アリストテレスのあなたが知らない5つの事実!「万学の祖」の作品を読む

更新:2021.11.8

紀元前、あらゆる分野の知識を学んだ人物として名を残すアリストテレス。今回は彼の著作の中から、時が経っても役に立つ知識を学ぶことのできる書籍をご紹介します。

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学問の偉大な研究者アリストテレスとは

アリストテレスは紀元前384年頃、現在のギリシャにあたるマケドニア王国のスタゲイロスという町で生まれました。

幼いころから学業に関心を持っていた彼は、紀元前367年頃、憧れていた哲学者プラトンの主催する、アカデメイアと呼ばれる大学に似た機能を持つ学園に入門し、プラトンの弟子として20年ほどの時を過ごします。

プラトンが亡くなった後は新体制になったアカデメイアに馴染めず、学園を離れて生物学の研究を行っていたアリストテレスでしたが、紀元前342年頃、マケドニア王に招聘(しょうへい)を受けたことにより、王の息子であるアレクサンドロスに学問を教える役職に就任しました。

その後は、マケドニア王国の援助を受けながらリュケイオンと呼ばれる学園の開設に参加。また、ひとりの研究者としても新たな哲学思想や、自然研究を発表するなど、国家の教育分野において非常に重要な人物として活動を続けていきます。

その後は彼が引退する紀元前323年までの間に様々な功績を残し、西洋哲学の偉大な哲学者として、そして自然研究における偉大な研究家として、後世に名を残すことになりました。

あなたが知らないアリストテレスの5つの事実

1:父が王専属の医者という裕福な家庭で育った

アリストテレスの父は王専属の医者として活動しており、非常に裕福な家庭に育ちました。しかし幼くして両親を亡くして以降は、彼らの残した遺産を切り崩しながら学問を続け、資金には困らないものの孤独な日々を過ごしました。

2:アリストテレスは多くの本やノートを書いたが、わずか3分の1しか残っていない

彼が生涯を通じて残した書物は実に550にものぼると言われていますが、その多くは、新たに建設されたアレクサンドリア図書館による資料の押収を避けるために、小アジアをはじめとした様々な場所に隠され、行方が分からなくなってしまいました。

後年再発見され整理、編集が行われましたが、紛失している箇所がとても多く、読むことのできる著作の内容は彼の意図したものではない可能性が高い、という指摘を受けることがあります。

3:アリストテレスは歴史上初めて有名になった博識家である。哲学以外にも、生物学や天文学に励んだ

彼は約20年ものアカデメイア滞在期間で様々な学問を学びました。その後、国家の教育者として活動した時期には、哲学だけでなく生物学や天文学においても教鞭をとることとなります。博識であったアリストテレスの名は、様々な学問の第一人者であったことに敬意を表して「万学の祖」として、今もなお語り継がれているのです。

4:アリストテレスの哲学は、キリスト教とイスラム教に大きな影響を与えた

キリスト教やイスラム教などの宗教が世界中に広がっていくためには、神の存在に関する論理的な整理が必要であり、さらには今まで信仰されていた自然神との関係性の整理など、多くの課題がありました。

そのような問題に対し、アリストテレスの影響を受けた宗教家たちが尽力し、彼の理論を用いることによって宗教に対する合理的な解釈を導き出して、宗教を広めていくための理論的な基礎を構築しました。

5:宇宙は無限なものであって、始まりも終わりもないと考えていた

アリストテレスは、著作『天体論』において、宇宙は生成も消滅もなく永遠的なものであり、空虚も時間もなく、ただ存在しているだけの何もない場所である、と定義づけました。

しかしこの理論では、世界を創造した神々を主人公とする宗教や神話との矛盾が生じてしまい、一般的に浸透することはありませんでした。

アリストテレスの知識の教科書

アリストテレスは西洋哲学の最大の功労者として知られていますが、その他にも様々な分野において功績を残した人物です。

そのひとつである『弁論術』は、演説という行為が社会的に重要な役割を果たす欧米社会において、様々な場面での演説行為を行う際の必須の知識として、多くの人に読まれています。

著者
アリストテレス
出版日
1992-03-16

本書において、まずアリストテレスは弁論をその発生条件により、議会において行うもの、演説で行うもの、法廷で行うものの3種類に分けました。ひとくくりに弁論と言っても、その意義や作法は全く異なり、同一の意識のもとで弁論を行っても、それは説得力に欠けてしまう、いわば欠陥のある弁論術であるためです。

そうして、それぞれの弁論の特徴を踏まえたうえで、理論によって、そして時には感情によって、人を説得する手段をひとつひとつ詳細に書きながら、最良の手段について分析しています。

紀元前に執筆されながらも、本書に詰め込まれた知識は役に立つものとして学ぶことができるでしょう。

初めての倫理学

アリストテレスは倫理学の分野でも、多くの書籍や講義ノートを残していました。その代表となるのが『ニコマコス倫理学』です。世界で初めての倫理学書として、倫理学を学ぶうえでとても重要な書籍であると位置づけられています。

本書は、後につけられた注釈や新たな研究も内容に加えられ、彼の倫理学を基準にしてさらに発展させたものとして読むことができます。

著者
アリストテレス
出版日
1971-11-16

倫理学は、人としての善い在り方を学ぶための学問、という事ができるでしょう。本書では、人間としての正しい生き方について考察し、人間の感情や行為について分析を行い、人間の最高善は幸福であると定義しています。そして、それに向かっていくための手段が記述してあるのです。

倫理学と題されてしまうと少し難しく感じてしまいますが、つまりは「幸せになるためにはどうすればよいか」という事であり、その内容は、私たちの日常生活を変えるヒントが詰め込まれています。

あらゆる角度から哲学を学ぶ

アリストテレスの死後、彼の書籍やノートは各地に散らばって再び集めることは容易ではありませんでした。それでもいくつか無事に戻ってきた資料のなかから、哲学の分野に関する記述部分を体系的にまとめ、書籍としたものが『形而上学』です。

著者
アリストテレス
出版日
1959-12-05

形而上学とはつまり、世界の普遍的な原理について、感覚や経験を超えて理性的に認識しようとする哲学の分野です。世界の成り立ちや人間が存在する意味など、多くの人が哲学に対して持つイメージそのものでしょう。

そういった分野の原稿をまとめた本書は、あらゆる角度から哲学について考える事が可能であり、入門書として多くの人に選ばれています。

アリストテレスが教える実践的な話の作り方

古代では神殿が国の中心であり、宗教の伝える神話や儀式、倫理こそが国を構成する重大な要素でした。そのため、このような事柄を一般人に伝える詩や演劇はとても重要なものであり、職業としての詩人や劇作家が多く存在していました。

後に、詩や演劇は一般大衆の娯楽として発展を遂げていきますが、そのような詩や演劇を製作するための技術や知識をまとめたものが「詩学」です。

著者
["アリストテレース", "ホラーティウス"]
出版日
1997-01-16

本書は詩や演劇を製作する上で必要な知識を、実践的に紹介しています。

例えば、喜劇、悲劇についての題名の付け方、話の筋を組み立てるための技術、どんでん返しの作法など、ストーリーを構成するための必要な知識はもちろん、自らの詩が批判されてしまった場合における対処法など、多岐にわたります。

紀元前、国を動かすための大事な手段として用いられていた詩や演劇の理論は、現代の創作の場においても十分な知識として活躍してくれることでしょう。

心とは何なのか。アリストテレス哲学の神髄

アリストテレスは西洋哲学の発展における重要な人物のひとりとしてその名を残していますが、彼がそう呼ばれる最大の要因が本書を執筆したことだと言えます。

史上初めて 人間の心について論じた本書は、彼の哲学の神髄とも言える内容が詰め込まれていて、彼を語るうえでは欠かすことのできない作品です。

著者
アリストテレス
出版日
1999-02-10

若くして、偉大な哲学者であるプラトンに師事したアリストテレスですが、本書は、プラトンより学んだ哲学を時には批判し、発展させながら、彼独自の思想へと昇華させています。

『心とは何か』とタイトルにある通り、その内容は、人間の体内器官の心臓から魂と言われるものまで、あらゆる角度から人間について分析し、人間が持つ心について、そして生命の在り方について正体を探っています。

本書はとても難解な文章で、なかなか解読できないとされてきましたが、哲学者である桑子敏雄の丁寧な解説のもと、一般の人でも十分に理解できる構成に編集され、満を持して出版されました。

注釈や解説だけでも十分に学べて楽しむことができる充実したボリュームで、哲学書としてだけではなく、小説のような読み物としてもおすすめです。

以上アリストテレスの著作から5冊をご紹介させていただきました。彼の知識が様々な分野に渡るという事が分かっていただけたかと思います。紀元前に、様々な事を考え続けていた彼の知識を学び、今後の活躍に生かしていただければ幸いに思います。

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