相撲イコール体の大きい男がぶつかりあっているスポーツ、という印象しかない貴方。この「ぶつかり合い」がどれだけアツいものか知っておくべきです。今回は、名作相撲漫画5作品の魅力をご紹介していきます。
本作は佐藤タカヒロによる、2009年から2012年にかけて『週刊少年チャンピオン』で連載されていた作品です。 その後、第2部『バチバチ BURST』、第3部『鮫島、最後の十五日』と続きます。
かつて、その圧倒的な実力から横綱に近いと言われていた大関・火竜は、ある晩に一般人に暴行したことで除名され、以後酒におぼれ軽蔑の視線を向けられるほど落ちぶれてしまいました。
その火竜の息子である主人公・鮫島鯉太郎は、母親が家を出ていき、火竜が死に、火竜の友人の家で育てられます。金髪で荒くれ者の不良ですが、子どもの頃から庭の樹にむかってぶちかまし(相撲用語、体当たりのこと)の練習をし、一人で相撲の稽古を重ねていました。
そうしてある日、大相撲の巡業(公開稽古や子どもとの相撲で地元の人たちとの交流をする興行のこと)で、鯉太郎は幕下力士を倒します。このことがきっかけで鯉太郎は相撲部屋に入り、横綱を目指すことになりました。
- 著者
- 佐藤 タカヒロ
- 出版日
- 2009-09-08
鯉太郎は、ガタイの良さと髪色の明るさからやんちゃな人柄を感じられ、相撲なんてまったく興味なのさそうな人物に見えます。喧嘩の強さから敵も多く、1巻の表紙はまるでヤンキー漫画のようです。
しかし、彼の相撲への思いは並大抵のものではありません。相撲の稽古のためぶちかましを続けてきた庭の樹は、その衝撃の積み重ねによって斜めに傾いていました。その樹を見つめながら、鯉太郎を優しく見守る養父のシーンは、一瞬にして鯉太郎への印象を変えさせます。
本作を面白くしているポイントは、やはりライバルの存在と言えるでしょう。
火竜のライバルであった虎城の息子・王虎も、鯉太郎と同時期に相撲部屋に入門します。 一人で稽古をしてきた鯉太郎とは異なり、王虎は高校横綱(高校の相撲大会における横綱)でした。父親の代から続く因縁、かつ実力者である王虎に、鯉太郎はどのように立ち向かい、どのように成長していくのでそしょうか?
相撲に詳しくない世代の方や、スポーツに詳しくない方にも読みやすい、相撲の魅力を知るのに最適な作品です。
本書は一丸による、1990年から1999年にかけて『ビッグコミックオリジナル』で連載されていた作品です。 相撲部屋の親方と結婚した山咲はつ子は、知識などほとんど無い状態で相撲部屋のおかみとなります。
料理は下手だし寝坊もするし、ちょっと天然なところもありるはつ子ですが、若い弟子たちのためにひたむきに頑張ります。 相撲部屋の弟子たちは時に悩み時に泣き、時にはつ子の作るちゃんこ鍋に恐れおののいたり……。笑いあり涙ありでおくる、相撲部屋の日常を描いた作品です。
- 著者
- 一丸
- 出版日
- 2013-02-28
本作が他の相撲漫画と比べ異質なのは、作中に相撲の試合場面がほとんど登場しないことです。おもに相撲部屋でのはつ子や弟子たちの葛藤が描かれています。
はつ子のけなげで献身的な姿には心が温かくなります。田舎から上京してきて不安を抱いているであろう弟子を見つめ、私にできることは何かないのかと悩み、そうして彼らを心身ともに強くするために屈託な笑顔でお世話をするのです。
また、相撲への愛も人一倍のもの。力士たちを太っている男として小ばかにしかしない友人たちに相撲の魅力を気付かせたり、復縁を迫ってきた元カレに相撲をけなされて静かに怒ったり、普段の天然ぶりとは違う一面を見せることもあります。
弟子たちの稽古の様子から、ひたむきに努力することで生まれるもの、努力する人の魅力、そして、はつ子を通して人の心の奥深さを知っていくことができる作品です。
本作はさだやす圭による、『モーニング』で連載されていた作品です。1992年にはテレビアニメ化もされました。
主人公である播磨灘勲(はりまなだいさお)は、相撲界の掟を破り常識を無視する破天荒な男です。しかし、その実力は圧倒的で、大きなカラダと、それを支え攻めへと繰り出す強靭な足腰をもちます。 第1話の時点ですでに横綱となっていました。
そんな彼は土俵入りの際に「一敗でもしたら、その日限りで引退する」と宣言したのですが……。
- 著者
- さだやす 圭
- 出版日
弱いところから横綱を、優勝を目指す!といった作品とは一転、主人公はすでに横綱です。
「負けたら即引退」という条件を自ら掲げていることで、「絶対に勝つ展開にならなければならない」といった状況を作り出し、作品に張り詰めた緊張感を生んでいます。次々に現れる強敵たちを相手にした背水の陣に、読者はハラハラさせられつづけてしまうのです。
そういった力士を、播磨灘がどうやって倒していくのかがポイント。そして、この播磨灘の痛快な性格もまた本作の魅力です。相撲協会に盾突き、土俵上での神聖さを欠くような言動を繰り出す姿は、風習を破壊しているようにも見えます。
本作の特徴は、主人公が圧倒的強さを誇るからこそ、それに立ち向かう強敵たちに感情移入できる余地を作っていることろです。様々な思い、信念、過去を抱えながら、鬼神・播磨灘に挑む敵たちの魅力もとくとご堪能下さい。
本作はちばてつやによえる、1973年から1998年にかけて『ビッグコミック』で連載されていた作品です。2014年にはテレビアニメ化もされました。
3年も留年し、19歳にしてまだ中学校に通っていた松太郎は、問題を起こしたことがきっかけで就職活動に乗り出します。就職先に対して注文の多い松太郎はなかなか就職先を決められなかったのですが、ある日力士と喧嘩したことで親方にスカウトされ、相撲部屋に入門することになりました。
- 著者
- ちば てつや
- 出版日
努力、正統、といった言葉の似あわない松太郎ですが、相撲部屋で出会った身体の小さめな力士・田中をかばって、二人一緒に相撲部屋を破門されてしまいました。しかしこれをきっかけに、彼らは一念発起で立ち上がります。
とは言いつつ松太郎には、賭博をやっていたり、懸賞無しの試合では100%のやる気を出せなかったりと問題点はいまだ残っていました。しかし、力士として力をつけ、大会で勝ち上がろうとする精神が成長していきます。
強い気持ちをもとに実力を伸ばしていく松太郎に対して田中は、過去に起きたある事件を理由に自殺未遂をおこしてしまったことがあるなど、強い心をもってるとは言えません。そんな彼の側に、松太郎という実力者がいては、同じ力士として劣る田中の心は折れてしまうのでは?と読者は心配するでしょう。
しかし、力で劣るならと映像などの情報から相撲を研究する努力家となって相撲を続けるのでした。そして、そんな努力が報われる瞬間が訪れます……。この感動をアツく描き出したシーンは見どころです。
有名スポ根漫画『あしたのジョー』の作者がおくる、自分の決めた道を進んでいく強さとその行く先を描き出した、読んでいて目頭が熱くなる作品。是非読んで見てください。
本作はなかいま強による、1988年から1991年にかけて『週刊少年サンデー』で連載されていた、全12巻の作品です。
相撲部にたった一人で所属している五所瓦角は、高校3年生最後の大会、インターハイ団体戦に出場するため、他の部活に声をかけてまわっていました。優勝するために必要な人材として、さまざまな部の部長に声をかけるも、ことごとく断られてしまいます。
ところが五所瓦のアツい漢らしさと心意気により、4人のメンバーが集まります。柔道部主将、レスリング部1年生、硬派に心惹かれる応援部員、巨漢の囲碁部……。相撲初心者でありながら、五所瓦を中心にして、試合に臨むのでした。
- 著者
- なかいま 強
- 出版日
作中では何より、キャラクターの魅力が光ります。ただ個性豊かなだけでなく、それぞれに理屈詰めではない人間らしい面が見れるのです。
五所瓦自身は、全国トップクラスの実力者と噂されるほどの人物でありながら、心の中の声ですらどもっていたり、部員勧誘したあと情けない様子で駆け足で去って行ったりと、穏やかな性格なのが分かります。主人公が控えめだからこと、勢いのある周囲のキャラクターが際立つのです。
例えば最初に協力することを決意した柔道部主将・清川薫は、柔道より相撲のほうが強いと認めたら協力する、といった発言をします。実際に五所瓦と対決したことでその威力を体感し、高校柔道界の期待の星でありながら、最後の柔道の大会を犠牲にして相撲をすることを決意するのです。
加えて、これらの言動の根底にあるものは、五所瓦が土下座でお願いしてきたのだから、男として誠心誠意応えねばならない、というもの。まさに漢です。これほどにまでカッコイイ清川、そして様々な理由で相撲部入りを決意した個性的なキャラクターたちが、一見地味な五所瓦のために地区予選で戦い、突破していきます。
彼らが協力したくなるほどの、相撲及び五所瓦の魅力とは?本作を読んでいただければきっとわかることでしょう。
相撲漫画界に現れた新星『火ノ丸相撲』について紹介した<漫画『火ノ丸相撲』の見所を最新刊まで全巻ネタバレ紹介!【アニメ化】>の記事もおすすめです。気になる方はぜひご覧ください。
以上、激アツ相撲漫画5作品をご紹介しました。お年寄りや男性だけでなく、若い女性にも人気がでている相撲。これをまだ知らないというかたは、まずは漫画で魅力を知っていくのも一つの手です。相撲の試合を見て、漫画を読んで、とことんアツい漢たちの戦いにハマっていきましょう。