「新感染」というタイトル、ゾンビ映画というジャンルなど、観る人選びそうな外見をしているが本作の射程は思いのほか広い。ゾンビが生理的に無理という方以外は多くの方が満足できる人間ドラマである。今回はゾンビ版『そして父になる』として一部で話題の『新感染 ファイナル・エクスプレス』をご紹介しようと思う。
本作は、スリル溢れる面白いエンターテインメント映画であるが、それだけではない。
ゾンビ映画、パニック映画では、緩急をつけ、緩んだところでは、キャラクターたちの過去が語られ、互いを知り、絆を深めるといったシーンがよくあるが、本作には一切ない。スピード感のあるアクションが休みなく展開されていく。主人公含め、メインとなるキャラクターは6人いるが、彼らの過去や彼ら自身がどういった人間なのかについて語られるシーンはないのだ。
けれど、そんな本作は、上質な人間ドラマなのである。なぜ、人物について語ることなく上質な人間ドラマ足りえたのかというと、それは、大切な人を守る物語だからだ。
娘を守る父。妻を守る夫。同級生の女の子を守る男の子。
本作は何としてでも生き残るという物語ではなく、何としてでも大切な人を守る物語なのだ。
どんなに絶望的な状況にあっても、彼らは足を止めない。大切な人を守るために。そのシンプルな動機が、背景を描かずとも、上質な人間ドラマを描き出すことに成功した最大の要因だろう。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』はひとりの男が父親になるまでを描いた作品だ。
主人公ソグは自分の利益しか考えていないファンドマネージャー。仕事ぶりは優秀そうだが、奥さんとは離婚間近(あるいは済み)で、現在は10歳くらいの娘と母親と3人で暮らしている。
仕事が忙しく、なかなか娘と話す時間を取れておらず、歌の発表があった授業参観にも行けなかったようだ。娘の誕生日に、部下に聞いた最近子供に人気のゲーム機を買って帰るものの、娘の部屋には同じゲーム機が……。
前に同じプレゼントを買ったことを忘れているという、主人公が娘のことを考えているのではなく、父親としての役割をロールプレイングしていることを簡潔に示すエピソードが冒頭で描かれる。
ギリギリの状況の連続を経て、男は少しずつ父親になっていく。
父親になるのに最も重要なものは何かという問いに、本作は娘からの承認という解を出す。
「さっきは怖かった
もうパパに会えないと思って
昨日の歌もパパのために練習したんだよ
だから歌えなかった
パパがいないから
ずっと一緒だよね?」
(『新感染 ファイナル・エクスプレス』より引用)
冒頭で描かれた歌のエピソードの伏線を回収し、娘からの承認を描く。
冒頭と上記のセリフのシーンは心の底からラストを味わうための伏線なのでお見逃しなく。ラストシーンで娘がとる行動によって、主人公は娘を守り、本当の意味で父親になるのだ。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』は2017年9月1日公開。
- 著者
- NEW Next Entertainment World
- 出版日
- 2017-08-16
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