大石内蔵助からリーダー像を学ぶ。赤穂浪士を率いた昼行灯の素顔とは

更新:2021.11.9

急に解体され迷走する浅野家を冷静に、そして時には大胆にまとめ上げ、最後は主君の無念を晴らすべく赤穂浪士を率いて仇討ちした大石内蔵助。急な事件にも冷静に対応し、今でも多くの人の参考とされている彼の考え方を知ることの出来る本をご紹介します。

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忠臣蔵の主人公、大石内蔵助とは

大石内蔵助(おおいし くらのすけ)は1659年、赤穂藩の大石家に生まれ、幼名は松之丞と名付けられました。

父が早くに亡くなり、祖父の養子となり生活していたのですが、その祖父もまた亡くなると、内蔵助の通称と遺産を受け継ぎ、赤穂藩の家老として働き始めます。

その頃の家老としての彼は、のんびりとしてどこかやる気の見えない態度であり、あまり評判のよくない人物ではありましたが、その自然体の態度が交渉事に向き、水谷家の説得の際には浅野長矩により、直接彼が出向するようにと命を受けるほどでした。

そして1701年、儀式のために江戸城に出向していた主君が、刃傷事件を起こし切腹処分、そして勤めていた浅野家はお家取り壊しにもかかわらず、相手側の吉良義央はお咎めなしという大事件が起こり、大石の人生は大きく動きます。

赤穂藩は徹底抗戦しようとする人々と、おとなしく従うべきであるという人々に分かれ、荒れてしまいますが、そんなときに家老であった大石は、全体の意見を聞き、意見をまとめ上げるなど、今まででは考えられないような手腕でまとめはじめました。

しかし、健闘むなしく浅野家は解体されてしまいます。

その後、大石は浅野家を再興するために赤穂藩を離れ、様々な手段を試みますが、いよいよお家再興が不可能であると判断すると、それならばと主君の無念を打つべく切腹処分を覚悟の上で、47人の赤穂浪士たちと仇敵である吉良邸への討ち入りを決意しました。

大石内蔵助にまつわる7つの逸話

1:当時としては異例の退職金を配った

これは内蔵助のリーダーシップを語るうえで欠かせない逸話なのですが、赤穂藩浅野家の解体が決まると、彼はまず、赤穂藩で流通していた藩札(当時の紙幣)の価値がなくなってしまうことを危惧し、藩札の回収を始めました。

それと共に、無職になってしまった浅野家に勤めていた人々がしばらく生きていけるように、と藩札と交換に浅野家の財産を人々に配ったことが、当時としては異例の退職金のようなものであり、彼の人を気遣う心の象徴として語られています。

2:19歳の時にはすでに家長として独立していた

藩の有力な家庭で生まれ、恵まれた環境で育った彼ですが、実は14歳の時には父が亡くなり、19歳の時には養子に入った祖父も亡くなってしまったため、彼は19歳の頃には家長として独立し、大石家を代表する立場になっていました。

3:実は討ち入りに乗り気ではなく、穏便に済ませようと奔走した

吉良邸討ち入りという壮絶な最期を遂げた彼ですが、実は事件が勃発してからしばらくは、切腹処分の避けられない討ち入りには反対で、皆が再び暮らしていけるようにとお家の再興を願い奔走します。

しかし、幕府によりお家の再興が不可能になってしまったことにより、それならばと、覚悟のある人間を集め、討ち入りすることを決意しました。

4:浮気したばかりではなく、浮気相手と結婚してしまった

彼は幕府の処分により、浅野家の復興が不可能となったころから、急に酒癖が悪くなり、日中から酒を飲み、女性と遊び回るような放蕩生活を始め、ついには遊女を妾に取ってしまうほどでした。

しかし、これは復興不可能となったことにより、仇討ちを受けるのではないかと警戒していた吉良家を油断させるため、あえて放蕩生活を繰り返していたのではないかと言われています。

5:実は浅野長矩の刃傷事件は、内蔵助の責任でもあった

儀式の場で事件を起こしてしまい異例の厳罰を受けた浅野長矩ですが、その責任の所在は、家老であるにもかかわらず、学を持たず特に能力のない「不学無術」であった内蔵助が、普段から適切な指導や助言をできなかったことが大きいと責められてしまいました。

6:実は備前岡山藩の出身であった

これは、岡山県に今も残る逸話なのですが、実は彼は岡山藩の出身であり、赤穂藩の大石家に養子入りし、内蔵助を名乗ったと言われています。

しかし、彼が切腹の際に幕府に提出した書類には、両親や血縁共に大石家で提出されており、今ではこの逸話は地方振興のためにつくられた俗説と考えられていますが、岡山県には、実際に彼に関する品物がいくつも残されています。

7:同じ赤穂藩の家老に殺されそうになった

揺れる浅野家の中でお家再興に奔走した彼ですが、実は討ち入りに乗り気でない彼をもはや浅野家に不要と考え、殺してしまおうと考える勢力もいました。

しかし、ちょうどその頃にお家再興が難しくなり、仇討ちを内蔵助が決意したことにより、彼の暗殺は寸前のところでどうにか逃れることが出来ました。

自然体。だから強いその人物像

大石内蔵助と名前が出ると、やはり次に連想される言葉は、赤穂浪士であったり忠臣蔵であったりと、常にそのイメージが先行してしまいがちでしょう。実は、そういった出来事を除いても、彼はとても興味深い人生を歩んでいます。

本書は、そんな彼個人にスポットを当て、忠臣蔵の中心人物としてではなく、あくまで江戸時代を生きた一人の武士として、その生涯を描いた伝記物語といえるでしょう。

著者
池波 正太郎
出版日

大石内蔵助という人物は、今までも多くの作品に取り上げられていますが、その性格は勇猛果敢で、忠義に厚く、そして、人望に恵まれた理想のリーダー像のように描かれていることが多いです。

ですが、主君の浅野長矩が即日切腹という処罰を受けるまでは、周囲の内蔵助へのイメージはまったく違い、何をやってもダメな人物で、酒に飲まれ、昼行灯と陰口を叩かれているような人物だったそう。

その後、主君が切腹し、お家存続の危機になると彼は信じられないほどのリーダーシップを発揮し、 誰よりも的確に指示を出し、皆を勇気づけ、意見をまとめ上げるような手腕を発揮しました。

まさにリーダーの鏡のような内蔵助の変わりようは、きっと計算じみた感情は一切なく、本書で描かれる大石のように、ずっと自然体で生きていた結果であるように感じます。

あまり大きな出来事にクローズアップせずに、その人物像を真正面から描いている本作。彼の活躍を通じて、リーダーとして最も大事なことに気づかされるでしょう。

自らの命を捨てても仇討ちする大石内蔵助の勇気

先ほど紹介した書籍が大石内蔵助個人に触れた作品であるのであれば、本書はどちらかというと、その勇猛果敢な意志と、自らの命を絶つ覚悟をしてでも主君の無念を晴らすという、忠義の精神に注目した作品です。

著者
["静霞 薫", "藤科 遥市", "加来 耕三"]
出版日
2014-12-19

自分の主君が処罰されたことをきっかけに、自らの処罰を覚悟で47人もの人間たちが、主君の無念を晴らすために仇討ちを行ったのが、有名な赤穂浪士事件です。

まるで、漫画や小説のような話でありながらも実際に起こったこの事件は、表情や迫力をより忠実に描くことの出来るコミックとの相性がとてもよく、多くの偉人たちの生涯を描いた「江戸人物伝」シリーズにも適しています。

本書に登場する大石内蔵助が発する勇気に満ちた言葉の数々は、きっと自信をなくしてしまった人の心に強く響き、逆風に立ち向かっていく勇気を奮い立たせてくれることでしょう。

今も語られる赤穂浪士の討ち入りを知る傑作

大石内蔵助という人物は今でこそ様々な場所で語られていて有名ですが、彼をここまで有名にさせたのは何よりも赤穂浪士事件であり、大石を語るうえで欠くことは出来ません。

本書は、太平の世を騒がせた有名な赤穂浪士の討ち入り事件を詳しく調べ上げ、忠実に描き、一つの物語としたことで名作と名高く、何度も映画やドラマの原作として使用されている作品です。

著者
大佛 次郎
出版日

物語は発端となった浅野長矩による刃傷事件から始まります。

勅答の儀という幕府にとって大事な儀式の直前に、浅野長矩が吉良義央に対して刃傷事件を起こし、それに激怒した徳川綱吉によって長矩は即日切腹、赤穂浅野家はお家断絶という処分を受けることとなります。

しかし、なぜか相手側の吉良義央に関しては一切のお咎めがなく、それに不満を持つ徹底抗戦派と、何よりもまず浅野家の復興を優先すべきとのお家存続派に分かれ、この物語はさらに深く、思惑が入り乱れる展開へと進んでいきます。

対立する家老たち、何よりも浅野家を一つにまとめようと奔走する内蔵助、そして仇討ちに怯える吉良、というように本書に登場する人物は誰もが個性的で芯が強く、自らの目的を達成しようとする信念のもとに行動し、その誰もが正しいと思えるほどに意見はまっすぐです。

そんな登場人物たちがやがて一つになり、赤穂事件へと繋がっていく本書の物語は、やはり名作と呼ばれる作品に恥じない内容で、思わず引き込まれてしまいます。

大石内蔵助から学ぶ多くの事

自らの主君が処罰され、赤穂藩がなくなってしまうという異常事態に揺れる浅野家をまとめ上げ、それぞれの意見を聞きながら最善の道を模索した大石内蔵助の姿は、常に多くの人の目標とされています。

本書では、そんな渦中に見舞われた大石が、どのように判断し、どのような行動をとり、浅野家をまとめ上げたかが詳細に描かれています。

著者
村石 利夫
出版日

主君である浅野長矩はすでに十分な地位を持った大名であったので、即日切腹という裁きは前代未聞の異例な処分であり、もちろんそんなことを想像していなかった浅野家の人々も、急に赤穂藩がなくなってしまうと言われ、驚き戸惑います。

そんな急な出来事に、どうにかして赤穂藩を復興させようと考える意見と、そんなことは関係なく、今すぐに仇討ちをするべきであるという意見が対立し、赤穂藩が大きく揺れてしまったというのは想像に難しくありません。

しかし、そんな渦中の中、普段は昼行灯の役立たずと陰口を言われていた大石内蔵助が誰よりも冷静に、そして的確に赤穂藩をまとめ上げ、行動に移していきます。

雰囲気に流されない自然体であったからこそ、大きな出来事に揺れることなく冷静に行動し、しっかりと話を聞いたうえで的確な判断をとる大石に、陰口を言っていた家老たちも少しずつ従うようになっていきました。

揺れる浅野家を立派にまとめ上げた大石の思考や判断力を学ぶことのできる本書は、時代を超えた現代であるからこそ、参考になることがいくつも詰め込まれています。

以上、大石内蔵助について知ることの出来る書籍をご紹介させていただきました。普段は様々な陰口を言われながらも決して怒らず、一大事には普段とは打って変わって冷静沈着に、率先して行動した内蔵助の考えや生き方は、現代を生きる私たちにも役立てることができるでしょう。

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