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漫画原作者のぼくが、ライバル漫画の関係者に面白さの秘密を尋問してきた件①

更新:2019.5.5 作成:2019.5.5

ひょんなきっかけで、ぼくが出会ったのは、『アラタプライマル』という漫画。このサバイバル漫画、ヤバいんです。何がヤバいって……面白い! 同じくサバイバル漫画を連載しているぼくは、その面白さの秘訣を原作者、作画担当者、編集者の3人から奪いに……、もとい、伺いに行きました……。 今回はその前編です!

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ヤバいサバイバル漫画との遭遇

4月のとある平日の夜21:00、@神奈川県大和駅。

辺ぴなところに呼び出されたぼくは、困惑しつつある人物を待っていました。

きっかけは、遡ること3日前。

ホンシェルジュの編集さんと打ち合わせをしているときに、突然「いま、すごく面白いサバイバル漫画があるんですけど、よかったら茸本さん、作者さんたちに話を聞いてみませんか?」と言われたのです。

その漫画とは、少年ジャンプ+で連載中の『アラタプライマル』。
https://shonenjumpplus.com/episode/10834108156644386281

著者
村瀬 克俊
出版日
2019-05-02

オンラインで無料公開中ということで、さっそく読んでみたのですが……

ヤバい、これ、面白い。

ザックリとあらすじをご紹介すると、主人公は、高校1年生の皆素新太。

出典:『アラタプライマル』1巻

近づいただけであらゆる電化製品を動かなくしてしまうという特異体質を持った少年です。

この体質から周囲に避けられており、父親とふたりで文明から隔絶された暮らしをしていました。

そんなある時、太陽フレア(太陽表面での爆発と、それに伴って発せられる多数の電磁波)の急増により、地球規模の大停電が発生。

電気のなくなった世界で、新太はこれまでの暮らしで培った知識や技術で周囲の人を助けることを誓い、あわよくば友人を作ろうともくろみます。

しかし、彼らの助けになる知識を提供できるものの、これまで他人とコミュニケーションをとったことがないので空回り。

出典:『アラタプライマル』1巻

「空気が読めないヤツ」の烙印を押されがっかりする新太……。しかしその時、周囲では太陽フレアとは無関係の、とある異変が発生し始めていて……。

……おっといけない、これ以上はストーリーの核心に触れてしまうかもしれないので止めましょう。

次に何が起こるかわからない展開の妙迫力満点の絵……気が付くと一気に読み切ってしまいました。

これはいけない、大変まずいです。

面白いのに何がまずいのかというと、実はぼくもいま、とある雑誌でサバイバル漫画の原作を担当しておりまして、早い話この『アラタプライマル』は同じジャンルのライバルなわけです。

この面白さ、早いうちにつぶしておかないと今後脅威になるかもしれない。

そう思ったぼくは、インタビューの体をとった敵情視察をすることに決めました。

面白さの理由作話や作画の秘訣編集者さんのいなし方など、今後ぼくが原作者を続けていくために必要なことを盗み取るべく、インタビューの申し出を受けたのです。


いざ、敵情視察!

タケモト「それで、インタビューはどちらにお伺いすればいいですか? 」

ホンシェルジュ編集「神奈川の大和駅に、21時過ぎでお願いします」

タケモト「や、大和ぉ!? 」


…………

そして話は冒頭に戻ります。

今回お話を伺うのは、原作担当の及川大輔先生、作画担当の村瀬克俊先生、そして担当編集の方の3名。みんな楽しそうに談笑しており、タケモトの目論見には気づいていない様子。

さっそく、マル秘情報をかすめ取るべく質問を繰り出していきます。(以下、ネタバレ注意です!)

タケモト(以降「タ」)「今回、インタビューの話をホンシェルジュからいただいて作品を読ませていただいたんですが、とても面白かったです。
次に何が起こるか分からないハラハラ感と、絵の迫力……特に作中に出てくる虫が凄いグロいじゃないですか、ああいうところにグッときて」

出典:『アラタプライマル』1巻

及川(以降「及」)「ありがとうございます(笑)」

タ「ぼくもいま『僕は君を太らせたい!』というサバイバル漫画の原作をさせてもらっているんですけど、なんだか似たようなところがあるな、と。主人公が頑張るんだけど空気読めないところとか、日常の中に非日常がボーンと登場してくる中で、知恵と知識で奮闘するところとか。

で、かつ面白い!

これはもうマズいなと思いまして。もう今日はインタビューというか敵情視察のつもりで参りました。隠さず、供述をお願いします。黙秘権はありません」


及「了解しました(笑) 」


タ「そもそも、サバイバルを題材にしようというのはどなたからの発案なのでしょうか?」  

及「僕からですね」

村瀬(以降「村」)「というかそもそも、サバイバルを題材に……というよりは「マンモス描きたくないすか?」みたいな、軽い提案が最初にあって。実は及川くんは『カラダ探し』の時からずっと僕のところにアシスタントに入ってくれていたんです。それで、仕事の合間にそういう話をしていたのがきっかけですね。 


僕はこの作品の前に『カラダ探し』というホラーを連載していたんですけど、そこでは人とお化けと高校生しか書いてなかった。個人的には原始の世界であったり、動物であったりというものが大好きで、描いてみたいという気持ちはあったんですけど機会がなかった。 


機会があるなら、そりゃ書いてみたいなぁと。そうやって話をしていたら「ミステリの要素が加わったら面白いんじゃないか」とか「原始の世界ときたら、やっぱりサバイバルだろ」とか、どんどん膨らんでいって」


及「そうですね、そんな流れなので、サバイバルが優先というわけではなかったんです」


タ「なるほど……原始の世界という要素が先にあったんですね」


及「最初は「原始+パニックもの」を村瀬さんに提案しました。

そこからサバイバルという要素も加わっていって」

出典:『アラタプライマル』1巻
出典:『アラタプライマル』1巻

タ「最初、「太陽フレアの影響で~」から始まったので「サバイバルの話が来るな」って思ってたら、原始の話がきて、いち読者として、右フック喰らったような感じがありました。

原始という設定にさらにサバイバル要素がのっかると、リサーチが大変じゃないですか?原始は自分で調べるしかないですが、サバイバルのほうは、実際に経験しないと分からない部分も描かないと納得しない読者も多いのかなと思います。

そういう知識はどうやってリサーチしているんでしょうか?


及「ぼくはもともとキャンプとかバーベキューが好きなので、その延長上でディスカバリーチャンネルなどの動画も昔からよく見ていたというのも活かされていると思います」


村「それに加えて、3人でサバイバル体験行きましたよね、某県の「仙人」のところに」


タ「仙人!? 」


村「はい(笑)森の中に住んでおられて、まるで仙人のような貫禄とたたずまいの方なんです。

食べられる雑草や、水の探し方とかを教わったりしました。

あとどぶの水を、炭とか葉っぱで作った浄水器を通して濾過して、飲んだり。ろ過しても色がまだ灰色で、これ絶対腹壊すだろって思いながら……(笑) 」


及「僕だけちゃんと飲みました。村瀬さんは絶対飲まなかった(笑)お腹はこわさなかったです。

その他にも火をおこす方法も教わりました。ちゃんと、着火装置を作るところからやりました。弓ぎり式火起こし、というやつで、結構難しいんですよね」


タ「作中でも、最初のキーワードは火ですもんね。火を起こす、ということにかなり重点を置いているなと感じました」


及「そうですね、火と、それから飲用水。飲用水を採るにも火があれば煮沸できますし」


タ「リアルなとこまでちゃんと理由があるんですね。

そういう現実味のある要素と、原始時代などのフィクションの部分の「ミックス」って、実はぼく自身ストーリーを作りながら結構悩んでいるポイントなんですけど、及川先生はどうされていますか? 」


及「あー、それは僕も悩んでいます。原始の虫とか、動物とか、画的には迫力で魅せたいんですけど、それとは別に、実際に使えるようなネタも入れたい。現実世界で地震が起きたみたいなときに、実際に役立つような知識もリズム良く出していきたいんですよね。

なので、リズムを大事にしているのかもしれないです」


村「いざという時に『アラタプライマル』のコミックスを持っていたら、サバイバルできるんじゃないか、と思ってもらえるような、役立つ漫画にもしていきたいですね。

いまはまだ話の流れ上、パニック漫画になっちゃってますけど、2巻以降掲載のエピソードに少しずつ……」


タ「なるほど、1巻はあくまでの設定の説明がメインですもんね。それであれだけ面白いというのがヤバいんですが……。

村瀬さんは、作画上でリアルな要素を出す時に注意されている事ってありますか?


村「実は、火を着けるシーンとか、フェザースティックとか、リアル要素で重要なトコロは及川くんが描いているんです」

出典:『アラタプライマル』1巻

タ「え!原作者の方が作画まで説明できちゃうんですか!頼もしいですね」


及「最初はシーンの雰囲気とか指示を出したり、自分で描いたりしているところも多かったです。今はだいたいイメージ画だけサクッと描いて、清書してもらったり」


タ「なるほど、リアルなサバイバル知識は及川さんがメインで担保しているんですね。

でも『アラタプライマル』は、フィクションの部分にも現実味がありますよね。作中に、原始時代の虫が出てきますけども、実際にはいないわけじゃないですか。だから写真がない。なのにめちゃくちゃリアルだと思えるんですよ。

こういう部分はどうやって描いているんですか?


村「実在の虫とか、残ってる資料とかを参考に描いてもいますが、あとはやはり、想像ですね。

実際、本物のかたちって分からないじゃないですか。残っていたとしても骨ぐらいしかないし。図鑑などに載っているのもその骨とか現存するものからの『イメージ画』

てことは、ある程度で良いんじゃないかなって。

かっこよければ、怖ければ。漫画の題材としてなんで、本物と違っていたとしてもいいや、ぐらいの感じで。

まぁ骨格くらいは再現したいかな……」


及「村瀬さんも言うように、古代生物の図鑑の毛並みとか、やっぱり想像で描いてるらしいですね。

なのでぶっ飛びすぎず、カッコよく怖くて、かつ専門家が見たとしても「ありえ無くはないね」って感じのギリギリを攻めたいですね」

出典:『アラタプライマル』1巻

村「可能性がゼロじゃなきゃいい

あと、前作(『カラダ探し』)での経験も糧になっていると思います。マンガの書き方はどれも同じなので。

ホラーでもスポーツでも『アラタプライマル』でも、大事なのは面白いところをどう面白く見せるか。それぞれの画風の違いくらいしかないかなとは思っています」


担当編集・籾山(以降「籾」)「『カラダ探し』って4、5年連載してたんで、その中ですごく村瀬さんのパワーがアップしているというのは担当として感じますそこで培った力で虫の大群とかを描いてるんで、すごく恐ろしく見えるんです。 


前は幽霊的な、お化け的なものを描かれていて、今回はリアルなものを描いている、なのにお化け以上に怖いという、演出力の高さを感じます


タ「崖からカマドウマの化け物が…… 」


及「アレ恐いですよね……」


タ「カマドウマって実物のサイズでも十分な恐怖を感じますからね」


村「そうなんですよ、リアルで得た印象も活かして描いています

そもそも、やっぱり原始の世界にはどんな虫がいるか分からないんです。なのでひとまず『気持ち悪い動物』なんじゃないか、というイメージで現実の生物も活かして……。

さらに、どんなもの食べてるか、どうやって襲ってくるかなんてわかりゃしないので『じゃあ人襲っちゃえばいいんじゃない?』みたいなノリをそこにトッピングして。虫は特に分からないですね」


及「まずは、ぼくら2人が『気持ち悪いな』と一致して思ったヤツをモデルにしています


タ「読者に気持ち悪いなって思わせたいっていうのがあるんですね。挑戦心というか


及「ありますね。そういう意味では波風を立たせたい


村「ただ、描いている最中はそういうところを尖っていきたいんですけど、いざ原稿になって書き終わると『あれ、これ読者ひいちゃうんじゃないかな、逃げちゃうんじゃないかな』って心配になります(笑)

実際読者コメント欄にはけっこう『虫気持ち悪い』って書かれてて。狙い通りだぜって自分に言い聞かせて落ち着かせてました。頼むから読者さん、どっか行かないで……って(笑)」


タ「アドバイザーである、担当編集さん的には大丈夫なんですか?例えば気持ち悪さに振り切った結果、読者が離れちゃうかも……っていう危機感は」


及「そこは演出上、大丈夫かなと思っています。

厳しい世界にいるからこそ、生き抜いてる主人公たちがカッコ良く見える、というのが狙いなので、すごく怖く描いていただいて良かったです。

思った以上にみんな虫がダメみたいなのは驚きましたが……(笑)

でも8割以上成功です。2割くらいの人は離れちゃうかもしれない、でもあれで大丈夫なら、今後もずっと読んでくれるはず


タ「あれ以上に怖いシーンはそんなにはないですもんね」


村「虫メインの漫画じゃないですから」


タ「サーベルタイガーとか「物理的に怖い」ものは出てきますけどね」






インタビュー後編は<漫画原作者のぼくが、ライバル漫画の関係者に面白さの秘密を尋問してきた件②>からご覧いただけます。

作品の無料連載はこちらから。
https://shonenjumpplus.com/episode/10834108156644386281

また、村瀬克俊先生の前作『カラダ探し』については<漫画『カラダ探し』の赤い人などの怖さをネタバレ解明!怖くて面白い!>で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。