Web小説を原作とした注目のホラー漫画『カラダ探し』。その魅力と恐怖について第一夜~最終夜までご紹介します。なお本文中にはストーリー展開におけるネタバレを含んでおります。未読の方は閲覧にご注意ください。
- 著者
- 村瀬 克俊
- 出版日
- 2015-02-04
『カラダ探し』は、ウェルザードによるWeb小説を原作とする漫画です。原作は2011年から2014年にかけ、小説投稿サイト『E★エブリスタ』にて連載されていました。
ホラー作品としての顔だけでなく人間ドラマや心理戦を描いた作品でもあり、とくに漫画版では登場人物たちの心情・葛藤がリアリティたっぷりに描かれています。そうした登場人物たちが見せる表情が、ホラー作品としての魅力に相乗効果をもたらしていると言っても過言ではなく、根強いファンを生んでいるのです。
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『カラダ探し』は三部構成になっており、第一夜では、「遥」というクラスメイトに「カラダを探して」と頼まれた明日香、高広、留美子、翔太、理恵、健司の高校生6人が、ゲームに巻き込まれていきます。
遥にカラダ探しを頼まれた明日香たちは、その日の深夜0時ちょうどに、普段から通っている逢魔高校の校舎に辿り着いていました。これから数日間、夜な夜な「カラダ探し」をおこなうことになるのです……。
「カラダ探し」とは、一言で言えばデスゲーム。八つに分断された遥のカラダの部位をすべて揃えることが目的ですが、カラダ探しを仕切る「赤い人」に見つかると殺されてしまうという死と隣り合わせのゲームなのです。
また、たとえ赤い人に殺されたとしても、夜が明けるとふたたび遥からカラダ探しを頼まれ、同じ一日を繰り返すことになります。
赤い人から逃げつつカラダを探す明日香たちですが、極限状態のゲームを続けていくうち、仲間たちの間に不穏な空気が漂い始めました。仲間割れが起き、分裂していく明日香たち。そんななか、問題はさらに深刻になり、カラダ探しが始まったルーツそのものを探っていくことになるのでした。
- 著者
- 村瀬 克俊
- 出版日
- 2015-04-03
第二夜では、逢魔高校と舞台は同じですが、主人公が明日香から美雪という女子高校生に変わります。
メンバーは、人見知りの美雪、第一夜から引き続き乱暴さが残る高広、カラダ探しの記憶を失ってしまった留美子と翔太、高広と喧嘩ばかりする不良の武司、武司の恋人で計算高い結子。第一夜に比べて個性派なメンバーに入れ替わり、新たな人間関係による問題も浮上します。美雪は仲間たちに翻弄されながらも、次第に「カラダ探しの呪い」の真相に近づいていきます。
最終夜では、再び主人公は明日香にバトンタッチ。
最終夜のメンバーは、第一夜で明日香たちにカラダ探しを頼んだ遥、第二夜から続投の武司。そして新たに、明日香の友人である日菜子、校内で優等生とされつつも黒い噂がある中島、オタクで引っ込み思案な小川が加わり、明日香は美雪から引き継いだ「カラダ探しの呪いを解く」という使命を胸にゲームに参加します。
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「カラダ探し」中、「赤い人」に殺されると、その時点でゲームオーバーとなり振り出しにもどるというルールがあります。ほかにも、
(『カラダ探し』1巻から引用)
以上がカラダ探しにおける絶対的なルールです。
理不尽な怖さで読者を震え上がらせる怪異「赤い人」は、外見は少女でありながら、子どもならではの無邪気さを恐怖に変え、残忍さ・残酷さを包み隠さず発揮して明日香たちを何度も殺害します。 この「何度も殺される」という現実ではありえないはずの体験が生々しく描写され、まるで読者も殺される瞬間の苦痛を味わっているかのような気分にさせるのです。
また「カラダ探し」にはホラー漫画としての側面だけではなく、ミステリー要素もたっぷり用意されています。 まず物語最大の謎「赤い人」の正体。これは次項目で詳しく記載しますが、ただ明日香たちを怖がらせるだけの幽霊ではないのです。
そして、過去にカラダ探しを経験したという逢魔高校農業科の教師・八代や、明日香たちにカラダ探しを頼み続ける三神遥、カラダ探しの「呪い」など、次の展開を予想したくなる謎がたくさん含まれています。
「赤い人」とはカラダ探しをおこなう生徒たちを殺しにやってくる幽霊です。
明日香たちはカラダ探しが始まる前の日中、高校教師・八代に情報を聞き出していくうちに「小野山美子」という人物に辿り着きます。この「美子」と「赤い人」にはなんらかの繋がりがあると睨む明日香たちでしたが、美子は約50年も前にバラバラ殺人事件の被害者としてこの世を去っていることが判明しました。
しかも、バラバラ殺人事件の容疑者とされる男性も自殺を遂げているため、事件の真相は迷宮入りとなっています。明日香たちはカラダ探しを進めると同時に、この事件の真相もまた探っていくことになるのです。
- 著者
- 村瀬 克俊
- 出版日
- 2015-07-03
カラダ探しの最中、明日香たちの行く先々に突然現れる「赤い人」、その出現には法則性があり、ルールの裏さえかけば、うまくやりすごすことができました。とはいえ、奇声を発しながら襲ってくる赤い人への恐怖心が消えるわけではありません。赤い人の登場シーンでは、コマ割りやペン独特のタッチをフル活用した漫画ならではの演出も相まって、常に読者を震え上がらせます。
なかでも印象的なのが、赤い人が肌身離さず抱きしめているぬいぐるみを高広や健司に奪われたシーン。赤い人が断末魔にも似た雄叫びをあげたそのページを開いた瞬間、全身に悪寒が走ることは間違いないでしょう。
一方、「赤い人」とは異なる「黒い人」も登場します。こちらは人間に姿を変え、明日香たちの行く手を塞ぐ脅威となる幽霊です。明日香たちは「黒い人」の正体を暴くことでカラダ探しというゲームそのものに終止符を打とうとします。こちらも見逃せないキャラクターです。
第一話ではまず翔太と高広、留美子のあいだに亀裂が走ります。「赤い人」から逃れたい一心で仲間を囮にした翔太は仲間からの不信を買い、以降受け入れてもらえない日々が続きます。また、健司も途中で理恵に暴行を加え、女性陣からはもちろん男性メンバーからも距離を置かれるなど、一話目でありながら人間関係の悪化がピークに達し、読者でさえも疑心暗鬼にさせます。
第二話ではグループが二つに別れて対立が起こり、心理戦も描かれました。その中で、武司と結子はとある事情によりカラダ探しが終わらないよう美雪たちを妨害。かと思えば、結子が武司から離反して美雪たちに取り入ったり、そんな結子がまた別の思惑を隠していたり……。
- 著者
- 村瀬 克俊
- 出版日
- 2015-12-04
こうしたお互いの腹を探る心理バトルが第二話最大の魅力と言っても過言ではありません。
そして、最終夜では問題を抱えたメンバーばかりが揃い、とくに明日香と遥はこれまでのカラダ探しをめぐる経緯から反目し合います。
また、最終話にて最初に立ち塞がる障害が中島です。中島は普段は優等生であるかのように振舞っていますが、それは表の顔であり、本性は高慢で高圧かつ凶暴です。明日香たちのみならず読者までも困惑させる彼は、どのように物語を引っ掻き回すのでしょうか。注目して読んでみてください。
漫画『カラダ探し』は、小説を原作とした緻密な緻密な世界設定と単純明快なゲームのルールがみごとに絡み合ったホラー作品です。小説はもちろん、漫画やアニメまでさまざまなメディア展開がなされていることからも、その人気の高さが伺えるでしょう、ホラーマニアをはじめとするコアなファン層だけでなく、小説愛好家、漫画愛好家から絶大な人気を勝ち取っているといっても過言ではありません。
この手の作品では「ネタバレ厳禁」という暗黙の了解がありますが、今回は作品の魅力をうんと伝えるため、あえてネタバレに踏み込ませていただきました。そして『カラダ探し』は、先の展開を知っている人でもなお楽しめる作品だと断言します。気になった方はぜひお手に取ってみてください。