無人島送りにされた人間たちのサバイバルを描いた人気サバイバル漫画『自殺島』がスマホで無料で読めることをご存知でしたか?今回は人間ドラマが熱い本作の魅力を登場人物からご紹介!最終回までのネタバレを含みますのでご注意ください。
本作は「人はなぜ生きていくのか?」という普遍的な問題を、主人公であるセイの成長を通して考えさせられる作品です。孤島を舞台にくり広げられる、人間の心の奥底にある心理や欲望、組織の在り方や人との付き合い方などを描きながら、読者に生きることについて訴えかけてきます。
人々は人権も文明の利器もない島に着き、それぞれの道を歩みます。到着したその日に死を選ぶ者もいれば、集落を作り生活する者もいます。また、ひとりで生きる者もいれば、恐怖政治でグループを支配する者も。彼らが迷い、選択する様子は、非現実的な設定でありながら不思議とリアリティに溢れています。
- 著者
- 森 恒二
- 出版日
- 2009-08-28
もしかすると、この作品のリアルさは、作者の経験に基づくサバイバル知識などからきているのかもしれません。前作『ホーリーランド』も喧嘩に明け暮れた作者の実体験がもとになっており、登場人物たちも知人の名前を使うことが多かったとという森恒二。
自分の経験をそのまま漫画として反映することもある森恒二は、「自殺志願者が集められた島でのサバイバル」という奇抜なシチュエーションを通じて、どんな思想や哲学を読者に伝えているのでしょうか。
ちなみに本作はスマホアプリ「マンガPark」で無料で読むこともできます。この作品の世界観、エピソードを追うごとに高まる没入感は、やはり作品でしか味わえないもの。この記事を読んで少しでもご興味を持たれた方は、ぜひご自身で体感してみてください。
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舞台は、政府が国民全員をIDで管理する日本。そのIDには国民の生きる権利と生きる義務が付随しており、本人の意思でそれらを放棄することも可能です。
主人公のセイは自殺未遂をくり返し、常習指定者認定されていました。そしてある日リストカットをして病院に搬送され、医師に「生きる意志はあるか」と問われ、ついに生きる義務を放棄する書類にサインしてしまうのです。
その後セイが目覚めた時、目の前にひろがっていたのは海。死んだはずなのに見知らぬ女性がそばにいて、彼女の手首にもリストカットの跡がありました。そして彼は、そのほかの周囲の者も自殺未遂者達であることに気付くのです。
実は彼が目覚めた場所は、政府が自殺増加の対策として常習者を送り込む島「自殺島」で……。
そして彼らは無人島である自殺島でサバイバルを余儀なくされるのでした。
そしてこの島で生きていくことを選んだ者は、2つのグループに分かれます。セイが所属する「共に助け合う民主制の山側グループ」と、サワダという男が暴力で支配する「絶対王政の港側グループ」です。
ある日セイたちは、港側の侵入者を拘束し、捕虜にします。そしてその捕虜からサワダが宗教のような強いマインドコントロールでグループを支配している実情を知るのです。
冬が近く港側は食料の確保が困難になっており、サワダらはセイたちを襲ったり、人質を取ったりするなどの強硬手段に出てきます。2つのグループの対立は深まり、命をかけた抗争が始まります……。
主人公セイは、本作のテーマである「生きる」ということを模索し、作者なりの答えを体現するキャラクターです。島での様々な事件やトラブルを経てそのたびに悩み、苦しみ、それでも確実に人として強く成長していきます。
- 著者
- 森 恒二
- 出版日
- 2010-01-29
セイはもともとは本土では優等生でした。しかし、生まれた時から親からのプレッシャーに悩まされて来ました。人より上に立ち、人より優れた人間であることを強いられ続ける苦しさ。
そのプレッシャーがありながらも競争社会に馴染めない彼は次第に心を病み、更生施設へ入ることになります。しかし、そこでも生きる意味を見つけられず、リストカットによる自殺未遂の常習者となってしまいました。
そして、ある日セイは幾度したかも分からないリストカットをしてついに病院へ。そこで医師に生きる意志があるかを問われ、力なく生きる義務を放棄する書類にサインをしたのです。
意識を取り戻した時に彼がいたのは通称「自殺島」。
人間としての権利がまったくなくなった状態で、自殺志願者たちが捨てられる島だったのです。そこで次々と死に損なう者たちを見て、「死ねないならば、生きるしかないのだ」という声が大きくなっていきます。
そして、死ぬためにここに来たにもかかわらず、生きようとする矛盾を抱えます。
セイはその後も衝動的に動いてしまう自分に生きたいと願う気持ちを見出していきます。『自殺島』は壮大なる自分探しの旅と言っても過言ではないのかもしれません。極限状態にあるからこそ、セイは自分の本当の気持ちに気付くことができるのです。
徐々に前向きになった彼は、島で生き続ける方法を模索し始めます。学生時代に弓道部の先輩から弓の歴史、知識を教わったことから、試行錯誤を重ねて自作の弓矢を作成したり、その弓を使って狩猟をしたりするようになるのです。
そして、山の中で見た鹿の生気にふれて、また生きたいと前向きになるセイ。島は過酷な状況を彼に突きつけますが、それと同時に生きる気力を与えてもいるのです。
最終回ではある主要人物の死を乗り越え、生きている実感を確かめるセイ。彼のラストの姿は言葉では語られていないものの、生きるということの答えを体現しているように思えます。
リヴは初めてセイに愛を教えてくれるヒロインであり、自身も辛い過去を抱えながら自殺島で再生していくキャラクターです。セイのパートナーとして支え合い、一緒に困難を乗り越えていきます。
- 著者
- 森 恒二
- 出版日
- 2012-03-29
彼女もセイと同じくリストカットによる常習指定者でした。その原因は幼い頃のトラウマにあります。
母親がロシア人のハーフで、その美貌から自殺島初日でも襲われそうになるリヴ。しかしその途中から彼女は表情が無くなり、能面のようになってしまいます。
実はリヴは10歳のころに母に捨てられ、預けられた親戚の家で性的虐待を受け続けていました。そんな状況でも精神を保つために心と体を切り離し、自身を人形のように思うことで耐えてきたのです。
リヴはひとり暮らしを始め、何人かの男と付き合いましたが、性的虐待のトラウマから心は人形のように冷たいままでした。しかし、そんな彼女もセイと愛し合い、少しずつ変わっていきます。
また、彼女の名前にもセイからのある願いが託されていました。彼女の本名はマリアなのですが、セイがリヴと名付けたのです。それは物語中に登場する猟犬・イキルと同じく「生きる」という意味が込められているもの。
徐々にセイと恋愛関係になる彼女ですが、過去のトラウマからスキンシップを怖がってしまいます。愛し合っているのに、過去のせいで歩み寄れないふたり。セイは彼女のために憤ります。
果たしてふたりはそれぞれの生きる意味を見つけ、ともに歩んでいくことができるのでしょうか。答えは最終回のラストシーンに。それはある意味では「普通の光景」であり、彼らがずっと求めていたものでもあります。ぜひふたりの生き様を最終回でご覧ください。
明るい雰囲気の裏に、自殺島に連れてこられた人物ならではの影を隠し持っているのがリョウです。
体格が良く、どう見ても未遂者とは思えない活力に満ちている彼は、島に来た当初からグループのリーダー格となって皆を引っ張りました。
そんなリョウは監視員に殺されるかもしれないリスクを負ってでも何とか本土に帰ろうとします。なぜ彼はそこまでするのか。その秘密こそが自殺島に来た理由であり、普段から明るい彼の抱えた傷でもありました。
実はリョウはかつて同棲していた恋人を交通事故で亡くし、自分も彼女が死んだ交差点で自殺したいと願っていたのでした。しかし、本土にいた時に彼女と同じ場所で自殺を試みるも死にきれなかったのです。
自分の死に場所は恋人を亡くした交差点であるという思いから、本土への帰還を切望する彼。有志と共に作ったいかだで本土へ戻ろうと試みますが、巡視艇に破壊されて失敗に終わりました。
命からがら泳いで島に帰り着くものの、自分の願いは叶わないことを知り、その後は心を閉ざしてひとり漁をする生活。
しかし、その後セイの説得のおかげで、再びグループに帰ってきました。人を傷つけることを嫌うため、港側のグループとの抗争が激しさを増してきたころにリーダーの座をリュウに譲ります。このまま平和に過ごせるかと思いきや、最後の最後である危機が訪れ……。
リョウからリーダーとしてのバトンを渡され、それによってこの島で新たな葛藤を抱えることになるのがリュウです。リョウと名前が似ており、リーダーというポジションですが、その性格は正反対と言っても過言ではないかもしれません。
リュウは24歳の時、結婚を機に従業員3人の小さな運送会社を設立。少しずつ会社の業績も上がり、子供も産まれて幸せな生活を送っていました。
しかし、不況のあおりを受けて経営が苦しくなり、従業員は給料が下がったため全員辞職してしまいます。 その後はひとり寝る間も惜しんで仕事に打ち込みましたが、居眠り運転による5人の死傷者を出す大事故を起こしてしまいました。
莫大な借金が残り、家族からも見捨てられ、刑務所内で3度の自殺未遂をくり返した後、自殺島へやってきました。
敵であっても人を殺すことに躊躇するリョウに対し、リュウは好戦的な性格。そのことから港側のグループとの抗争が激しくなってきた際に彼からリーダーを引き継ぐことになったのです。
確かに粗暴な面もあるリュウなのですが、過去の経歴からも分かるように生真面目。リーダーをまっとうしようとプレッシャーで焦ったり、不安定になったりすることもしばしばあります。
リョウよりも乱暴なようで責任感が強く、実はリーダーにふさわしい人物かもしれません。
リュウが新リーダーとして奮闘する姿は応援したくなるもの。クライマックスにかけての島の人々の変化の様子とともに、ぜひトップとして奮闘する彼の姿もご覧ください。
男性の体でありながらも女性の心を持つことで苦悩しているのがトモです。
彼が初めて自分の生きづらさに気付いたのは中学生になった頃。自分が性同一性障害であることに気付き、苦悩し始めます。
家族にも本当の自分を隠し続けてきたトモでしたが、ある日持っていた女物の服が見つかってしまいます。それを機に全てをカミングアウトするのですが、父親からはまさかの化け物呼ばわりされてしまいます。
その後も父親はトモの障害を無理やり治そうとし、家庭は崩壊、彼は自殺未遂を繰り返すようになってしまったのでした。
島では、セイが自分の性同一性障害のことを知っても全て受け入れてくれたことに感謝し、彼と懇意になります。また、これをきっかけにグループの全員にカミングアウト。女性陣は薄々感づいており、他のメンバーも戸惑いながらも受け入れた模様でした。
そんな平和な展開でしたが、ある時カイの作戦で港側に女性と共に人質にされてしまったトモ。その時の一瞬の仕草により、心が女であることをサワダに見抜かれてしまうのです。
その後サワダに犯され、嫌がりながらも女としての喜びを知ってしまったトモ。自分ではそのことを認めたくない一方で、完全に女性として扱ってくれるサワダを否定しきれなくなってしまうのです。
初めての性行が無理やりで、しかも愛憎入り混じるものであるトモの気持ちを想像するのは、読者としても苦しいものがあります。このような背景もあり、その後山側のグループが助けに来た際も、「自分は戻れない」と言うのです。
その様子を見たリヴは、自身の体験から直感的にトモがサワダに犯されたことを察します。そしてトモはそのまま港側に残ることになってしまいます。
サワダはこのような人心掌握の特技を自分の欲望のままに使っていきます。トモのこのエピソードはストーリーを盛り上げる要素でもあるのと同時に、読者のサワダに対するヘイトを高めました。
その名の通り、最初から最後まで作物の実りに関わってきたのがミノルです。彼は農家の家に生まれたものの、農業に興味がなく、反発心から家を出てもやりたいことが見つからずに鬱屈とした日々を送っていたという過去を持っています。
しかし、島に来てから過去の経験を活かして農作業を始めると、作物が育つこと、それを美味しそうに食べてくれる人々の表情から、充足感を得るようになりました。この島に来てようやく彼は自分の生きる道を見つけられたのです
そんな彼ですが、港側グループの襲撃で数箇所を刺され負傷してしまいます。看病されながら安静にしていなければならない状態でしたが、無理をして稲田をモノにすることに尽力。体調は悪化していきますが、皆に指示を出して稲田を作ることに成功しました。
ところが成果をあげたものの、やはり病状は悪化。治療器具や薬などが無いなかでどんどん弱っていく様子は、サバイバルの過酷さを感じさせられます。
ネタバレしてしまいますが、ミノルはそのまま死を迎えてしまいます。しかし、その最後のシーンが悲しくも美しいものなのです。
それまでのミノルの人生を象徴するラストシーン。そして彼の死をもとに、次にご紹介する人物がある成長をとげます。
もしかするとこの漫画随一の勘の鋭さを持っているかもしれないのがボウシです。常に帽子をかぶっており、過去や経歴はほとんど不明。自分の名前を嫌い、ボウシと名乗っているという怪しさ満点の人物です。
島に来た当初は肥満体型であり、引きこもりを連想させる元気のなさがありましたが、次第にやつれて、最終的には恋人までつくってしまいます。
ボウシは自分を何も持っていない人間だと思っていたのですが、島では生活や狩猟採集に必要な道具を考案し、作成することでグループに貢献します。
さらにボウシのすごいところは、武器や道具をつくることだけではありません。実は彼は観察眼に長けており、さまざまなシーンで鋭い指摘を行うのです。
たとえば、カイによって恋人のタエに危険が迫ることがありましたが、どこか自分と共感する点があるのか、カイの歪んだ精神を鋭く指摘。常に冷静沈着な彼を酷く動揺させました。
その名探偵並みの観察眼やタエとの交流によって成長していく姿などは、サブキャラではあるものの見ごたえ抜群。さまざまな人の生き様が見ごたえたっぷりに楽しめるのが本作の魅力のひとつなのです。
様々な過去を抱え、足並みを揃えるのが大変な自殺志願者の集団をまとめた立役者が杉村、通称スギです。話をする時や照れた時にクイッと眼鏡をあげるのが癖になっているコミカルなキャラでもあります。
彼は幼いころから人とコミュニケーションをとることが苦手だったため、大学を卒業後、「ひとりで幸せを得る」ため作家を目指します。しかし、文筆業もコミュニケーション能力が必須であるという壁に当たり、挫折。その後は首吊りによる自殺を試みては失敗していました。
スギは自殺島のことを元々うわさで知っていた人物。グループの中でも物知りで、塩田によって塩を採取したり、リョウが本土へ帰ろうとした時には方位磁針を自作したりします。もし本土に帰ることができたとしても島に残りたい、と言うほど、島での暮らしに愛着を持っているスギ。
自殺島の生活を通してゆっくりと成長していく彼は、最後には島での経験、この土地への愛着が功を奏し、大きな飛躍をとげます。夢を叶えたスギの姿は、島に来る前の彼とはまったくの別物です。ぜひ作品で彼の結末をご覧ください。
最初から最後まで救いようがなく、何度もセイたちの平穏を崩すような行動をしてきたのがカイです。
登場当初の彼は謎に包まれた人物でした。セイは初めて自殺未遂を起こして入れられた施設でカイと出会っており、面識がありました。
- 著者
- 森恒二
- 出版日
- 2013-11-29
セイの目から見たカイは不思議な人物でした。カイはひとつ年上で、理知的かつ思慮深い性格をしていました。その性格から、施設ではセラピーに来ている人の相談にまでのっており、なぜ自殺をしようとしているのかがまるで分からなかったのです。
自殺島でも、誰もが得体の知れない場所に連れてこられてパニックになっている時、ひとり冷静沈着な判断力で行くべき道を示します。
これだけ聞くとグループのリーダーになってもいい器に思えるかもしれませんが、少しずつ怪しい態度を見せ始めるのです。
グループの者が徐々に心を通わせていくなか、全体を俯瞰で見ているような、他のメンバーとはどこか一線を引いた態度をとっていた彼。悩みを抱える者には優しく接しているように見えましたが、実は絶望を煽ってマインドコントロールすることで、彼らを自殺に誘っていたことが判明します。
結局カイはその現場をセイたちに押さえられ、グループを追放されてしまいました。
これで一件落着かと思いきや、食料も得られずやつれていった末に、山側グループの弱点を漏らして港側グループのボス・サワダに気にいられ、そちらに加入。しかしプライドの高さや歪んだ価値観ゆえに、さらに孤立を深め、サワダが亡き後は港側にも居場所がなく、山側の廃校舎の便所に閉じ込められます。
そして、この追い詰められた環境下で、さらに自分勝手な考えに拍車をかけ、ある事件を起こすのです。
島での抗争が終わり、セイとリヴの結婚式などで和やかな雰囲気に包まれていた一同。そんな状況に逆恨みしたカイは、リョウを騙して外に出してもらうのですが……。
この後の自己中心的な言動は、読者を大いに苛立たせることでしょう。しかし、カイの起こした事件をきっかけに、セイはある決断をし、また一つ成長することになります。
果たしてセイはどんな決断をしてカイと向き合うのでしょうか?
生きるということ、人の命というものにまっすぐ向き合う主人公・セイと比べ、人の命など何とも思わず、自分の欲望のままに行動するのがサワダ。絶対悪として登場し、読者に憎まれながらもストーリーを盛り上げた人物です。
- 著者
- 森恒二
- 出版日
- 2016-06-29
本土にいた頃は麻薬の売人だったサワダ。自分で商品を使ってしまいヤクザに追われ、ヤク中になりながら自殺未遂を繰り返していました。
島に着いた日、セイたちと分かれ数人と山の中に入っていきましたが、その間何をしていたのかは作品では描かれていません。
気付けば港側グループのリーダーとして食料の確保を率先して行うリーダーになっていますが、やがて自分の周りに女性を囲い、宗教的なカリスマ性を持ちながら周囲をマインドコントロール。グループのメンバーからは、尊敬されているのと同時に恐れられてもいます。
それもそのはず、彼は人権、命などをまったく考慮しません。バナナを奪うために人を殺したり、女性を強姦したり、殺した人間を食べたりすることさえ厭いません。彼の行動原理は、「欲望の赴くままに本能を満たすことができればいい」という危険な価値観をベースにしているのです。
彼は女性を奴隷のように扱い、セイのグループの女性や性同一性障害のトモを拉致して強姦します。彼の行動に業を煮やした山側グループは、サワダ暗殺計画を練ります。
最後の抗争で、サワダは山側の集落を乗っ取ることに成功しました。廃校舎に人質を取り、戦況を有利に進めます。しかしセイたちがロープを使って壁をのぼり、屋上から奇襲を仕掛けて戦況は逆転。
サワダは矢傷を負って逃走しますが、セイたちに追われて最後は海にたどり着き、足を滑らせて水の中へ滑落、サメに喰われて最期を迎えました。
人喰い、トモのレイプなどの下劣な行動を繰り返し、絶対悪としてストーリーを盛り上げてきた彼ですが、その最期もまた彼らしいもの。
物語のラスボスともいえるサワダの死。セイ達のそれまでの苦労が報われるのと同時に、人の命を奪ったという後味の悪さが確かに残る結末は、読者に別の視点から「生きる」というテーマを投げかけています。その結末は、ぜひご自身でお確かめください。
この作品では、「生きる」というテーマを一人ひとりの人間性や社会のあり方と紐づけて描いています。
人間が集まれば、そこには必ず社会が生まれます。それは自殺島のような特殊な環境であっても変わりません。そんな社会の中で登場人物がどう生きるのか、どう関わっていくのかを描いているため、本作は一般的な社会生活にも通ずるものがあり、多くの人の共感を生むのでしょう。「もしも自分がこの状況に置かれたときはどうするだろうか」と考えてしまう読者も多いはずです。
『自殺島』は、人間関係に悩んでいる方や組織になじめない方など、生きづらさを抱える多くの人に答えを示してくれるかもしれません。興味を持った方は、ぜひご自身でそのストーリーを体験してみてください。