漫画『宇宙兄弟』心に沁みる名言をネタバレ紹介!

更新:2021.12.9

宇宙飛行士をテーマに連載されている『宇宙兄弟』は、漫画家・小山宙哉の作品です。六太と日々人という2人の兄弟を中心に、宇宙に情熱を向けた人々の葛藤や日常を描いています。今回はそんな本作の魅力を34巻まで、名言を交えて徹底紹介します。

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漫画『宇宙兄弟』34巻までの名言を紹介!【ネタバレ注意】

宝島社「このマンガがすごい!」2009年のオトコ編で2位を獲得、マンガ大賞も2009年と翌10年に2年連続で2位を受賞し、さらに累計発行部数は2500万部超えの人気作品です。

この漫画『宇宙兄弟』は、小さい頃から宇宙に憧れ、宇宙飛行士を目指す2人の兄弟を中心にくり広げられる物語です。本作が発表されるまで、宇宙飛行士を大々的に扱った漫画はありませんでした。

その理由のひとつは「宇宙飛行士」という職業にシークレットな部分が多かったためです。しかしこの物語では、日本の「JAXA」(宇宙航空研究開発機構)や、宇宙開発の最高峰とも呼ばれるアメリカの「NASA」に協力を仰ぎ、その全貌を明らかにしています。 

 

著者
小山 宙哉
出版日
2008-03-21

 

たとえば宇宙飛行士になるための試験や、宇宙飛行士になってからの生活などが、キャラクターを通して具体的に描かれているのです。宇宙飛行士になれなかった人が、別の形で宇宙と関わっていく様子も描くことで、作品の世界観もよりリアルなものになっています。 

もちろん、宇宙飛行士による宇宙での仕事内容にも触れられている本作。作者の小山宙哉は『宇宙兄弟』が初の週刊連載作品ですが、そうとは思えないほどの画力と構成力で広大な宇宙空間を描き、第1話から読者を魅了しています。 

2012年から放送されたアニメ版では、原作のエピソードが忠実に再現され、同年に小栗旬岡田将生のダブル主演で実写映画化もされました。

今回は漫画『宇宙兄弟』の、多くの読者をとりこにしたその魅力を、名言を交えて徹底紹介します。


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漫画『宇宙兄弟』に胸が熱くなる!【あらすじ】

主人公の南波六太は幼いころ、弟の南波日々人と遊んでいる最中、偶然UFOが月へ向かう姿を目撃します。「月に行けば宇宙人に会えるかもしれない」とワクワクした気持ちを抱き、2人は将来宇宙飛行士になって月に行くことを夢に抱きました。

しかし大人になった六太は、自動車会社に勤めるという、宇宙飛行士とは縁遠い生活を過ごしています。

一方弟の日々人は、見事宇宙飛行士となり、いよいよ月へ向かうということで、記者会見を開かれるまでの人物になっていました。

ある日六太は、勤めていた会社の専務が日々人のことをバカにしているのを耳にします。これまで、夢を叶えた日々人と、叶えられなかった自分を比べられることには我慢していましたが、他人に日々人をバカにされたことが引き金になって専務に頭突きを食らわし、退職することになってしまいました。

会社の寮に住んでいた六太は1度実家に帰り、再就職するために企業の面接に向かいますが、専務への頭突きが悪評となって知れ渡っていたために、不採用が続きます。実家でふてくされていた彼の様子を母親から聞いていた日々人は、励ますために電話をしてきました。

日々人に励まされた六太でしたが、就職先は見つからず、アルバイトをしながら過ごすことになります。そんなある日、彼の元に届いたのは1通の封書。中を開けると、宇宙飛行士になるためのJAXAの試験日程が書かれていました……。

著者
小山 宙哉
出版日
2008-06-23

実は六太には内緒で日々人が母親に頼み、JAXAに応募させていたのです。最初は躊躇していた六太ですが、小さい頃からの憧れである宇宙飛行士の試験だったため早速、準備をしてJAXAに向かいます。

気合十分で向かった面接。しかし座った椅子のネジがなぜか緩んでいることが気になり、まったく集中できませんでした。きっと試験は不合格だと落ち込む六太に、同じく面接を受けていた真壁ケンジが話しかけてきます。

宇宙に憧れて宇宙飛行士になりたいケンジ。人間性に溢れ、宇宙に対して熱い情熱を持つ彼と話すことで、六太も前向きな気持ちで帰路につくことができました。

かつてUFOを目撃し、宇宙飛行士になることを夢見ていた六太と日々人。そんな2人は、幼いころから2つの場所に通いつめていました。

1つはJAXA。観光客用にスライドショーなどをやっていたため足しげく通い、彼はJAXAの職員がする説明を暗記してしまいました。JAXAの職員も自らが喋ろうとしている文面を、小学生に先に読まれてしまうのでタジタジの困った様子。その頃に出会ったJAXA職員の星加正が、今回の六太の試験監督を担当していました。

もう1つの場所が、天才学者の金子シャロンが住んでいる「シャロン天文台」。幼い2人は探検気分で未知の天文台の門を叩き、シャロンから快く迎え入れてもらい、それ以来彼らにとって彼女は第2の母親のような存在になっていました。

予想とは裏腹に1次試験を通過することができた六太。彼は次の試験へと進みます。2次試験の内容は、閉鎖環境のなかで仲間たちとうまくやっていくことができるかを見極める、宇宙飛行士らしい試験でした。

昼かも夜かも分からず、テレビやラジオなどの情報も一切得られない空間で、試験官たちからもらう情報や指示だけを頼りに、与えられたミッションをこなします。厳しい環境の中で、時には信頼関係が崩れそうになりながらも、仲間たちと試験を乗り越えることができました。

その後も、厳しい試験を通過して、見事念願の宇宙飛行士になれた六太は、日々人とともに、シャロンが計画している月面天測望遠鏡計画に協力することとなります。しかし彼女の体は「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」という難病に侵され、ついには話すこともできなくなってしまいました……。

一刻も早くシャロンの計画を実現させるために、六太も日々人も宇宙飛行士の訓練をこなしていきます。

名言1:「火星に行くよ」

 

六太は自動車会社で開発のプロジェクトリーダーとして働いていました。ところがある日、弟の日々人をバカにした専務に怒り頭突きをし、退職を余儀なくされます。

転職活動もうまくいかず、アルバイトをしていた六太の様子を母親から聞いた日々人は、「2006年の7月9日。あの日に録っていたテープを聴いてみろよ」とメッセージを送ります。

2006年7月9日とは、かつて2人がUFOを目撃した日でした。当時日々人が録音していたテープが残っていたのです。大人になった六太が聞いてみると、確かにUFOが現れた時の音源が記録されていました。

 

著者
小山 宙哉
出版日
2008-09-22

 

幼い2人は、UFOを目撃した後に将来の夢を語っていました。「宇宙飛行士として月に行きたい」と言った日々人に対し、六太はこう返します。

「お前が月に行くんなら、お兄ちゃんはその先へ行くに決まっている、火星に行くよ」(『宇宙兄弟』第1巻から引用』)

月よりさらに遠い夢のような火星探索を、兄として成し遂げたいという思いが表れているセリフです。

かつての決意を聞いた六太は、もう1度漠然と、宇宙飛行士になりたいと思いましたが、どうしていいか分からずにアルバイト生活を続行。しばらくすると1通の封書が彼の元に届きます。それはJAXAからの、新規宇宙飛行士の書類選考が通過したことの知らせでした。

 

名言2:「そこに俺にとって一番の金ピカがある」

 

JAXAの試験を受けることを躊躇っていた六太は、シャロンの元へ相談をしに行きます。彼女は迷う六太の気持ちを汲みつつも、宇宙飛行士になりたい気持ちを察して励ましました。
 

幼い頃の六太は、シャロンに「トランペット、ピアノ、ギター、太鼓、ハーモニカ、どれをやってみたいか」と聞かれたことがあります。その時の彼は「全部やってみなければ分からない」と言って、すべて挑戦。そして、そのなかでも1番弾けなかったトランペットを選び、練習しました。

 

著者
小山 宙哉
出版日
2008-12-22

 

何でもやってみて、さらに1番難しいものを選んだ幼い頃の六太。彼は子供の頃から、強い挑戦心を持った人物だったのです。大人になって当時のことを「ただ金ピカだったから選んだんじゃないか」とはぐらかした彼に、シャロンはもう1度問いかけます。

「今のあなたにとって……一番金ピカなことは何?」(『宇宙兄弟』第1巻から引用)

この言葉は、迷っていた彼の心にずしんと響きます。大人になれば誰でも、挑戦することに対して躊躇いがちになってしまいますが、そんな気持ちがわかる読者にも響いたのではないでしょうか。

シャロンに励まされた六太は、やっぱり自分は宇宙飛行士になりたいと思い、1次試験の筆記試験へと挑みます。3週間後に送られてきた合否通知を見た彼は、思わず家を飛び出し、土手にやってきます。その手に握り締めていたのは、トランペット。

「そこに俺にとって一番の金ピカがあるのだ」(『宇宙兄弟』第1巻から引用)

不器用ながら弾くトランペットはとても下手ですが、六太にとってのシャロンに問いかけられた答えが出た瞬間となりました。

 

名言3:「諦められるなら、そんなもん夢じゃねえ」

 

気になる面接結果を待つ期間、日々人から招待状をもらった六太はアメリカへと向かいます。実際に弟がどんなトレーニングしているのか、毎日見学を続ける兄。アメリカで「サムライ」と呼ばれ、周りの仲間から尊敬され、愛されている日々人に嫉妬心に近いような感情を抱きます。

自室に帰り、弟と2人きりで話しをする六太。「なあ日々人。92%落ちた。新しい仕事を探すよ」と試験に対して、自信がないことを初めて打ち明けました。新しい仕事を探すということは、もちろん宇宙飛行士を諦めたと宣言しているようなものです。

 

著者
小山 宙哉
出版日
2009-03-23

 

そんな兄に対して、弟の日々人が答えたのは……。

「宇宙行くの夢なんだろ 諦めんなよ 
 もし諦め切れるんなら そんなもん夢じゃねえ」 
 (『宇宙兄弟』2巻より引用)

すでに試験に合格し候補生となった弟から、厳しい激励を受けた六太。弱気になっている自分がいたからこそ、かなり胸に刺さる言葉だったのではないでしょうか。

翌日から六太は、訓練の見学には行かず、近所の公園でトレーニングを開始します。昨日までとは違い、兄の目は輝いていました。宇宙飛行士という夢を、また追いかけ始めたのです。

小さい頃は誰にでもあったであろう、夢。大人になって行くにつれ、忘れてしまうのか、無理にでも忘れるのか、夢を語る人が少なくなっていくように感じるでしょう。

『宇宙兄弟』の名言は、夢や目標に向かう人を応援するようなものがとても多いです。くじけそうになった時、ぜひ一度読んでみてください。
 

 

名言4:「死ぬまでに宇宙にいけないのはもっと嫌だ」

 

2次試験が終わるころから3次試験がはじまるまでは、その後のストーリーに関係してくる人物たちが続々と登場してきます。六太の目線で見るJAXAの試験を通過してきている人物たちには、どこか人間味があふれていて、すこし笑ってしまうでしょう。

2次試験の面接を共にうけたことで友情が芽生えた真壁ケンジとは、「ケンジ」「ムッちゃん」と呼び合う仲となり、その後の試験の情報などを共有し合います。また六太は、元女医の伊東せりかに対して、第一印象から好意を持ちました。

 

著者
小山 宙哉
出版日
2009-06-23

 

3次試験を受ける前には「最後の選択」として、免責書にサインをします。その時、過去の事故で宇宙飛行士が亡くなった瞬間の記録も観ることに。ここではじめて「宇宙飛行士は死と隣合わせ」ということを、現実として受け止めることとなったのです。

もちろん自分にも殉職の可能性があるなかで、六太にはそれ以上に強い思いがありました。

「死ぬまでに宇宙にいけないってのはもっと嫌だ」(『宇宙兄弟』第3巻から引用)

死の恐怖に勝る強い意志を持って、六太は免責書にサインをします。これは彼が持つ宇宙への並々ならぬ思いが明確に現れた名言です。

 

名言5:「俺の敵はだいたい俺です」

 

宇宙飛行士の試験を合格し、候補生として日々、訓練に励む六太。何人もいる候補生から、実際に月に行くことができるのは半数だけです。六太は夢を叶えるために、また競争を勝ち抜かなければなりません。

キャンサットの試練を終え、ピコとバーで待ち合わせをすることになった六太。JAXAの社員のビンセンス・ボールドと車に乗り、バーに向かいます。そして六太はひょんなことから、彼にこう聞かれます。

「君にとって敵はいないの?」 、と。

 

著者
小山 宙哉
出版日
2009-09-23

 

ほんの少しだけ間を置いたムッタは、真剣な顔で話し始めました。

「俺の敵は だいたい俺です 
 自分の”宇宙に行きたい”っていう夢を さんざん邪魔して 
 足を引っ張り続けたのは 結局俺でした 
 他に敵はいません」 
(『宇宙兄弟』11巻より引用)」

日々人が宇宙飛行士を目指し、ひたすらに努力を続ける姿を、横目で眺め続けていた六太。気がつくと弟は宇宙飛行士になっていました。しかし兄は、自分のしたいことすら満足にできていません。弟に先を越されてしまい、兄として情けなく、俺は別に宇宙飛行士にならなくてもいいと言わんばかりの態度を取り続けてきました。

そんな六太でしたが、退職をきっかけにまた宇宙を目指し始めます。今までとは違い、ストイックに自分と向き合って、宇宙飛行士まであと一歩のところにやってきました。そして彼は見事、この選考を突破し月へと旅立つことになります。

多くの人が掲げている、それぞれの夢や目標。自分という敵に打ち勝って、夢を叶えられる人は、そう多くありません。

夢から逃げていた自分と決別し、見事夢を叶えた六太。カッコいい以外の言葉がありません。 
 

 

名言6:「月面で会おう」

 

南波日々人は、兄の六太よりも先に宇宙飛行士として活躍しています。六太がひょうきん者であるとすれば、日々人は真面目な好青年で、ヒーロー的なキャラクターだといえるでしょう。

月面着陸した日本人最初の宇宙飛行士で、さらに世界最年少の月面探査クルーになるという偉業も達成しています。しかし、その月面でのミッション中に、あわや死にかけるというアクシデントが発生。地球へ帰還後、後遺症としてPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症してしまいました。

 

著者
小山 宙哉
出版日
2009-12-22

 

後に克服に成功しますが、NASA側からは宇宙飛行士として失格の烙印を押されてしまいます。この判断を受け、日々人はNASAを辞めてしまいました。

それからしばらく、日々人は六太と連絡を絶ちます。彼は今までの人生ではじめて味わう挫折感に苦悩していました。

なんとか連絡を取ろうとしてきた六太に対し、日々人はある結論を見出した段階で返事をします。「久しぶりムッちゃん」と始まる文面は、彼の精神状態が落ち着いていることを感じさせました。続いてNASAを辞めることも書き記し、その後の文面はこう続きます。

「月面で会おう」(『宇宙兄弟』第30巻から引用)

NASAを辞めるということは宇宙飛行士を辞めることととイコールになりそうですが、日々人は単身でロシアに向かい、ロシアの宇宙飛行士を目指します。振り出しに戻ってしまった日々人ですが、やはり好青年な彼らしい選択だといえるでしょう。

 

名言7:「悩むなら、なってから悩みなさい」

 

金子シャロンは著名な天文学者で、六太と日々人が小さい頃に出会った人物です。2人を快く受け入れ、それ以降は彼らの第2の母親のような、よき相談相手となっています。彼女は「月面天測望遠鏡計画」を進めている人物でもあり、六太と日々人も、宇宙飛行士として協力していくことになります。

2次試験まで通過した六太は、そこでライバルたちが持つ、それぞれの宇宙に対する思いを知ることに。彼らの言葉を聞くと、「宇宙に行きたい」という気持ちだけで宇宙飛行士を目指してきた自分に、「それでいいのか?」と問いかけはじめます。

 

著者
小山 宙哉
出版日
2010-03-23

 

迷った彼が向かったのは、もちろんシャロンのところです。その問いを彼女に投げかけると、「いいのよそれで」あっさり肯定されまました。さらに、

「悩むならなってから悩みなさい」(『宇宙兄弟』第3巻から引用)

と背中を押されるのです。

スタートラインに立つ前に悩むより、まずは走り出してとアドバイスをするシャロン。六太は彼女の言葉を受け止め、3次試験へと挑んでいくことになります。

 

名言8:「私はやります。誰に何といわれようと」

 

伊東せりかは、六太やケンジと同じ試験で合格した宇宙飛行士で、美人女医でもあります。前向きな性格で食べることが大好き。

父親をシャロンと同じ難病のALSで亡くし、ISS(国際宇宙ステーション)で治療方法を確立させたくて宇宙飛行士を目指しました。そんなせりかは、存続が危ぶまれていたISSに無事クルーとして乗船することになります。

 

著者
小山 宙哉
出版日
2015-11-20

 

しかし、乗船時に自社の製薬を売り込んできた製薬会社に低調に断りを入れたところ、逆恨みをされてネット上に悪評を流されてしまいます。

悪評はネット上だけでは抑えきれなくなるほどあふれたため、管制塔からISSの彼女に連絡が入り、実験をやめるよう指示が出てしまいました。

大ショックを受ける彼女を、JAXAの同期たちが思いやります。六太は、3次試験で食料がなくなり困った時に作ったうどんのことを思い出し、動画としてアップ。それを見たせりかは励まされ、もう1度前に進もうとするのです。

「私はやります。この先……誰に何といわれようと
誰も何も言ってくれなくても

私はやります」(『宇宙兄弟』第27巻から引用)

ISSで実験をできる最後の機会かもしれないという重要なチャンスを、悪意のある中傷のせいでい終わらせては宇宙に来た意味がない、というせりかの強い意思が現れている言葉です。

どんなに管制塔から中止の指示を受けても、本人が止めなければ実験は続けられます。このことがきっかけで、ALSの治療方法の糸口となる実験結果を得ることができました。彼女の努力の結果が現れた感動的なシーンです。

 

名言9:「かぺ!」

 

真壁ケンジは、JAXAの2次試験から六太とよき友達関係を築いた人物です。好青年の彼は、宇宙飛行士になる夢に対して熱い情熱を持っています。また「人の年齢を当てる」という密かな趣味を持っていて、六太の年齢を当てるとガッツポーズをしていました。

 

著者
小山 宙哉
出版日
2010-03-23

 

ケンジには妻と、2歳になる娘の風佳がいます。宇宙飛行士になるケンジははあまり娘と一緒に過ごす時間がありませんが、風佳が彼と別れる時に必ず言ってくれる言葉がありました。

「かぺ!」(『宇宙兄弟』第2巻から引用)

とってもはっきり発音し、2歳の風佳が言うと可愛い言葉です。最初はケンジもどういう意味なのか分かりませんでしたが、3次試験に向かう彼に対しても風佳は「かぺ!」と言います。

3次試験の閉鎖空間でケンジは、極限状態まで追い込まれます。考え事をするために個室であるトイレに入り、ふと思い出したのが風佳の言葉でした。

この言葉の意味の正解は、「頑張れ」。娘が自分にかけてくれたエールだということに気づき、彼は再び前向きになっていきます。

 

名言10:「待たせたな」【30巻ネタバレ】

 

月面でミッションをこなしていた六太でしたが、太陽嵐による電磁波障害により、活動を休止しなくてはならなくなります。しかもシャロンが念願としている「月面天測望遠鏡計画」の要の「スーパーコンピューター」が影響を受けることが分かりました。

電波障害が発生するタイムリミットまでは残り12時間。六太は、同じく宇宙飛行士のエディとAIロボットのブギーと一緒に、スーパーコンピューターを電磁波障害から守るために回収へと向かいます。

 

著者
小山 宙哉
出版日
2017-01-23

 

途中で乗っていたバギーのバッテリーが放射能の影響で故障し、危機的な状況に陥りますが、以前日々人が来た時に事故で捨てていったバギーが近くにあることが分かり、そのおかげで2人は助かりました。

残りの時間が少ないなか、エディはある場所へ行きたいと希望します。そこは、地球に帰還する途中の事故で亡くなった彼の弟ブライアンが、月に来た証として宇宙服姿の人形を残した、兄弟の約束の場所でした。

「待たせたな」(『宇宙兄弟』第30巻から引用)

エディは、自分が持ってきた宇宙服の人形を隣に置きます。彼は放射能量が限界値に近いため、これが最後の宇宙になる予定。最後の最後でようやく兄弟が月で対面する、感動のシーンです。2人の兄が2人の弟に助けられるという、印象的なエピソードでもあります。

無事に宇宙船に帰還した六太とエディは、この後数日間電磁波障害で活動休止を余儀なくされます。

一方の日々人は、新たな挑戦のため単身ロシアへ。兄弟たちの対比がより鮮明に描かれています。

 

名言11:「我々は孤独だ。だが一人ではない」【31巻ネタバレ】

 

宇宙飛行士として、ロシアで新たなる1歩を歩きはじめた日々人ですが、寝返りが打てないほどの狭いベッドや、透明ではないシャワーなど、NASAとロシアの違いにカルチャーショックを受ける日々を送ります。

そこでは宇宙飛行士のマクシム・ウルマノフと出会い、次第に打ち解けて、同じクルーに選ばれることになりました。

 

著者
小山 宙哉
出版日
2017-06-23

 

一方月でミッション中の六太は、強烈な太陽嵐による電波障害で、最悪の事態も想定される状況にいました。NASAとの通信も途絶えてぃまい、電波障害を経験しているエディを頼りに、クルーたちは不安な時間を過ごしていきます。

そんな状況で、クルーのひとりフィリップ・ルイスは、自分はジャマイカ人の父とアメリカ人の母を持ち、生まれはアルゼンチンという複雑な環境で育ち、そのことでどこへ行ってもよそ者扱いだった」と寂しそうに語りました。

彼を勇気付けたのは、テレビで流れてきた、ISSのの地上と長時間通信障害が起きた特集。そこに映し出された人物のなかには、なんとエディの姿があったのです。そこで彼は、

「我々は孤独だ。だが一人ではない」(『宇宙兄弟』第31巻から引用)

と話しています。

「クルーたちといるから孤独ではない」という意味のこもったひと言。フィリップにとっては心に突き刺さる名言となり、これ以来エディを密かにリスペクトしているのでした。

 

名言12:「一人を思ってやればいい」【32巻ネタバレ】

停電騒動が始まってから10日が経ち、六太たちは再びシャロン天文台の完成を目指して船外活動をスタートしました。

しかし再開したとしても予断ならない状況で、様々な不運が重なったこのプロジェクトで、もし今回の天文台設置が間に合わなければ、完成はさらに先延ばしになってしまいます。次に天文台に予算が回ってくるのは5年後以上になってしまいそうだと、地球にいるメンバーも不安になってしまいます。

しかし彼らの空気を変えたのが、バトラー室長。誰よりも天文台設置を望んでいる宇宙飛行士たちを信じようと熱く語りかけ、全員が再び希望を持って顔をあげます。

著者
小山宙哉
出版日
2017-11-22

そしてその頃、六太はまさにその仕事の真っ最中。太陽パネルを設置している間、こんなことを考えます。

「やってること自体は 電気工事士のおっちゃんと
同じような仕事だけど
舞台のせいか 衣装のせいか
何かとんでもないことをしているようなー
それこそ 世界を救うためにやっているような……」
(『宇宙兄弟』第32巻から引用)

しかし眼前に見える地球を見て、六太は「いかん いかん」と大それた使命感に囚われそうになった自分を落ち着かせます。

「俺のやってることが…
世界のためになるかどうかはー『結果』だ
『結果』でいいー

一人を思ってやればいい」
(『宇宙兄弟』第32巻から引用)

この仕事を成功させたいと思う気持ちが人一倍強いだけに、使命感から自ら重圧をかぶりそうになってしまった彼ですが、そもそもの天文台設置のきっかけであるシャロンを思い、気を取り直します。

子供の頃にしてしまった約束。シャロンが忘れてくれていればいいとさえ思った時もありましたが、今、確実にそれを彼は成し遂げようとしています。

少年の無邪気な言葉が実現しようとしている感慨に包まれる言葉です。

しかしトラブル続きのこのプロジェクトで、みんなが「自分たちはちゃんと地球へ帰れるのだろうか」という気持ちを持ってしまっていることも事実で……。

25巻はこの他にも無口なアンディの過去の話や、せりかの地球帰還までの展開なども見られます。それぞれの思いを抱えてひとつのプロジェクトが成り立っているという感動をさらに感じられる内容となっています。

名言13:「決めるなら、意思の強さで選べ」【33巻ネタバレ】

月での活動を続けるムッタ達は、ある晩エディから5日後に帰還する事を告げられます。想定では活動を縮小するはずだった太陽ですが、なぜかそれが拡大。前例のない事態に先が予測できない状況に陥ってしまったからでした。

急な展開に驚くメンバー達ですが、月で数々の困難を経験した彼らは過度に動揺する事なく、一致団結。フレアの影響を受けてしまうまでの5日間で天文台の完成を目指します。

ところが、さらに困難は続き、ある事故をきっかけに期限の5日を待たずに地球へと帰らねばならない状態となってしまいました。

著者
小山 宙哉
出版日
2018-04-23

莫大な予算を投じて月にきて、目的を達成せずに地球へ帰ることは、失敗を意味します。何とかして天文台を完成させなければならないので、メンバーの中から2人が残ることになります。 

誰が月に残るかを決める際、全員が挙手するなか、誰よりもムッタが高く手をあげました。最年長でコマンダーでもあるエディは、自分が残ると言うのですが、それに対しムッタは……。

「決めるなら、意思の強さで選んでほしい」
(『宇宙兄弟』第33巻から引用)

意思の強さという曖昧な表現に戸惑うような表情をするエディに、ムッタはさらにこう続けます。

「さっき挙げた…手の高さ」
(『宇宙兄弟』第33巻から引用)

手の高さはただの指標ではありますが、そこには確かにムッタの強い意思が現れており、周囲もそれを認めます。こうしてムッタは月に残ることとなったのでした。

33巻は、この他にもメンバーに訪れた危機に引き込まれる内容。帰還が早まった原因となるのが、ある一員に訪れた命の危機だったのです……。

手に汗握る展開から、ムッタの意志の強さを表した最後まで、見逃せない内容となっています! 

名言14:「あなたのおかげで宇宙を楽しめた」【34巻ネタバレ】

月に残ってミッションを続ける六太とフィリップ組、重症を負ったベティのためにともに地球に戻ろうとしているカルロス組に分かれて進む物語。

しかし両者に予想外のハプニングが起こり、前途多難な道のりが示されます……。

著者
小山 宙哉
出版日
2018-10-23

34巻では思っていたよりも出血量が多く、地球に帰還して手術が難しいということから、ISSで遠隔手術をすることになったベティの名言をご紹介。

ベティは、手術の前に自分の息子の写真を見て、自分に何かあったら彼に伝えて欲しいことがあると、こんな言葉をカルロスに託します。

「『あなたのおかげで宇宙を思う存分楽しめた』ーって」
(『宇宙兄弟』34巻より引用)

ベティは離婚、さらに自分のやりたい宇宙のミッションなどの意思を尊重してくれる息子にとても感謝していました。そしてこのミッションが終わったら彼の母親だけに専念することが次の夢だと語っていたのです。母子の絆が感じられる言葉です。

さらにベティはもう1つクリスに伝えてほしいことがあると続けます。ムキムキで頼れる姉御肌な彼女。2つ目の言葉は、実はクリスのために意識して強くあろうとしている部分もあること、それ自体が彼女を支えてもいたのだということを感じられるものです。

ぜひベティが息子に伝えたかった2つの言葉をご自身の目でご覧ください。


『宇宙兄弟』は、宇宙飛行士はどんな職業なのか、知ることができる漫画です。さらに読み深めていくとたくさんの名言があり、考えさせられるシーンが目白押しで、続きが気になる名作です。

また、名言をまとめた作品集もあるので、よろしければ見てみてください。

著者
["小山 宙哉", "モーニング編集部"]
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