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漫画『蒼天航路』の魅力を徹底考察!キャラクターの名言が沁みる!

更新:2020.11.30 作成:2017.9.8

原作・李學仁、作画・王欣太で、アニメ化もされた『蒼天航路』。曹操が主人公だという、三国志のもうひとつの形を確立した本作の魅力を、この記事ではたっぷりと紹介していきます。とめどなく登場する名言や、ド迫力の作画など、見どころがいっぱいです。

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漫画『蒼天航路』の魅力をキャラの名言などからネタバレ紹介!

著者
王 欣太
出版日
1995-10-19

さて、『蒼天航路』の魅力といえば、まずは王欣太によるド迫力の作画でしょう。コマを大胆に使ってキャラクターのダイナミックな動きが見事に表現されています。

そして、曹操が主人公だということも挙げられます。三国志や三国志演義では、どうしても蜀の劉備に目がいきがちですが、本作の舞台の中心は魏で、曹操にスポットライトが当てられているのです。

漫画『蒼天航路』あらすじ

著者
王 欣太
出版日
1997-11-19

本作の冒頭は、曹操とはどんな人物なのか、彼のやったことはどんなことなのかを考察するようなモノローグから始まります。

そして物語は、曹操の幼少期に移ります。まだ阿瞞と名乗っていた幼い曹操と、後に彼の配下になり長く行動を共にすることになる曹仁は、町を歩いているところをスリに襲われてしまいました。

曹操は顔面に打撃を受け剣で殺されそうになりますが、不意打ちによってスリを追い詰め、なんと大衆の前でスリを殺してしまいます。一緒にいた曹仁は、「何も殺さなくても」と唖然とし、大衆もまた彼のことを怖がりながらその場を離れていきました……。

このような曹操を象徴するような出来事を交えながら、黄巾の乱や、反董卓連合、赤壁の戦いなど、三国志の有名なエピソードが描かれていきます。

魅力1:曹操から見る三国志!

著者
王 欣太
出版日
2000-06-20

物語の大部分は、主人公の曹操を中心として展開されていきます。

ほとんどの三国志作品では、蜀の劉備がメインに描かれており、曹操は敵役です。残忍な独裁者や虐殺者のイメージを持っていらっしゃる方も多いでしょう。

こんな風に曹操を中心に扱う三国志の物語は、その派生作品も含めて珍しいことなのです。

『蒼天航路』のなかでは、彼を中心に据えることで、独裁や虐殺にも理にかなった動機付けがなされています。これまでほかの三国志作品を読んできた方はまずギャップに戸惑い、そして底知れない魅力を感じてしまうでしょう。

魅力2:主人公以外のキャラも最高!名言多数!

曹操が中心に描かれている『蒼天航路』ですが、彼に負けず劣らず魅力的なキャラクターが多数登場します。

その筆頭は、やはり劉備でしょう。劉備は三国志作品ではメインのキャラクターとされていることが多く、読者からもっとも共感されているであろう人物です。その魅力は『蒼天航路』においても健在で、義兄弟の関羽、張飛とともに読者を楽しませてくれます。

本作で彼は次のような言葉を言います。

「関羽、俺の器の中身にならんか」
「君が俺の器からあふれる時は、いつでもその器を砕けばいい」(『蒼天航路』3巻より引用)

劉備は一般的に義の人だという評価をされていますが、『蒼天航路』でその義は、大容量の器として表現されています。また他作品では堅い性格の劉備ですが、本作では飄々とした性格に描かれているのです。『蒼天航路』での劉備を表している名言だといえるでしょう。

また鋭い直感のみで物事を判断する姿も多数描かれていて、本作ならではの魅力を持った人物となっています。この言葉は、関羽に首を切られそうになった後に、彼を自分の元に引き込むために言ったものですが、この時にも劉備は直感的に行動しています。

著者
王 欣太
出版日
2004-02-23

もうひとりの魅力的なキャラクターは、董卓です。彼もまた曹操と同じく、『蒼天航路』内で再評価がなされています。これまでの三国志作品ではとにかく残酷で非道な暴君だとされ、無能な権力者だという解釈がほとんどでした。

しかし本作では、名だたる武将に劣らないカリスマ性のある人物として描かれています。といっても、その悪逆非道なおこないはさらに強調されていて、そういった意味では曹操とは真逆のアレンジが加えられているといっていいでしょう。

「前世に天意が消滅し、この董卓が誕生したことを知るのみだ」(『蒼天航路』6巻より引用)

彼の非道なおこないを書に記し続けている蔡ヨウから「天意は欺けぬ」と言われたことに対し、董卓が返した言葉です。

天意などは意に介さずに、思う存分自分だけ贅沢をして生きていくのが王道だ、という董卓の考え方が集約されています。彼の現実主義的な思想と自己中心的な性格が現れている、ある意味名言でしょう。

「曹操孟徳、この善悪定かならぬ人物は、いかなる天子の使い方をするのだろうか。願わくばこの公明の想像できぬ使い方であってほしい」(『蒼天航路』9巻より引用)

これは、諸葛亮公明が曹操に向けた言葉です。三国志で1番有名だといっても過言ではない諸葛亮ですが、彼もまた曹操に期待し、善悪定かならぬ人物だと言っています。

『蒼天航路』内では出番が少なく、活躍が描かれることの少ない諸葛亮ですが、要所要所で登場する彼はやはり独特の存在感を放っています。

このような数多くの名言が、読者を物語に引き込んでくれるのです。

魅力3:画力がすごい!

著者
王 欣太
出版日
2006-01-23

原作者の李學仁よる名だたる武将の名言ラッシュも凄いですが、王欣太による作画も『蒼天航路』の大きな魅力です。その迫力や臨場感は圧巻のひと言。物語の冒頭から体感することができます。

本作の冒頭では、なんでも食ってしまう巨大な怪物、トンが登場します。数ページにわたり暴食している光景が描かれているのですが、太陽や、遂には自分まで食い尽くしてしまう様子が、大胆なコマ割りと荒々しい墨絵のようなタッチで、臨場感たっぷりに表現されているのです。

冒頭から『蒼天航路』の世界観を築きあげる、王欣太の技量を感じるでしょう。

魅力:最終回まで想われる水晶という存在。激動の時代の恋愛エピソードが切ない!

本作は歴史上存在しないオリジナルキャラクターもストーリーを彩ります。特に曹操が愛した女性・水晶との恋愛エピソードは切ないものがあります。

女たらしの曹操ですが、実は本気で愛したのはひとりだけ。1巻で登場した水晶という女性です。

ある日彼が道を歩いている時に、茶屋で働いていた使用人の彼女を見て一目惚れ。そのまま馬に乗せて連れ去ってしまいます。

普通の女性なら彼の男らしさとそんなシチュエーションに酔ってもいいものですが、水晶は違いました。彼女は後ろから抱きしめられ、水面に映った自分の顔に「この美しさを隠してはいけない」と語りかけてくる曹操に対し、笑って「いやらしい」と返すのです。

著者
王 欣太
出版日
2006-01-23

実は水晶は曹操と面識はなかったものの、彼に7人の妾がいること、女たらしだということを噂で聞いていたのでした。

水晶はそんな毅然とした性格ではあるものの、女らしさも漂います。なぜ自分についてきたのかと曹操に気かれると、こう答えるのです。

「背中にまわされた手が優しかったから
それにふわりと抱き上げられた時の自分が好きだったの」
(『蒼天航路』1巻より引用)

それを聞いた曹操は嬉しそうに彼女を抱きしめます。

そのあとふたりは寄り添いながら話をするのですが、時折水晶は涙を流します。それは自分の境遇を変えられないことに対する、やるせない気持ちのようでした。

しかしそんな気持ちを抱えながらも今ある現状を受け入れて生活する水晶。その聡明さ、健気さに惹かれた曹操は、彼女を妻にすることを決意します。

しかし張譲という男がふたりの仲を引き裂き……。

ふたりの恋の結末はあまりにも悲しいもの。しかしながら水晶は最後まで容姿だけではない美しさを読者の目に焼き付けます。

そしてこの事件をきっかけに曹操は、上へ上へとのし上がっていくのでした。

また、水晶は2巻の序盤までしか登場しないキャラなのですが、曹操は最後まで彼女だけを思い続けてきたようです。最終回で彼の思いは変わっていないことが描かれ、美しいラストシーンに繋がっていきます。

1、2巻しか登場しないながら、最後まで曹操の心の中にいた水晶。ふたりの蜜月は、短いながらも大きな印象を残すものです。

曹操に焦点を当て、彼の立場から書かれた希少な歴史的観点や、次から次に名言が登場して引き込まれるストーリー、そして臨場感たっぷりでド迫力な作画。これらすべてが備わって、至れり尽くせりな漫画が『蒼天航路』です。普通の三国志に飽きたという人は、ぜひお読みください!