玄侑宗久のおすすめ作品5選!生死について説く僧侶作家

更新:2021.11.8

現役僧侶の玄侑宗久は執筆活動を続ける作家です。彼の書く作品は僧侶の視点を用いながら、一般の人にわかりやすく仏の教えを紹介しています。また住職を務める寺で東北大震災に遭遇しており、震災に触れた著書もたくさん出版されています。

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現役僧侶の傍ら執筆活動を続ける玄侑宗久

1956年、玄侑宗久は福島県にある臨済宗派の家に生まれました。10代の頃には実家の宗派以外の宗教にも触れ、また様々な仕事をしながら執筆活動も始めます。27歳の時に実家の副住職に就任した後も小説を書き、2001年には生と死のはざまを描いた『中陰の花』で芥川賞を受賞しました。

2008年には住職として実家を継ぎ、その傍ら小説も出版していました。2011年に東北大震災に遭遇。その後の小説には、被災地に生きる人達の様子を自分の小説に反映させた作品も数多く発表しています。

今回は、僧侶でありながら一般の方にもわかりやすく瞑想法を紹介した本をはじめ、芥川賞などの受賞作品、風化されてはならない福島の姿を伝える小説など5作品を紹介したいと思います。

心をリフレッシュしよう

忙しい毎日は充実しているようですが、その一方で知らず知らずのうちに疲れを溜めていることもあります。休日を使ってリフレッシュ!と言っても、家で過ごしているうちに1日が終わってしまうことがありませんか?本当は屋外に出て自然の中でリフレッシュできるのが一番ですが、体の疲れからあまり動きたくない、なんて時もあるでしょう。

しかし、普段の生活の中でできるリフレッシュ方法があります。それは「瞑想法」による「脳のリフレッシュ」です。本書では、就寝10分前などの時間を使って手軽に瞑想ができる方法が、イラスト付きでわかりやすく紹介されています。

著者
玄侑 宗久
出版日
2014-07-29

座禅で「無の境地」にと言っても一般ではなかなか難しいようです。そこで玄武宗久は、大乗仏教を取り入れたオリジナルの瞑想方法を考えました。

座禅中の意識の持ち方がわからない、又はうまくできない方にも、般若心経や呼吸とあわせる方法でリラックスして取り組めるように書かれています。座禅でできる瞑想法の他にも、日常生活の中でもできる方法も紹介されています。

ストレスを感じている時にはもちろん、適度に脳を休ませるためにも毎日の生活に、本書で瞑想法を取り入れてみませんか?

生と死のはざまにあるのは?玄侑宗久の芥川賞受賞作

「人は亡くなったらどうなるのだろう。」多くの人が一度は疑問に感じたことがあるのではないでしょうか。

タイトルの「中陰」とは、仏教のとらえ方で「人が亡くなってから次の生を受けるとされる49日間」のことです。僧侶らしい視点で書かれた内容が高く評価され、芥川賞を受賞しました。

物語は、僧侶の則道が見た夢から始まります。うなされるように目が覚めた時、彼が気になったのは拝み屋(祈祷師)をしているウメさんのこと。病院で生死の境を彷徨う彼女を思い出したのは、虫の知らせでしょうか、それとも……?

著者
玄侑 宗久
出版日

この物語では拝み屋のウメさんの死、そして則道の妻が流産した2人の子どもの生と死、「成仏することとは」という問いを仏教の世界観からだけではなく、科学的な視点からもアプローチした内容になっています。

職業柄「死」というものに近い僧侶の則道は意外と現実的で、彼の妻のほうがスピリチュアルという設定も面白く、また妻の持つ関西弁という特徴も読者を惹きつけます。

本編はもちろん、心理学者である河合隼雄が仏教と科学の繋がりを書いた解説も必読の一冊です。

東北大震災を風化させない、玄侑宗久の強い思い

東北大震災で大きな被害を受けた福島。そこに住む玄侑宗久ならではの短編小説6編がおさめられた一冊で、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞しました。

一流企業に入社したと名高かった東京電力の社員の家族が、地震により一変した状況を描く「蟋蟀(こおろぎ)」をはじめ、除染の様子を書いた「アメンボ」。そして「光の山」では、除染で出た廃棄物の仮置き場が山となり、瑠璃色の光を放つようになったという、近い未来の物語が書かれています。

著者
玄侑 宗久
出版日
2016-02-27

目に見える被害だけではなく、放射能や風評被害に悩まされる福島。津波の恐怖で水を飲めなくなった子どもなど、メディアでは取り上げられていない現場の姿が小説の中に盛り込まれています。

被災地から離れた場所に住んでいた人々は当時、野菜や肉の放射能汚染などをとても気にして過ごしていましたが、時が経つにつれ、今では心配する気持ちも薄れていった人が多いのではないでしょうか。

そんな風に、震災した過去を色あせさせないためにも読んでいただきたい内容となっています。また、震災に関する著書では『福島に生きる』と併せて読んでみても良いでしょう。

鴨長明に自分の姿を見た

本書には、鴨長明の原文と、玄侑宗久による言語訳が載せられています。

「行く川は絶えずして、しかももとの水にあらず」という有名な書き出しで始まる「方丈記」を、国語の授業で習われた方も多いはず。著者の鴨長明がこの作品を執筆したのは、天災などが多く発生した平安時代の終わりでした。

そして現代に生きる僧侶、玄侑宗久は図らずも東北大震災に遭遇します。平安の末期に無常の世を憂えた鴨長明と、自分を重ね合わせたような内容で綴られているのが本書です。

著者
玄侑 宗久
出版日
2011-11-01

いつどこで起こるかわからない天災。次は自分たちの身の周りで起こるかもしれません。強大すぎる力の前に、どうすることもできない無常さを嘆き悲しむことでしょう。しかし次第に、そんな気持ちも薄らいでいくのが人間なのではないでしょうか。

甚大な被害を被った福島に住む玄侑が記したこちらの本を読むと、まだ福島で以前の生活に戻れない人達がいること、風化させてはいけないことを改めて感じます。

また謙虚さを忘れない心、執着しない気持ちの大切さについても考えさせられる内容です。現代社会を生きる私たちの生き方を、立ち止まって考えるきっかけにもなります。鴨長明や玄侑のようになかなか達観した気持ちには及びませんが、少しでも「今までと違う目線で見る」ということに気づかせてくれる一冊です。

今を生きる中で極楽を探す

「極楽はどこにあるのか」と聞かれたら、なんとなく「あの世にある」と答えたくなりませんか?また、「極楽」とは何かと考えたとき、漠然と体と心が楽になることを想像しませんか?

本書では、苦しい思いをした現世で死に、極楽に行く。というのではなく、この世で生きている中で「極楽」を探そう、という内容になっています。今を生きている中で、どうやったら「極楽とは何か」を考えさせてくれる本です。

著者
玄侑 宗久
出版日

本書は人間関係に始まり、「自分とは」「生と死とは」など、多くの人が立ち止まって考えるであろう悩みについて書かれています。今を生きる中での悩みについて仏教の観点からだけでなく心理学、物理学なども取り入れた独特の視点で綴られた内容は、僧侶・玄侑宗久らしい内容だと言えるでしょう。

生きていく上での悩み、そして笑う、泣くといった感情にいついても書かれており、ふとした時に読むことで、毎度違う解釈の仕方ができるかもしれません。はじめから通して読む、という方法だけでなく、気になった項目から読む、というのもおすすめです。

僧侶ならではの視点や表現で書かれた玄侑宗久のおすすめの本5冊はいかがでしたか。普段の生活の中で心の在り方についてあまり考えたことはないのでしょうか。ぜひ今回紹介した本をお読みいただき、自分の心について考えてみてはいかがでしょうか。

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