ、ほとんど犯罪者すれすれなのだった)。
中学生の頃、筒井康隆に大いにハマった。その頃近所の公立大学の向かいにあった古本屋で筒井作品を物色していたら、ロンパリ気味の店主に「君、中学生に筒井はまだ早いよ」と憮然と言われたものである。『脱走と追跡のサンバ』にはワクワクした。読み始めたら興奮して、いつの間にか夜が明けていたという経験をしたのは、この『将軍が目醒めた時』が最初である。将軍が目醒めた時
![]()
本と音楽
バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。