こんにちは、松原汐織です。雨が多く夏らしくない8月でしたが、オトナの皆さんは9月に夏休みを取る方も少なくはないのでは? 先月に引き続き、新しい発見や知識を身につけることが出来ること間違いなし!の課題図書として提案したい3冊を紹介します。
- 著者
- 平野 啓一郎
- 出版日
- 2016-04-09
<結婚した相手は、人生最愛の人ですか?>
書店にて、帯に書かれたこの言葉を読んで目が離せなくなった。「一番好きな相手と結婚したい」。そんな夢を未だ描いている身としては、あまりのヘビーさに心がえぐられる。うぅ悲しすぎる……でも、コレが人生なのかもしれないと悟った気持ちにさえなる。
主人公はクラシック・ギタリストの蒔野聡史とフランスの通信社に勤める小峰洋子。2人共アラフォーの大人のラブストーリー。ただ本作が他の恋愛小説と違うのは主人公同士がたった三度しか顔を合わせていないこと。正に「会えない時間が愛を育てるのさ〜♪」なのである。でも、会いたくても会えなかった理由には切なくて悲しくて胸が詰まる。
改めて実感した事がある。良い小説とは圧倒的な取材力に基づく。『空白を満たしなさい』など平野啓一郎氏の著作は以前から好きだったのだが、今作では文学から歴史、紛争、音楽、金融など有りと有らゆる分野の知識量が惜しげも無く作品に投影されていて読み応えが半端じゃない。そして、全てを読み終えた時に意味が分かるタイトルも洒落ている。何だかパーフェクトな小説なのである。
「幸せになりたい」誰しもが願う幸せとは穏やかであることだと思う。それならば、苦しいほど切なくて美しい恋愛は小説で味わうだけで十分だ。側にいる共に生きる人を大切にする為に、小説で疑似体験してみるのはどうだろう。隣で笑ってくれる人をより大事にできるはずだから。
- 著者
- 司馬 遼太郎
- 出版日
- 1994-03-10
ハマると一直線!な私。前回紹介させていただいた、おかざき真理氏『阿吽』キッカケで今は空海ブーム到来中。
『坂の上の雲』『竜馬がゆく』など司馬遼太郎氏と言えば、ズッシリとした重みのある歴史小説ばかり。今作は上下巻のみと司馬氏にしては短くもあるが、唐の教典から執筆時に高野山へ仕える方々へのインタビューまで1000年以上の空海に関わる情報の幅と深みに圧倒される。
最澄は真面目にコツコツ。空海は好奇心旺盛天才型。神聖化された聖人君子なイメージから一変、両者共に自らの夢や目標の為に人を利用し政治にも結果として深く関わる様は良い意味で人間らしさを感じる事が出来た。
人生の悦楽のひとつは自分とおなじ知的水準のひとびとと常時交わりをもちうることであるとすれば――
天才が故に孤独。空海も仏教も知らなくても困らないことかもしれない。でも、知っていると少し人生に深さが増すのではないだろうか。
1000年以上に亘り人々に興味を抱かせ続ける天才の生き様が、司馬氏の驚異的な取材力と巧みな文章によって学ぶことが出来る作品。
- 著者
- 西原 理恵子
- 出版日
- 2017-06-02
著者の西原理恵子氏の作品というと、『毎日かあさん』や『パーマネント野ばら』など独特のイラストが直ぐに頭に浮かぶ。今作は二児の母である西原氏が自身の経験を元に幸せを掴みに行く為の生き方指南の一冊。
王子様を待たないで。お寿司も指輪も自分で買おう。
白馬に乗った王子様なんて居ない。自分の思い描く理想の相手なんて存在しない。そんなことはとうに気が付いている。一年一年と年を重ねて行くにつれ自分で出来ることも増えて行き、「30代は楽しいよ」なんて先輩達の言葉の意味も何となく理解できる年齢になってきた。と同時に「このままで良いのかな?」なんて思い悩む日もある。「こんなはずじゃなかった」なんていう言葉は人生で一番恐ろしい言葉だ。自分で自分を幸せにしなくては!
環境に差はあれど、母の愛は大きくて深い。反抗期で口をきいてくれなくても心配で仕方なくて娘さんに愛情がたっぷり注がれているのが伝わる。うちの母なら私に「生きていくときに、覚えていてほしいこと」として何を伝えるのだろう。これを機会に母に問うてみたい。
秋の始まりが訪れたかと思いきや茹だる程の暑い日もあり、クーラーの効いた室内での読書は至福の時。オトナだからこそ共感し理解できるであろう今回の3冊。是非!
Photographer : Fumitaka Ohnuki
Hair&Make-up artist : Kenya Tadatomo (p-cott)
Stylist : Miho Sugimoto