磯田道史のおすすめ本5選!著作『無私の日本人』は映画化もした歴史学者

更新:2017.8.23

生まれついての歴史学者であり、大ヒットした歴史映画の原作者にもなっている磯田道史という人物がいます。彼の足跡をおすすめの著作とともにご紹介していきます。

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歴史学者であり歴史小説家・磯田道史

磯田道史は1970年生まれの歴史学者・作家で、2016年より国際日本文化研究センターの准教授に就任しています。

実家が岡山県の武家の末裔であったため、古文書が多く残されていたそうです。それらに興味を持った磯田は、子どもの頃に独学でこれを読み込んでいました。その一方で、ひらがなが書けなかったり、掛け算の九九を覚えなかったりしたので、学校では奇異の目で見られていたといいます。 

歴史研究の道に進みたいと思っていた磯田は、京都なら古文書や史跡が多いだろうと考え、京都府立大学に進学します。しかし、そこに大学院が無いことに入学してから気づき、慶應義塾大学の文学部史学科を再度受験しました。 
 

日本近世の大名に関する研究で博士号を取得したのち、一般向けの教養書も多く発表しています。2003年の著作である『武士の家計簿』はベストセラーとなり、映画化されたことでさらに有名になりました。 
 

他にも映画『殿、利息でござる!』の原作となった『無私の日本人』を著し、テレビでは歴史番組の司会者を務めることも多くなっています。

 

幕末に実在した「ソロバン侍」の生活と明治維新

幕末期、猪山成之(いのやましげゆき)という、加賀藩前田家に仕えた御算用者(おさんようもの)がいました。

加賀藩の経理係を務めた彼による、猪山家の家計簿が発見されたことで、当時の下級武士の暮らしぶりや、猪山家が築き上げた算術の凄みが明らかになってきます。

明治維新によって、武士らしくないとして低く見られていた「ソロバン侍」が、近代軍事戦略の要となる兵站を担う者として飛躍していくまでのストーリーを、本書は描いています。

著者
磯田 道史
出版日
2003-04-10

多くの時代劇では、困窮した貧乏武士の姿が描かれることこそあっても、なぜお金に困り借金まみれになってしまったのか、その理由まで踏み込んで語られることはほとんどありません。

彼らは武士としての体面を保つため、親戚同士や上下関係の付き合い、そして下働きの者を雇うために多額の出費が必要でした。その部分をリアルかつ面白く知ることができるこの本は、物語としても、当時を知る資料としても、非常に読み応えのあるものになっています。

こうした家計からみた武士の生活実態を、たまたま古書店で発見した記録に目をつけ、解き明かしてみせたところに、磯田道史の凄さがあります。

磯田道史の作品を通して、江戸時代の殿様たちの生き様を知る

江戸時代の7人の「殿様」について、それぞれどのような人生を送っていたのか、知られざる実態を紹介していく歴史エッセイです。

江戸幕府が密かにまとめていた大名についての記録、いわば「通信簿」を読み解きながら、水戸黄門が「黄門」と呼ばれるようになった由来、忠臣蔵の浅野内匠頭が女好きの引きこもりだった事実などが、ユーモアを交えて記されています。

著者
磯田 道史
出版日
2008-09-30

この本で紹介されているのは、いずれも「立派な殿様」として知られている人物ばかりとなっています。

しかし戦国時代が終わり、幕府の体制に組み込まれていく大名の葛藤や、主君に忠誠を誓い続けた人物の生涯なども描かれ、歴史を知るための新たな視点が提示されています。

エッセイとして書かれているので、歴史にあまり詳しくない人であっても気軽に読むことができる作品です。

歴史学者・磯田道史の熱い想いに触れてみる

歴史学者である磯田道史が、どのようにして歴史を楽しんできたのか、様々なエピソードを通して教えてくれるのが本書です。

新幹線で関東と関西を行き来する際「関ヶ原の戦いの徳川家康や石田三成になりきった気持ちで関ヶ原を通過する」など、歴史好きな磯田がついついやってしまう行動の一つひとつから、歴史家になるべくしてなったのだということがよく伝わってきます。

著者
磯田 道史
出版日
2012-10-24

磯田道史が歴史家としての自分に、宿命や使命を強く感じていたことが伺えます。

例えば東日本大震災を契機として、地震多発地帯の大学へ転勤することになったのも、歴史から先人の教えを学び取り、これからの日本に活かしたいという想いと、歴史家として「何をなすべきか」という強い意識に突き動かされたからなのです。

他にも、忍者が用いた毒に関する詳細な研究や、「赤穂浪士討ち入り事件」の時、忍者からもたらされた内部情報など、歴史ロマンに没頭する著者の情熱を凝縮したような本書を読むことで、磯田道史が綴る歴史書を、もっと読みたい!という気持ちになる本です。

江戸時代の庶民がもっていた「無私」の哲学

『殿、利息でござる!』というタイトルで映画化もなされた、江戸時代の庶民の心意気を記した歴史物語です。

東北に伝わる偉人についての古文書をもとに、穀田屋十三郎という農民をはじめとした3人の無名の庶民が、「無私の心」をもって世のため人のために生き抜いた姿を描きます。

無私の日本人

2015年06月10日
磯田道史
文藝春秋

本書では、重税にあえぐ町の人々を救うために、常識を打ち破って「藩にお金を貸し付けて利息を取る」という方法を考えつき実行した穀田屋十三郎の物語などが語られています。日本にはかつて、利他の心に突き動かされて理想を実現した人々がいたのです。

磯田道史は、この本を書くことで果たしたいある目的について、あとがきに記しています。それは、幸せとは何かが見えなくなりつつある現代日本を生きなければならない息子に、歴史から学んだ「人のために生きる」ことの喜びを知ってほしい、というものでした。

この本を読んだ読者も、江戸時代の無私の哲学を学び取ることができます。ぜひ一度手に取ってみてください。

大災害を生き延びた祖先たちが残した叡智

本書は、2011年の東日本大震災以後、磯田道史が関心をもって取り組んできた「防災の歴史」についてまとめたものです。

1707年の富士山大噴火など、江戸時代に発生した大災害を中心に、天災が日本の歴史に与えた影響や、当時の様子について、各地で収集した膨大な資料をもとに語られます。

著者
磯田 道史
出版日
2014-11-21

本書によって磯田道史が明らかにしたかったのは、天災に遭遇した祖先たちがどのようにして生き延びたのか、その叡智がどのように後世に伝えられているかについてでした。

地震大国である日本には、何度も繰り返し災害に見舞われてきた土地が全国各地にあります。著者の母親も、徳島県で昭和南海地震の津波被害を受けた経験がありました。磯田は自分が住む地域の災害の歴史を知ると同時に、災害から身を守るための習慣を日頃から実践してほしいと本書で伝えています。

天変地異に対する心構えをもち、家族や親しい仲間を守るために、読み継がれるべき力作です。

いかがでしたか。磯田道史が著作に込めた、歴史に対する熱い思いが伝わっていれば幸いです。読みやすく面白い作品ばかりなので、ぜひ手にとってみてください。

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