白川静のおすすめ本5選!本当に深い「文字」の世界を知る!

更新:2021.11.8

私たちが普段何気なく使っている漢字。それらの起源や隠されたエピソードを私たちはどれくらい知っているでしょうか?今回はそんな漢字の深遠な世界を味わえる白川静のおすすめ本5冊をご紹介します。奥深い文字の世界を思う存分お楽しみください。

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『字統』などの字書を世に出した文字学者、白川静

白川静は漢文学者であり東洋学者。古代漢字研究の第一人者として数々の独自の研究結果を世に発表してきました。特に有名なのが、甲骨文字の解釈など漢字の成り立ちに関する主張です。彼は漢字の成り立ちにおいて宗教的・呪術的なものが背景にあるという説を確立し、信念を持って研究を重ねていきました。

寡黙な一面があったことから怖い人だという印象を持たれることも多かったそうですが、実際は年の離れた後輩に冗談を飛ばすなど軽妙な一面も持っていたそうです。生涯学者として多くの著書、字書を発表しただけでなく、数々の講演会を行い漢字の面白さを多くの人々に伝えてきたことでも知られています。

白川静が監修、どこまでも広がる漢字の世界を易しく学ぶ

白川静の文字学体系を基に漢字の成り立ちをわかりやすく紹介した一冊。一見複雑で難しそうに見える漢字を古代文字やイラストと共に分かりやすく学ぶことができます。学校とは全く違う漢字の授業が楽しめる内容になっています。

著者
["小山 鉄郎", "白川 静", "文字文化研究所"]
出版日
2006-12-18

漢字が古代、何かの象徴として作られたということを何となく知っている人は多いかも知れません。しかし本書はただ「○○という漢字は〜の形を表している」という平面的な紹介ではなく「○○という漢字は〜の形を表している。それは〜という思いが込められていて、その字を使った漢字には……」と一つの漢字からどんどん世界が広がっていくのです。

例えば「目」という漢字。これは目の形を表した漢字なのですが「見」「看」など「見る」という意味を持つ漢字だけでなく、「相」「省」などの「見る」という意味から離れているような漢字にも「目」という漢字が使われています。これは一体なぜなのでしょうか?

実は「目」の漢字には「外界との精神的な交渉の意味」が含まれています。この定義を基にそれぞれの漢字をみていくと、それらの謎を解くことが出来るのです。

続きはぜひ本書でお楽しみください。機械的に覚えていた漢字がいかにドラマチックなストーリーを含蓄しているか、鳥肌が立つほどの衝撃を楽しむことが出来るでしょう。作者の縦横無尽な知識が輝く一冊。続きが気になったあなたはぜひ手に取ってみて下さい。

文字の歴史に思いを馳せて

『サイのものがたり』は「サイ」という「口」の漢字の原型と考えられていた漢字に関する白川静の考察を集めて、金子都美絵が絵を添えた絵本です。中国最古の字書「説文解字」での「サイ」の漢字の解釈に疑問を呈する形で論考を広げていきながら物語は進んでいきます。

著者
白川 静
出版日
2016-10-25

この本の魅力は、本の持つ神秘的でノスタルジックな雰囲気です。絵本の中のひとつひとつの言葉がまるで神聖的な祈りのように辺りを漂うかのよう。不思議な雰囲気を持った一冊です。白黒で描かれている絵もとにかく精巧で緻密。白川静の漢字への思いが、金子都美絵の絵で束ねられ、より深く表現されています。

「ことばには、空間も時間もない。しかしすべて、神聖なものは永遠に存するものでなければならない。ことばを文字として形象化することによって、それははじめてその空間をもち、また持続するものとなる」(『サイのものがたり』より引用)

言葉という宙に浮いていたような不確定なものが漢字という枠組みを当てられることで、私たちの生活にしっかりと根付くようになったのです。その言葉が文字として根付く過程には多くの神聖的な祈りが込められており、その祈りを解き明かすことが漢字への思いを馳せるということなのかも知れません。

大人のための上質な絵本。絵も文章も素晴らしく、絵本というよりは美術品と言った方がしっくりくる一冊でしょう。

漢字の奥深さが分かる白川静の解説

10つの章を設けて100の漢字のエピソードを綴った『漢字百話』。時代を古代中国まで遡り、地域によって差異が生まれていた漢字を秦の始皇帝が統一した当時の漢字から秀逸な論考を重ねた一冊です。

著者
白川 静
出版日
1978-04-25

本書では漢字の成り立ちだけでなく、中国思想とその文化的背景にも注目。漢字一つひとつがどのような歴史を歩んできたのか、物語性溢れる興味深い洞察力で読者を惹きつけます。あまりの漢字の深遠さに怖気付きそうになりますが、白川静の圧倒的な知識量がそんな挫けた気持ちを支えてくれるので、知ることのなかった漢字の世界の扉を思い切り開くことが出来るでしょう。

白川静は本書の中で、

「明治・大正期の詩人たちは、ことばの意味や音感はもとより、その用字の視覚的な印象、活字の大きさ、紙面での排列にまで心を配ったものである」(『漢字百話』より引用)

と語っています。こんな独自性の光る明察に触れられるのもこの本の魅力だと思います。

短いエピソードが集められており比較的読みやすいので、白川静の本に初挑戦する人にもおすすめしたい一冊です。漢字の奥深い世界に感銘を受けること間違いなしでしょう。

伝説の白川静の文字講話がシリーズに

白川静は90歳を目前に京都で全20回の文字講話を行いました。その講話の内容を本に記したのがこの『文字講話』です。第1巻内容は「文字以前」「人体に関する文字」「身分と職掌」「数について」の4つに分類されています。

著者
白川 静
出版日
2016-10-11

長年の文字研究を続けてきた白川静が、文字について自由に語っている魅力的な講演をまとめたのが本書。話し言葉でそのまま記されているのでとても読みやすく、すっと心に溶けていきます。講演の内容に沿った資料も豊富に載っており、ビジュアルと文章の両方で古代漢字文化に思いを寄せることが出来るでしょう。

例えば「文字以前」の章で掲載されている「エジプト・オリエントにおける文字の成立と展開系統図」という資料には「未知の絵文字」などという私たちの興味を掻き立てる言葉が載っています。文章はもちろんのこと資料だけでも楽しめるのが本書の魅力です。

やや難解な白川静の本のイメージを一蹴する一冊。晩年の柔らかく知的な白川の雰囲気がじわじわと伝わってきます。効率や能率などとは無関係に、知的好奇心の赴くままにとことん物事を追求することこそが学問なのだと教えてくれるような奇跡の講話です。

漢字の深い世界を知りたい人にも、何か新しいことを知ってみたい人にもおすすめしたい本です。本書を手に取れば、時を越えた漢字の世界を堪能できる豊かな時間を過ごすことが出来るでしょう。

白川静の文字学入門書

本書は白川静が「字統・字訓・字通」の3つの字書を作った際の考察やエピソードをまとめた一冊です。白川静のライフワークとも言える字書の作成について余すことなく語った文字学の入門書になっています。

著者
白川 静
出版日
2011-03-15

「字源が見えるならば、漢字の世界が見えてくるはずである。重来、黒いかたまりのように見られていた漢字の一字一字が、本来の生気を得て蘇ってくるであろう。漢字は記号の世界から、象徴の世界にもどって、その生新な息吹を回復するであろう。」(『字書を作る』より引用)

この言葉が示すように、白川静の漢字研究はただの記号であった漢字にドラマを与えて命を吹き込んでいるようです。漢字の意味だけでなく、その成り立ちや、成り立ちに至るまでのエピソード、その漢字が出来た際の時代背景などまで包括的にカバーしている姿は彼の研究への情熱を感じずにはいられないでしょう。

学問とはこのようなものを指すのだと感動する一冊。考察に考察を重ねて真実を掴もうとする白川静の情熱をあなたもぜひ感じてみてください。内容がとても濃いので、ゆっくり少しずつ読むことをおすすめします。焦ることなくじっくり時間をかけて理解するように読んでいけば、あなたも著者が感じたであろう漢字の世界の真髄を感じることが出来るかも知れません。

いかがでしたでしょうか?今回は漢字の深い世界を知ることが出来る白川静のおすすめ本を5冊ご紹介しました。最後までお読みいただきありがとうございます。

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