何かと話題の「不倫」について改めて考えてみる

更新:2021.12.13

今年2016年上半期に世間をにぎわせた「不倫」。マスコミにあまりにも取り上げられる回数が多いことから、流行りの話題ともなりつつあるこのテーマ。「結婚」というものが人や文化によって多少の差はあれど「ポジティブなこと」としてとらえられている反面、不倫は「ネガティブなこと」だとされています。が、世間が異口同音に唱える「不倫はいけません」で終わらせず、今回は不倫の背景に迫る3冊をご紹介したいと思います。

ブックカルテ リンク

「不倫」に関するアレコレを教えてくれる

著者
有川 ひろみ
出版日

タイトルに魅かれ、本屋さんに取り寄せてもらったこの本。テーマがテーマだけに、切ない女心について描かれているのかと思いきや、この本は「不倫におけるハウツー本」でした。不倫はしないようにしましょう、でももしも不倫をしてしまったら、どのようにバレないようにするのか、そしてバレてしまったら、どうするのか。それらのことが、いわばマニュアルのように淡々と、そして客観的に書かれています。

この本は今から30年以上も前の1984年に、大和書房から出版されたものが2004年に幻冬舎から文庫本として出たものです。今の感覚で読むと80年代らしい言葉選び(「キャリアーウーマン」「テレフォンRURURU」「キザな彼」、「OL」、「ミーハー」)が目立ちます。もちろん携帯電話やメールなどなかった時代です。ちなみに当時の中年男性には今よりも見合い結婚が多く、彼らは独身女性を「女房とは見合いだ。君と出会って初めて、恋をした。恋を知ったんだ」と口説いていたらしいですが、このあたりにも時代を感じます。

ただ、時代による違いはあれど、不倫の基本というか不倫のあり方自体は、いつの時代もあまり変わらないこともこの本からは読み取れます。ポジティブな言い方をすると、不倫は時代を超えたものだといえるでしょう。

たとえば既婚の中年男性が若い女性を前にしたとき、「忘れかけていた青春の香り」を想い出し、その女性に「愛の幻を見る」(37p.)のは昔も今も変わらない気がしますし、若い独身女性が独身の中年男性よりもなぜか既婚の中年男性に魅かれてしまう点も昔も今も変わらずです。

それにしてもこの本のマニュアルの細かさには感心させられます。不倫相手と旅に出る際の服装のアドバイスに始まり、手編みのセーターが手編みだということが周囲にバレないための裏技の紹介、そしてついには不倫相手をもてなす手作りの料理レシピまで登場します(85p.「不倫クッキング」)。チーズグラタンや焼きギョーザ、ヘルシージュースなどの作り方が細かく紹介されており、不倫というテーマをいったん措いても楽しめる本です。

全体的には淡々と書かれたこの本ですが、急に過激になる箇所があり、これがこの本のハイライトともいえます。「歯形をつけるのもテである。これは瞬間的にできるので、失敗しないハズ。狙いを決めてガブッと噛めば、いくら彼が悲鳴をあげても無駄。くっきり、しっかり、あなたの愛の証がついてしまうのである。噛む部分は、肩がベスト。また、奥さんの視線から逃れることができない頬、手の甲、唇、胸などは、極めつけの部分といえる。ただし、彼は社会人である。他人の恥さらしとなることを承知の上でチャレンジしていただかなくてはならない。」(126p.)には笑いました。

『不倫の恋も恋も恋』…… 料理レシピあり、旅先の服装アドバイスあり、ついには噛み付きの方法まで教えてくれるこの本は、そのアンバランスさが最大の魅力だといえるでしょう。
 

データに基き客観的に「不倫」を分析・解明!

著者
森川 友義
出版日
2016-07-15

早稲田大学国際教養学部の教授であり、同校で「恋愛学入門」という授業を教えている森川友義氏が書いたこの本、データに基き不倫というものが実に客観的に書かれています。2016年7月に発売された新刊です。

不倫に経済効果はあるのか・否か、といった点に着目するほか、キスに至るまでの個人の平均的なデート費用も紹介されています。さらには、既婚男性が予算を切り詰めた上で不倫を持続したい場合、最も簡単で有効な方法は不倫女性に恋愛感情を抱いてもらうことだとしています(156p.)。不倫相手の女性に自分のことを好きになってもらえればデートも低コストで抑えられるというわけです。女性の不倫に関しては、世の中の妻の何パーセントかは(実際に何パーセントであるかは本を読むお楽しみとして伏せさせていただきます)夫とは別の男との不倫の結果、子供を生んでいる、というシビアな情報も書かれています(65p.)。

『大人の「不倫学」』はタイトルどおり、不倫をテーマにした本ではありますが、上手くいかない恋愛に客観的な答えをくれる本でもあります。そもそも出会いの場からして、色んな市場が混じってしまっているからだという指摘が特に興味深いです(106p.)。確かに、合コンひとつをとっても、そこには恋愛を求めてやってくる独身の人、既婚者であることを伏せ、浮気を求めて合コンに繰り出す人、婚活の場として合コンに参加する人……というように「結婚市場」、「浮気市場」「恋愛市場」が複雑に入り混じっており、誰が何を求めその場にいるのかの見分けや見極めがそもそも難しいという問題があります。

さらには、独身同士の恋愛では同じ魅力度の男女がカップルになる傾向があるが、不倫となるとこれがまったく当てはまらなくなる点も大変興味深いではありませんか。詳しくは本を読んでいただくとして、不倫という現象に興味のある方はもとより、恋愛の客観的なアレコレが知りたい人におススメの1冊です。

不倫をしている人が前向きになれる本

著者
家田荘子
出版日
2015-07-16

2001年に出版された『不倫のルール』に新たな取材をいくつか重ね加筆した上で昨年2015年に発売されたこの本。ご本人の体験談も交えながら書いているためリアルで読み応えがあります。時に不倫の辛さのようなものを描きつつも、不倫を決してよくないものとはみなさず、不倫をする女へのアドバイス本だと言えるでしょう。

家田氏のアドバイスとはまず、自分らしく生きること。相手のスケジュールに振り回されず、自分のスケジュールやお稽古事、女友達を大切にすること。不倫をしながらでも、資格を取るなど、自分の人生のためにできることは全部やること。悲劇のヒロインのような心情にならないように、不倫の心構えのようなものを紹介しています。そして「私は一人が好き。一人の時間が楽しいから、彼と過ごす時間も、もっともっと楽しくなる」が不倫の理想だとしています。

しかしながら、女性が「愛人」という立場になることのシビアさについても勿論言及しています。それはタイトルの「妻のいる男の愛し方」のとおり、愛人となる女性はいわば「愛人の掟」なるものを守る必要があるということ。病気の愛人や、淡白な愛人、身なりにかまわない愛人を持ち続ける男性はまずいないということ。性的なものが最も重要視されるのが愛人という立場である以上、当然、愛人は常に身奇麗にしていなくてはいけないし、何よりも健康でなくてはならない。そういう意味では相当な努力が必要だとしています。

また不倫というものについて「シングル同士の恋とは違うことなんて、初めからわかっていたことです。緑茶にミルクを入れて、アッサムのミルクティのようにおいしくしようとしても無理な話です。」とたとえているのが印象深いです(76p.)。

そして「楽しいことが楽しいと感じられなくなったとき、不倫は終わります。遊びに代償はありません。スキーに行って、あるいは海やクラブに行って、楽しい以外に何も得られなかったとしても、人は文句を言ったりはしません。楽しければ、それで十分だからです。」(77p.)というのも心に刻みたい。不倫に意味はない。不倫に意味を求めない。不倫はただ楽しければそれでいい……そのあたりのことが一番難しいからこその忠告だともとれます。

最後に。今回読んだ3冊は主に「男性が年上の既婚者で、女性が年下の独身者」というタイプの不倫について取り上げていましたが、また違うパターンの不倫に焦点をあてた本も今後読んでみたいと思いました。

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