川端裕人は、フィクション小説家としても、ノンフィクション作家としても活躍している、マルチな才能を持った書き手です。元々はテレビ局の記者として働いていた経歴もあり、独自の視点が話題となって、多くのファンを獲得しています。
川端裕人は、小説家としての実績はもちろん、ノンフィクション作品での高い評価も魅力の、マルチな書き手として知られています。その多様な引き出しの理由は、彼の経歴に注目すると分かりやすいでしょう。
1964年に兵庫県に生まれた川端裕人は、1973年に引っ越した先の千葉県で子ども時代を過ごし、東京大学の教養学部に入学します。大学卒業後は、日本テレビに入社。科学技術庁や気象庁を担当する記者として活躍しました。
1992年からは、南極海調査捕鯨船に乗り、大がかりな取材を成功させます。このときの経験をもとに、『クジラを捕って、考えた』を執筆。1995年、本作が川端裕人のノンフィクション作家としてのデビュー作となったのでした。
1997年には、日本テレビを退社し、コロンビア大学のジャーナリズムスクールで一年間を過ごします。帰国後に発表した『夏のロケット』が「サントリーミステリー大賞」を獲得し、小説家としてのデビューを飾りました。
その後も目覚ましい活躍を続け、『動物園にできること』では「大宅壮一ノンフィクション賞」の候補に、『せちやん 星を聴く人』では「吉川英治文学新人賞」の候補にも挙げられています。二つの分野で活躍を続ける川端裕人作品の中から、特にチェックしておきたい5作品を紹介していきましょう。
本作は、現在の日本国内における動物園事情を深く掘り下げたノンフィクション作品です。ルポルタージュは、動物園の発展を世界最速で遂げているアメリカを舞台に、綿密な取材のもとに書き上げられたものとなっており、発表当時も非常に話題になりました。
動物園によって、絶滅の危機に陥っている動物は救えるのでしょうか?大自然から切り離された世界に囲われた動物たちは、真の幸せを手に入れられるのでしょうか?単なる娯楽施設として以上に、動物園について知りたいと思っている人におすすめです。
- 著者
- 川端 裕人
- 出版日
- 2006-03-10
テレビ局員時代も捕鯨船取材をはじめとして、様々な自然状況を観察してきた川端裕人だからこそ書き上げることが出来たノンフィクション作品です。子どもたちがはしゃいでいる賑やかな動物園の裏に隠された、本来の姿に触れることが出来ます。
タイトルにしっかり紐づけられた、深刻な話題も展開されるものの、動物園そのものの魅力的な要素についても、本作ではしっかりと語られています。来場者として動物園を訪れるだけでは絶対にたどり着けない、これからの動物園の在り方について考えるきっかけをくれることが、本作ならではのポイントでしょう。
砂漠の昆虫事情から、宇宙旅行を実現するためのベンチャー開発まで、多岐にわたる研究フィールドを川端裕人自身が訪れ、綿密なレポートとして書き上げた一冊です。全6テーマの研究について、基本情報から詳細、可能性までを分かりやすく説明してくれるノンフィクション作品となっています。
「砂漠のバッタの謎を追う」の章では、モーリタニア国立サバクトビバッタ研究所を訪れ、その隠された生態系を探っていきます。「地球に存在しない新元素を創りだす」の章では、理化学研究所の超重元素合成研究チームを取材し、日本が初めて命名権を獲得した原子番号113について取り上げました。何かひとつでも興味のある研究分野を持っている人に、是非チェックしてほしい一冊です。
- 著者
- 川端 裕人
- 出版日
- 2014-12-08
生物や化学、物理学や地理学など、それぞれのジャンルのスペシャリストや、その現場から得た情報を元に、本格的かつ最先端の技術や知識を学ばせてくれる本作。自分の専門分野について取り上げられている人にとっては、非常に魅力的な仕上がりになっているはずです。
しかし、本作の見所は、それぞれの章で取り上げている題材について、特に知識がない人でも、最後まで興味深く楽しめるという点にあります。普段の生活ではなかなか知れないジャンルの研究について、噛み砕いて綴っています。新しい可能性について多く取り扱っているため、本作があなたの明日からの生活に、これまでにない夢や勇気を与えてくれるかもしれません。
主人公は、新聞社の科学部を担当する記者です。かつては小説の影響から、火星マニアとして高校時代を過ごしていました。
あるとき、過激派のミサイル事件の取材に取り組む同期の女性を手伝っているうち、ふと高校時代の仲間の存在が頭をかすめます。仲間とは、天文部のロケット班で、かけがえのない青春を過ごした人たちのことでした。非合法ロケットの打ち上げと事件の関係を追っていく、冒険に溢れたミステリー青春作品です。
- 著者
- 川端 裕人
- 出版日
- 2002-05-10
宇宙の魅力に夢中になっていた主人公が、時を経て大人になり、成長したかつての仲間と再び繋がっていくストーリー。高校時代の思い出と現在の景色がリンクし、懐かしい気持ちを呼び起こします。大人になっても忘れられない夢や冒険を、鮮やかに描き出している一作です。
本作ではクセのある素敵な登場人物たちも描かれています。本物のロケットを宇宙に送り出そうとする、かつての5人の高校生たちは、それぞれ自分の特技を持っており、一度は別れてしまった道を、再びひとつに合わせていくのです。ノスタルジックな気持ちを味わいつつ、本格的な科学に触れることも出来る傑作だと言えるでしょう。
主人公となるのは、三人の小学五年生。菊野脩、亀丸拓哉、河邑浩童は、夏休みの自由研究として、自分たちが暮らしている街に流れている川について調べることになりました。本作は、三人の男の子が、真夏の川をめぐって、大冒険を繰り広げるストーリーとなっています。
これまで何気なく過ごしていた場所に、当たり前に流れていた川。そこに隠されていた、驚くような発見の数々に、少年たちはやがて大切なものを教えられていきます。身近にある自然、そして人と人の関係の大切さを教えてくれる感動作です。
- 著者
- 川端 裕人
- 出版日
- 2006-07-01
本作では、多くの人が思い馳せる、少年期の夏休みが舞台となっています。懐かしい気持ちになる反面、携帯電話やゲーム機、テレビやアニメなど、流行の小道具が多数登場し、物語に臨場感を与えています。どんな時代でも変わらない、不変の価値を語ってくれる瑞々しい仕上がりです。
冒険の主人公である子どもたちを取り囲んでいる、大人社会にも注目してください。離婚や受験をはじめとする、将来に関わるかもしれない問題、それによる重々しい空気もまた、少年たちをひと夏の成長を駆り立てています。幅広い層の読者が、それぞれの視点で楽しめるでしょう。
主人公は、元Jリーガーの花島。失業中のある日、ちょっとしたきっかけから小学生たちに誘われ、公園でサッカーをすることになります。初めこそ乗り気ではなかった花島でしたが、自分を誘った三つ子の小学生たちは、驚きのサッカーセンスを持っていました。
彼らのコーチを引き受けることになった花島は、共に全国制覇を目指します。サッカーの魅力、チームの大切さはもちろん、忘れかけていた情熱を思い出させてくれる、極上の青春ストーリーです。
- 著者
- 川端 裕人
- 出版日
- 2008-05-20
本作は、幅広い層に人気を博したテレビアニメ『銀河ヘキックオフ!』の原作小説です。アニメ版では、主人公はサッカー少年サイドとなっていますが、原作ではそのコーチが主人公でした。アニメとのギャップも楽しめるため、どちらから入っても堪能できる物語となっています。
キャッチーで手に取りやすい作風ですが、実はサッカーについて、非常に詳しく、かつ専門的に取り扱っているのも、本作ならではの特長です。登場人物の長所や身体性、ポジションごとの役割やゲームの進行など、サッカー好きにはたまらない作品となっているでしょう。
いかがでしたか?川端裕人の作品は、小説もノンフィクションも、どれもそれぞれの魅力が溢れています。あなたも是非手にとってみてください。